クロノス・ディセンターズ『幻の拡張パックで世界を修復する者たち』   作:gp真白

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第2章 第5話:知識の限界と真実の記録

 

真実の石板が示す道

リサの妨害を退けたカイトたちは、シエナから託された**「真実の石板」が示すルートを慎重に進んでいた。その道は、カイトの持つ虚偽の知識では「存在しない場所」であり、森の情報攪乱**も最も激しいエリアだった。

 

「この石板が示す魔力のパターン……私の知るどの古代魔法陣とも一致しません。まるで、**『世界の初期データがそのまま空間に固定されている』**ようです」ルークは額の汗を拭いながら報告した。

 

「つまり、ここは開発者たちが**『ゲームの歴史』を作る前に、実際に存在した『真の世界の記録』か」カイトは頷いた。彼はもう、自分の知識が完璧ではないことを受け入れていた。知識を「予測」ではなく「裏付け」**として使うことで、彼の判断は以前よりも冷静になっていた。

 

彼らが辿り着いたのは、森の中心に忽然と現れた、古代の魔法陣が刻まれた巨大な石造りの広場だった。そこには、数えきれないほどの石板が積み重ねられ、その一つ一つから微弱な魔力が放たれていた。

 

「これは……世界の図書館よ」アリアは息を呑んだ。「私たちがいた世界の歴史とは違う、もう一つの歴史が、ここに記録されている」

 

知識の「削除ログ」

カイトは、最も目立つ中央の石板に手をかざした。ルークの魔力増幅デバイスを使い、微弱な魔力を石板に流し込み、情報を引き出す。

彼の脳裏にフラッシュしたのは、**『クロノス・オンライン』の「開発者モード」**でしか見ることのできない、異常なログだった。

 

[ログ:古代技術「ルーン・コア」取得イベント]

→ [削除] → [理由:ゲームバランスを崩壊させるため]

 

[ログ:先住民「真のルーン文字」解読イベント]

→ [削除] → [理由:プレイヤーの探求心を損なうため]

 

[ログ:NPC「賢者ルークの親族」による世界のバグ修復試行] → [削除] → [理由:NPCの逸脱のため]

 

カイトの頭の中で展開されたのは、**『クロノス・オンライン』**のデータから、開発者の都合によって意図的に消去された『世界の真実』の記録だった。

 

「これだ……この森が隔離された真の理由!」カイトは歯を食いしばる。「開発者たちは、この世界の住人が自分たちの意志で世界の法則に介入することを**『データ逸脱』と見なし、そのすべての記録をこの森に隔離し、『忘却』**させたんだ!」

 

アリアは、自らの存在が誰かの都合で操作されていた事実に打ちのめされる。「私たちが信じていた歴史は……全て偽物だったの?」

 

ルークは、自分の親族が世界のバグ修復を試みていたという記録に、元NPCとしての絶望と、真実への探求心を同時に感じた。「私の解析が導き出した世界の法則も、もしかしたら、開発者によって都合よく改竄された**『偽りの法則』**だったのかもしれない……」

 

ゼオンの破壊と知識の防御

カイトは、この**「真実の図書館」こそが、世界の修復に必要な「本物のデータ」であると確信した。彼はルークに、可能な限り多くの石板の情報を解析し、「真の起動コード」**を抽出するよう指示した。

その時、広場全体が激しい黒いノイズに包まれた。

 

「遅かったな、『知識の継承者』」

空間の歪みと共に、再びゼオンが降臨した。彼の後ろには、弓使いのリサに加えて、新たなドミニオンのメンバーの影がちらついている。

 

「この**『世界のアーカイブ』こそが、俺が最も破壊したかった場所だ。お前の『修復』が始まる前に、この『真実の記録』を初期化**する!」

 

ゼオンは、巨大な黒い球体を生成し、石板の図書館めがけて放った。それは、世界の法則そのものを破壊する、強力な**『裏コード魔法』**だった。

 

「させない!」アリアは叫んだが、ゼオンの攻撃は彼女の剣で防ぎきれるレベルではない。

 

カイトは、即座にレベル1の身体で、最後の切り札を使った。彼の知識が、**「この図書館を護るための、開発者も知らなかった防御コード」**を探し出す。

 

《知識の継承者:緊急プロトコル発動》

カイトは、ルークから抽出した**「世界の原初の起動コード」を、自身の知力A**の処理能力で再構築し、ルークの魔力増幅デバイスを通じて、図書館全体に薄く展開させた。

 

キュイイン!

 

ゼオンの破壊の裏コードが、カイトが展開した**「原初の防御コード」に接触すると、互いの力が反発し、図書館全体を包むように巨大な光のドーム**が形成された。

 

新たな知恵の獲得

ゼオンは、攻撃を防がれたことに激しく苛立った。「ちっ! そのレベルで、なぜ俺の裏コードが防げる!?」

 

「これは、俺の知識ではない。この森に眠っていた、**『世界の真の防御システム』だ!」カイトは息を切らしながら答える。「ゼオン。お前が持つ『破壊の知識』**だけでは、**世界の『創造』**はできない。この世界の真の歴史を消すことは、誰にもできない!」

 

ゼオンは、その場での決着を諦めた。「覚えておけ、カイト。この森は、俺の破壊コードによって、『真実の記録』を道連れに、まもなく崩壊する。その防御コードでは、長くは持たないぞ」

 

ゼオンは、再び空間を歪ませて撤退した。

光のドームは維持されているものの、ルークの解析によると、その持続時間はわずか数時間だった。

 

「カイトさん、石板の解析はまだ終わりません。しかし、この図書館の奥に、次の隔離世界へと繋がる、真のワープゲートがあるはずです。ここから脱出しなければ、私たちも**『真実の記録』**と共に世界の崩壊に巻き込まれます!」ルークは焦燥感を露わにした。

 

カイトは、図書館の中心に立って、冷静に判断を下した。

 

「ルーク、解析を続けろ。アリア、次の塔へのゲートを探す。俺は、この防御コードを維持する。俺の知識は、もはや完璧な答えではない。だが、この世界を救う**『真の知恵』**は、この森に必ずある!」

 

カイトは、自身の知識の限界を知った今、真の**「知恵」**を求め、次の試練へと向かうのだった。

 

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