義勇はお館様の元を訪れていた。お館様は布団から出られないでいた。
「随分元気になったみたいでよかった」とお館様は言った。
「お館様には、寛大なお心でお導きくださり、感謝の言葉とてございません」
「礼はいい。義勇、君が命を落とさず帰ってきてくれたことが嬉しい。義勇の判断は素晴らしかった。まるで、杏寿郎が命を落とすことを知っていたかのようだ」
義勇は額にじっと汗を浮かべた。
「義勇、天元は勝てるかな?」とお館様は言った。「義勇、君ならわかるだろう」
義勇はハッとして顔を上げた。
「当てようか、君は二周目だろう」
「なぜ……それを……」
「勘だよ」というとお館様は微笑んだ。
「義勇だけではあるまい。おそらく実弥もそうだ。他には誰が二周目なのかわかるかな?」
「……。」
「このところ、輝利哉が歴史書を読み出した。実弥や天元、それから竈門炭治郎とも文のやりとりをしている。なんであれ思いは同じ。無惨を倒し、1人でも多くの人を生かしたい。そのために協力してくれないかな?」
「でも私は煉獄を……」
「過去は変えられない。でも未来は変えられる」
「私に取っては今も過去です」と義勇。「私が何かを行動したり、話すことで、未来が変わるのが怖い。いや違う、結局未来を変えられない現実を直視できない」
「義勇。私は無惨を倒せるのならなんでもしたいのだよ。教えてくれないかな。どうやったら無惨を倒せるのか。あるいは未来でも倒せていないのか」
言えるわけがないだろう。あの夜、お館様が無惨に向かって何をしたか。輝利哉様から後から聞いた時、3日はご飯が喉を通らなくなった。今ここで話せば同じことをするだろう。それに話さなくても同じことをするに違いない。ならば俺は話すことを選ぶほどの勇気は持てない。
お館様のカラスが飛んできた。
「撃破!撃破!宇髄天元、竈門炭治郎、禰豆子、我妻善逸、嘴平伊之助、上弦の陸、撃破!」
お館様は布団から上半身を勢いよく立ち上げた。
「よくやった!」そういうとお館様は咳き込み吐血した。
「お館様!」と義勇は言った。
「義勇!冨岡義勇!いるんだろう!」本部の玄関口から天元の声が聞こえてくる。
「もう戻ってくるとは、さすが天元だ。義勇、行きなさい」
「失礼いたします」
そういうと、義勇は玄関まで走っていった。天元は両手を大きく広げていた。隠しが「冨岡様はお館様とお会いになっており…」と困惑した表情で言った。「それを早く言え!」と天元が叫んだ。
「ほらみろ義勇!」と腕を広げる天元。「俺には派手に両腕があるぞ!!歴史が変わった!!変えられるんだよ過去は!」
義勇は天元に抱きついた。天元はしなやかの筋肉のつく腕を義勇の背に回した。義勇はその腕の中で泣くことしかできなかった。
「義勇、例え善悪が変わってもなぁ、鬼を倒すことは正義なんだよ!!俺は俺のできることをするぞ!」と天元は言った。
「実弥は……」と義勇。
「あいつなら屋敷で療養中だぞ」と天元。
「そうか」と義勇はつぶやいた。