自縄自縛の十種影法術〜平穏に過ごしたいのに、私の周囲が許してくれません〜 作:多眼犬
どいつもこいつも全くアレを理解出来ていない⋯⋯。
最近流れるようになったアレの噂⋯⋯やれ鮮血の羅刹女⋯⋯やれ五条悟に並ぶ神童⋯⋯アレがそんな事出来る訳が無い⋯⋯アレは無能だ⋯⋯無能なのだ⋯⋯。
今の妻より以前の私の妻の腹よりアレは産まれた⋯⋯額に縫い目の後のある傷モノの女⋯⋯そんな女がより生まれた人の形すらなさぬ赤黒くも脈打つ肉の塊⋯⋯。
等のアレを産んだ女は産んだ後に息を引き取ったらしいが⋯⋯。
そんな話と共に、その肉塊を見せられた時は、私も愕然としたものだ。
だが⋯⋯アレは産声すら上げずに、その肉を突き破って私の前に現れた。
不気味なまでに物静かな赤子⋯⋯。
人の血肉を糧に、生まれ持って歯を生やした人ならざる鬼の子⋯⋯皮肉ながら羅刹女とは言い得て的を射てると言って良いだろう。
私はアレを⋯⋯決して人などとは認めぬ⋯⋯。
故に私はアレを畏怖の元に
そしてアレは無表情で無機質に無感情なまま不気味にも成長して言った。
それは物心がついてもなお変わら無かった。
ある日、真魅が式神を使いだしたと言う噂が流れ出したある日、兄の息子がアレの式神にやられたとして、アレの処遇で会合が開かれた⋯⋯私としてはアレがくたばってくれるならと思って参加したが⋯⋯兄の余計な一言でお咎め無しとなってしまった。
とはいえアレを兄の息子がどうしようとお咎め無しと言う沙汰が下り、私は率先して兄の息子にどうせなら殺してくれて構わないと言って置いた。
「親がコレやとか真魅ちゃんもホンにかわいそうやわ⋯⋯むしろ真魅ちゃんの為思って、首括って死んだほうがえぇんとちゃうか?」
それからしばらくして、まだアレを殺せてないのかと兄の息子に言えば、そんな事を言われた⋯⋯何とアレは何をしたかわ分からないが、どうやらアレに感化されてしまったらしい⋯⋯嘆かわしい事だ⋯⋯。
「へぇ⋯⋯こんなヘボい奴が真魅の親だとかねぇ⋯⋯世の中何があるか分からねぇもんだな」
しばらくしてアレが領域展開を使い神童とされる五条悟を打ち負かしたと言う、余りにも誇張され過ぎてるくだらぬホラ話が流れだした⋯⋯私はあからさまに嘘だと吐き捨て鼻で笑ったものだが、それから数日後に何故か銀髪のガキが私を冷ややかな目で見ながらそう言った。
その時はアレを1度たりとも娘とは思った事は無いと、そのガキにはハッキリと言ってやったがな⋯⋯。
その頃は妊娠していた妻が娘を産んだ⋯⋯生まれた子は双子だった。
双子は呪術界において不吉の象徴⋯⋯何故私の所には不吉な出来損ないばかりが生まれるのか⋯⋯とはいえなればと思い、同じ凶兆とも言えるアレに育てさせれば良いかと思い至り⋯⋯妻に命じて双子をアレに押し付けさせた。
だが⋯⋯その後、妻が言うにはアレはそれを喜んで引き受けたらしい⋯⋯。
「あの子は言ってました⋯⋯娘たちは私が思う以上に可能性を秘めた⋯⋯才能の原石だと⋯⋯」
嘘だったとしてもそう言ってもらえた事に、少しは救われたと呟く我が妻の姿⋯⋯そもそも双子は凶兆の存在⋯⋯同じ不吉な存在同士だから、同族意識でそう言ってるだけだ⋯⋯むしろ自らが無能だからこそアレはそう思いたいだけかもしれぬがな⋯⋯私はそう思いその時は妻の話を聞き流した⋯⋯。
