新運命「愚弄」の行人「マネモブ」 作:異常猿愛者
「なんだスペンサー?休暇中に電話かけてくんじゃねーよ。」
バカンスを楽しんでる時にお前のような下衆の声を聴きたくない、殺すぞとキレるマネモブ。
「私を殺す…?」
マネモブに連絡を取ったスペンサーはその言葉に戸惑う、彼の実力ならそれが容易い事なのは間違いないという恐怖を覚える。
「すまないが大統領からのお墨付きを貰っている急用なんだ。」
スペンサーは”悪魔王子”捜索の件を覚えているだろうと言う。
「おいおい、その件は断ったでしょうが。」
地球を発つ直前に長官にそんな泣き言を言われたのは”記憶”に新しいが、悲劇の”ガルシア・シリーズ”最後の生き残りを捕縛しろだなんて気乗りはしないと一蹴した筈だ。
「とぼけるな、お前が悪魔王子と接触してるのは”ペンタゴン”(アメリカ国防総省)も把握してるんだ。」
「ううん?…ああ、スターピースチューブだろ。」
そう言えば”パブ”で悪魔王子と闘った映像を無断で”Star Peace Tube”に投稿されていたのを思い出した。当然米軍もその情報は掴んでいるだろう。
「だったら俺と悪魔王子が相討ちになったのは知ってるだろ。」
悪魔王子は俺が失神KOしていた間に逃げたぞと平気でウソを付くマネモブ。米軍なんぞに彼を渡してたまるか。
「………お前、まさか悪魔王子を匿っている訳じゃないだろうな?」
”強引な男”が黙ってないぞと脅すような口振りの長官だが、
「疑うのは勝手だけど、俺が大統領を恐れるとでも思っているのか?」
ポストにしがみつくのに必死で頭を垂れるしか能がないお前とは違うとマネモブは”愚弄”する。
「あの男が気に入らないのなら、刺客を差し向けようが、核弾頭を撃ち込もうが俺は構わないぞ。」
”サルワターリ”から権能を授かっている俺を殺す事など出来はしないと豪語する。スペンサーはその言葉に偽りはないであろうと実感している、だからこそ達が悪い。
「兎に角、今は忙しいからもう切るぞ。」
「ま、待ってくれ。今どこにいるんだ?」
最後に滞在している場所位教えてくれと頼む長官。
「ピノコニーのクラークフィルムランドだ。ゴリラが目の前にいる。」
「何を言ってるん…」マネモブはそこで電話を切った。
ナイトメア劇団・スウィート・ゴリラ・忍者サン
本来は観光客の接待やスラーダ運送を担当する”ファミリー”が用意した道化なのだが、稀に感情を刺激される事で”調和”が乱れて暴走する個体がいる。モンスターと化した劇団員が、フィルムランドへと遊びに来た子供に襲い掛からんとしている危機的な状況だ。
「子供が殺されるぞ!」
「ファミリーの連中は何をやってるんだよえーっ。」
「おいっ誰かハウンド家を呼んでくれッ。」
野次馬共はその巨体に恐れを成し、助けに向かおうとする者は誰もいない。
「しゃあっ」
ただ唯一、勇猛果敢に突っ込んでいった馬鹿が”愚弄”の”行人”だった。
「子供をそっちに投げるからしっかり受け止めろ。親はどこだ?」
マネモブはガキを優しく抱え込み、保護者を探す。
「ここです!シンちゃん!」
見物人の中、前方に飛び出して愛息の名前を叫ぶ夫婦がいた。マネモブは的確なコントロールで子供をパスした。
「ありがとうございます!」
貴方は命の恩人だと泣き崩れる母親。
「フン、善意でその子を助けた訳じゃない。」
マネモブは目の前の怪物に向き合う。
「いい機会だからコイツと闘ってみたかっただけだッ」
衆人環境の中、強烈な前蹴りをゴリラの顔面にお見舞いする。だが…
「ほうっ、流石ビクともしないか。」
スウィート・ゴリラ・忍者サンにはあまり効果がないようだ…
ブンッ 反撃だとでも言わんばかりに剛腕を振るうゴリラ。
”幽幻真影流” ”朦朧拳” ”霧霞”
マネモブは幽幻のかわしで難なく避ける。
「鬼龍のバカと同じ轍を踏む訳がないだろう。」
マネモブは猿展開を超えた猿展開、通称”ゴリラ展開”の事を思い出していた。今の状況はそれにとても似ている。鬼龍は腕でゴリラの攻撃をガードして一発で骨折していたが、俺はそうはいかない。
『………。』
「えっ」拳を避けて距離を取って来たマネモブに対してスラーダの入った篭を向けて来るゴリラ。
