クロノス・ディセンターズ『幻の拡張パックで世界を修復する者たち』   作:gp真白

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チトセの法則 - エピソードVI:論理と決断の境界線

 

1. 管理者の止まらない解析

夜遅く、カイトの自宅の静かな書斎。カイトは古い革張りの椅子に座り、穏やかに紅茶を飲んでいた。目の前では、ルークCEOがホログラムを操作し、絶えずデータを更新している。

 

ルークの顔には、世界の調和を管理していた時よりも遥かに深刻な疲労が浮かんでいた。

 

「カイトさん。解析が完了しません。社会的な論理、倫理規定の論理、感情的な幸福度の持続性—この三つの論理を最適解へと収束させる方法が存在しないのです」

 

ルークは、自分の目の前の空間に、チトセとの関係に関する論理的な失敗確率を示すグラフを表示させた。

 

「論理的に見て、この関係性は社会的調和を乱し、あなたの娘の幸福度を論理的な危険に晒す可能性があります。私は自己存在の論理的な感謝を愛という非論理的な感情に変換している。この論理的な矛盾を解消しない限り…」

 

2. 決断という究極の法則

カイトは、紅茶のカップを静かに置いた。彼のLv.1の穏やかな視線は、ルークの複雑なホログラムではなく、ルークの目に向けられていた。

 

「ルーク。そろそろ決めておけ」

 

カイトの低い声が、書斎の空気を引き締めた。

 

「**決定(Will)を結論(Conclusion)と混同するな。お前は『愛の法則』を、『論理的な分析の果てに到達する最終結論』**だと思っている。だから、永遠に答えが出ない」

 

ルークは、解析作業を中断し、顔を上げた。

 

「カイトさん…しかし、論理的な結論がなければ、行動の必然性が…」

 

「必然性など、愛の法則には最初から存在しない」カイトは首を振った。「お前は、知識の総和を持っていた私と同じ過ちを繰り返している。世界を全て解析すれば真理にたどり着けると思った私の過去と、全ての論理を尽くせば愛を定義できると思っている現在のお前は、本質的に同じ孤独を抱えている」

 

3. Lv.1のシンプルな論理

カイトは立ち上がり、ルークの隣に立った。彼の瞳には、知識はなくても愛の法則を知る者の絶対的な強さがあった。

 

「お前は、チトセの**『不完全さへの愛』という究極の論理を受け入れた**。ならば、お前自身の不完全さも受け入れろ。論理的な欠陥のある関係を、論理的な理由なく、『私は選ぶ』と決定しろ」

 

カイトは、ルークの肩に手を置いた。

 

「知識は、結論を導き出すための道具だ。しかし、愛は、結論ではない。愛とは、いかなる論理的欠陥があろうとも、その道を選ぶという、お前の揺るぎない決断そのものだ」

 

「答えはもう出ている。お前は、チトセを愛している。ならば、お前の幸福度を最大化するという、ただ一つの論理に従え。そして、全ての論理的な障害は、お前自身が管理者として破壊しろ」

 

4. 論理の停止と決断の開始

ルークのホログラムが一瞬にして消滅した。彼の顔から、長年貼り付いていた管理者としての論理の仮面が剥がれ落ちた。

 

「...**決断(Will)**こそが、愛の法則の最終的な証明...」

 

ルークは、ようやく論理的な分析の迷路から脱出し、Lv.1の人間として最もシンプルで最も難しい真実にたどり着いた。

 

ルークは立ち上がり、深く頭を下げた。彼の目には、解析不能な決意の光が宿っていた。

 

「カイトさん。論理的なご指導、感謝します。私は、チトセさんの幸福のために、論理的な全ての障害を排除し、この非論理的な道を選択します」

 

彼は、管理者ではなく、一人の男として、静かにカイトの家を後にした。その足取りは、愛という新しい法則へと向かう、揺るぎない決断に満ちていた。

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