「人の血肉を喰らい生まれし真のモノノ怪か⋯⋯なればそのモノノ怪を制してこその禪院だろうよ」
アレが九十九由基とか言う女と御前試合があってから数日⋯⋯兄が私がアレを嫌ってる事を聞き付けたのか、尋ねて来たので私はアレを娘とも思って無い事、アレが如何に人ならざるモノノ怪かを話した。
だが⋯⋯兄は愚かにも楽観的な答えを口にする。
何故理解出来ない? いや⋯⋯アレが肉塊を突き破って出てきた⋯⋯あの光景を、あの瞬間を実際に見れば同じ事を口に出来るか? 兄すらアレに感化されてしまったと言うか⋯⋯。
いや⋯⋯アレはこうなる事を見越して今の今まで大人しくなりを潜めていたか⋯⋯その時、私にはアレが私を嘲笑ってる用に思えてならなかった。
「影を通して姉様の脳内のその部位に直接接続⋯⋯影をメスのように使用して切り離しつつ反転を施せば⋯⋯」
それから幾日か時は過ぎたある日の事だった。
それは偶然だった⋯⋯私は何時ものように禪院家の敷地を歩いていた時、そんな声が私の耳に入った。
普段なら気にも止めなかっただろう⋯⋯だが何故かその日に限り私はふと、その声が聞こえた方に足を進めていた。
それは無意識とも言える行動だった⋯⋯だがそれ故に私はこの日のこの突発的な行動を心底悔やむ事となる。
そう⋯⋯私は見てしまった影で何かをグチャグチャと音を立てていじくる式神と、その傍らにいるアレの姿を⋯⋯。
そして何かおぞましき肉の塊を取り出す瞬間を⋯⋯。
それを見て私は、勝手のあの光景が脳裏を過ぎり、同時にアレは何れ禪院家に災いをもたらす凶兆なのだと改めて確信するにいたった⋯⋯。
だがそれを周囲に申した所で無意味な事も、今までの経験から骨身に染みて理解していた。
何せ周囲の目にはアレは神童に見えるらしい⋯⋯浅ましくもアレはその力をひけらかすでも無く、禪院家に尽くしてる為か、禪院家においてアレへの評価は非常に高い⋯⋯そのせいで最近ではアレがいるにもかかわらず当主にすらなれない無能やら、アレを無能とほざくの耄碌としたジジイ等とほざく馬鹿がいる程だ⋯⋯。
そんな訳が無かろうに⋯⋯私が無能なのは、あの凶兆が私に不幸をもたらしてるからに他ならない⋯⋯。
だがどいつもこいつも最近は口を開けばアレの名を口にする⋯⋯。
兄に至ってはをいたく気に入ってるのかアレの正体を語っても楽観的な態度を取る始末だ⋯⋯。
どいつもこいつもアレへの危機感が全くない⋯⋯否、アレがそうなる様に仕組んだに違いない⋯⋯そうに決まっている。
むしろ今の今までアレを凶兆だと気付きながらも、その事実から目を逸らし続けた私が馬鹿だったのだ。
ならば今からでも遅くは無い⋯⋯間違いは正せばいい⋯⋯そして奴らの目を覚まさせるのも一興⋯⋯。
そう思った私は、気が付けば刀に手を添えてアレのもとへと足を動かしていた。
アレも私が近づいて来た事で気が付いたのか、警戒する用に私を見る。
「⋯⋯何か用ですか叔父さ──」
耳障りなアレの声⋯⋯私は咄嗟にアレに目掛けて1太刀切り付ける。
当然この程度でこのモノノ怪がくたばるとは思えない為、念入りに二太刀目を振るったがそれは避けられてしまった。
その瞬間だった⋯⋯場の空気は一瞬にして一転した。
明らかに息苦しく身体が急に重くなった様な感覚⋯⋯。
紛れも無い奴から放たれた異様な気配⋯⋯その瞬間⋯⋯アレと嘗てこの禪院家にいた呪力を生まれ持って持たなかった奴の幻影が重なる。
