新運命「愚弄」の行人「マネモブ」 作:異常猿愛者
"調和セレモニー"前夜…今宵、数多の勢力による"秩序"への殺戮が行われる。
「シャアッ」「ヒャッホーッ決闘だあッ」
トダーとブートヒルは携帯した銃をサンデーの操る人形軍団に撃ち込んで鏖殺している。ファンキーで野蛮な機械人同士意外と相性がいいのかもしれない。
「ちょっと野蛮すぎるような…!?」
共に氷の矢を放ち露払いしていたなのかは、二人の野蛮人にはついて行けない。
「風当身ーッ」
トダー達に雑魚を任せ、安心して本体を狙えるマネモブは強烈な突風をサンデーにお見舞いした。
灘、幽幻、真魔と祖を同じとする”覇生流”の風を操る武術。神速で前へと押し出される掌底は周囲の空気を身に纏い敵へと押し出されていく。
しかもマネモブの扱うそれは通常の”風当身”と違い、”猿空間”から大量の大気を敵に向かって放出する事で威力を底上げしていた。
『クゥ…』
彼は機械に概念的な弱点を抱えている為に効き目は薄いが、聖歌隊の体勢を崩すには十分だった。
『小癪な、』
サンデーは”ドミニクス”の巨腕を振るい、”秩序”を”崩壊”させんと闘う者達を退けようと再び”調和”を奏でようとするが、
「音のない水底で…終わりなき深淵を迎えなさい。」
姿勢を立て直す前にブラックスワンが構成する禍々しい大量の腕が拘束して離さない。
「フッ、反撃に出るのが遅いよ。」
「凪いだ渡り川で、引導を渡そう。」
「道を違えた憐れな魂を、抹消しましょう。」
マネモブが動く事すらままならないサンデーを嘲笑すると同時に、ドミニクスの両腕を”黄泉”と”アルジェンティ”の斬撃が斬り落とした。
『………ッ』
指揮能力を失い焦燥するサンデーへ…
『ファイアフライ-Ⅳ………起動ッ』
その身を焼き尽くしながら敵へ攻撃する”完全燃焼モード”、”星核ハンター” ”SAM”の強烈な飛び膝蹴りだーッ
「星核ハンター!?」
姫子は今になって悪名高き犯罪集団が介入した理由を思案するが、
「彼等もマネモブのメールを見たのかもしれないな。敵だと厄介だが味方になるとこれ程頼もしいとは…」
ドミニクスの胴体に致命的なダメージを与えたサムを見て、俺達も負けていられないと、ヴェルトは”疑似ブラックホール”による重力攻撃、姫子はドローン兵器による空爆で追い打ちをかける。
泣きっ面に蜂という言葉がこれ程相応しい光景もないだろう。
『人々は、依然として進むべく方向が分かっていない…誰かが導かなければ…私が空に輝く唯一の”太陽”となり、彼等を導かなければ…』
敗色が濃厚となった事で、遂に分が悪い説得の文言を宣い始める。
「その星があるのが…孤独な永夜だとしても…?兄様、人の弱さとは、他人に救われるものじゃないわ。」
『ワタシ達が孤独でなかったのなら、何故道を違えたのでしょうね?』
妹との決裂を再確認した事で、サンデーの心に僅かな隙が出来る。
『もういい、対話はこれで終わりです。』
突如として、サンデーの操るドミニクスが劇場中を数多の人形を吸収し、胎児のような丸まった体制を取り始める。莫大な”虚数エネルギー”の収束を感じる。
『全ての創造は終わり、無疑の日に至るーーー”哲学の胎児”よ…万象を再構築s…』
一か八か、星核のエネルギーを暴発させる大技により、敵を一網打尽にしようと考えたのだろうが、
”幽幻真影流” ”陰陽互根の術”
『くっ、この期に及んで…』
サンデーの心の隙間を、マネモブの心眼は見逃さない。
………
「私の心に…」
魂の同調を使い土足でづかづかと精神世界に侵入してきたマネモブに怒りを露わにする。
「落ち着けサンデー!!今はただ、お前が拒んだ対話をしに来たんだ。」
おいっサンデー、こんな歌を知っているかとマネモブは問う。
