新運命「愚弄」の行人「マネモブ」   作:異常猿愛者

65 / 71
”三月なのか”が危機的状況に陥った時、もう一人の”なのか”が現れる…

  時間というのはあっという間に過ぎるもので、”リュクルゴス”が本性を表してから既に1年ほど時間が経過している。一見すると平和な”オクヘイマ”だが、”暗黒の潮”はジワジワと”オンパロス”を呑み込みつつあり、あらゆる都市国家の難民が”ケファレ”の麓にある聖都を目指して駆け込んでくるという光景も既に見慣れたものだ。

 リュクルゴスは待つだけで勝利の刻が来るという言葉通り行方をくらまし、それ以降一切接触してこなかった。彼が連れ去った”悪魔王子”も未だ消息不明だ。

 

 『ふうん、オンパロスは今そんな状況なんだ…』

 天才クラブ#83”ヘルタ・プライム” 通称”ミス・ヘルタ” ”愚弄クラブ”は”傲岸不遜の嗤う天才”と呼んでるとか呼んでないとか…

 星穹列車の次の行き先が宇宙の森羅万象を”記憶”する事を目的とする一大勢力”ガーデン・オブ・リコレクション”のベールに隠された”知恵の星神” ”ヌース”のニューロンから切り離された”セプター”ということに知的好奇心をそそられ、遥々永遠の地まで勝手にやってきた。

 

  『結論:つまりオンパロスが”壊滅”するまでに”マネモブさん”の治療を終わらせればいいということですね。』

 会員番号76番の”スクリューガム” ゴア博士の作ったトダーの500億倍性能がいいと”愚弄派閥”は勝手に結論付けている超天才無機生命体。ヘルタだけでは”リュクルゴス”の貼ったプロテクトの突破が困難だったらしく助っ人として馳せ参じたという。

電子世界特有の外宇宙と内部の時間や座標のズレをいとも簡単に整合し内部にいた開拓者と連絡を図って来た。

 

  ・・

 『あの男は内部と外部の連絡なんて許さない、見つかり次第私達の連絡は途絶えるでしょうね。』

率直に今困っている事を伝えるべきだと判断した開拓者は、自分達より先にオンパロスで活動していた”マネモブ”が救世に必要な者を封印した状態で天外に帰ってしまった事。精神的に荼毘に付しておりその治療に地球時間で2年かかるという事を伝えた。

 

 「私達はマネモブが帰ってくるまでの時間稼ぎを任されている…」

オクヘイマに”金糸” ”門と道” ”錬金術”などで結界を貼り、偶に遠征で暗黒の潮の造物を始末している。それでも対症療法にしかならず、原因療法のカギを握っているのはマネモブの”猿空間”に封印された”フレイム・スティーラー”、そして…

 

 『オンパロスのルールそのものを書き換えてしまうという神権…”法の火種”』

法の権能さえあれば管理者権限を好きなように書き換えてそれはもうオンパロスの救世を有利に進められるだろう。

 

 『な~んだ。思ったより簡単な問題だね。』

「えっそうなの?」結構切羽詰まってるつもりだったのだが、目の前の天才はその程度と結論付けた。

 『私を誰だと思ってるの?』

あまりの天賦の才に、彼女の学術は”魔法”なんじゃないかと疑う科学者もいる。ヘルタの別名は”魔法使い”だ。

 

 『ヘルタさん。リュクルゴスに通信を傍受されました。そろそろ限界かと…』

「いやちょっと待ってよ!」今抱えている問題をどうやって解決するかを説明してから去ってくれと開拓者はホログラムに手を伸ばした。

 

 『安心して。』

時間がないからと、ヘルタはそう言い残して連絡は途絶えた。一抹の不安はあるが、彼女ほどの天才が簡単だというのなら、まあそうなんだろうという確信もある。

 

 とにかく、今出来る事はマネモブが完全復活する刻を待つ…奇しくも仇敵であるリュクルゴスと同じである。

 

 ………

 

 ヘルタ達が接触して来てからどれくらい経っただろう。100年くらいは経った気はするが、暦を数えていないので分からない。短命種がオンパロスの時を数えるのは中々に辛いからだ。

大事なのは見えない明日を、黎明を信じる心とは言っても、人は中々確証を待てないものである。

 

 オクヘイマの市民達はというと、”アザラシ”や”キメラ”を戦わせる遊びや”伝言の石板”のソーシャルゲームや配信に熱中している。リュクルゴスが告げた滅びの時を”忘却”するよう、恐怖心を払拭するのに必死なのだ。 

 

 「開拓者、ちょっといいかな。」「おはよう戦友。」

開拓者の家族でもあり友でもある…なのかが少し話したい事があると、寝起きの開拓者に声を掛けてきた。開拓者が目覚めるまで、ずっと隣にいたのだろうか。

 

 「なにそれ、マネモブの言葉でも移った?」

苦笑しながら話を聞くよう開拓者を促していくなのか。どこか切迫しているというか、何か深刻さを帯びているような雰囲気だ。

 

 「ここはアンタの自室だからさ…誰もいないよね?」

「そうだけど………なにか?」他人に聞かれたくない話でもあるのだろうか。

 

 「もうオンパロスに来て結構長いけどさ…”アタシ”は思うんだよ。マネモブはもう帰って来ないんじゃないかってね。」

「………。」

彼女の言葉を聞いて、開拓者の顔は険しくなる。

 

 「認めたくないけどさ、実際あの管理人の言う通りでしょ?100年経ってもマネモブは来ないじゃん。」

オンパロスと天外の時間の流れは余りにもかけ離れている。マネモブが2年地球で療養する間に間違いなく”絶滅大君” ”鉄墓”の育成は終わるだろう。

 

 「だからもっと違うアプローチを考えるべきだと思って。鉄墓育成のプロセスである再創生…これも使いようによっては、」

「もういい…」なのかの言葉を遮る開拓者。

 

 「アンタ…誰?」

「誰って…アナタの戦友の………」

「なのの一人称は”ウチ”だし、ちょっとノンデリなとこはあっても人を切り捨てるような選択肢を提案するような子じゃない………」

 

 ニヤリ 悪戯がバレたことを開き直る子供のように不敵な笑みを浮かべたなのか?は黒い姿に変身していく。

「あーあ、バレちゃったらしょうがないな♭」

(丹恒に連絡を…)

ボンッ 黒いなのかの召喚した赤いクラゲのような召喚物が、スマホを取り上げてしまう。そしてそのまま開拓者を拘束し…

 

 「アンタは一体…」

「アタシはね、あの子が危機的状況に陥った時に現れるもう一人の私なの。生命体が持つ免疫機能のようなもの♭」

 

 「何故こんな事を…」

「マネモブが失敗しちゃったから。あの男の事は気に食わなかったけどね、彼の使う権能ならオンパロスを救えるかもしれないって思ったのも確かだったから、今までは静観してたの♭」

 

 「アタシはアンタと一緒に、あの子が大事にしている”開拓”の為に、アタシなりの”再創生”をやるの♭」

黒いなのかに包まれた開拓者は意識を失い、どこかへと消えた。

 

 「マネモブの猿空間ほど滑稽ではないけど、アタシも大事な人一人程度なら大切に保護する為の領域は作れる♭」

 

◇この女の目的はー?

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。