ただのモブ(大嘘)がTSした原作主人公の代わりに逆転世界で頑張る話 ―女性特効ラスボスは俺が倒す―   作:つくもいつき

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第15話 盾乙女への見舞い

【水の王国上級冒険者学校】第△△△期 共有型魔導板帳

※本媒体は学校非公認・自主運営の情報共有帳です。使用は各自の責任において行ってください。

 

 

【本板】

1012:名無しの銀髪推し ID:〇〇〇 日時: □□:□□ 

 

久しぶりー(*'ω'*)

 

 

 

1013:名無しの乙女 ID:〇〇〇 日時: □□:□□ 

 

>1012 名無しの銀髪推し 

うわっ!?

 

 

 

1014:名無しの乙女 ID:〇〇〇 日時: □□:□□ 

 

>1012 名無しの銀髪推し 

生きとったんかいワレェ!

 

 

 

1015:名無しの銀髪推し ID:〇〇〇 日時: □□:□□

 

>1013

>1014

殺さないで笑 

なんかしばらく見なかったらめっちゃ番号飛んでね? なんかあった?

私の魔導板帳じゃページ足んないっす笑

 

 

 

1020:名無しの情報屋 ID:〇〇〇 日時: □□:□□

 

>1015 名無しの銀髪推し 

 

最近の話題

★モブ班 対 アリス班 ダンジョン攻略非公式賭博(締切:翌週三日目)

★アリスはカナメにお熱? アリカナ時代到来

★カーラ・ソードマン絶許運動 ←イマココ

 

 

 

1022:名無しの銀髪推し ID:〇〇〇 日時: □□:□□

 

>1020 名無しの情報屋

え……?

 

 

 

1024:鋼鉄の守護者 ID:〇〇〇 日時: □□:□□

 

>1020 名無しの情報屋

まとめ情報助かる

 

 

 

1025:名無しの銀髪推し ID:〇〇〇 日時: □□:□□

 

そ、そのカーラ・ソードマンって子は何をしたんです?

 

 

 

1027:名無しの乙女 ID:〇〇〇 日時: □□:□□

 

>1025 名無しの銀髪推し

 

カーラ・ソードマンの悪行一覧

●第一回実技で男子二人班に編成(女子だけ班が三つある中)

●その一回目でモブくんに救出+おんぶされる

●第二回実技で一人だけ男子三人班に編成(他班全部女子だけ)

●男子三人が怪我療養中のカーラの様子を見に行く予定 ← 最新

 

カーラ・ソードマンを許すな

 

 

 

1028:名無しの銀髪推し ID:〇〇〇 日時: □□:□□

 

>1027 

ファ!?

 

 

 

1030:名無しの乙女 ID:〇〇〇 日時: □□:□□

 

>1027 

ヤバい、マジでムカついてきた

 

 

 

1032:名無しの乙女 ID:〇〇〇 日時: □□:□□

 

>1027

剣の名門ソードマン家の三女様ってだけでこんな優遇されるの?

ほんとツライ

 

 

 

1044:女の子になったカナメ推し ID:〇〇〇 日時: □□:□□

 

まあ、本人悪くないけどね

編成決めてるの教師だし

 

 

 

1047:名無しの乙女 ID:〇〇〇 日時: □□:□□

 

そもそも男子と女子の比率が偏ってるから編成歪むの当たり前では?

つまり男子増やしてっス!

 

 

 

1051:名無しの銀髪推し ID:〇〇〇 日時: □□:□□

 

と、とんでもないやつだな、カーラ・ソードマン!!

私も呪っとくわ( ̄▽ ̄;)

 

用事あるからまたなお前ら(;^ω^)

 

 

 

 

……この記録帳はここで終わっている……

 

 

 

 

◆□◆

 

 

 

 

 春シーズン第一週の六日目、午後。

 俺はレンとシモンを連れ、女子寮の一つ〈貴族寮〉を訪れた。

 

 

「ここがあの女の寮……。もうあいつは大丈夫なのか?」

 

 

「ああ。校医のハートウェル先生の話だと、自宅で運動する分には問題ない程度に回復してるってさ。後は本人から聞いてくれって」

 

 

 大きなこうもり傘を片手で持ち上げる。

 立ち止まって、俺は寮を見上げた。

 俺の背にくっつくように歩いていた二人も、(なら)って足を止める。

 

 

 玄関ポーチを支えるのは、白大理石で組まれた束柱。

 柱頭の女神像を一瞥(いちべつ)しつつ、俺たちは重厚な扉へ歩を進めた。

 