誰にも明日は見えない…
だがどこかで来るべきその日を信じている
肝心な事は見えないものを見る己を信じられるかどうかだ
信じるものだけが遥か未来の己と向き合う事が出来る
それを人は宿命とも呼ぶ
日出る国…ニホン
また日は昇る………
「なにがいいたいんですか…」
「お前が”太陽”にならずとも、日は空を巡るって事やん…」
日が沈み夜が来るように、浮き沈みのない、苦痛のない人生などあり得ない。それでも必ず朝はやって来る。
マネモブの崇拝する偉大なる”愚弄”の神が残した唄だ。
「………」
サンデーの心に、マネモブの信仰する美学がストンと重りのように被さってくる。
「もうやめて、私達が目指した楽園は”秩序”だけが選択肢じゃないわ!!本当の幸せは…”虚無”や”愚弄”を前にしても屈したりはしない、それが正しい生き方なの!!」
「ロビン…」
なんと、マネモブの意図せぬ形で自ら
「あとは兄妹水入らずでな…」
流石のマネモブも空気を呼んで、サンデーの心から離れた。
………
戦いは最終局面、
『なぜ…生命体は眠るのか…』
満身創痍の中、零れ落ちるように疑問を呈するサンデー。
「…それは、」
クロックボーイと共に舞踊を披露し”調和”を整えていた開拓者が答える。
「いつの日か、夢から醒める為だよ!!」
無念に死んでいった先代の”開拓”、今を生きる”開拓”、それらが夢の中で実を結び、巨大な列車を構築し、サンデーに衝突していく。
「洞天隠月…蒼龍よ、世を濯がん!」
開拓者を守るように横で常に闘っていた”丹恒”は”飲月君”の力を解放し、水を構築、サンデーに噴射する。だが、水場のない大劇場内では、万全な火力を出せない。
「なんじゃあお前、操る為の水が欲しいのか。」「!?」
自身の心を見透かしたように、猿空間から大量の”スター・ピース・カンパニー”製のミネラルウォーターを大量に取り出したマネモブに、困惑しながらも感謝する丹恒だった。
二人の協力により、津波のような勢いの水龍が”哲学の胎児”を襲う。
「もう、皆ばっかりズルい~」
私も活躍させてと花火は仮面を使いお得意の変身能力を披露する。
『じゃーん、巨大ゴミキング”タルタロフ”だよ~』
花火はアホ程大きいゴミ箱のモンスターに変身し、サンデーに強烈なアッパーカットを喰らわせる。
「もう滅茶苦茶だな…」
流石のマネモブもゴミ箱への思い入れはないので、頭の理解が追い付かなかった。開拓者はおもちゃを目の前にした子供のように目を輝かせていたが。
元はと言えば”Dr.エドワード”の”夢境ショップ”で開拓者とホタルに見せた”タルタロフ”の夢の泡は彼女が用意したものなので、変身する為のインスピレーションがあるのは当然と言えば当然だ。
「最後に美味しいとこを持って行くのは、僕達カンパニーだよ!!」
ファミリーの裏切り者の討伐に貢献した、トドメを刺したという拍を狙ったアベンチュリンはここまで味方に”存護”のバリアを貼るサポートをするくらいで力を温存していた。
全能力を解放し、戦闘形態である”博戯の砂金石”へと変身した彼は、空中へと浮遊し大劇場上空に大量のチップを具現化してサンデーを潰す為の質量攻撃しようとした。コインはゆっくりと、夢境の重力に引っ張られて落下していく。
「チッ、やっぱカンパニーのやり口は気に食わねぇな…」
諸事情でカンパニーに敵対心を持つブートヒルは漁夫の利を狙うようなやり方に拒否感を覚えるが、
ドンッ
アベンチュリンの思惑を破るように空へ駆け上がったのはマネモブだった。
「なっ」「悪いのォ、サンデーにトドメを刺すのは俺なんだ…!!」
猿空間の空気放出の応用で猛スピードで上空に浮かんだ彼の考えは、
「ククク、考える事は同じやのォ…」