何故だ⋯⋯何故⋯⋯お前は無能だ⋯⋯
「何故⋯⋯私では無く無能な⋯⋯ましてや人ですらない貴様なのだ⋯⋯」
私の口から意図せずそのような言葉が漏れ出た。
そしてハッと我に返り、私は今何を口走ったのか、何故そのような言葉を私は口にしてしまったのかと、思わず私自身への自問自答に陥る⋯⋯いや⋯⋯分かっていた⋯⋯本当は分かっていたのだ。
ただ私はソレを認める訳には行かず⋯⋯否、それを認めてしまうには余りにも遅すぎた。
「うごぉっあぐっがっ!?」
その瞬間⋯⋯私の身体を抉るかのように突き刺さる衝撃⋯⋯薄らぐ意識の中⋯⋯私は無意識にも手を伸ばす。
そう⋯⋯真魅⋯⋯私は貴様のようになりたかっ⋯⋯た⋯⋯。
おまけ
garaasaaさん、日向@さん誤字修正ありがとうございました。
ハーマイさん、浦松さん高評価ありがとうございました。
ちなみに真魅の誕生についてですが、本来なら肉塊としてそのまま処分されて終わってたんですが、偶然にも真魅の魂が肉塊に憑依する形で宿った事で、真魅の魂に肉体が引っ張られた結果、無事に人の赤子としての姿になり、そのまま原作には存在しないイレギュラーとして生誕した感じです。憑依のタグ⋯⋯増やした方がいいかな⋯⋯。
Q今回はかなり遅れましたね⋯⋯。
A私の推しであるブルアカの伊草ハルカの誕生日と東方Projectの古明地こいしの日に合わせて、投稿を考えたらハルカは5/13日でこいしは当然ながら5/14日の為に急遽、2話分の話を書く必要が出て、そのせいでかなりかかりました⋯⋯後、単純にスランプ気味だったのも滑車をかけて遅れた理由ですね⋯⋯。
Q扇は彼女の実の父親なのに、なんで真魅は叔父とよんでるのですか?
A単純に真魅が禪院扇を父親として呼びたく無いだけですね⋯⋯と言うかまず真魅の相手を呼ぶ時って大体が以下の通りでして⋯⋯。
①好き嫌い関係なく立場的に目上の人と判断してる相手→様呼び
②好意的に思ってる相手→愛称や名前呼び等の親しみを込めた呼び方
③嫌いまたはどうでもいいと判断されている相手→自分とは他人だと線引きした上での、他人行儀な呼び方
でっ真魅からすると禪院扇は①と③が該当するので、自分とは他人と言う感じでオジサン呼びになり、だからといって立場的には上ではあるので、叔父様と呼んでる訳ですね⋯⋯。
Q禪院家から見たら真魅ってどう見られてるの?
A以下の通りです。
禪院直毘人
鳶が鷹を生んだ全員家が誇る神童。彼女がいれば禪院家の未来は安泰だとすら思っている。
禪院直哉
何時かは絶対に負かす。自信が認めた本物の実力者。
禪院扇
娘ですらない化け物。禪院家に災いをもたらす恐ろしきナニカ。
禪院扇の妻
禪院家が誇る神童。娘達の事を才能の原石だと呼んでくれた⋯⋯初めて産んで良かったと思える程に嬉しかった。
禪院甚壱
何か自分を見ると鼻血を出して拝んでくる変な女。
躯倶留隊
自分達にも気遣って良くしてくれるし、鼻にかけるような態度も無い素敵な女性。
禪院家の女中達
もはや自分達の無くてはならない主戦力。彼女のお陰で女中達の仕事量の何割かが軽減された。もはや彼女の働きには感謝しか無い。
Q真魅を産んだこの女性って⋯⋯。
Aあのメロンパンなら、目標が宿儺の器なんですから、ぶっつけ本番じゃなくて、予行演習くらいは行った上でやってても可笑しくないんですよね⋯⋯。