新運命「愚弄」の行人「マネモブ」   作:異常猿愛者

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仙舟「ROUGH」FINAL MATCH また日は昇る

「ここが停雲とやらが入院している病院か…?」「ヒェーッ、ヤッパシ羅浮ノ建物ハ一々スケールガデカイヤンケ。」

流石はカンパニーやファミリーと並び宇宙三大と数えられる巨大組織である。それでも羅浮は現存する6つの自治体の一つだというのだから恐ろしい。

 

「病室まで同行するのが将軍の指示だから…それを見届けたらお兄さん達は晴れて恩赦だよ。」

「よしっ停雲に活法を撃ち込んでやるぜッ。」マネモブは彼女にかけた五年で死ぬ病を治しに来た。

 

………

 

「来たか…占い通りの時刻ね。」「あれっ太卜様じゃないですか。」

「ココハ病院ヤンケ。部外者ハ去ルヤンケ。」

「部外者じゃないわッそこのマネモブとやらが傷付けた天舶司の停雲…彼女は絶滅大君に操られていたから、私の占いで何か有益な情報が得られないかと思ったの。」しかし、無駄骨だったようで。唯一気になったのは、

 

「彼女は…本物の停雲じゃないらしい。」「どういうことや?」

「本物はレギオンに襲撃された時に致命的な傷を負って…成り代わる為の器として使い物にならないと彼女の遺伝子から新しい肉体を作り出したらしい…」有り体に言えば、クローンみたいなものだろう。本物は生死不明、恐らく死んでいると。

 

「アメリカガMノ代行デ作ッタガルシアミタイナモンヤンケ?」

「ガルシアと同じか…なんか生命を弄んでる感じがしてムカついてきますね。」彼等の知り合いにもクローンがいるらしい。その口振りから察するに、碌な人生を歩んでないのだろう。

 

「それで、本物じゃない停雲さんの姿をした何者かを羅浮はどうするつもりなの?」彦卿が心配そうな顔をしながら答える。確かに、彼女の人権や戸籍をどう扱うかは問題である。

 

「私の一存では決められない、だが彼女はレギオンに利用された被害者。恐らく羅浮の社会保障で手厚く保護していく…と思う。」ふー、良かったと皆安堵する。

 

「おい、無駄話はそれくらいにして!早く治してくれ!凄い熱なんじゃ!」彼女を看護していた者だろうか?治療を催促する声が聞こえる。だが姿はどこにも見当たらない。

「ここじゃここ!」マネモブの身に付けた黒いジーパンが下から引っ張られる。見下ろすと、龍の角と尾を生やした子供がいた。大柄なマネモブの視界には見えなかったのである。

 

「なんじゃあこの子供は。」「ムッ、確かにワシは子供じゃが…れっきとした医者じゃぞ!」仙舟は子供も労働に従事させるのか?マネモブは訝しんだ。

「ワシが子供だとか小さいとかそんな事どうでもいいじゃろ!早くあの狐族の娘を何とかしてくれ!」龍の姿をした医者は自身の西洋医学や薬では全く効果が無かったので藁にも縋る思いでマネモブに頼み込んでいる。

 

「しょうがねえなぁ…」マネモブは停雲のクローンを俺の目の前に立たせろと指示を出す。

「…?病人は動かさない方が良いんじゃ?」子供医師は訝しむが…

「気の流れを元に戻すには必要なんだァ。オラッさっさと立たせろよ。」

「安心して、彼に治療の意思があるのは占いで見えてるから。」符玄のフォローで医療従事者達は困惑しながらもクローンを起こす。

 

 

「ハァッハァッ…貴方は…?」高熱で記憶も朧気な女は息も絶え絶えになりながらマネモブを不思議そうに見据える。

「まあ安心して、今日はあんさんを鬼から解放しに来たんや。ちょっと荒療治になるがのォ。」マネモブは拳を構える。

 

「えっ」

"灘神影流" "塊蒐拳"なんとマネモブは最初と同じ技を停雲に放った。凄まじい威力で身に纏っていた病衣の背後が破れる。

「お兄さん…!」「な、何をするんですか!」終始見ていた彦卿は困惑、看護師は激昂し雲騎軍に通報しようとする。またある者は彼女を心配して駆け寄った。唯一未来を知っている符玄だけは静観する。

 

「ううっ」マネモブに二度目の拳を撃たれたクローンは膝をつくが…

「だ、大丈夫か?…これは、」龍のガキが彼女に近付くと、顕になった背中にピンク色の円形模様が浮かび上がっている。

 

「それこそが塊蒐拳治癒の証…気の流れを戻す為にワシの気を流し込んで活法のツボを刺激したんや。」既に治る兆候は見えている筈だとマネモブは言う。

「不思議ですね…死に向かっていくだけだと思っていた自分が…」心なしかクローンも穏やかな顔になっている。

 

