新運命「愚弄」の行人「マネモブ」   作:異常猿愛者

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仙舟「ROUGH2」最終回だあっ
今回は箸休め回っス


久しぶりですね恩人様 オキツネ・シスタース!!

「しかしこうやって灘一族が集結するなんてな。」

一族の結束を大事にする静虎は、「羅浮」のMMAに特別招待され、こうやって飲みの場まで開ける事が酷く嬉しいようだ。

「ああ、宿泊費、飲食費タダなんてウマすぎるでっ」

 

キー坊はステーキか、それとも好物のブタマンでも食べようか迷っている。

「次の大会も近いから程々にするっス。」

自身のサポーターである鯱山の忠告に、今日くらいはチートデーって事で勘弁してくれやと返すキー坊。

 

「すみません、ラーメン一杯。」

ラーメン中毒のリカルドは相変わらずそれしか食わないようだ。

「知ってるか。ラーメンは脂質や糖質、塩分が多い傾向にあるんだぜ。」

まあ俺も頼むんだけどねと自嘲する姫次である。

 

「フン、豪勢な料理屋だな…キャビアもあるのか。」

ツンデレ偽悪おじさんの鬼龍!もマネモブに回収されて宴会に参加していた。おにぎりと一緒に頼んで具にするかと注文している。

「昔のお前はおかかのおにぎりが好物だったのになあ…」

「いつの時代の話だ尊鷹。」

バースト・ハートを克服した事により、静虎や子供達と共に吉祥寺に家を構え余生を過ごす事にした鬼龍は、一族とも他愛のない会話を出来るようまでに関係性は良好になっている。

 

「私はプロテインの牛乳割りが飲みたいが…」

「フフッ、貴方、異国の地の飲み屋にはないと思いますよ…」

天然を発揮する静虎を愛子は隣から微笑ましく見つめている。

 

「こ、これが先生がかつて学んでいた"灘・真・神影流"の一門…」

「なんかマネモブ達と同じでイカつい人ばっかりね。」

マネモブの弟子として彦卿、雲璃、そして三月なのかも席に呼ばれていた。彦卿は宮沢三兄弟や龍の血を継ぐ者達の圧に気圧されているが、雲璃は特に気にせず好物の団子を頬張っている。

 

「灘にも女子はいるんですけど?」

優希や愛子などが彼等の近くに腰を下ろし、初めましてと挨拶する。

「格闘技はよく分からないけど…開会式で三月さんが披露した舞踊は凄かったわ。」

愛子の褒め言葉にウチって凄いでしょ!と調子に乗るなのかだが、氷や幽玄の立体視野を使う演出がマネモブの入れ知恵なのは口にしなかった。

 

「そういや彦卿、お前優勝したんだってな。」

羅浮の地酒を仰ぎながら、良かったなと素直に称賛するマネモブ。

ベロブルグからやってきた義手の格闘家"ルカ"、"開拓者"がセコンドについた彼と爽やかな激闘を演じたとカンパニーの記事でも話題になっている。

「円月流の教えで強くなれたお陰ですよ…」

そう言いながら彦卿は師の隣にいたもう一人の弟子をチラリと見る。

 

「………フッ」

悪魔王子は談笑には混じらず淡々と料理に手を付けていたが、視線を向けてきた彦卿を鼻で笑った。

「「………」」

彦卿と悪魔王子の間に強い闘気がぶつかり合う。彦卿は、彼と繰り広げた一回戦の結果に納得していない。

 

「ハイハイ、酒の席で殺気を漏らさないでよ。」

「うぐっ!?」ご飯が不味くなると、雲璃が彦の背中を思い切り叩いた。

「ま、弟子同士鎬を削るのは結構な事やけどな。」

ケラケラと軽い笑いをしながらマネモブは酒を胃の中に押し流す。

 

………

 

(ここが恩人様達が来ている酒場か…?)

マネモブ達以外にも演舞典礼のお祭りムードでワイワイガヤガヤと喧騒が凄まじい居酒屋の中を、二人の見た目がそっくりな狐族の女二人組が練り歩いている。唯一の違いは尻尾の数だ。

元来容姿端麗な者の多い狐族の中でも一際美しい二人を思わず客人達の目を引く。彼女達が向かう先は…

 

「お久しぶりです恩人様。」「元気してましたか?」

遠目に彼女達の様子を伺っていた酔っ払い達は怪訝そうな顔をする。美しい二人とは対照的に野蛮、粗暴な雰囲気を醸し出している生傷や火傷跡の目立つ男に声を掛けたからだ。体格はいいがお世辞にも顔がいいとも言えない。だが事情通の者は、彼こそこの仙舟「羅浮」を救った英雄だと知っており、その追っかけか何かだろうと判断した。

