クロノス・ディセンターズ『幻の拡張パックで世界を修復する者たち』   作:gp真白

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過去編 第2話:呪われた繰り返しと破壊のコード

 

繰り返される絶望:ゼオンと娘の記憶

ゼオンが**「時間巻き戻し」のバグを確信したのは、転移後、都市エルドニアで初めて「娘の記憶」**が消去された瞬間だった。

 

ゼオンは、現実の娘・リズのために、この世界で得た知識と魔力を駆使して、『現実世界への帰還コード』の研究を続けていた。彼は自分の研究の動機を忘れないよう、リズの写真データを魔法で**「絶対記憶」**として自身の魔力コアに刻み込んでいた。

 

ある日、激しい魔力ノイズと共に世界がリセットされた後、ゼオンは自身の研究室に戻った。

「馬鹿な……研究成果が数ヶ月分、消えている」

 

それ以上に恐ろしいのは、魔力コアに刻んでいたはずのリズの写真データが、**「無効なデータ」**として上書きされ、消えていたことだった。

 

「リズ……! なぜだ!」

 

ゼオンは、写真データを再構築しようと試みたが、彼の破壊の裏コードをもってしても、**『時間巻き戻し』によって消去された「過去の記憶」**を取り戻すことはできなかった。

 

「この世界は、俺の最も大切な記憶すら、**『不要なデータ』**として上書きし続けるのか……」

 

彼は、現実の娘を救うという決意を**「忘却」させられ、永遠にこの世界に囚われる恐怖に直面した。ゼオンにとって、この「時間巻き戻し」は、彼の家族への愛と希望を少しずつ削り取る、神が与えた呪いに他ならなかった。彼の破壊の意志は、「世界に二度と時間を繰り返させない」**という、切実な愛と絶望から生まれたものだった。

 

破壊の裏コード:開発者の残滓

ゼオンが持つ**『破壊の裏コード』は、彼が転移させられた際に、彼の身体に「世界の安全装置」として組み込まれていたものだった。しかし、そのコードは不完全**だった。

 

ゼオンは、自身の魔力コアを解析する中で、自身の裏コードが、世界の**開発者が消し損ねた『過去の残滓(ジャンクデータ)』**に繋がっていることを発見した。

 

その残滓を辿って、ゼオンがたどり着いたのは、**『クロノス・オンライン』**の開発チームが、バグが発覚した際に緊急で使う予定だった『強制シャットダウンシステム』の設計データだった。

 

《強制シャットダウンシステムの設計ログ》

「時間軸のバグが臨界点を超えた場合、世界のデータ連続性を完全に断ち切り、**強制的にログアウト(初期化)させる。ただし、この方法は世界の『全ての存在データ』**を破壊する危険を伴うため、最終手段とする」

 

ゼオンは、この設計データを、自身の裏コードに強制的に統合した。この統合により、彼は**「世界の法則を捻じ曲げる力」を手に入れただけでなく、「世界を破壊し、強制的にログアウトさせる」**という、最終手段の論理を自身に刻み込んだ。

 

ゼオンがLv.1のカイトを**「開発者のお利口なパッチ」として憎むのは、カイトが「修復」という甘い希望を世界に与え、自身が背負った「破壊者」**としての役割を否定する存在だったからだ。

 

シンの悲願:時間を操る者の限界

一方、シンが時間巻き戻しのバグに気づいた瞬間は、より残酷だった。

彼は自身の時間術士としての能力で、現実の病気の家族の時間を一瞬でも巻き戻し、健康な状態に戻せないかと、転移当初から試み続けていた。

 

しかし、この世界の時間軸の不安定さを利用しようとするたびに、彼自身の時間術のコードが、世界の時間巻き戻しバグに**「増幅剤」**として作用し、世界の巻き戻しスパンを短くしてしまったのだ。

 

「俺の力は……世界を修復するどころか、時間の呪いを加速させているだけ……」

 

シンは絶望し、自分の能力が**「家族を救うための力」ではなく、「世界を破壊するための力」**にしかならないことを悟った。彼は、家族を救うという自分の切実な願いと、世界を破壊するという結論の間に、論理的な連続性を見出すしかなかった。

 

彼はゼオンと出会い、共に**「破壊」**の道を選んだ時、カイトに対して言った。

 

「俺たちの目的は、この世界を救うことではない。現実へ帰ることだ!」

それは、「俺たちの愛は、この呪われた世界に裏切られ続けた。だからこそ、この世界を道連れにしてでも、俺たちは愛する者の元へ帰らなければならない」という、シンとゼオンの共通の悲願だった。

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