ビュンッ スラーダの炭酸を推進力として弾丸のように発射されたガラス瓶のミサイルが豪雨のようにマネモブを襲った。
「あがが…」この攻撃はかなり効いた。思わず地面に伏せるマネモブ。
『………。』物言わぬゴリラは倒れ込んだマネモブに近付いていく。
「わっ」ガキッ ビタアッ
マネモブの脚を掴み振り上げてから地面に叩きつけるゴリラ。
”スペース・ゴリラ・忍者サンの強力な顎力は人間の頭蓋骨など一噛みで砕く”
”その腕力は人間の腕など一瞬で引き千切る”
「お、おいファミリー早く来い!人間が殺されるぞ!」
余りの惨劇に観光客の不安感はピークに達する。
「ご、ゴリラを本気で怒らせたのが不味かったかな。」
マネモブは一見呑気な事をほざいているが、”愚弄”の道を突き進む者はやはりゴリラには勝てぬ”運命”なのかと思うと些か悔しくはある。
ドカッドカッドカッドカッ
”スペース・ゴリラは怒ってなどいない”
”ただ玩具を与えられた幼児のように破壊して遊んでいるだけだ”
”無邪気に嬲り殺しにするッ”
”余計な脂肪が一切なくその背筋力から繰り出す打撃の威力は推定2~5トン”
”その握力は500㎏、咬合力は400㎏超え”
”霊長類最強生物『ゴリラ』と遊んではいけない”
”絶対に本気で怒らせてはいけない超危険生物”
マネモブがゴリラの腕力で背骨をバキッバキッにされる直前、
ドキャア ◇突如、空から謎の男がー!!
仮面を着けたヒーローのようなスタイリッシュな空中蹴りをゴリラにお見舞いしながらスタイリッシュに参上する男。
「な…なんだあッ」猿展開の連続に名もなきモブ達は着いて行けない。
「ふうん、霊長類最強かあ。」
額に傷のある男、マネモブのピンチに駆け付けたのは悪魔王子だ。
「やっぱり闘ってみたいよねマネモブ。」
「あ、ああ…」今回ばかりは助かったぜとボロ雑巾になりながら感謝するマネモブ。
「知能が高いと言っても所詮は猿並み…加減や技ってのをシラナイ。俺が相手をしてやるよ。」
ゴリラを挑発する悪魔王子。
「オモチャを取り上げられてキレてるんだろ?さっさとかかってこいよ。」
その言葉に呼応するように、ゴリラは悪魔王子へと標的を変えた。
”怒れゴリラ!!お前の本気を見せてみろ”
”だがゴリラの闘争本能はチンパンジーにも劣る”
”産まれながらにして圧倒的な攻撃力を有していながら終生その力を振るう事はないという”
”全力で闘う事がない”
「だから舐められる…」
”家族を守る事さえ出来ない、だから子供が狙われ殺されるッ”
”その無神経で愚鈍な所が反吐が出るくらいムカつく”
”優しさは弱さだ…本気で闘ってみろ”
悪魔王子の独白には、他者から蹂躙されるくらいなら、俺は父親のような悪魔として生き続けるという後ろ向きな自負があった。
”幽幻真影流” ”朦朧拳” ゴリラの拳をすり抜けるように躱す。
「まだマネモブ程精度は高くないが…猿を倒す位なら十分だろ。」
恐ろしき悪龍の血、まだマネモブが幽玄の修業をつけて然程時間も経っていないのに、もう技をモノにし始めているのは驚異的だ。
”灘神影流” ”幻魔拳”
『………!!』悪魔王子のカウンターを顔面に喰らったゴリラは背中から倒れ込み、手で顔を覆いながらのたうち回った。
「凄いな”幻魔拳”は。”ドリーム・ナイトメア劇団”の”スウィート・ゴリラ”にも効いたよ。」
手をグーパーしながら勝利の余韻に浸る悪魔王子。
「凄い、ゴリラを一発で倒したぞ。」「何者だアイツ。」
「武器でも持ってたんじゃないか?」
怪我人も出たと言うのに好き放題わいわいがやがや盛り上がる観光客。
「大丈夫かマネモブ。楽にしてあげようか?」
「ううっ…」骨を折られる前に悪魔王子が参戦してくれて助かったが、スラーダの爆撃で全身炭酸と砂糖液まみれでベトベトのボロボロだ。そんな彼にも、悪魔王子は躊躇なく肩を貸した。
「こんな所で道草食ってる場合じゃない、さっさと捜査に戻るぞ。」
肩を組みながら男達はトボトボと歩いていく。その大きな背中からは人生の悲哀と、絆とでも形容すべき尊い関係が確かに表れていた。
◇この本筋と全く関係ない話は一体ー?
タフクロス書くなら絶対ゴリラ展開やってみたかったんだよね。