 

「オキツネ・シスタース!!」「停雲…ヤンケ?」

「なんや知り合いか?お前も隅に置けないのォ」

「マネモブ、お前も強き格闘家なら、その頭脳や遺伝子を受け継げるいい女は見繕っておいた方が良いぞ。」

「うわっ…」

キー坊と鬼龍は鬱陶しいオッサンムーブをし、そんな彼等を雲璃は軽蔑するような目で見ている。

そんな下世話おじさん達は、優希ちゃんによりしっかりと平手打ちの制裁を受けた。

一人はマネモブの”塊蒐拳”という荒療治により”幻朧”の支配から抜け出したクローンだが、もう一人は…

 

「なになに、アンタ達双子だったの?」なのかは意外そうに質問している。

「フフッ、まあ遺伝子的には同じようなものかもしれませんね?」

クローンの方は余り笑わない大人しそうな雰囲気だが、もう一人の方はにこやかな笑顔を常に浮かべ、手中にある扇を揺らし手遊びをしている。

 

「私こそ、かの絶滅大君に全てを奪われた、本物の停雲ですよ。」

「「「えーっ」」」「ふうん、ああそう。」

マネモブの剣術の弟子達は本物の停雲が生きて帰って来たという事実に驚いているが、マネモブは最初からそんな事知ってるわとでも言わん態度だ。悪魔王子に関してはそもそもキョーミがないのか黙々と食事を続けている。

 

「…やれやれ、お礼も兼ねてもう一人の私と恩人様の元へ赴けば、サプライズになるかと思ったのですが。」

マネモブが思ったより平常運転なのが少し残念そうだ。

「ククク、お前等の事は”幻朧”からよく聞いてるからのォ。」

そういうマネモブの体からは鶯色の炎の塊が溢れ出す。魂を掴まれている主人に無理やり引っ張り出されたのだ。

 

『貴様…』

マネモブに無理やり叩き起こされたのに不快感を隠せない幻朧、その姿に怯えたクローンの方は本物の陰に隠れる。

「………。」

対して本物の方は、笑顔こそ崩さないが明かに怨恨や憎悪のような感情が混ざり合い、暗い影を作っている。

 

『………ッ』

「私達もご一緒させてくださいな?」

積もる話もあるでしょう、お酌は私達がしますよとマネモブの隣に座る二人。何が出来る訳でもない幻朧は、黙って見ているしかなかった。

 

………

 

「…で、私に化けていた幻朧を恩人様はどのように感じましたか?」

マネモブのおちょこに酒を注ぎながら停雲は質問する。

「そんなん知らんよ。そっちのクローンに聞いた方がええんとちゃう?」

実際、トダーと共に「羅浮」を訪れた彼は、幻朧の邪気と嘘をすぐ感じ取って臨戦態勢に入った。

化け狐ではなく狐に化けるなどという風変わりな事をしていた幻朧がどうだったかなど、忌憚のない意見を持つ程の関係性など構築していない。

 

「私は…その幻朧とやらに憑かれていた時の事はよく覚えていないのです…」

マネモブを間に挟んで本物の対極に座っていたクローンはそう答えた。だったら俺の中にいる幻朧にでも聞くかとマネモブは言うが、唯一の抵抗なのか幻朧は只管黙っている。

「もう一人の私に憑いていた邪崇が、今は恩人様の中ですか…不思議なものですね。」

 

「ねぇ、アンタ絶滅大君を体に宿すなんて大丈夫なの?」

思い出したように心配を見せるなのかだが、今のところは問題ないなとマネモブは返した。

「停雲さんはどうして羅浮に帰って来たの?」

未成年だから酒は飲めないので、仙人爽快茶を飲みながら彦卿が帰郷の理由を聞いた。

 

「フフッ、特段大した理由ではないですがね…」

幻朧の襲撃で一度全てを失った彼女は、”天才クラブ”の”ルアン・メェイ”によって蘇生され、もう一度人生を歩む機会を得た。この群星を彷徨い次の居住地を見つけようかとも思ったが…

「やはり私が腰を下ろせるのは…故郷であるこの地だけのようです。」

「アノ”マッドサイエンティスト”デモ善行積ム事アルヤンケ。」

マネモブ達は彼女の実験の後始末でかなり酷い目に遭っているので意外そうである。

 

「ウム…しかし郷土愛か…」

タフと地球をこよなく愛するマネモブは、その心に同調する部分がある。

「ええ…それに、何の縁か、姉のような、妹のような存在も出来ましたからね。」

ニコニコと本物の停雲に見つめられて、偽物は気恥ずかしそうにマネモブの陰に隠れた。

 

