TS男のシーフユニオン活動録   作:Xbox360

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4/16 探偵助手

 

俺がペルソナ5Rの世界に転生してから、ちょうど一週間が経過した。

たったの一週間で色んなことがあったものだ。それまでに何回死にかけたことか。

 

「あでっ!」

 

隣では雨宮くんがチョーク投げの洗礼をくらい、みんなから笑われている。モルガナが呆れたような目で雨宮くんを見ており、非常に平和と言える光景だ。

 

確か、今日と明日は準備ということでパレスには潜らず、今日は薬の調達、明日は武器の調達だったっけか。

 

「昨日、あんなことがあったのに……日常はすぐに戻ってくるもんだな…」

 

放課後。立ち入り禁止になった屋上でビッグバンバーガーの炙り醤油肉厚ビーフバーガーセットを食べていると、姦しい話し声が聞こえてくる。

 

「あん?誰かと思えば、桐崎じゃねえか。」

 

「どうも。それ、俺も食べて良い?」

 

ナチュラルに雨宮くんが隣に座ってくる。

…うん?雨宮くんって、一人称「俺」だっけ?ゲームでは「自分」だったような。

 

「いま、俺って言った」

 

「……?ああ、うん。友達だし、気を遣わなくて良いかなって」

 

「良いじゃん、カッコよくて」

 

メロいやつめ。こんなの言われたら男だって好きになるに決まってる。もちろんLikeの方だが。

 

「ゴメンけど、今からウチら大切な話するから席外してもらっても良い?」

 

「悪りーな。他人には聞かせられねえ会話なんだ。」

 

金髪二人組が申し訳無さそうにそう言ってくる。ああ、そうだった。しばらくは学校の屋上は怪盗団のアジトなんだった。

俺は納得して屋上から出て、階下に降りる。

向かう先は体育館だ。もちろん、鴨志田との特訓を行うためである。

 

「特訓の時間だ!………って、あれ?」

 

体育館に着くと、そこには誰もいなかった。

普段ならバレー部の生徒たちが自主練をしているのに。

 

「うん?おお、桐崎か。悪いが今日はバレー部の連中はいないぞ」

 

いつの間に来ていたのか、鴨志田が後ろから話しかけてくる。キョトンとした声音からして、今日は誰も来ないと踏んでいたのだろう。

 

「休みですか?」

 

「昨日の今日だからな。バレー部は生徒会と先生方の監査が入ることになった。聞いてないか?お前も生徒会だろう」

 

「知りませんね」

 

聞いていないだけだが。まぁ多分、校長が新島真を送りつけて終わる案件なのだろう。

 

「まあ、なんでもいいですよ。今日も特訓しましょう」

 

「随分とやる気だな。分かった、俺は準備を済ませて来るから、お前もアップしておけよ」

 

「はーい」

 

こうまでして俺が特訓を受けたい理由はひとつだ。

それは、昨日の失態──────パレス内での気絶という、あわや死んでいたかもしれない状況。

そのようなことは、仲間のいない現状では二度とはあってはならない。奇跡は起こらないから奇跡なのだ。

 

「準備は出来てるようだな」

 

アップを終え、柔軟をしていると鴨志田がバレーボールのカゴを押してやってきた。広くコートを使えるので、今日は存分に動けそうだ。

 

「具合はもう平気なのか?」

 

「もちろんです。一回寝れば全回復ですから」

 

結局、そこからはいつものように鴨志田のスパイクやサーブを受けながら雑談をするなどした。

レベルが上がった影響か、以前よりもアクロバティックな動きができるようになり、レシーブはほぼ完璧に出来るようになっていた。

 

「悪くない。桐崎、そろそろブロックもやってみるか?」

 

「ふぅ…オネシャアス!」

 

「よし。まずは、どのくらいの高さまで跳べばいいかを教えてやる。バンザイしてみろ」

 

言われた通りバンザイのポーズを取ると、鴨志田が俺の腰あたりを掴み、軽々と持ち上げる。すごい力だ。

 

「この辺りまで跳べ。お前なら出来るだろう」

 

「ええもちろん」

 

鴨志田が跳び、俺も跳ぶ。腕の高さはやや向こうが勝る。鴨志田の視線が俺の僅か後方に行く。狙うべきは、一点。

 

「ここだあぁああうぐわぁぁぁぁぁぁぁ」

 

しっかり押し負け、派手にずっこける。まだまだ精進が足りなかったようだ。

 

「もう一本!」

 

