新運命「愚弄」の行人「マネモブ」 作:異常猿愛者
レアドロップ:突然変異の心臓
通常ドロップ:メルニチェンコが使っていたデスマスク
「皆ヨク集マッテクレタヤンケ。」
ドリームタウンにある照明も薄暗く木製の机には黒いシミが出来ている寂れたバーの一席、トダーの前には"星穹列車" "カンパニー" "ガーデン" "虚無の行人"など錚々たるメンツが集まっていた。列車とカンパニーは彼の主人であるマネモブの人脈を使い呼び寄せたが、ガーデンの
マネモブは定期的にピノコニーに訪れているので、人の集まらない店の情報はトダーの電気回路にもしっかり学習されていた。なるべく他所様に聞かれたくはない話をするには打って付けの場所だ。
「アンタ達から呼び出すなんて珍しいじゃん。」
"愚弄"派閥は基本的に単独で宇宙を練り歩き、暗躍する事が多い、そんな彼等が他者を頼るのは相当な異常事態を意味する。
「君の主人はまだ来ないのかな?」
陰鬱な空気をぶち壊すように軽口を叩いたアベンチュリンだったが、
「マ、マネモブハ…」
トダーのAIボイスは哀しみに暮れる人間のそれと同じようにつっかえつっかえになりながら語った。マネモブ達は殺人事件の真相を突き止め、その直後真犯人に殺されたと。
「「「「「「なにっ」」」」」」
宇宙有数の強き者達もその事実に驚きを隠せなかった。トパーズはトダーの心傷を抉ったアベンチュリンに怒り、彼はバツの悪そうな顔をした。
「ソンナ事ハドーデモイイヤンケ…」
どーせ話すつもりだったし気にしていないというトダー。
「けど…ギャラガーさんが真犯人だったなんて…」
開拓者のガイドという名目でデートしていたホタルが口を開いた。彼の部下に密航者だと追いかけられていたのを止めて貰った恩があるので、イマイチ信じ切れないと。
「ワシノカメラトマイクガ全テ"記録"シテルヤンケ。チャットマテ、出力スル機材ヲ…」
トダーが用意するより早く、ブラックスワンが手を翳してトダーの記録を掘り起こした。
「フフッ、"記録"も"記憶"もメモキーパーからしたら似たようなもの…どんな面白いものが見れるのか楽しみだわ。」
トダーのAIはこれからサスペンスドラマでも見るような気分でワクワクしてる占い師に良い心象は持たなかった。
「これって!」
ホタルと開拓者はギャラガーの繰り出す紫色の怪物に見覚えがあった。"夢境ホテル"で危うく殺されかけたのを思い出す。
「しかし、オーク家当主も殺されたとはな…」
事態は想像以上に重くなってると列車の保護者であるヴェルトが険しい顔をする。警官が犯人だなんてドラマじゃありがちだよね!と失言したなのかを軽く叱りながら。
「しかし、お前はよく生きていたな。」
先程まで黙って話を聞いていた黄泉が忌憚のない意見をぶつけてくる。
「ワシハ…"魂"ガ存在シナイAIロボットヤンケ。」
彼はあくまでマネモブやゴア博士の付属品であり、生命体に昇格していないという。だからこそ、怪物に魂を刈り取られる事はなかった。
「そうか…」
だが気にする事はない、他者を思いやる事ができるのは生命体だけだ。お前はもう立派な生命体の一員だと黄泉は労う。
「………。」
「どうしたのアベンチュリン。」
黙って考え込む同僚に端的な質問を述べるトパーズ。
「いやなに、僕も彼に事件捜査を進めるよう促してはいたんだけどね。」
"ロビン"の殺人事件の真相を探る事が"ファミリー"の暗部を掴む事に繋がると、"サンデー"に取り入るのに失敗した彼にとっては、マネモブの捜査こそが唯一ピノコニーの現体制を崩す突破口になると思っていたが、
「犯人は保安官で口封じの為に真相を掴んだ人々を殺した…なんて、」
この程度ではカンパニーがファミリーに介入するなど夢のまた夢だとアベンチュリンは多少落胆したようだ。トパーズはこんな時までビジネスの話はするなと再度怒る。
