クロノス・ディセンターズ『幻の拡張パックで世界を修復する者たち』 作:gp真白
10. 信念の遅延効果
アリアが主要株主に対し、「世界の持続的な安定」という上位の法則を訴えかける信念の説得は、短期的な利益を追求する経済の論理に対し、一時的な遅延効果を生み出していた。株価の急落はわずかに緩やかになったが、ルークの孤独のバグが作り出した論理的な亀裂は修復されていない。
カイトは、この貴重な時間を使って、経済破綻のトリガーとなった旧フューチャー・トラスト社のシステムログを、Lv.1の知識で徹底的に解析していた。
「この売りコードは、感情の欠損(孤独)をトリガーにしている。だが、このコードの構造自体には、ゼオンとシンの論理の残響がある……」
カイトは、無数の経済取引データの中に、時間の法則と破壊の裏コードが作り出した、なじみ深いノイズを見つけた。
11. 絶望的な最適解の痕跡
解析を進めたカイトは、驚愕の事実にたどり着いた。
「この売りコードは、単なる市場の混乱を狙ったものではない。これは、『ルークCEOの論理の崩壊』を論理的に最も効率よく達成するように設計されている……!」
コードは、ルークの孤独の法則(B)に反応し、その感情的な弱点を突くことで、信頼(経済の法則 A)を完全に破壊するよう、最適化されていた。それは、かつてゼオンとシンが「愛する者を救うための破壊」という絶望的な最適解を追求した、あの論理構造そのものだった。
「これは、ドミニオンの残党だ。彼らは、ルークの孤独を利用して、現実世界の経済という巨大な法則を破壊しようとしている!」
カイトは、その論理コードの奥深くに、シンが使用していた『時間術の残滓』が、株主への売却命令を時間的に同期させている痕跡を発見した。
12. 孤独のバグと破壊の論理
カイトは、解析結果をルークCEOに突きつけた。
「ルークCEO。あなたの過去の孤独は、ドミニオン残党の**『絶望の法則』**によって利用されています! 彼らは、あなたの自己破壊を、世界の経済破壊に繋げようとしているのです!」
ルークは、己の過去のバグが、再び世界を危機に陥れていることを悟り、激しく動揺した。彼の無表情な顔に、一瞬、絶望的な感情の亀裂が走る。
「私の孤独が、世界の論理的連続性を脅かす最大のバグだったというのか……!」
その動揺を見た幼いルークのホログラムは、孤独のバグをさらに増幅させた。
「誰も信じるな。知識だけが真実だ。孤独こそが、最も安定した論理だ!」
アリアは、信念の説得を続けながら、カイトに叫んだ。「カイトさん! 解析は終わった! この**『絶望の論理』**を打ち破るための、最終的な修復コードを導き出して!」
カイトは、Lv.1の解析能力と知識の全てを集中させた。彼に残された時間は、アリアの信念の力が尽きるまでの、ほんのわずかな瞬間だった。