俺が鴨志田のスパイクをブロックしても横転しなくなったのは、下校時間ギリギリになってからだった。

いい汗をかいた、と満足していると、見覚えのある影がひとつ。我が校の生徒会長にして上司、新島真だ。

 

「会長、いたんですか」

 

「いるわよ。それで…バレー部は今活動停止のはずだけれど?何をしていたのか聞いてもいいかしら」

 

姉譲りのキツめのオーラを出して歩み寄って来る新島真の前に、鴨志田がずいと出てきて俺と新島真の間に挟まる。

 

「桐崎はどうやら、熱心なバレーファンらしくてな。俺にどうしても直接教わりたいってんで、相手してやってただけだ。生徒の希望を叶えてやるのは教師の本懐ってやつじゃないのか?」

 

「はあ。体育の授業でよくないですか?それに、鈴井さんの件でバレー部は休止中のはず…」

 

「会長、私はバレー部じゃないし、カモシダ先生は今はバレー部の顧問じゃなくて、私の先生ですよ。だから関係ないんですよ」

 

「……まぁ、それならいいけど。あんまり遅くなりすぎないようにね。鴨志田先生も、よろしくお願いします」

 

流石に分が悪いと思ったのか、はたまた疑うべきこともなかったからなのか、すごすごと引き下がる新島真を尻目に、俺はタオルで顔を拭く。

鴨志田は俺を見てニヤリと悪戯っぽく笑ってきたので、その意図を理解して俺も微笑み返す。

 

変に睨みを効かされるよりは、共謀して庇った方がいいということだ。

 

 

帰り道。俺は吉祥寺のドラッグストアに寄っていた。

理由はもちろん、回復アイテムを補充するためだ。

武見医院を使えない以上、俺の持ちうる回復手段は市販の薬品だけになる。

効果は薄いが、無いよりはマシというもの。

 

「ワケアリン…α。うん、これでいいや」

 

薬を手に取ろうとすると、たまたま同じものを取ろうとしたのか、誰かと手が当たる。

 

「あ、すみません…」

 

「あれ?桐崎さん?」

 

聞き覚えのある声で名前を呼ばれ、その方を向いてみると────明智吾郎が、キョトン顔で俺を見ていた。

こいつ、メメントスとかパレス攻略で使う気だな?俺もそうだが。

 

「げ、探偵王子サマじゃないですか。なんでドラッグストアなんかに?」

 

「タレントみたいなことをしていると、胃痛がね…」

 

だが、明智吾郎が買い付けているということは、この薬には効き目があるということだ。ある程度の指標としてもいいのかもしれないな。

明智吾郎が仕入れている装備の出所だとか、そういったものを特定できれば、俺もいい感じに強くなれるかもしれない。

 

「ちなみに、桐崎さんは?」

 

「乙女にそれを言わせる気ですかぁ?デリカシーないっすよ探偵王子」

 

「あ、ごめん…!そういうつもりはなかったんだけど」

 

こういう時に誤魔化しが効かせられるのは、うら若き乙女の特権だな。いや、男にも聞くもんじゃないだろと言われればそうだが。

 

「……でも、なんでそんなに買う必要があるんだい?」

 

「買えるから…?」

 

「50個近くカゴに放り込んでおいて、聞くなっていうのは通らないんじゃないかな。」

 

流石にか。俺は買える時に買えるものは全部買っておく派なので、おそらく探索で多用することになるだろう回復アイテムを大量に仕入れようと思ったのだが、怪しすぎたようだ。

 

「いやあ、まあ。買いためておくに越したことはないじゃないですか」

 

「ODでもする気かい?それなら、僕には君を止める理由が出来るんだけど。知り合いを死なせるのは忍びないからね」

 

獅童の手下の始末屋の分際でよくもそんな事が言えるものだ。だが、そういった態度は隠して、俺は仕方なく薬を棚に戻す。

結局、その場で買えたのは三つだけだった。

 

「このあと、時間があったら少し付き合わないかい?この辺りに、行きつけのジャズバーがあるんだ」

 

「うーん……いいですよ。付き合いましょうか」

 

本当なら、このあと吉祥寺の寺で精神修行をしてSPを上げようと思っていたのだが、全体的にステータスを伸ばしたりスキルを獲得できるジャズバーに案内してくれるというのなら願ったり叶ったりだ。

 

「意外だな、君は僕を避けてると思ったのに。」

 

「ジャズは嫌いではないので」

 

「それは良かった。」

 

明智吾郎に連れられ、ジャズバーに着くとイカつめのマスターが出迎える。入場料とドリンク料を払い、ノンアルコールカクテルを受け取る。

 

「そわそわしてるね。こういう所来るのは初めてかい?」

 

