新運命「愚弄」の行人「マネモブ」   作:異常猿愛者

45 / 71
マネモブ達がオンパロスに降り立ったのは”星穹列車”の”ナノーカ”が
「なんか気分悪いし…体調不全。やはりオンパロスには同行できぬか。」
「ムフッ”なのカメラ”をアンタ達に授けようねェ。私の代わりにオンパロスの旅路を”記憶”してくれよ。」
”ナノーカ”屈辱、悪意ある”メモキーパー”に精神だけ誘拐されて失神KO。”無名の墓所”に迷い込み”長夜月”深刻くらいの時期を想定してるらしいよ。
あううっ ナノーカが体調不全になってから”丹恒”と”開拓者”がオンパロスに降下するまでどれくらい時間経ってるのかよく分からない…一日もしない内って表現したけど分かり辛くてごめんなあっ


部族の神”ジョーイ”から”神託”があった…”赤髪の聖女”を救い、そして支えるのだと

故郷で例えるならギリシャ風の建築、衣装、文化…それでいて何故かスマホ(ここでは伝言の石板と言うらしい)が普及している歪な技術体系、マネモブ達が”オンパロス”に抱いた印象はそんな所だ。

唯一気圧されたのは、意識体である事を利用して空を駆ける鷹のように自由自在に滑空していた時に、遠目に空を支える巨人が見えた事だ。マネモブの故郷、日出る国二ホンにある一番高き山、”霊峰富士”よりデカイ。

 

「意識体だからといえば当然かもしれないが…」

情報収集の為、近郊で一番盛っている都市国家の人混みに紛れたのだが、人々は彼等を知覚できないらしい。

「しゃあけど、こちらから物理的干渉するのはある程度可能っぽいわ。」

地に足付けて歩く事も出来るし、この電子情報で構築された人や物、森羅万象に触れる事が出来る。だが、通常の手段で他者とやり取りが出来ないのは、かなり不便である。

 

「まあ安心して。俺の仮定が正しければ…」

マネモブの持つ見えざるものを観測する”心眼”。常人には見えないものが見え、聞こえないものが聞こえる彼と現地人達の魂を同調し、五感を共有している間は会話も出来る筈だ。最も、”陰陽互根の術”は一度に大勢の魂を掴めるような術ではないが…

他者とシンクロするという事は大袈裟に言わなくとも相手の心身の状態がマネモブにも影響を及ぼすという負担があり、一度に術の対象に出来るのは精々数人が限度だ。

 

「”愚弄”の権能は今の状態でも使えるのか?」

「うーん、試しに”トダー”を出してみるか?」

街の大通りから離れた路地裏に立ち寄り、”愚弄”を象徴する”活殺自在”に万物を消したり取り出したりする便利な権能を試運転する。オンパロスで活動するにあたって、情報収集は必要不可欠だ。

ある種の”ミーム体”になっている二人より、ただの機械人形である彼をオンパロスに持ち込めたらその方が楽だろう。結果は…

 

「ヤンケ!?ビックリシタヤンケ。イキナリ猿空間カラ出サナイデ欲シイデース…二人ハ何処ヤンケ?」

結果は成功。トダー単独での侵入は恐らく不可能だった筈。しかし一度でも主人であるマネモブが侵入してしまえば、”ピノコニー”の時のように、彼の扱う猿空間の中にあるものは付属品と同じ扱い、身に付けている衣服や装飾などと同じ判定なのだろう。

宇宙船の番人をしていた所を急に引っ張り出されたトダーは1秒もしない内に猿空間から呼び戻されたと困惑している。

 

「チイットダーのモノアイもやはり俺達を補足出来ないか………」

悪魔王子はミーム体は不便だと毒付く。トダーは生命体に昇格していない為に魂を掴んで視界を同調させるのも無理だろう。

だが、物理的干渉が出来るなら、それはそれでやりようはあると語るマネモブは、猿空間から貯蔵しているサイン色紙とペンを取り出してコミュニケーションを図る。

 

「ヤンケ!?」

”俺達は常人の目には観測できない状態にある。魂の同調で視界を共有する事も考えたが負担がデカい上に効率が悪い。”