「これで晴れて自由の身やろ?ほな帰るでェ。」行くぞトダーとマネモブは踵を返すが、

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」子供医師がマネモブを呼び止めた。

 

「なんやねん、」心臓治療の見込みもなくなった同盟なんかに用はねーよと突き放す態度をとるマネモブだが、

「そちの使う気の施術とやら…それを学べばワシの医術の幅が広がるかもしれん!」今回、自身が収めた西洋医学や薬学では彼女の治療は全くの不可能であった。今後同じような患者が運ばれた時に役立つかもと、

 

「つまり、灘・真・神影流の門下生になりたいということですかな?」

「オー、良カッタヤンケ。万年閑古鳥ガ鳴イテル道場ニ新入生ヤンケ。」うるせーとマネモブはトダーに怒る。

 

「そのナダ?とかいうのを学べばワシも気の治療が出来るのか…?」

「はい、なれますよ!ニコニコ」「メッチャキツクテスグ辞メルデ有名ヤカラ覚悟シトイタ方ガ良イヤンケ。」

トダーは忠告する。

 

「別に、キツくて忙しいのは普段からじゃから問題だと思っとらんわ。人の命を預かるというのはそういうことじゃ。」

「よしっ、んじゃあ灘を学びたいと思ったらいつでもここに連絡してくれ。なんぼでも付き合ったる。」連絡先を交換する二人。

 

「ウム、言い忘れてたが…ワシの名は白露!羅浮で医療を司る丹鼎司の医者じゃ!よろしくなマネモブ。」

「いいなあ…僕もお兄さんの使う円月流とかいうのを学びたいんだけど。」彦卿が白露を羨ましがる。するとマネモブは別にかまへんよと彼とも連絡先を交換した。ここに羅浮と愚弄派閥に技術交流が生まれたのだ。

 

「ほな今度こそ帰らせてもらうでェ。」マネモブは今度こそ帰路に着いた。

「マネモブさん…」乱暴ではあったが、絶滅大君に操られていた自分を解放してくれた恩人…彼の大きな背中が消えるのを、名もなき狐は見届けていた。

 

………

 

しかし、羅浮では何の収穫も無かったと気分が落ちるマネモブであった。最初のようにこっそり持ち帰る事も考えたが、雲騎軍や白露とのコネクションが出来た以上、万に一つでもその関係に傷が入りおじゃんになるのは不味いかもと考えた。技術の進んだ羅浮には監視カメラが至る所にある。

 

「ハーイ、マネモブ。」元気が無さそうね、慰めてあげようか?と妖艶な声をした女が声を掛ける。

「カフカ…まだ羅浮にいたんか。」星核を持ち込んだ冤罪は晴れて指名手配は解かれたと聞いていたが…今は話しかけんでくれや、気が滅入るんじゃとマネモブは無視しようとする。

「そうもいかないの。脚本の修正の話があったでしょう?」星核ハンターがマネモブに声を掛ける理由などそれしかない。

 

「おいおい冗談やないで。また時空改変を俺に使えと?」傷心中に負担が大きい術なんか使用したくないとゴネる。

「安心して、今回の修正は口頭での指示だけで済みそうなの。」「どういうことや?」

 

「貴方…同盟に借りを作ったのは自覚してる?」その証として結盟玉兆を貰っただろうと。

「そうですけど…何か?」「それは雲騎軍をいつどこにいても一度だけなら呼び出せるものだけど…」今後、列車が致命的なピンチが訪れた際に使って欲しい、それがカフカの頼みであった。

 

「随分簡単ナ話ヤンケ。」マネモブもこんな道具にキョーミないからどうでも良いですよと答える。

「ふふっ、ありがとう。その代わりと言っては何だけど…」「…!」カフカは豊穣のサンプルを欲しているマネモブに貴重な情報を渡す。

 

「天才クラブ#81「ルアン・メェイ」…生体科学ノ金字塔ヤンケ。」トダーは彼女の情報を検索する。

「近い内に宇宙ステーションに彼女が訪れる。その時接触すれば…」どうやら未来への展望が見えて来たらしい。

 

「おっしゃあああットダー、今すぐステーションへ急げッ」マネモブはカフカに感謝も別れも告げずに走り出した。

「エリオ、これで良いのよね?」

 

仙舟「ROUGH」完

 




星穹列車、星核ハンター、マネモブ…この宇宙にひしめく数多な勢力。
彼らがこれから歩んで行く道は遥か遠く険しいもの…だからこそ命懸けで目指す意義がある。
誰にも明日は見えない…だがどこかで来るべきその日を信じている。肝心な事は見えないものを見る己を信じられるかどうかだ。
信じるものだけが遥か未来の己と向き合う事が出来る。それを人は宿命とも呼ぶ。
マネモブの出身、日出る国…ニホン。
また日は昇る………TOUGH最終巻のポエムより。
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