「そりゃまあ。普通の高校生は来ませんよこんなとこ」

 

出されたカクテルを口に含んで、乾いたのどを潤す。明智吾郎といると緊張で喉が渇くのだ。

カクテルは柑橘風味の複雑な味だ。俺には理解できないが、まあ美味しいんじゃなかろうか。

 

「そろそろ本題に入ろうか。」

 

「ん」

 

カクテルのほかに、軽いツマミのようなものも食べる。やや塩辛い豆みたいなものだ。前世でもこんな所には来なかったから、新鮮でならない。

そう思うと、カクテルもなんだか大人の味に思えて仕方ない──────。

 

「認知訶学、って知ってるかい?」

 

「……………知らないですね」

 

危ねえ。カクテルを吹き出しかけた。

こいつ、どういうつもりだ?もしかして、さっきの薬大量購入のアレでイセカイに入り浸ってるのがバレてるとか?

あり得るな。俺だって前提知識があるとはいえ気づけたんだ。天才・明智吾郎が気づかない道理はない。

 

「知ってる反応だね。まあ、どの道知ってる前提で話させてもらうけど。」

 

ダメだ、こいつ上手(うわて)すぎる。さすが探偵。

表情の変化や動作から他人の思考を読むのに長けている。俺みたいな素人じゃ太刀打ちできようもない。

 

「認知訶学は、大雑把に言えば認知が現実に与える影響を調べる学問でね。たとえば、本当は叩かれていないのに、偽物の腕を殴られたら痛い……みたいな」

 

「はあ…確かに認知訶学ではそうですけど」

 

「ところが、最近の研究で『認知の世界』が存在するらしい、ってことが分かったんだよ。そして、その世界の主を殺せば、元になった人物も死ぬ。どうだい?奇妙だろう」

 

「そりゃあ怖い話ですね…?」

 

何が言いたいんだ、こいつ。いや、言っている意味は分かるが、何がしたいんだ?これを俺に伝えて、何になる?

 

「僕も、探偵として少し気になっていてね。もし、認知の世界なんてのが存在して、そこで人を殺したなら……誰にも証拠を掴むことなんか出来やしない。何せ、理屈の上での世界だからね」

 

「でも、アンタは探偵だ。それを解くのが仕事でしょう」

 

「耳が痛いね。なんでこの事を桐崎さんに話したのか────それは、精神暴走事件の手がかりを持っているかもしれないと思ったからなんだ。」

 

「………はい?」

 

分からない。

俺にはこいつが何を考えているのか分からない。

自分で起こした事件を自分で解決してるってのはまぁ原作にもある流れだから、まだ理解できる。

だが、なぜそこに俺が絡んでくる?

 

「君は以前、興味深い事を言っていたね。『精神暴走事件の犯人は、考えなしの殺し屋のような存在』…って。でも、僕はそうじゃないと考えている。」

 

「はあ…」

 

「そして、君はこうも言った。『もし、校長先生が死ぬとしたら心臓麻痺だ』とも。これは、全ての精神暴走事件の被害者の死因と一致する。言いたいことはもう分かるだろう?」

 

「……私が怪しい?」

 

恐る恐るそう言うと、明智吾郎は意外そうな顔をして、それからはにかんだ。

 

「不正解。尋問みたいでちょっと緊張させちゃったかな?正解は、君に僕の捜査を手伝って欲しい…ってこと。」

 

今度は俺の方が呆気に取られて、呆然とする。

捜査を手伝う?俺が?明智吾郎の?

 

「な、なんで…?」

 

半ば震えながら聞くと、明智吾郎は明け透けに言う。

 

「君が買おうとしてた鎮痛剤。あれの中には、向精神剤も微量に入ってる。それを大量摂取することで、意図的にオーバードーズを引き起こし、認知の世界に入れるかもしれない……桐崎さんはそう考えて、ドラッグストアにいた。違うかい?」

 

「……そうです。」

 

何か、盛大に勘違いされている気がするが…怪盗かつペルソナ使いだとバレるよりかはマシだ。今日から俺は、「認知訶学に詳しい謎の学生A」だ。

生徒会の仕事と関連付ければ、なんとか誤魔化せるだろう。

 

「残念だけど、オーバードーズをして精神を壊されるよりは君にちゃんと調査をして欲しいんだ。そっちの方が近道にも思えるしね」

 

「調査?何があるんです?認知の世界なんて机上の空論なんでしょう?」

 

「事件が起こったら、それを一緒に解決しに来てくれるだけで良いよ。君のことだ、面白い発見をしてくれるだろうと思ってね」

 