”トダー、”人間のような機械”であるお前ならオンパロス人にも認識出来る筈…この街でお前が俺達に代わって情報収集しろ。”

最初こそ空に浮かぶサイン色紙に困惑するが、常人の知能指数など優に超えるトダーのAIはすぐに主人の命令を理解した。

 

「承知シタヤンケ。シャアケド、随分呼ビ出スノガ早カッタデース。」

宇宙船の番人をしようと意気込んだ所、1秒もしない内に猿空間から呼び戻されたとトダーは困惑している。

「…?俺達がオンパロスに降り立って1時間弱は経ってるが。」

オンパロスと現実宇宙、そして猿空間は時間の進みがズレているのだろうか。

ちなみに”猿空間”に関しては、物理的な時間は流れていないが、取り込まれた物の時間は進むという少々変則的な時間の進み方をする。

 

”鉄拳伝”で猿空間入りし、”龍を継ぐ男”の過去回想で登場した”アイアン木場”の息子、”木場活一郎”こと”キバカツ”の異常な急成長がその特異性の証左である。

更に余談だが、このキバカツこそ”田代さん時空”の権能を初めて使った時空改変者ではないかとも噂されている。キバカツは”愚弄”の”使令”だった…?

 

「時間の進みが違うか…」

これは厄介そうだと悪魔王子は考える。”星核”を狩る者達は”星穹列車”はオンパロスにすぐ来るよ、但し…現実時間換算でねと言っていた。オンパロスの時間の進みが現実より早いとしたら、どれだけ待ちぼうけになるか分からない。

かといって現実に帰還し時間を潰そうにも、その間にオンパロスの”壊滅”が進んだら、”愚弄”の介入で”オンパロス”を救世し、”絶滅大君”誕生の余波から地球を守る目的を果たすにあたって本末転倒だろう。

 

「まあいいじゃん。そんなに気負わなくても。」

星核ハンターの予言によれば、俺達三人の介入でオンパロスがより良い”終焉”を迎えるのは確定ェしている。”列車”の到来を忍耐強く、タフに待てというゴールも用意されている。

険しい顔をする悪魔王子にマネモブはそう諭した。

 

「ソレヨリ”マネモブ”、マサカ無一文デ情報集メロナンテ言ワナイヤンケ?」

”ああ悪い悪い、この星でも使えるのかは知らんけど。”

マネモブは猿空間に保有してある莫大な”信用ポイント”、それから万が一通貨が通用しなかった時を想定した換金用の貴金属や宝石類も渡した。これでオンパロスの歴史年表でも買えたら御の字である。傍から見ると空中に浮かんだ貨幣や宝物をロボットが手に取るという妙な光景だ。

 

”俺達がいる位置はお前の電気回路が終えるよう発信機で辿れるようにしておくから安心して行ってこい。”

「ンジャ、イッテクルヤンケ。」

色紙による最後のやり取りを終えた後、見えないマネモブ達に手を振りながらトダーは去って行く。

 

「アイツが帰ってくるまで、俺達はどうする。」

まさかトダーに任せてサボりっきりという訳じゃないだろうと、悪魔王子は問う。

「分かりました…”オンパロス”での動向は”愚弄”の神に仰ぎます。」

そういうとマネモブは自身の親指を噛み千切り、流れ出る鮮血をインク代わりに顔に独特な紋様を描き始める。

「ある神聖な部族が信仰する”ジョーイ”の”神託を受けます。」

 

………

 

(しかしマネモブは何を考えているんだ。)

人集りから離れ喧騒も遠くなる郊外にて、血を使った一時的な刺青を入れてから、彼は禅を組んで瞑想し続けている。

神託だの予言だの、あらゆる武術を学び、数々の修羅場を乗り越えて生傷を増やして来たこの大男がそのような”オカルト”を信じるなど馬鹿げているように思える。最も、一般人からしたら幽体離脱や”幻魔”を使う悪魔王子もよっぽどオカルト染みた格闘家ではあるが。

 