アベンチュリンの横に立った彼は猿空間から巨大な兵器を取り出し…
「喰らえっ、我が故郷の地球が産んだ最強の”存護”兵器…その乾坤一擲の一撃をッ」
マネモブが猿空間から取り出したのは主人を守る”ゲートキーパー”の名を持つ”龍””G K 龍(ゲート・キーパー・ドラゴン)”と呼ばれるメカだった。
「機械の前では人間の肉体なんて豆腐のようにもろい」
伸縮・曲折も自在の重機のアームは一撃で人間の胴体の3倍はある石柱を半壊させる。
掠めただけで人間の腹の肉が抉れる程。
「無駄な動きは一切しない。その造形も無駄なものを全て削ぎ落とした機能美に満ちている」
ワイヤー状の触手を三本出せる。
何とこれキー坊を容易く捕獲して吊り下げられる、力・速さ・精度を持つ。
しかもそのメカ触手の先からは謎の液体を噴射可能。これを顔にくらうと瞬時に意識を失ってしまう。
「人工知能(AI)の軍事利用で『戦争の有り様が根底から変わる』と言われている」
人間の感情を読み取り、敵対的脅威と認識ロックオンされれば戦闘不能になるまで執拗に攻撃する。
ロボット・アーム同士の相打ちを狙ってもストッパーをかけて敵対象のみを正確に攻撃できる。
「このレーザーには約10万Vボルトの高電圧が流れてる。触れただけで黒コゲになるぞ」
GKドラゴン同士の間にレーザーを張って、簡易的な檻を作る事ができる。
何とこのレーザーは約10万ボルトの電流が流れている猿物理学仕様であり、触れるだけで人間なら黒コゲになる。
「俺の星に…このメカに勝てた格闘家は存在しない。」
人類最強格の格闘家、”ナチュラルボーンファイター”の骨を砕き”高潔なる鷹”を空から叩き落とした。そんな最強兵器をただの落下攻撃に利用するなんて…
『…滅茶苦茶ですね。』
闘いの脚を止め、マネモブを観察していたサムは忌憚のない意見を述べる。他の面々も同意見である。
「ソレガ”愚弄”ト呼バレル所以…」
「ああ、何て”愚弄”、そして何たる”愉悦”なのォ!!」
唯一”愚者”だけが、散々スペックを語り尽くし、開発費用も馬鹿にならないであろうそれをただ敵にぶつけるだけなんて、とても面白いと恍惚としていた。
「目を覚ませ”夢の主”の息子。お前は神でも太陽でもない、ただの"人間"ですよニイッ」
ゴシャアッ マネモブの攻撃がトドメとなり、ドミニクスの顔面は完全に崩壊した。機械を間に挟む事により、彼の持つ概念的な弱さを無力化したのだ。
「あーあ、良い所は全部かっさらうんだから。」
地面に降り立ったマネモブに対して、変身解除したアベンチュリンが歩み寄って小言をぶつけるが、マネモブは5000万信用ポイントやるからそれで満足しろと返した。
「今は金の話なんかよりあれを…」
面白いものが見れるぞとマネモブは前に目をやる。過剰なまでの攻撃でドミニクスはボロ雑巾、攻撃の余波で半壊した劇場の瓦礫と共に落下していく。
「日はまた昇る…か」
空気が冷たく彼の手を切る墜落の最中、自分はどこで、何を間違えたのかと考え込むサンデー。
彼がひたすら模索し辿り着いた”哲学”、求めた”秩序”とは皆が理想とする夢を永遠に見続ける”夜”だった。
「やはり夜は…短すぎる………」
彼は敢えて見ようとしなかったのかもしれない。”明日”を求めて”日が昇る”事を信じる人々を…
「兄様…」
ハッ…彼の最愛の妹、兄が道を踏み外そうとも、その家族愛は消える事無く…
「夢から醒める時よ…」
羽が傷付き、地に落ちた鳥である自分すら追い掛けて共にいようと抱擁する。そんな妹を誇りに思い、サンデーは静かに目を瞑った。
………
美しき兄妹愛に感動しておりますッ
マネモブは漢泣きし、ブラックスワンは満足そうにその様子を”記憶”したのだった。