新運命「愚弄」の行人「マネモブ」   作:異常猿愛者

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そろそろオンパロス編最終話なのん。


アナタはこの世界を憎み、自分の手で滅ぼしたいと思っているのではないですか?

  リュクルゴスの管理者権限により強制的にオンパロスから退場ッさせられた悪魔王子は今、自身を連れ去った張本人と相対していた。周囲はギリシャ風のオンパロスと一風変わった電子機器の溢れた世界。オンパロスの正体が超巨大スパコン”セプター”に演算された世界だと知っている彼にとっては今いるこの空間の方がある意味外観と一致しているが、1000年近く英雄達と共にひた走った世界から退去させられたというのは言うまでもなく気分が悪い。

 

 「ここは”神話の外側”…ある意味この場所こそオンパロスの本当の姿とも言える…」

「どういうつもりだリュクルゴス。」

つい先ほど議会で本性を表し、そのままここへ誘拐してきた仇敵相手に悪魔王子は戦闘態勢を取る…が

 

 「やめておいた方が懸命だと思われますよ。不可侵協定を結んでいない貴方達が火種の神権を”学習モデル”達と魂を繋げる事で引き出す”陰陽互根の術”とやらは脅威ではありましたが…」

今は他に仲間はいない、そして悪魔王子単体よりリュクルゴスの方が相当格上である。これまではウマい事自身の力を隠していたようだが、彼の体からは莫大な”気”、この宇宙では俗に言う”虚数エネルギー”が満ちている。能ある鷹は爪を隠すとでもいうのか、正体を明かす絶好のタイミングを虎視眈々と狙っていたのだろう。

 

 「私はただ、貴方と会話してみたかっただけですよ。」

「フン、気に食わない奴だ…」

圧倒的実力差と確信した勝利から来る余裕は腹立たしい。そして1000年間共に走って来た黄金裔達を”学習モデル”呼ばわりしたのも気に食わない。しかし闘って勝てる相手ではない、話を聞き出すのも悪くないかもしれないと悪魔王子は思った。”心眼”で観測する限り、”敵意”や”殺意”などは感じられない。本当に興味本位という奴なのだろう。

 

 「貴方達”愚弄派閥”はそれはもうオンパロスの歴史を滅茶苦茶に引っ掻き回しましたが…」

実験の失敗を嫌うリュクルゴスはそれを疎ましく思う反面知的好奇心がくすぐられたのも事実だという。処刑人(フレイム・スティーラー)が繰り返して来た3000万回の永劫回帰(ループ)、それらの内容は多少の差異こそあれどここまで乱れた事はなかったという。

 

 「さんぜん…!?」

「正確には”33,550,336回”奇しくも完全数なのは何かの縁でしょうかね。」

一度の永劫回帰で得られる火種は12個、つまりフレイム・スティーラーは大袈裟に言わなくともその数4億の火種を背負って闘っていたということ。一体その身にどれ程の痛みと業を背負って…

 

 「ええ、彼は黄金裔の中、唯一欠陥を持たない”完全な器” ”鉄墓”の素体となるべく産まれた…」

勘のいい悪魔王子は、フレイム・スティーラーの正体を薄々察してしまう。

 

 「あの黒い剣士の正体、まさか前の永劫回帰の………」

鉄墓誕生を先送りにする為、自他を犠牲にしただひたすら走って来た簒奪者の正体は神託では”救世主”となる筈の”ファイノン”だった。

 

 「ええ、その通りです。しかし今の私がキョーミをそそられるのは……」

また一つ、オンパロスの種明かしを終えたリュクルゴスが関心を抱いているのは”悪魔王子”だという。

 

 「俺がなんだってんだよ。」

「私は管理者ですから、オンパロスで起きている森羅万象を把握できるのですよ。」

彼は見たという、悪魔王子がフレイム・スティーラーと魂を同調させ、4億の火種の力を引き出しながらしのぎを削り合った所を。

 

 「部分的とはいえ、幾億の火種を抱える苦痛に耐えるその耐久性(タフ)さ…」

鉄墓の素体になるのはファイノンだが、”地獄の苦しみに慣れている”悪魔王子もその候補に数えられるという。

 

 「俺に鉄墓になれだぁ?」

望んでそんなバケモノになる馬鹿が何処にいると悪魔王子は断固拒否の姿勢を取る。

「本当にそうでしょうか?」

しかしリュクルゴスには悪魔王子がこの提案に乗るかもしれないという考証材料を掴んでいた。

 

 「短命種の人の身でありながら常軌を逸した痛みへの耐性を持つ…相当な地獄を経験してきたのでしょう?」

「………。」悪魔王子は否定しない、兵器として生み出され、キツイ任務に従軍し、用が無くなったら兄弟(クローン)と共に殺処分され、その屍の中で息を吹き返したのだ。

 

