鬼舞辻無惨になった男が生き抜く話   作:野生の生蛇

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沢山の感想、誤字報告ありがとうございます
感想の方ちょっと多すぎて返信頑張ります。
鬼滅編思ったより短く終わりそうです


第5話

 

 鬼舞辻無惨は混乱の最中にあった。なんで炭治郎と珠世が密談してるねん、と。

 そもそもの話無惨は特に何もしていないのである。悪事らしい悪事をしていない。人食いはしているが。

 なので無惨にとっては炭治郎に恨まれる筋合いが無いのだ。

 

 だが、それでも恨まれているというならば可能性はあるにはある。

 

(──竈門炭治郎も私と同じ転生者?)

 

 それならば納得がいく。未来から来た同胞であれば、鬼舞辻無惨に殺意を抱いても可笑しくはない。

 

 ならば、先手を打って先に殺しておくべきか。

 転生者ならば何かしらの異能を得ている可能性もある。確実性を高めるために上弦全員で殺しに行くべきか。

 

(──いや。早とちりしすぎだな)

 

 ふぅ、と一旦無惨は息を吐き、念話を繋げる。

 

『鳴女。お前の能力で──』

 

 鬼舞辻無惨は次なる手を打つ。己の平穏を守るために。

 

 

 ■

 

 鬼殺隊について多少は聞いていた炭治郎は東京のある場所に向かっていた。

 太陽がさんさんと輝く昼に、炭治郎は義勇から聞いていた道場に来ていた。

 東京のちょっと郊外にある道場だ。

 

「失礼しまーす!」

 

 炭治郎は堂々とドアを開けて中に入る。

 

 中には十人程鍛錬中の者達がいる。全員男だ。

 白い胴着を着ており、木刀を手に鍛錬している。

 

 彼らを指導しているのは、炭治郎の知らない女性だ。

 鬼殺隊の隊服を着ている。長い黒髪に蝶の髪飾りを付けている。

 

「あら? 入隊希望者かしら」

「初めまして! 俺、竈門炭治郎っていいます! 人を探しに来ました!」

 

 炭治郎は元気よく挨拶をする。

 

「人を? 誰を探しているのかしら」

「胡蝶しのぶさんを探しています! いますか?」

 

 カナエは自身の妹を探しているという炭治郎に疑問を抱く。

 こんな少年と妹が何の関係があるのだろうか、と。

 

「しのぶなら、そろそろ帰って来るはずよ。ここで待つ?」

「はい、待たせていただきます」

 

 という訳で炭治郎は邪魔にならないよう隅に座って稽古を見る。

 稽古の風景はよくある光景だが、呼吸法が使われている。

 

 ──だが、全体的な練度は低い。

 

 カナエの実力は柱相応にあるだろうが、他の者達の力は低い。選別試験を生き残れるか不安になるレベルだ。

 だが、この世界では選別試験などそもやっていないので気にするだけ無駄だろう。

 

 そうして待っていると道場のドアが開き、女性が入って来る。

 小柄だが胸は大きい女性、胡蝶しのぶだ。

 

 炭治郎は立ち上がりしのぶに近づく。

 

「しのぶさん!」

「──炭治郎君。来てたんですか」

 

 名乗ってもいないのに名を当てて来た。つまりはしのぶも前の記憶があるのだと炭治郎は歓喜する。

 しのぶは姉であるカナエに声をかける。

 

「姉さん、少しこの子と話したいことがあるの。席を外してもいいかしら?」

「ええ、大丈夫よ」

「ありがとう、炭治郎君、こっちに来て」

「はい!」

 

 しのぶは炭治郎を連れて道場を出て隣の屋敷まで歩く。

 屋敷に入るとしのぶは「ちょっと待っててください」と炭治郎に言い奥から茶を持ってくる。

 

 縁側に二人は座り、茶をすする。

 

「しのぶさんも鬼殺隊に入っているんですか?」

 