嘘だな。こいつ、俺を怪しいと思って近くに置いて監視するつもりだ。ほぼ黒と見られていて間違いはないだろう。

多分、明智吾郎はすでにメメントスかどこかで俺のシャドウを捜索した後なのだろう。その上で見つからなかったから、直接監視することにしたのだ。

 

「ふうん………分かりました、いいですよ」

 

それなら、乗ってやろうじゃないか。

別に常日頃から監視されていたとして、盗聴器もカメラもイセカイでは型なしだ。明智吾郎もそれに気付いているだろう。

故に、日常生活での監視はほぼ無しと見て間違いない。

 

「決まりだね。それじゃあ、協力成立ってことで」

 

図らずもコープ解禁か。

おそらく長い付き合いになるのだし、向こうが俺を監視するのなら、俺も明智吾郎を利用し尽くしてやろう。

 

「おっと、ちょうど冴さんから連絡だ。事件だ……早速行こうか?」

 

「お会計はよろしくネ、探偵王子。私手持ちないから。」

 

「構わないよ」

 

タクシーを拾い、新島冴の待つ取調室へと急ぐ。話を聞くに、痴漢冤罪を掛けられた男が暴れて傷害事件に発展したようだ。

だが、容疑者にはその記憶がないと言う。

 

「ちょっと遅かったわね、どこに居たの?それに…桐崎さんまで連れてきて。部外者は立ち入り禁止よ」

 

取調室に着くと、新島冴が俺の方を見て眉を顰める。美人のしかめ面は怖いな。

 

「それが、部外者じゃなくなったんですよ。冴さん。桐崎さんは僕の探偵助手になったんですよ」

 

「あれ、本気だったの?…そう、ならいいわ。被疑者はこの中にいるから、協力して頂戴。現行犯だから有罪は確定しているけれど、精神暴走事件と関わりがあるかもしれないもの」

 

取調室の中には、椅子に座らされ、項垂れ、頭を抱えながらぶつぶつ言っている男が一人。見覚えのない人物だ。

おそらく、原作には登場すらしなかった一般犯罪者だろう。

 

「さて、桐崎さん。まずは君が尋問してみるんだ。」

 

お手並み拝見、とでも言うように見てくる明智吾郎を無視しつつ、男の対面に座る。

とりあえず意識をハッキリさせるために、目の前で手を叩いてみる。

 

「はっ!?あ、ああ……君は?」

 

「通りすがりの探偵助手です。話を聞かせてもらえるかな?もしかしたら、あんたは無罪になるかもしれない」

 

「わ、分からない……分からないんだ。痴漢冤罪を掛けられたと思ったら、急に視界が真っ黒になって…最後に覚えているのは………うう……」

 

考えられるのは二通り。

元からどこか精神がおかしかったか、もしくは明智吾郎にぶっ壊されたか。まあ、どうせ後者なのだろうが。

 

「それなら────」

 

結局、その場では適当にいくつか質問をしたが、まともな返答は返ってこなかった。

以前にも似たようなことがあったのか、と言う質問には「なかった」の一点張り。十中八九、明智吾郎の仕業に違いない。

 

 

「と、いうわけで。やって来ましたメメントス」

 

明智吾郎が帰ったのを見届けてから、俺はこっそりメメントスに来ていた。

これまでは明智吾郎を恐れてなかなか入れなかったが、どうせバレているなら今更問題ないだろう。それに、俺とてある程度強くなったわけだし、シャドウにブチ殺されることなんて滅多にないはずだ。

 

「痴漢冤罪ぐらいなら、まぁ浅いとこにいるだろ…」

 

メメントスのシャドウは今の俺からしてみれば雑魚ばかりだ。特に、思想奪われし路の敵は一番強くてもスライムぐらいだ。

物理攻撃主体だと厳しいが、ザグレウスは魔法メインだ。

 

「にしてもデカいなあ、シャドウ」

 

銃剣でシャドウを滅多刺しにしながらも、俯瞰して戦場を見れる。うようよとシャドウが集まって来ているが、俺の危機感知感覚には異常はない。

全員、俺より弱いからだ。イキリではない。事実だ。

 

「……おっ、エスカレーターだ。この先にいるのか────うおっ!?」

 

下の階から、ものすごい凶悪な気配を感じる。

シャドウを雑魚呼ばわりしてイキっていた自分がバカらしくなるほどの強大な気配。おそらくは、暴走させられた謎の男・シャドウだろうか。

 

「行くっきゃないでしょ…」

 

