「あら急に冨岡さんの方から来られるなど驚きました。そんなに走ってどうしたんです?まだ安静にしていなくてはならない時期でしょう」
息を荒げる義勇を見てしのぶはスリ棒の手を止めた。義勇は呼吸を落ち着けるように肩を大きく揺らした。
「胡蝶、今すぐに藤の花を摂取するのをやめろ」と義勇は言った。
胡蝶はるつぼの中に視線を落としてしばらく黙り込んだ。
「あら、どうしてそれを知っているのですか。あぁ、カナヲが話したんですね。一周目の無惨戦の後に。いやいや人のせいにしてはいけない。私がカナヲに作戦を話したということですから」
「胡蝶、まだ間に合う。今すぐやめろ」と義勇はもう一度言った。
「冨岡さん、困りますよ。嫌がらせでしょうか。それ以外に姉の仇を討つ方法などないというのに」というと、しのぶは真っ直ぐに義勇を見つめた。
「胡蝶、お前は上弦の弍に喰われるんだ。それで、鬼が毒で弱ったところ、トドメをカナヲが刺す。そうやってお前は死んだとカナヲに聞いたんだ!確かに勝てる。仇を討てる。けど他にやり方はいくらでもあるだろう!」
「例えばどんな?」
「これから俺が考える。だから今は思い止まってくれ!」
胡蝶は再び黙り込んだ。「ほんとそういうところですよ。なんでそう言うこと言うのですか」と絞り出すようにして言った。
「お前に死んでほしくないからだ。胡蝶に言われてからずっと考えていたんだ。なんで二周目を迎えたのか。ずっと……。そしてやっと気がついた。みんな……みんなの大切な人を生かすために俺らは戻ってきたんだ。実弥が弟を守りたいように……。そして俺が生かしたいのは、お前だ」
しのぶは俯いた。「ほんとお喋りで迷惑な人ですね……私を?なんで?」
「お前のことを好いているからだ!!!!!……しのぶ!」
2人の間に静寂が広がった。しのぶは唇を強く噛み締めた。
「なら煉獄さんは誰にも生かしたいって思われなかったってことですか?」としのぶは静かに、しかし力強く言った。「それならなぜカナヲは姉を助けられなかったのですか!お葬式の時、カナヲは私以上に泣いていたと言うのに!!!二周目の人はいいですね。人の決意も知らないで」
そういうと、しのぶは診察室を飛び出して行った。
「待ってくれ!」
義勇が部屋を飛び出すと、そこには炭治郎が立っていた。
「いやあの、たまたま通りかかったっていうか、しのぶさんにお薬もらいにきたと言うか……。聞き耳たててたわけじゃないんですけど……なんか、すみません」そういうと炭治郎は苦笑いした。