新運命「愚弄」の行人「マネモブ」 作:異常猿愛者
鏡流と幻朧よりスコートに感想寄せられるなんてやっぱし人気っスねカンパニーの犬は
仙舟「羅浮」長楽天 今の羅浮は大々的な異種総合格闘技イベント”演武典礼”を控え大盛況だ。
観光客は鰻登り、短命種にオムニックにピピシ人も、あらゆる種族の色が混じった虹色状態である。そんなめでたい式典を控えているというのに薄暗い影が…人目のつかない路地裏にて狐耳の怪しい野郎共がコソコソと話し合っている。
「椒丘、”雲騎軍は港を封鎖し我等を包囲するだろう”と言ったな。ならば雲騎軍が貴様の予想通りに動いているかどうか、お前自ら確認しに行け。そしてその目で見たありのままを、この俺に伝えろ。」
「…アナタの部下に行かせれば良くないですか?」
「呼雷様!お言葉ですがこれに関してはそこの家畜の言う通りで…」
「末度よ、子狼の分際で首領に指図するか?」
「め、滅相もございませぬ…今の言葉は、貴方様に忠誠を誓っているが故に、」
怪しい三人組の正体は強奪、強姦、殺人、何でもござれの暴力クソ野郎集団”歩離人”の”戦首”、”呼雷”と手下である”末度”、そして仙舟「曜青」将軍の右腕兼医師である”椒丘”だった。
よりにもよって羅浮にとって重要な行事を控えているという大事な時期に、歩離人共は”狐族”に変装する特殊な”丹”を使い内部に潜入し、かつて”鏡流”に敗北し700年もの間”幽囚獄”に投獄されていた呼雷の脱走を手引きするという暴挙に出る。知性と品性の欠片もない彼等がこのような策謀に走るのは珍しいが、”預言者”を名乗る何者かに入れ知恵されたという。
不幸にも呼雷投獄の様子を視察に来たが為に現場に居合わせてしまった椒丘は、
「今の羅浮には”鏡流”がいる、私を生かせば復讐の機会を得る。」と口車に乗せて何とか寿命が延びた所だ。最も、この狼のリーダーは敢えて彼の方便に付き合ったようにも思えるので侮れない。
「二度はないぞ末度よ。」
「…どういうつもりか教えてくれませんんか?」
部下に忠告する呼雷に、貴方の目的は一体と椒丘は問う。
「なに、狩りを始める前のちょっとした余興だが。貴様だって逃げたくて仕方ないのだろう?」
この狼は完全に狐を侮っている。逃げるつもりなど毛頭ない、彼には彼なりの目的があるが…
「いいんですか、私が逃げてしまっても。」
「フン、家畜として飼いならされた獣は自由になった途端野生の過酷さですぐ死に絶えるものだ。貴様は必ず戻って来る。」
椒丘の皮肉にも呼雷は強気な姿勢を崩さない。相当な自信があるようだが…今はタフに耐える時、椒丘は大人しく指示を聞くことにした。
………
(本当に僕を自由にさせるなんて…呼雷の目論見は一体ー?こっそり外に警告を出してみましょうか…いや待て)
周囲を見渡すとキッと睨み付けて来る狐族がチラホラいる。妙な真似をしたら取り返しのつかない事になるやも…
「あのォ…そこの御方…」「!!」
急に声を掛けられた事で思わず後ずさってしまう椒丘。話し掛けてきたのは、小柄な前傾姿勢、黒いアフロという目立った格好の”殊族の民”であった。
「な、なんでしょうか…」
「いやあ、何やら思い詰めてるような顔をしていましたから…」
善意からの気遣いで声を掛けてきたようだが…今は不味い。
「いやあ、私は親戚の子が”演武典礼”に出場するってんで遥々ここまで来たんですが…」
(すみません、貴方のご厚意には感謝しますが…)
唐突に始まる老人特有の自分語りを遮りさっさと離れる椒丘。場を離れる時、狐に化けた狼共が小男の方に顔を向けているように見えたが、勘違いであってくれと願う。
(しかし…)
呼雷の脱走など民草に知られたら大パニック不可避の異常事態だと言うのに、羅浮は至って平常運転だ。”雲騎軍”が混乱を避ける為に情報を封鎖しているのだろう。下手に反応するのは奴等の思う壺だ。騒ぎに乗じて逃げられるリスクを高める、”景元将軍”や彼の上司である”天撃将軍”こと”飛霄”の手腕は見事なものだ。
(港が封鎖された様子はないな。)
彼等が狼の誇りをかなぐり捨てて終始狐族のフリをすれば脱出するのも無理ではない状況だ。正直に伝えるか、それとも嘘を付くべきか…迷い処ではある。
(取り合えず奴等の所に戻り、反応を見つつ返答を考えよう。)
………
「よう家畜。この殊俗の民に見覚えはあるよな?」
戻って早々、ニヤニヤと下卑た笑いをしながら路地裏の奥を指差す末度。その先には、
「あ、貴方は…!」
そこに居たのは、善意から彼に声を掛けた老人だった。
「おぉ、また会いましたね!」
ここに来ればあの狐族の助けになれるとでも唆されたのか、椒丘に笑顔を向ける老人は一寸先は闇という立場に置かれている事を理解出来ていないように見える。
「妙な真似をしたらどうなるかくらい、将軍の右腕を務める貴様なら理解していると思っていたが…」
「待って下さい、彼は関係ないでしょう!」
彼は何も知らないし、私も何も言っていないと必死に弁明するが。
「貴様には港の様子を見に行けとしか言っていない筈だが…俺が他の奴と無駄話をしていいと許可したか?」
善性から自分を助けようとした老人が死ぬなどあってはならない、彼は親戚の武勇を愉しみにしていたというのに、そんなの残酷過ぎる。
「疑わしきは罰する…一生覚えておくんだな。コイツは貴様のせいで死ぬのだと。」
「…?」
呼雷は困惑する老人に近付いていき…
「ヤメローッ」
バキッ…バキッ…
椒丘の静止も虚しく、呼雷の悪魔のような抱擁で骨が押しつぶされる、吐き気を催すような音が路地に響いたが、悲鳴どころかもがく音さえ聞こえなかった。
「ここにいる全ての命は、自分が握っているとでも言いたいのですか!?」
「よく分かっているじゃないか。それで、雲騎軍は港を………なんだその顔は」
怒りに震えていた椒丘の顔が信じられぬ者でも見るような驚愕の顔に変貌した事に呼雷はすぐ違和感を覚えた。
「ふ、呼雷様………!」
彼の隣に立っていた末度は後方を見て怯えの余り情けない声を出している。そこには先程背骨を折って即死させた老人しかいない筈だが…ゆっくりと、呼雷が振り向いて目にした光景は…
バキッ…バキッ
殺した筈の小柄な老人が立ち上がり顔を手で拭っている。しかも段々と、骨格レベルで姿形が変貌していき…
「我が名は尊鷹」
◇尊鷹、鬼龍、静虎、宮沢三兄弟の”偉大なる長兄”…ここに現れる……!!
バキッバキッ展開もタフクロス書くなら外せないよねパパ。