 一息ついたところで、炭治郎がしのぶに問いかける。

 

「……いいえ。私は鬼殺隊に入っていません」

「そうですか……理由を聞いても?」

「……私は、入る理由が無くなったからです。私が鬼殺隊に入った理由を語っても?」

「ええ、大丈夫です」

「……私が鬼殺隊に入ったのは、両親を殺した鬼が憎かったから。鬼を全滅させたかったから。だけど、今回は両親は生きているし、鬼も居ない。入る動機がありませんでした」

「……お姉さんは?」

「姉は、前の記憶が幼い頃からあったようで、気づいたら鬼殺隊に入っていました。ただ、今は剣術道場の師範をしていますが」

「……鬼殺隊は今は鬼を狩っていないんですか?」

「えぇ。今は剣術道場と、ちょっとした用心棒みたいな事をしているようです。鬼と戦う事はせず、それどころか鬼の存在を知るのは柱だけらしいですよ」

「そうですか……前と大分違うんですね」

「えぇ……炭治郎君は鬼殺隊に入りに?」

「いえ、今回の鬼殺隊がどうなっているのか気になったのと……柱の方達は鬼舞辻無惨をどうしたいのか気になって」

「鬼舞辻無惨。全ての元凶ですか……今の私は、奴を態々追い、殺しに行く気にはなれません。殺す動機が足りないのです……他の方々も似たようなものだと思いますよ」

「というと、悲鳴嶼さんや不死川さんたちも?」

「えぇ。他の方達も元を辿れば鬼による被害を受けたことをきっかけに鬼殺隊に入りました。その鬼が居ない以上、前の記憶を元に鬼殺隊に入りはしても、無惨を追う気はあまりないようです……といっても、目の前に居たら殺すぐらいの殺意はあるようですが」

「……そうですか。実は、鬼舞辻無惨と会いました」

「そういえば前も浅草で遭遇したと言っていましたね。どうでした?」

「無惨からは人食い鬼の匂いがしました。ですが……珠世さんは無惨は悪人のみを食い殺しているといいました」

「……そこを突くのは難しいですね。それを言ってしまえば私達も"前"で悪鬼とはいえ元人間を殺している。罪状は似たようなものです」

 

 途端、会話が止まる。

 長い沈黙が流れる。

 

 炭治郎は考える。今生でも無惨を滅ぼすべきか、と。

 二十五で死んだこと。視力を奪われ、左腕も奪われた。妹を鬼にされた。

 その恨みはある。だが、それは──"前"の鬼舞辻無惨に対してだ。

 

 何も知らないであろう今回の無惨に対していだいていい恨みつらみではない、と炭治郎は結論づけた。

 

 ただ、気がかりなのはお館様にかけられた呪いについてだ。

 無惨が鬼になった事で天罰を受けたことによる呪いだ。それだけはどうにかしたいと思う。

 そのことをしのぶの話すとしのぶは「うーん」と悩み始めた。

 

「お館様の呪い……今になって考えると、あれは本当に呪いだったのでしょうか?」

「というと?」

「何かしらの病気、病であるという可能性です……勿論前の時もそれらを検証したのです。結局は私では対処不能とわかっただけですが」

「でしたら……他のよりよいお医者様に見てもらうというのは?」

「それぐらいお館様もしていたはずです……結局前と今でも現代ではどうしようもない病だとしかわかっていないんですよ」

 

 そこで二人はうーんと再び悩む。

 

「あ、そうだ珠世さん。鬼を人に戻す薬を作れた珠世さんに頼めばいいんじゃないですか?」

「……珠世さんですか。けどそれ無惨にも頼むことになりません?」

「だったら無惨──さんにも頼めばいいんです! 今の無惨……さんは悪鬼ではないですし!」

「……取りあえず私から柱の方達に確認とるので、それ待ってくださいね?」

 

 という訳で、炭治郎は再び柱たちに会う事が決まった。

 

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