 「アナタはこの世界を憎み、自分の手で滅ぼしたいと思っていますか?」

「………ああ、そう思ってた時期もあったな。」

己の出自を呪い、人類を呪い、いたずらに暴悪を振りかざし周囲を翻弄してきた、正しく悪魔のように生きていた時もあった。

 

 「フフッやはりあなたの中には素晴らしい”憎悪”、”壊滅”の素養がある。」

世界を憎む者に世界を滅ぼす力を与える。これほど素晴らしい”祝福”はないだろうとリュクルゴスはまくしたてる。ファイノンが存在する以上、悪魔王子を無理に引き込む必要はない。

好奇心反面、1000年に渡って変数として警戒させた心労への当て付け反面といった所だ。

 

 「フッ、昔の俺ならともかく…これでも愛情深いタイプでね。」

悪魔王子は既に憎しみなど克服している。彼にはもう大事な師、仲間、あるいは友がいるのだから。

「交渉は決裂ですか…誠に残念です。オクヘイマに戻りたいのならどうぞごじ………」

優位に立っているおごりからか、ミーム体を活かして電子世界に帰りたいのなら好きにしろと言い掛けたリュクルゴスの言葉が不自然に止まった。悪魔王子はその好機を見逃さない。

 

 (今だ…)

悪魔王子は霊体を活かして自由自在に、鷹のように空を滑空して”神話の外側”から離れ、皆の元へ急ぐ。リュクルゴスと数分話していた間に、オクヘイマはどうなったか…”神話の外側”と”オンパロスの内側”とで時間の進みが違ったらどうする?手遅れになってないかなど不安に駆られ急ぐ彼が一番初めに目にしたものは…

 

 (どういうことだ………)

”無” ”虚無” オンパロスに広がるのは暗黒空間そのもの、何も存在しない。全ては”暗黒の潮”に呑まれてしまったのか?間に合わなかったのか?

 

「マネモブ!トダー!」

悪魔王子が真っ先に叫んだ名前はかけがえのない仲間達であった。次いで黄金裔達の名前を叫び始める。焦燥に駆られる声に応答は帰って来るのか………

 

 「久しぶりやん。」「オーッ悪魔王子良カッタデース。」

「マネモブ!?」「はーっ完全復活だッ」

”極限究極の護身法” ”幻朧”の後遺症で廃人となり地球で2年の療養をしていた筈の彼が今、目の前にいる。俄かには信じ難いが………

 

 そして彼の周囲を見ると、早々たるメンツが練り集まっていた。スマホで世界情勢のチェックは欠かさない悪魔王子は彼等の所属や名を知っている。

”天才クラブ”所属の”ヘルタ・プライム”に”スクリューガム”、”仙舟同盟” ”六御”が一人、”羅浮”の司法を司る”太卜司”のトップ”符玄”、”トリスビアス”を始めとした黄金裔達、敵である”リュクルゴス”までいる。その中でも一際、悪魔王子の眼を引いたのは………

 

 「フレイム・スティーラー!!」

オンパロスの為に闘っていたと判明した彼だが、火種を巡って殺し合った彼が何故集合の中にいるのかと思わず拳を構えてしますが………

 

 「落ち着いて下さい悪魔王子様………」

フレイム・スティーラーはもう敵ではありませんよと、トリスビアスが説明した。

「どういうことだ………」

オンパロスに暗黒空間が広がっているのは何故か、フレイム・スティーラーは何故味方面しているのか、分からない事ばかりだ。てっきりマネモブが帰ってきたら、猿空間に封印されていたフレイム・スティーラーを解き放ち、彼が奪った”法の火種”を取り返す為に再び一戦交えることになるだろうと念頭に置いていたのだが…

 

「全く…銀河を救う為、時間が無かったとはいえ、そこの大男に強引にここまで連れ去られたわ。」

太卜司の符玄は腕を組み、恨めしそうにマネモブをキッと睨んでいるが、マネモブはそんなん知らんよとでも言わんばかりに無視した。

 

 「オンパロスはどうなった?この何もない”虚無”空間、暗黒の潮に呑まれたのか!?」

鬼気迫る表情でマネモブに詰め寄る悪魔王子だが…

「ククク、お前が囚われている間に”オンパロス救世”はもう成されましたよ。」

「なにっ!?」

傲岸不遜に嗤うマネモブに戸惑いを隠せない悪魔王子。しかし彼の言葉に偽りがないのは”心眼”で分かる。それにオンパロスに来る以前のように活気が戻り、他者を言葉でおちょくり”愚弄”するような性格が戻っている。オンパロスで数多の争いや血を見てきた彼の精神はかなり擦り減っていた筈だが…

 

 「人間サマを壊滅させようとする機械なんて…”愚弄”で解体ですよニッ」

今こそ語ろう、”愚弄の運命”が成したオンパロス救世を!!

 

◇その救世とは一体ー?

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