冨岡義勇は無惨討伐一周目を思い出した   作:高橋夏帆

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恐怖の音

 義勇が屋敷に引きこもってからどれだけの時が経っただろうか。

 

「義勇さーん、入ります」と炭治郎の声が屋敷に響いた。

 

-入ります?帰りますか

 

 炭治郎は勢いよく襖を開けた。後ろには善逸と伊之助もいた。

 

「義勇さん!本読んでるんですね!元気そうでよかった!」と炭治郎は曇りのない目で見つめた。

 

「義勇さん、この間実弥さんと美味しいおはぎの店を見つけたんですよ、今度一緒に行きましょう!」

 

「行かない、俺は修行をしなくてはならない。」

 

 義勇は立ちあがろうとすると痛む右腕を押さえつけた。

 

「無理しちゃだめですよ、義勇さん。きちんと治さないと無限城で勝てませんよ」

 

「もう悪い冗談はよせよ炭治郎」と善逸は言った。

 

「元気なら勝負だ半々羽織!」と伊之助。

 

「しない。俺は元気ではない」と義勇。

 

「言ってることめちゃくちゃじゃないか。」と善逸。「もうじゃあ誰も言わないから僕が言いますけどね、義勇さん、何を怖がってるんですか?ずっと恐怖の音がする。炭治郎も鼻が効くんだからわかっているんだろう」

 

「ああ!でも、何に怖がってるのかなって思って!」と炭治郎はきらりと光る瞳を善逸に見せつけた。

 

「俺は怖がっていない」と義勇。

 

「もう嘘つかないでくださいよ〜」と善逸は茶化すように言った。

 

「俺はあれから考えていたんだ」

 

「考える?何を?」と炭治郎。

 

「炭治郎が言っていたことだ。猗窩座はなぜ鬼になったのか。それがわかれば今回も勝てたんじゃないかって。一周目の時、なぜもっと話を聞こうとしなかったのか。鬼にも鬼になった事情がある。決めつけたりするのではなく、もっと耳を傾けていれば、こうはならなかったんじゃないか」

 

「……。もう嘘つかないでくださいよ」と善逸は顔をうつむけて言った。それから静かに立ち上がると部屋を出て行った。

 

「あああ、善逸……。伊之助、善逸を追ってくれ、頼んだ」

 

「承知した!」そういうと伊之助も善逸の後を追って部屋を出て行った。

 

「気に触ることを言っただろうか」と義勇。炭治郎は優しく微笑んだ。

 

「いえ、そんなことはありませんよ。善逸からは覚悟の匂いがした。義勇さん、俺たちこれから天元さんと遊郭に行くんです」

 

「遊郭か……」

 

 あの時の記憶が蘇る。

 

「上弦を倒してきます」と炭治郎。

 

「歴史が変わらなければ勝てるだろう」

 

「歴史は変えられない、それが義勇さんの恐怖ですか?」と炭治郎は言うと立ち上がった。「カナヲにこの間言われたんですよね。運が悪ければ、私が上弦の陸だったかもしれないって」

 

「人を喰らう鬼に同情するな。大勢の人々が殺されているんだ」

 

「義勇さん、実は俺、無限列車の時に……」炭治郎は言い淀んだ。「いえ、やっぱりなんでもありません。勝ちますから。絶対に、上弦の鬼を倒しますから!」

 

 そういうと炭治郎は笑顔で屋敷の外へと走って行った。

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