「ワシハ…雲隠レシタギャラガーヲ探シ出シテ敵討チシタイヤンケ。マネモブノ口座ニ入ってる金カラ幾ラデモ謝礼ハ払ウヤンケ。」
「いや、ちょっと待ってトダーちゃん。」
復讐心に囚われるトダーに、姫子は一連の話を聞いて妙な点があったと指摘する。
「口封じの為に三人を殺したのだとしたら、貴方をみすみす見逃したのはは変じゃないかしら?」
自身が犯人である事を共有されるリスクがあるのに、事件を隠蔽しようとする者としては、彼の行動は筋が通っていない。
「トダーが強いからじゃないの?ノーモーション音速パンチとかさ!」
「若しくは…自分が犯人であると知られる事は、彼にとってはそこまで重要な事ではないのかもしれないな。」
考察する面々だが、依然として答えは出ない。ギャラガーが殺害事件を起こした理由も、トダーを放置した理由もまるで分からない。
「取り敢えず、ギャラガーを探さないと話は始まらないんじゃない?」
開拓とは足を動かすもの、これ以上考えても仕方ないと皆が席を立とうとしたその時、
「ヤンケ!?」
トダーのマイクが豆鉄砲でも喰らったような声を出した。
「どうしたの?」
「…死んだ筈のマネモブカラワシノコンピュータ内ニメールガ届いたヤンケ。」
「なにっ」死人からのメールなんて怖くない?と揶揄するなのか、対して犯人からの挑発だろうかと訝しむ大人達。
「………取リ敢エズ開クヤンケ。」
鬼が出るか蛇が出るか、ギャラガーの使う”神秘”の罠かもしれないが、何か手掛かりになるかもしれないと、トダーは恐る恐るメールを開く。そこにはある動画が貼られていて…
……
私はキャプテン・マッスル
このメールを見てるアステナ星系にいる君は選ばれし者
5000万信用ポイントを掴むチャンスを与えられた強き者
単刀直入に言おう ピノコニーにいるある青年をぶちのめしてほしい
名は”サンデー” 羽頭と光輪が特徴的なオーク家の当主で"調和と秩序"の術を使う厄介な青年だ
もちろんめちゃくちゃ強い
しかもこの戦いには絶対成功させなければいけない理由がある
”サンデー”と”
儀式を止める為なら銃や刃物など凶器の使用 爆薬・毒物・罠…とにかくなんでもありだ
彼の命さえ無事なら手段は選ばない
ただし闘う時は必ず一報を入れろ
”キャプテン・マッスル”と”銀河の歌姫”が”時計屋の遺産”を"ヘリコプター"に乗せて現場へ急行するからな
さぁ腕に自信のある者は今すぐ星核が眠る決戦の地”ピノコニー大劇場”へ行け
サンデーを失神KOさせろ
急げっ 乗り遅れるな 5000万信用ポイントと時計屋の遺産を掴むんだ
"サンデー・ラッシュ"だ・。
………
「これは…」
マネモブが送って来たスパムメールは余りに荒唐無稽だったが、キャプテン・マッスルはピノコニーに蠢く暗躍と黒幕の正体、その解決方法の提示、即ち徒党を組んだ暴力を分かりやすく示していた。
「このメール、私にも送られてきているぞ。」
黄泉が自身のスマホを開き確認する。
「私の部下からも連絡が来た…どうやらマネモブ君はアステナ星系全域にこのメールを送ってるらしい…」
報告を受けたトパーズとアベンチュリンはSNSや市場の動きなどを確認するが、殆どの人間は”仮面の愚者”の演じる悪戯だろうと冷めた反応をしていた。彼が被ったデスマスクがそう勘違いさせたのだろう。いいカモフラージュである。
”ファミリー”の”五大クラン”の一角、経済や”ルーサン・コイン”などの貨幣の発行を司る”ルーサン家”はバカバカしい都市伝説、このフェイクニュースを広めた人間には訴訟を辞さないと強気な姿勢を取っているとの事。
「ククク、やっぱり彼は面白いね!取引を持ち掛けて正解だったよ。」
カンパニーは何の痛手も負わずに彼が明らかにした殺人事件の真相とファミリーの汚点を利用できる。ファミリーの敵意が全てマネモブに向いているのも好都合だ。
