冨岡義勇は無惨討伐一周目を思い出した   作:高橋夏帆

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蟲柱

「聞き耳を立てていたことは謝ります」としのぶは言った。

 

 目の前で胡蝶が生きている。そしてこれは夢ではなく現実。そうわかっただけで義勇は救われた気持ちになった。

 

「胡蝶も二周目なのか?」と義勇は言った。

 

「いいえ、違います」としのぶ。

 

「俺たちの話が信じれんのか?」と実弥。

 

「信じます」としのぶは言った。「というよりは信じるほかないでしょう。これでやっと納得がいきました。なぜ姉が殺されたあの場所に不死川さんがいたのか。なぜあのカナヲがあの日に限って任務に行くねぇさんを必死に止めていたのか。察しがいい、だけでは説明がつきませんから。竈門くんには私から聞いておきましょう」

 

 そういうと胡蝶しのぶは去っていった。しのぶの去っていく後ろ姿を義勇はじっと見つめていた。

 

「義勇、まずはお前が煉獄の応援に行け」と天元。「上弦の参に勝ったのはお前と炭治郎だ。あいつの技を見ているだろ」

 

「承知した」と義勇。

 

「俺は明日、胡蝶のところに行って炭治郎の様子を聞いてくるからよ……」と実弥。

 

「いや待て、俺がいく」と義勇が言った。

 

--------------

 

 次の日、義勇は蝶屋敷を訪れた。

 

「あら冨岡さん、なんの用ですか?」としのぶは笑顔で言った。

 

「昨日の件だが……」

 

「その件であれば昨夜、炭治郎くんに聞きましたよ。炭治郎くんの話によると、善逸くんと伊之助くんも一周目の記憶を取り戻しているそうです。そしてこう言ってました。おそらく、無惨戦の生存者が、二周目を迎えているのではないかって」

 

「無惨戦の、生存者……」

 

「ええ。そうです。生存者です」としのぶは俯きつつ、つぶやいた。「やはり私は無闇に話さない方がいいと思います。記憶があることを」

 

「なぜだ」

 

「うまく行った作戦も、うまくいかなくなるかもしれない。二周目であること、二周目の人の存在がいること、それが鬼殺隊にとって、必ずしもいい方向に行くとは限らないと思うんです。未来を変えてしまうかもしれない。それも悪い方に」

 

「柱であろう者が弱音を吐くとは」

 

「冨岡さん、そういうところですよ」

 

「……。だが胡蝶の言い分は正しい。天元にも伝えておく」

 

「あの、冨岡さん。なぜ、生存組は、転生したのでしょう。何か思い当たることはありませんか?」

 

「ない」

 

「そうですか……。」としのぶは言った。「実は、昨日は言い出せなかったのですが、もう一つ気になることがあって……。カナヲがある時を境に、鬼にも事情があるとか、鬼が全て悪いとは思わないなどと言い出して……。杞憂だといいのですが……」

 

「何が言いたい」

 

「おそらくそう言い出した頃が記憶を取り戻した時分だったと思うのです。無惨戦の後、カナヲに何かあったのではないかって……」

 

「竈門本人に聞くと良い」

 

「ん???カナヲは栗花落です」

 

「聞いていないのか?二人は夫婦だ」

 

「まぁ!そうだったのですか!」

 

 義勇はそう言うとしのぶの顔を覗き込んだ。

 

「何してるんですか?」としのぶ。

 

「顔色を確認していた」

 

「何してるんですか!!本当にもうあなたって人は!二周目だからと言って、何してもいいわけではないですからね。本当にもう腹が立つ」

 

「炭治郎と少し話をしてもいいだろうか」と義勇はしのぶに言った。

 

「もちろんです。けど、炭治郎くんはまだ療養中ですから、あまり無理をさせないでくださいね」としのぶは言った。

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