義勇と炭治郎は蝶屋敷の縁側に座り込んでいた。夜空には綺麗な月が浮かんでいた。初夏のカラッとした涼しい風が肌を掠める。
「恥ずかしいところを見せた……忘れてくれ」と義勇は言った。
「いえ、俺の方こそすみません。忘れることは難しいですけれど」というと炭治郎は笑った。「義勇さん、俺の話をしてもいいですか?」
「構わない」
「俺もずっと考えていたんです。どうして二周目を迎えたのか。そしておそらくそれは生かしたい人を生かすためだって俺も思いました。じゃあ俺は誰を生かしたいのかって考えた時に、真っ先に頭に浮かんだのが煉獄さんだったんです。」
「そうか」と義勇は言うと、月を眺めた。夜空に浮かぶ満月はこちらの気持ちを見透かしたように怪しく光り輝いていた。
「結果として、煉獄さんを助けることはできなかった。でも、実は俺、少しホッとしている自分がいることに気がついたんです」と炭治郎は言った。
義勇は炭治郎の顔を見た。炭治郎は、口を真一文字に結んだまま、じっと夜空を見上げていた。
「一周目の時は、守ってもらうばかりで、足手纏いでしかなかった。煉獄さんと猗窩座が繰り出す技を認識することすらできなかったんです。己の不甲斐なさを悔みました。でもそれは強くなれた理由でもあったんです。今回は、煉獄さん、猗窩座、そして義勇さんの技を視認できた。俺は一周目の無惨戦の時ほどに体はできていませんでしたけど、何を鍛えればいいかわかっていたから、一周目の列車の時よりは強くなれていた。煉獄さんと義勇さんの助けに入れたし、一緒に戦えました。ああ役に立てたって。俺は二周目を迎えた身としての責務を全うしたんだって。煉獄さんに俺らが二周目であることを打ち明けたじゃないですか。その時、煉獄さんは、『信じる信じないではなく、鬼の首を取って人々を助けるまでだ』って言ってくれた。俺は煉獄さんを助けられなかった。でも、俺の心は救われてしまったんです」
「……心は救われた」
「とても自己嫌悪に陥りました。でも、それがあの無限列車で確かに起きたことです。嫌ですね、歳をとるって。色んなことを考えるようになってしまう」
「たかだか25だろ、たわけ者が」
「ほんとそうですよね。あの後年号が2度も変わったカナヲに比べたらずっと若い。カナヲにも言ったんですけど、この後何が起きて自分の力だけではどうしようもならなくて、どんなに無力だと打ちのめされたとしても、僕らは僕らのやるべきことをすれば良いと思うんです。周りまわって自分に返ってきますから。ああ綺麗な月だなぁ。こんな日はお酒でも飲みたいですね!」
「子供はダメだ」と義勇は言った。
「そういえば義勇さん、しのぶさんのことなら心配しなくていいですよ。さっきすれ違った時、微かですけれど、嬉しさの匂いがしましたから」
「……。明日、謝ろうと思う」
「いいですね!義勇さん!応援しています」
「炭治郎」
「はい!」
「感謝する」