「しかし、ギャラガーの殺人事件の話はどこへ行ったんだ?その話には全く触れず、サンデーさんが星核に生贄を捧げる儀式を実行しようだなんて…」
話の展開が急すぎるとヴェルトは違和感を覚えた。そもそもオーク家の兄妹もマネモブ達も彼に殺されたというのに、これから大劇場に現れるなんて、かなり妙な話だ。ギャラガーの使う”神秘”の捏造なんじゃないかとも疑う。
「ソレハ多分ナイヤンケ。コンナ事スルノハ群星広シト言エドモ”マネモブ”タダ一人ヤ。」
その言葉には確かな説得力があると皆が感じた。トダーの解説によると、これは彼の仲間である”悪魔王子”がかつて主催した”ドラゴン・ラッシュ”といイベントにインスピレーションを得ているとの事。
「それより、彼が”時計屋の遺産”を持って来るって…」
開拓者の隣に居たホタルはその情報が気になったようだ。今まで何琥珀紀もそれを求めて多くの”夢追い人”がこの地に訪れたと言うのに、それを最初に掴んだのが”愚弄”派閥だなんて愚弄を超えた愚弄である。
「フフッ、読み取れる情報は多いけれど、分からない事もまだまだ多いわね。」
ブラックスワンは面白い”記憶”が残せそうだと空の”光円錐”まで用意している。
「このキャプテン・マッスルの話が全て真実だとしたら、我々に残された時間は少ないのではないか?」
暗中飛躍を看破された鳥は、真っ先に行動を起こそうとするだろうと、小難しい例えをしながら黄泉は述べた。
「これ以上考えても仕方ないし、取り合えず大劇場に行こう!」
未開への挑戦こそ”開拓”、未知を恐れて足を踏み出せないようでは”開拓者”とは呼べない。
「フッ、マネモブとは契約があるからね…僕も同行しよう。マイフレンド、君ジェイドさんと一緒にファミリーに付け入る下準備をしてくれるかな?もし良ければマネモブの裁判も手伝ってあげなよ。」
「はいはい、今回の取引はアンタが主役だからね。そもそも私は荒っぽいやり方好きじゃないし…」
折角ピノコニーに来たと言うのに、まだ暴れたりないとアベンチュリンは戦いに協力すると申し出た。トパーズは前以て戦後処理の用意をする為にここで二手に分かれる。
「私も…あるレンジャーとの約束があるんだ。」
「あら、アナタも行くのね?」
黄泉とブラックスワンも参戦を申し出た。詳しい事は言わないが、黄泉もある人間の意思を継承しここに来たという。ブラックスワンは単に彼女がお気に入りだから一緒にいたいだけらしいが。
「結局、最後は暴力になるんだよね~」
圧倒的な暴力は、悪役の目論見をチャラに出来る!!呑気な事を言いながら行きますかと三月なのかが立ち上がった。
「ここはファミリーのホームグラウンドよ。サンデーさんの有する戦闘力は未知だけど、」
「ワシノAI予測ニヨレバ、コレダケ強キ者ガ集マレバ負ケル事ハナイヤンケ。」
姫子の懸念にトダーが答えた。”虚無”の使令級や”存護”を掲げるカンパニーの最高戦力もいるのだ。寧ろ過剰とまで言える。
「殆どの一般人は信じてないけど、鼻が利く連中はもっと集まってくるかもしれないね。」
アベンチュリンは僕達以外にも大劇場に向かってくる強者がいる可能性があると言う。マネモブはちゃんと全員分に5000万信用ポイント払う気なのかと冗談を飛ばしながら。
「大劇場ニ急ゲッ戦イハコレカラヤンケッ」
「あっ、それ私が言いたかった!」
マネモブとの再会を求め、トダーは時速100㎞で走り出す。門出の言葉を言いたかったのは私だと言う開拓者の我儘を無視して。
品行方正とはまるで無縁の危険なオーラを放ちながら続々と大劇場に上陸
金鉱を掘り当てた"ゴールド・ラッシュ"ならぬサンデーの首に群がる"サンデー・ラッシュ"
泣いて詫びている弱者を救わんとするサンデーの”秩序”を冷徹非情にぶちのめす精神が"開拓"だと信じている野蛮人たち
◇次回、戦いのゴングが鳴るー!!
あーヤベッ、今回で戦闘回書こうとしたのに結局話し合いだけで終わっちゃったよ。