エレベーターを降り、シャドウを片付けつつ大きな歪みの前に立つ。

この先に、謎の男・シャドウがいるはずだ。

 

「ふぅ……いくぞ。」

 

一歩、足を踏み入れると、歪みの中に飲み込まれる感覚と共に、袋小路へと入り込む。

 

「いたな。えーっと、アンタは…痴漢冤罪の人!」

 

「誰が痴漢だ!!!!僕は、何もやってない!」

 

「それは分かってる…だから、アンタを解放しに来たんだよ。名乗りな、シャドウ」

 

銃剣を向けると、シャドウは絶叫するように言う。

 

「僕は松田梅太の影……真なる我。僕は、僕を迫害する全てを殺して、退かして、家に帰るんだよ!」

 

シャドウ松田がその皮を破り、その姿を変える。

姿自体は苦渋の鍛治師(イッポンダタラ)だが……実際は分からない。

だが、見た目通りなら奴は氷に弱いはずだ。

 

「松田さん……アンタの歪まされた心、奪ってやるよ!」

 

「う、ぐ……ウォオオオオオオオオオッ!!!!」

 

変身すると同時に、黒いオーラに包まれ、暴れ出すシャドウ松田。明智吾郎のロキの力だ。すでに暴走状態だったのを、理性で押さえていたのか。

 

「行くぜ」

 

「アアアアッ!」

 

俺目掛けてスレッジハンマーを喰らわせようとしてくるのを避け、側面に回りながら斬りつける。物理耐性は無さそうだが……。

 

「赤いオーラ…タルカジャか!」

 

シャドウ松田が赤いオーラに包まれ、威圧感が増す。危機感知感覚が、目の前の敵は危険だと告げてくる。

 

「くそっ、ターン制になってやがるな……攻めさせてもらうッ!」

 

加速し、翻弄するように銃剣を二刀流に構えて斬りつけまくる。鈍重な動きで俺を捉えることは出来ないらしい。

勝った────そう思ったのも束の間、軌道を読まれていたのか、シャドウ松田のハンマーが脇腹に突き刺さる。

 

「……っ、かはっ!?」

 

斬りつけた勢いのまま転がるが、致命傷には遠い。

今のは、おそらく「カウンタ」だろう。スレッジハンマーならもっと痛かったはずだ。

 

「オオオオオ!!!!」

 

「やばっ!?」

 

シャドウ松田が武器を振り回して暴れまくる。一撃は武器で受け、二撃目はバク転回避、三撃目はスウェーで回避し、返す刀の一撃を喰らわせる。

反撃を貰わないように斬り抜けて、俺自身の仮面を引き剥がす。

 

「ペルソナァッ!!!」

 

相手に祝福は効きずらいと踏み、メギドを放つ。

光球がレーザーを放ち、シャドウ松田にダメージを与えていく。

苦しそうに呻くシャドウ松田の頭にワイヤーフックを飛ばし、跳躍する。

 

「帰ろう、松田さん!家に!アンタは悪くないんだ!」

 

イッポンダタラは銃の効き目が薄い────が、ゼロ距離で撃ち抜かれたら、致命傷になるに決まってる!

 

「目を覚ませ、この野郎!」

 

BLAM!BLAM!BLAM!

 

三発の銃声と共に、シャドウ松田の姿が元に戻っていく。

光と共に、優しそうな青年の姿が現れ、泣きそうな顔で俺を見ている。

 

「思い出したよ……黒い仮面の男が、僕の前に現れたんだ。僕は、僕の中から弾き飛ばされて…気がついたら、こんなんになっちゃった」

 

「ああ。もう自分の中に帰っていいんだぜ」

 

「ありがとう……君も、気をつけて──────」

 

やはり、明智吾郎の仕業か。予想はしていたし、どうなるかも知っていたが……許せんな。

別に、俺は松田さんについて何かを知ってるわけじゃない。なんなら、名前だってさっき知ったぐらいだ。

だが────松田さんのように狂わされた人が大勢いる、というのは駄目だ。

 

「許せねえ……許せねえぜ、獅童正義…」

 

明智吾郎だって、被害者の一人だ。

真の大悪・獅童正義をなんとかしないことには、似たようなことは続く。

そのためにも、俺はジョーカーが正しい道を歩むように手を貸さないといけないのだ。言われたからじゃない。自分の意思で。

 

「ん、これは……盆栽セット?なんで…?松田だから?」

 

とりあえず持ち帰り、家に置いてみる。

世話をすれば器用と魅力が上がりそうだが、やり方がわからない。

明日、本屋で盆栽のやり方が書いてある本でも買ってみようかな。

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