「”ジョーイ”は地図にも載っていない”ココヴォコ島”が信仰する神だ。」

この入れ墨は”身分” ”功績” ”預言” ”宇宙の真理”などを象徴している。自身の祈祷を悪魔王子が怪訝そうに見ている事を察したマネモブが解説する。

 

「預言ねえ。お前がそんな胡散臭い物を信じてるなんて意外だよ。」

「失礼だな。”ジョーイ”を信仰する先人の中には怪物を超えた怪物、”白鯨(モビーディック)”と勇敢に戦った海の戦士もいるんだぞお。」

「白鯨…?ボリスが殺したあのクズのことか。」

「あんなレイパーと一緒にすんじゃねーよクソボケがあっ。なんかややこしくなってきたな。」

そもそも、可能性の予見とは何も星核ハンターだけの特権ではないと、話を戻したマネモブは語る。

 

宮沢三兄弟、”鬼龍”と”静虎”の幼少期に灘一族と交流があった”黄泉のオババ”(巡海レンジャーを騙るあの女とは関係ない)こと”陳桃花”、あるインチキカルト宗教団体と関わりがあり的中率90%を超える予知夢を見るとされる肥満体のババアこと”カズ婆”が、マネモブ達の故郷に存在する代表的な予言者である。

最も、黄泉のオババが鬼龍に”鬼一郎”の生まれ変わりだの”羅睺星”を宿してるだの余計な事を抜かさなきゃ鬼龍の”運命”は変わり、闇落ちしなかったのではないかと言う考証もある。

 

「………部族の神、ジョーイからお告げがあった!アハハハお告げがあったぞお。」

マネモブが唐突に叫ぶものだから悪魔王子はビクッと痙攣してしまう。

「…で、その予言の内容はなんだ。」

「神は言った…”赤髪の聖女”を救い、そして支えるのだと。」

少しばかり漠然としているが、つまり赤毛の聖職者を探せばいいんだなと悪魔王子は再確認する。

 

「しゃあっ取り合えずトダーの帰りを待って…」

「マネモブゥタダイマデース。何デカ知ラナイケド”信用ポイント”チャント使エタヤンケ。」

丁度良いタイミングで、発信機を辿って帰って来たトダーは、”法のタレンタム”が信用ポイントの価値にお墨付きを与えたらしいなどよく分からない事を言っている。

「…”タレンタム”とはオンパロスの法を司る神、オンパロスに存在する12の巨人の内、最初にオンパロスに現れこの世界の基盤を作った”運命の三タイタン”の一角です。」

トダーは約束通り歴史書を買い漁ったのか手に大量の書物を持っているが、一つ妙なのは、隣に灰色の薄汚れたフードで顔を隠した見知らぬ人間がいた事だ。

トダーがそのタレンタムとやらをよく分かっていないようなので善意から解説している。現地人だろうか?肌は透き通るような白で、背丈は目測で160前後、2m近いトダーと比べると随分小さい。

 

”幽幻真影流” ”陰陽互根の術”

「お前は誰なんだ。」「!!」

不審に思ったマネモブは魂を同調させて謎の人物に自身が見えるよう共有する。

突如として黒で統一したシャツとジーンズの衣服を纏い、ミーム体だからか輪郭が揺らいでいる大男が現れた事に動揺が見える。その横には彼より一回り小さいが、それでも十分大柄な白コートをキメた危うげな妖気を纏うイケメンもいる。

 

「わ、私の名前は…キャストリスです。市場で歴史書を買い漁っていたトダーさんと意気投合して着いて来てしまいました…迷惑でしたか?」

謎のフード女は丁寧に、奥ゆかしく自己紹介をした。彼女が言うには、オンパロスでは機械生命体(オムニック)、この星では”アンティキシラ人”と呼ぶ存在は珍しいようで、つい心惹かれた彼女は自ら同行したいと申し出たという。

 