「でも同じクローンなのに、こんなに性格って違うものなの?クローンの停雲はなんか…大人しいよね。」

なのかが少しデリカシーのない疑問を口にしてしまう。

「…俺にもクローンの兄弟は30人いたが、皆俺とはまるで違った。」

「あっ…ごめん。」

停雲たちはあまり気にしていない様だが、思わぬ地雷を踏んで圧を発する悪魔王子になのかは謝罪する。

 

「フン、俺以外の兄弟は道具としてしか見て来ない人間達にも従順だった。唯一反骨精神を持ち、悪魔を名乗って反逆を誓ったのが俺なのさ。」

「恩人様のお仲間も、色々大変なんですねぇ。」

過去を思い出し遂熱くなってしまった悪魔王子に、酒を注ぎながら諫める停雲。元々ガイドや商人をやっているだけあって、人を落ち着かせる事にかけては中々の手腕だ。

 

「二人はこれからどうするの?」

20本目の団子を頬張りながら雲璃は問う。いくら”演武典礼”の関係者はタダで接待されるとはいえ食べ過ぎである。

「星核事件の後、右も左も分からない私に「羅浮」は手厚い支援をしてくれましたが…本物の私は、クローンである私と共に過ごそうと言ってくれています。」

無知と偽物というアイデンティティに苦しみながらも、周囲の優しさを享受し感謝しているという。悪魔王子はそんな彼女に冷たい視線を向けている。同じクローンでも、彼は長らくそんな思いやりを与えられる事はなかったからだ。

 

「そういえば、クローンに名前はあるんか?」

偽物、クローン、そんな呼び方は忍びないだろう。かといって、同じ停雲呼びではややこしい。

「名前…ですか。」

そんな事考えた事もないとクローンは言うが、名前とは自己確立には欠かせないものだとマネモブは言う。

 

「だったら、恩人様が考えてくれませんか?」

「えっ、俺が決めるんですか?」

マネモブは名付け等という責任が重い事をやるなんてキチーといった態度だが、名を決めるのに相応しいのは大恩がある貴方だけだと停雲は言う。

 

「責任重大だなマネモブ。」

遠くでリカルド共に仲良くラーメンを啜っていた同門の姫次が煽って来る。

「名前…本物が”停雲”やろ…?」

マネモブは必死こいて頭を回転させながら考え込む。どうせなら元の名前の要素を汲みつつ、愛する”タフ”に関係する名前を付けたい。

 

「そうやな、光の雲と書いて”光雲(こううん)”なんてどうや?お前は今日から光雲や。陽光が雲を照らすと綺麗に輝くんや…明日への希望を感じるいい名前やろ。幸運(こううん)とも掛かってるしなヌッ」

光雲(こううん)ですか…」「フフッ、いい名前じゃないですか。」

クローン改め光雲はマネモブが解説した名前の由来を噛み締め、停雲も中々悪くないセンスだとご満悦である。

 

「なんやマネモブ。その名前、”黒龍寺”の”雲光(うんこう)師匠”から着想を得たんか?」

「チィーッ見破られたかッ。」

黒龍寺には心身を強くする目的の男達が練り集まる…

裸足で山の中を何十キロとランニング、己の首を態と絞めてチョークを決められてもより長く意識を保てるようになる修行、5日間地面に埋められた箱の中に籠り、一切の食事と水を断ち不眠不休で意識を保ち続ける”開仏土浴の行”など、その寺でのトレーニングは”ザ・ハード”な苦行ばかりだ。それでいて食事内容は精進料理しかないので、一部の者達は山中の獣を狩って、裏でこっそり肉にありついている。

マネモブとキー坊も、この寺に一時身を置いていた事がある。

 

「武道に置いて究極の極致、闘わずして勝つ”真言波”は終ぞ覚えられんかったな…」

「ワシは師匠にお前なら10年で覚えられる言われたけどな。そんな長い時間修行してられんわってやめてしまったわ。」

同じ苦行を経験した者同士ノスタルジーに浸る二人。

「フフッ、恩人様のかつての師から名前を取るなんて…いいじゃないですか。」

その話を聞き、停雲の顔は益々綻んでいく。

 

「いやしかし、確かにそっちの光雲(こううん)はワシが助けたと言えるかもしれんが…」

よくよく考えれば、本物の停雲と俺は初対面と言う事になる。それなのに恩人呼びされるのはどこかむず痒い。

光雲を助けた時は”塊蒐拳”を撃ち込むなんて荒っぽいやり方だったというトダーの話を聞いて、周囲は若干引いていたが。

 

