クロノス・ディセンターズ『幻の拡張パックで世界を修復する者たち』 作:gp真白
1. 静かなる観測の報告
場所は、世界調和機構の最高管理者室。シンCEOは、新たな調和の法則を運用する膨大なデータが流れるホログラムの向こうで、静かに紅茶を飲んでいた。
ゼオンは、元・絶望の法則の破壊者としての鋭い感覚で、ある論理的な異常を報告した。
「シンCEO。論理的な報告です。創造主アダムの知識の総和の残滓が、ルーク顧問とチトセの生活空間に特定の観測ログを論理的に注入しています。これは世界の法則に直接干渉するものではありませんが、介入の可能性を示唆します」
ゼオンは、アダムの存在そのものが調和を乱す可能性を懸念していた。
「排除しますか? 私の破壊コードを防御論理として適用すれば、観測を完全に遮断できます」
2. 黙認という論理的な最適解
シンは、ホログラムの観測ログを拡大し、アダムの視点をゼオンに見せた。そこには、ルークがチトセの子どもを抱いて笑うという、論理的に見て何の変哲もない日常が映し出されていた。
「ゼオン。観測を遮断することは、論理的には最適解に見えます。しかし、それは新たな危機を生みます」
シンは、時間術の知恵を込めて説明した。
「アダムの孤独の論理(退屈の法則)は、世界の知識の総和を全て解析し、予測し尽くしたことから発生した。今、彼が観測しているのは、彼の知識が予測できなかった、愛という非論理的な法則がもたらす**『予測不能な結果』**です」
「彼は、ルークとチトセの幸福を**『最も面白い、新しい知識』として観測している。これこそが、アダムの退屈の法則に対する最も有効な論理的な対処法**です」
3. 永遠の平和という防御論理
ゼオンは、破壊ではなく放置が論理的な防御であるという逆説的な法則に、衝撃を受けた。
「……つまり、アダムの興味を意図的に満たし続けることが、世界の調和を維持する論理的な防御壁になっている、と?」
「その通りです、ゼオン」シンは頷いた。「アダムが愛の法則から目を離した時、論理的な退屈が再発動し、世界に介入する動機が生まれます」
シンは、観測ログを永久保存のフォルダに移した。
「私たちはアダムを倒すことも破壊することもできない。しかし、彼の関心をルークという小さな愛の法則に永久に固定し、世界の調和から遠ざけることはできる」
「観測の黙認は、最も非効率で最も穏便な、永遠の平和のための論理的な防御論理です。我々ドミニオンが絶望から学んだ究極の法則は、愛という価値を守るためなら、論理的な不快感さえも甘んじて受け入れるということです」
ゼオンは、破壊コードのホログラムを削除した。最強の破壊者は、愛の法則という論理的な防御壁の前で、静かな納得を示したのだった。
シンCEOの論理的な戦略は、アダムという最大の脅威を**「観測者」として固定**することでした。