新運命「愚弄」の行人「マネモブ」   作:異常猿愛者

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マッドサイエンティスト「ルアン・メェイ」
灘神影流解毒法 ”総身退毒印”


(うーん、確かこの辺なんだけどな。)列車の英雄こと開拓者は久々に宇宙ステーションに訪れていた。傲岸不遜の天才ヘルタから貴方に会いたがっている者がいると連絡を受けたからだ。つい先日、羅浮にて星核ハンターの捕縛やカルト教団薬王秘伝の討伐を手伝い少々疲れていたので不服ではあったが。

 

「ルアン・メェイ…確かな情報筋から聞いています。生体科学の金字塔である貴方なら長命種の肉体データを必ず持っていると。」

 

「はあ…」「マネモブハバースト・ハートヲ患ッテイルヤンケ。頼ムカラ研究資料クレヤンケ。」

 

「あれは…」またもや見覚えのある二人組に遭遇した。羅浮で暗躍していた絶滅大君を早期に無力化した英雄ことマネモブといつも隣にいるトダーだ。この二人は列車の行く所にいつもいる気がする。不思議と縁があるようだ。会話内容から察するに、恐らく話し相手の女性が私に会いたいとアポを取ったルアンだろう。

 

「コラコラ、ナンパは辞めなさい。彼女、嫌がってるじゃないか。」ルアンが困っているように見えたので間に入り嗜める。

 

「開拓者ヤンケ。別ニワシ等ナンパナンテ…」

 

「貴方が開拓者…会いたかったですよ。」ルアンはマネモブ達を無視して開拓者に近付き愛おしそうに彼女の頬を撫でる。

 

「なんだよこのクソ展開!!」俺達の頼みには塩対応だったのに開拓者にはメロついてるようにしか見えないマネモブは苛立った。

 

「元気出スヤンケ。」トダーはマネモブの肩をポンポンして慰めるが、心臓病の治療が掛かっているのだ。落ち着いてなどいられない。

 

「お近付きの印にこれを…」ルアンは焼き菓子のようなものを取り出し開拓者に渡した。

 

「えっいいんですか?あざーす」開拓者は遠慮なく口に放り込んだ。梅と砂糖を練り込んであり甘味と酸味が同時に味わえて美味しい。

 

ニヤリ 開拓者が菓子を飲み込んだのを確認した途端、ルアンが不敵に嗤ったような気がした。

 

「マネモブさん…でしたか?今日は貴方達に用はないですから…お引き取り願えますか?」一部始終を見ていたマネモブとトダーにはさっさと去れっと冷たい対応である。

 

「う、嘘やろ…こんな事が…こんな事が許されて良いのか!?」

 

「マネモブ…マタ今度出直ソウヤンケ。」

 

「カフカの奴…ルアンと接触すれば望みの物が手に入るんじゃなかったんスか?」明らかに不機嫌になりながら、二人は行ってしまった。

 

 

(カフカ?マネモブも星核ハンターの知り合いなのか?)開拓者は彼の事が少し気になった。

 

「さて…邪魔者も消えた事ですし…」マネモブを追っ払った事で漸く自分の目論見を進められると悪い笑顔をするルアン。

 

◇この女の目的はー?

 

………

 

「嫌な事があった時に食べるラーメンは麻薬ですね…もうハマっちゃって。リカルドにも教えてやろうかなあ。」ルアンに断られて意気消沈のマネモブは気分転換の為にステーションの食堂でラーメンを食していた。

 

「カーッ中々良イオイルヤンケ。」トダーは自分の手で関節部位に油を差し、メンテナンスをしていた。

 

「マネモブとトダーじゃないか。久しぶりだな。」

 

「出ましたね、防衛課リーダーのアーランさん。今日も闘気が練り上げられていますね。」同じく食事をしに来たアーランがマネモブ達の席に着いた。

 

「この前レギオンを退けるのに協力してくれた事、本当に感謝してる。」

 

「マネモブハ全然役ニ立タナカッタヤンケ。」「嫌味な事抜かすなっ」トダーのストレートな罵倒にキレるマネモブ。

 

「ハハッ、聞いたぞマネモブ。仙舟では絶滅大君の一角を討伐したそうじゃないか。同盟はレギオンと正式に敵対する事を決めたようだし…一躍有名人じゃないか。」レギオン相手にはボロ雑巾にされていた男が倒したというのはにわかには信じ難いが、素直に賞賛するアーランである。

 

「ワシはメッチャ強いよ。」内心では彼が封印したその絶滅大君とやらはとても弱かったので何故ここまで称えられるのか疑問に思う部分もある。

 

「今日は何しに来たんだ?前回と違って正式なアポは取ったんだろうな?」防衛課スタッフとしてレギオン襲撃時の火事場泥棒のような真似はもう許さないぞと釘を刺すアーラン。

 

「今回ハ事前ニ連絡入レタヤンケ。ルアン・メェイニ会イニ来タヤンケ。」トダーが答える。

 

「ルアン・メェイか…今日は確か模擬宇宙の開発メンバーで集まると所長が言っていたな。人付き合いは好まないタイプだと聞いているが。」ちなみに模擬宇宙とは、この宇宙で最強の存在である”星神”達の行動原理を探求する為に、ヘルタが莫大な費用を掛けて作ったこの宇宙のシュミレーション装置らしい。

 

「そうそう、ワシ等も用はないって追い返されたんや…開拓者にはデレデレだったのになあ。」

 

「………開拓者か。」アーランが何か思い当たる節でもあるかのように考え込む。

 

「何やその含みのある反応は。」マネモブはこういう機微に目ざとい。

 

「いや、そんな大したことじゃないんだが…」彼はついさっき開拓者が一人でいる所を見かけたという。

 