「あら、そんな事はありませんよ?」

実はルアン・メェイに蘇生されても尚、”壊滅”に付けられた傷の痛みが消える事はなかったというが…

「ここ「羅浮」に帰って来て、恩人様の弟子を名乗る龍医の子供に”気”の活法とやらの治療を受けたのです。」

 

『治療を受ける時は落ち着いて深呼吸じゃ。』

”心因性痛は神経系のネットワーク障害…”

”だから東洋医学の気・血・水といった心身の流れを整える事が出来れば治療効果はある”

”気・血・水が一度乱れれば自律神経系に不調を起こす”

 

『ゆっくり息を吸うんじゃ…』

地べたに正座した停雲を、龍女こと”白露”が彼女の体内を巡る”気”の乱れを観測し、かざした手で正常に戻すようコントロールする。

(げ、幻痛が消えた…)

 

あの天才クラブには肉体の修復が限界だった。西洋医学は存在を否定しているそのオカルト的な”気”というものが”壊滅”が遺した痛みを和らげるなど俄かには信じ難いが、実際に身を以って体験している為に信じざるを得ない。

 

『フフン!ワシに気の活法を授けてくれたのはマネモブと言ってな…マネモブのお陰で”魔陰の身”や”月狂い”、仙舟が抱える病魔にも希望が見え始めた所じゃ!』

『マネモブ…ですか。』

元々、自身に化けた絶滅大君を討伐した彼には会うつもりだったが、この一見インチキ療法にも思える施術を”羅浮”に齎したなど、益々興味が沸いてくる。

 

「ふうん、そういうことか。実際、白露も彦卿や悪魔王子に負けず劣らず、俺が授ける武術の習得速度は天賦の領域だな。」

弟子の成長譚を聞いてマネモブは少し嬉しそうだが、キー坊は悪魔王子以外にも灘の術を流出させてるのかと呆れていた。

「うむっ、確かに”灘神影流”は一子相伝の暗殺術…むやみやたらに広めるのは良くないが…」

”殺法すなわち活法なり”その白露という医師が多くの命を救えるのなら、私は目を瞑ろうと静虎は頷いている。

 

「鬼龍も丸くなり、マネモブも宇宙で手広く活躍している…」

良い兆候じゃないかと、おかかおにぎりを頬張りながら尊鷹はしみじみと呟くが、素直ではない鬼龍はやかましいと返した。

 

「マネモブはこれからも宇宙飛び回るんか?」

「そうっスね。」悪魔王子をチラリと見ながら答えるマネモブ。地球に帰ると、"突然変異の心臓"を狙われ指名手配されてる彼を巡ってまたゴタゴタに巻き込まれそうなので、当分は帰らないつもりだ。

 

「まあ、演武典礼の一件で悪魔王子の存在はR国やA国にもバレてるやろうし…それが賢明かもしれんな。」

「悪魔王子、パパがお前を護る為に手回ししてやろうか。」

「フン、今まで碌に子の事なんて顧みなかったんだ。」

鬼龍の皮肉を込めた提案に、是非そうしてくれと返す悪魔王子だった。

 

「熹一さんは地球に戻るんですか?」

「あぁ、鯱山(シャッチー)やリカルドとのジム経営もまだ始めたばかりやし…それに、」

キー坊の顔が少し曇る。

「龍星が見れなかった景色、地球上のあらゆる総合格闘技の大会を総なめする目標にはまだ程遠いんや。」

 

紆余曲折あり彼が灘の後継者として認めた”長岡龍星”。米国への大会を目指す飛行機の中、不幸にも墜落事故に見舞い行方不明、9割9分死んでいるとされる彼の無念…

キー坊もまた、誰かの想いを継いで闘っているのだ。マネモブも龍星が演武典礼に来なかった理由を聞いた時は、絶句したものである。

 

(熹一さん…龍星君…)

マネモブは己の権能で時空を歪ませられないかとも考えたが、それはまだ早いと考えた。

少なくとも、鯱山やリカルドと共に地球の格闘技を制すると燃える彼の目的に泥を塗りたくないと思ったからだ。龍星を生き返らせるのは、キー坊が龍星の見たかった景色に辿り着いた時であろう。

 

◇継承こそがこの物語のテーマ…次回、”永遠の地” ”オンパロス”へ…




そろそろ”オンパロス”を救いたいですね…”愚弄”の”運命”でねニッ
最近評価感想がまた伸び悩んできた…いよいよ投稿モブが恥を捨てる。
読者モブ達…勝利の評価感想を頼む…
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