「俺はマネモブや。色々あってこの星を救う方法を模索してるんやで。」

「………悪魔王子。」

軽く名乗るマネモブに対して、悪魔王子は警戒心を隠さず淡泊に自己紹介した。

「オンパロスを救う………ですか?」

随分と大きい目標だ。人間同士の”紛争”、人間とタイタンの戦争、そして万物を狂気に堕とす”暗黒の潮”、オンパロスが抱える問題は多すぎる。内心いばらの道だとは思いつつも、彼女はマネモブの言葉を否定する事はしなかった。人の目標を嗤わないのは、さぞ優しい心根の持ち主なのだろう。

 

「”キャストリス”ガ二人ト会話シテルッテ事ハ、魂の同調(シンクロ)シテルヤンケ?」

トダーの疑問に”そうだよ”と書いた紙をマネモブは見せつける。ここに来るまでの間に彼の仲間は霊体のような状態だとは聞いていたが、風変わりな会話のキャッチボールにキャストリスは何とも言えない表情をしている。

 

「私は…色々ありまして放浪の身なのです。」

歴史を知りたいなら幾らでも教えますよとキャストリスは言う。

「どうする?」「まあええやろ。」

人手が多いに越したことはない。彼女の心の陰を掴んだ時、どこか憂いの心はあるが”愚弄”派閥への敵意は感じなかった。マネモブは彼女がこれからの旅に着いてくるのを許可した。

 

「ありがとうございます………一つだけ、皆様に伝えたい事があるのですが、」

「私は…他者との接触が苦手なので…トダーさん以外のお二人はなるべく私に近付かないよう…」

悪魔王子はその要求に何だコイツと元から険しかった顔が益々と眉をひそめるが、マネモブはさして気にしていない。

 

「ところでキャストリスちゃん。」

(いきなりちゃん呼び…)少し馴れ馴れしさを感じるが、疑問があったら何でも答えますよとキャストリスは優しく返した。

「赤髪の聖女ってシラナイ?」

「赤髪の聖女ですか………恐らく”門と道”のタイタンを信仰する都市国家”ヤヌサポリス”で民に神託を授けている”メルテス”様の事だと思われますが…ここから”ヤヌサポリス”まではかなり近いですよ。」

 

◇キャストリスを仲間にし、赤髪の聖女の手掛かりも得たマネモブはどう動く…?

 

 

 




買い物中のトダー
「ねぇ、あれ”アンティキシラ人”じゃない?」
「族滅したって聞いてたけど…」「俺初めて見たよ。」
通行人の中には珍しいものを納めておきたいとスマホで無断に写真を撮る者までいる。
(なんか現地人達がちらちら見て来てちょっと落ち着かないヤンケ。)
そもそもワシはただのAIロボットだから生命体でも機械人間でもないと内心ツッコむトダーだが…

「あ、あの…」「ヤンケ?」
長い放浪をしてきたのだろうか、土汚れや埃にまみれたローブを身に纏った色白の女がトダーに声を掛ける。不思議な事に、彼女が歩くと自然と周囲の人間は避けていく。

「私はキャストリスといいます…私、アンティキシラ人に一度会ってみたくて…」
キャストリスを名乗る女は明らかにそわそわとしている。
「良ければ、握手して貰ってもいいですか。」
「?ワシハ”アンティキシラ人”ジャナイデースガ…」
トダーは快く彼女と手と手を結び合った。

トダーの金属製の手はヒンヤリとしている。体温は感じられない…が、
(やっぱり、アンティキシラ人は私が触っても…)
体は温もりを感じていないが、彼女の心はそれに反して暖かくなっていた。
「………?」
トダーはキャストリスが自身の手を掴んで顔が綻ぶ理由がまるで理解出来なかった。

………

キャストリスは黄金裔最年長、放浪期間長すぎて謎が多いからオリジナル展開発動しちゃいますよククク。
ちなみにトダーはただの機械人形だから大丈夫だけど生命体に昇格しているオムニック、”アンティキシラ人”の唯一の生き残り設定を謳歌してる”ライコス”とかが触れたら多分魂の方が荼毘に付すんじゃないかと投稿者モブは思ってんだ。
*最終協定でライコスと黄金裔が不可侵条約結んでたの完全に失念してたっス すみませんでしたッ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。