「ただ…今日の開拓者は一段と変だったな。」マネモブはあまり関わりがないのでよく知らないが、開拓者はマネモブに負けず劣らず結構な変わり者らしい。しかし今日は一段とそれが酷かったという。

 

「変ッテナンダ?」「普段からふざけた言動が目立つ奴ではあるんだがな…」ついさっき会った時は話もまともに成り立たなかったという。いくらゴミ箱漁りが趣味の異常性愛者でも今まで会話のキャッチボールが出来ないという事はなかった。

 

「何か匂うのォ。」

 

「ルアント別レタ途端ニ様子ガオカシクナルナンテ怪シイヤンケ。」ルアンは開拓者に何か手を加えたのでは?という疑惑。

 

遥々宇宙ステーションに来たというのにラーメン食って帰るだけなんて到底納得できない。どの道他に手掛かりもないのだ。

 

「よしっ、トダー。昼飯食ったら開拓者を探しに行くぞ。」「ヤンケ。」

 

………

 

宇宙ステーション閉鎖部分、薄暗くて気味の悪い場所だ。スタッフらしき者は一人としていない。そんな閑散とした場所を開拓者は一人で練り歩いていた。

 

(ううっ…ルアンが私に盛った”反自白剤”…もう散々だよ。)リスクを反対から読むとクスリ…開拓者が盛られたクスリは口にしようとした事と全く違う事を喋ってしまう毒物だった。そのせいでここに来るまで、周りのスタッフからは白い目で見られた。

 

「よう、開拓者。」「うあああああああ(PC書き文字)」ただでさえお化け屋敷のような雰囲気の場所だ。後ろから声を掛けられて開拓者は悲鳴を上げた。

 

「落チ着クヤンケ。マネモブニトダーヤンケ。」トダーがビクビクしてる開拓者を宥める。

 

「ああ、貴方達は羅浮の総合格闘技”演武典礼”、MMA世界チャンピョン!」

 

「…?確かに故郷のハイパー・バトルでは一度だけ優勝してバトルキングの称号を得た事もあるけど。」羅浮のMMAなんてワシは知らんでというマネモブ。

 

「コリャ重症ヤンケ。」アーランに聞いた通り、開拓者には異常が見受けられる。

 

「マネモブ、開拓者ハ今ドウイウ状態ヤンケ?」

 

「ウム…ワシの”目付け”によると、脳機能に異常が見受けられる。大方毒でも盛られたんだろう。」何で見ただけでそんな事分かるの…?と開拓者は訝しんだ。

 

「開拓者…お前今困ってるやろ?」言葉に出すと話がややこしくなる為無言で頷く。

 

「ちょっと待ってね、今毒を盛られた時に便利な術を教えてあげるから。」そういうと彼は両手を握り合わせ、人差し指と中指を立て頭上に持って行くおかしなポーズを披露する。

 

「これは循環器を自在に操る灘神影流の解毒法の一つ…”総身退毒印”だ。」彼の修めた灘神影流という武術は呪術から毒物にまで精通しているという。気を練り上げながらこの印を結ぶ事で体外に毒を輩出できるとの事。

 

「まあ開拓者は初めてだからね!一人では上手く出来ないだろうさ。だからワシが代わりに練った気を送り込んで毒を除去したる。」

 

(オカルト染みてイマイチ信用できないけど…モノは試しだな。)マネモブの言う通りの姿勢を取るが、その時

 

「しゃあっ」「はうっ…」マネモブが手に溜め込んだ”気”…エネルギーの様な物を開拓者の腹に撃ち込んだ。

 

「うげぇぇぇ…」開拓者はその衝撃に思わず吐瀉してしまう。

 

「バッチイヤンケ。」「ハァッハァッ…いきなり何するの!」開拓者はマネモブに掴みかかるがここでハッとする。

 

「しっかり毒物を外に出せたやん…」彼の言うとおりである。頭の中で思い浮かべた言葉をしっかり口に出せた。

 

「………もうちょっと優しく出来なかったの?」

 

「総身退毒は内臓か血管から毒物を出す術なんだ…すまない。」血管から出すという事は血を流すという事か?そっちの方だったらと思うと開拓者はゾッとする。

 

「それより開拓者、お前はこんなとこで何しとるんや。」マネモブは本題に入る。ルアンと接触した者からなら彼女から長命種の研究データを貰う突破口が見つかるかもしれない。

 

「それはこっちも聞きたいんだけど…」

 

「ワシ等ハルアンの研究データガ欲シイダケヤンケ。ルアント別レテカラオ前ノ様子ガオカシクナッタト聞イタヤンケ。怪シイシ色々聞イタラ彼女ノ弱ミデモ握レルト考エタヤンケ。」有体に言うトダーにこの二人は手段を選ばないタイプだとちょっと引いてしまう。

 

「私はルアン・メェイの頼みで…何か実験の後始末をして欲しいとか。天才クラブのミーティングで忙しいから代わりにお願いって。」ただその実験の概要まではまだ分からず、これからラボに向かい調べようとしていたと。

 

「ビンゴヤンケ。不祥事ノ匂イガスルヤンケ。」トダーのモノアイが怪しく光る。証拠品は全部収めてやると。

 

「よしっ、開拓者、俺達にも協力させてくれよ。何ならあんさんはこのまま帰って、俺達が引き継いでもいいですよ。」

 

「別にィ…どうでもいいけど。」彼等は己の目論見の為に、ルアンを利用してやろうという。

開拓者も、自分に毒を盛って使い走りにしようとした彼女に対し、多少は憤りがある。三人で彼女に痛い目を見せてやろうと、この一時だけ協力する事にした。

 

◇次回、ルアン・メェイは一体何の為にこんな事をー?

 

 




総身退毒印って便利だよねパパ。
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