 

 両開きの扉は灰緑色に磨かれた精霊樹材。中央には金箔の『波と歯車』の校章が刻まれていた。

 俺はこうもり傘を畳み、ノブを握った。

 重厚な質量が掌に伝わる。

 背後のレンとシモンが小さく息を呑んだ。

 

 

 扉が内側へと開き、暖かなオレンジ色の魔導灯が滲み出る。

 足を踏み入れると、靴音を吸い込む深紅の絨毯が広がり、真上にはシャンデリアが揺れていた。天窓から差す薄光を受けて宝石の滴が色彩を散らす。

 

 

 右手の壁には銀糸で縁取った年代物のタペストリー――歴代首席の家紋が刺繍され、〈貴族寮〉の長い歴史を誇示している。

 

 

 カウンター状の受付の奥で寮監付きの侍女が控える。

 艶黒の燕尾服に銀糸の飾緒、襟元には水晶のタイピン。

 俺たちを迎えると、彼女は微笑みと同時に浅く礼を取った。

 

 

「ご来寮ありがとうございます。ソードマン様より面会許可を頂いております。どうぞ談話室でお待ちくださいませ」

 

 

 深紅の絨毯に沿って右へ折れると、香木の甘い残り香が漂う談話室に出た。

 三人掛けのソファに腰を下ろす。ちらと俺は隣の二人の様子を眺めた。

 

 

 手前のシモンはすぐに姿勢を正し、膝の上で黒革手袋の皺をせわしなく伸ばしている。

 奥に座るレンは足を組み替えながら、シモンに目配せ──彼と視線が合うと途端に窓の外へ逸らした。

 

 

 雨音と柱時計の針の音が重なる。

 二人の挙動が落ち着きを取り戻すまで、まだ時間がかかりそうだった。

 

 

 

 

 談話室に来てから十五分ほど経過して、ようやく目当ての女生徒が姿を現した。

 

 

 亜麻色の三つ編みを揺らし、息を切らせながら彼女が精霊樹材の扉を押し開く。

 ランタンの揺れる光が金基調の髪に反射し、雨を連れ込んだ微かな冷気が談話室の暖炉熱と混ざり合った。

 

 

「うえっ!? あっ、うっ……!?」

 

 

 半身だけ覗かせたカーラは、琥珀色の瞳を左右に忙しく走らせて奇声を漏らす。

 

 

 彼女の纏う学校指定のジャケットは、胸元の布が軋むほど張りつめ、制服が縮んで見える。健康的に引き締まった脚は魔繊維タイツに包まれ、革仕立ての黒靴が深紅絨毯を踏むたびに低く沈んだ。

 

 

「――ソードマン」

 

 

「おっす。お邪魔してます」

 

 

「こんにちは、ソードマン様」

 

 

「ふあっ」

 

 

 順に挨拶した途端、扉がばたんと閉まる。

 玄関側から届く雨音が遮断され、室内には火晶石がパチと小さく爆ぜる音だけが残った。

 俺たちは顔を見合わせ、立ち上がって扉をそっと開ける。

 

 

「ここここういう時はどうすればいいんだ……! わ、わからない。そ、そうだ! だ、〈男性と仲良くなる方法 ~学校編~〉を見れば……!」

 

 

 廊下側では、しゃがんだカーラの姿があった。

 腰の携帯袋から小冊子を慌てて取り出し、ランタンの光に照らされながら、本を読み込んでいる。

 三つ編みが肩に落ち、精霊樹の板壁に映る影が落ち着きなく揺れた。

 

 

 俺は並んで顔を覗かせたレンとシモンを見る。

 視線が合うと、二人はそろって顎を突き出し、『行け』という合図を送ってきた。

 

 

 俺は肩をすくめる。

 大きな背中に声を掛けた。

 

 

「おーい」

 

 

「ひゃぁあ!?」

 

 

 カーラの肩が跳ねる。

 彼女が振り向いた瞬間に鼻先が触れ合いそうな距離まで近づいた。

 色白の肌が、紅潮する。

 談話室の甘い香りに混じり、彼女の温かな吐息が頬を撫でた。

 

 

 体熱が一気に上がった。

 思わず息を呑む。

 静かな談話室に、俺とカーラの鼓動さえ感じ取れるほどの間が落ちる。

 

 

「――きゅう」

 

 

「あ」

 

 

 カーラが絨毯に倒れ込むのを、俺はじっと眺めた。

 

 

 

 

 談話室の空いたソファにカーラが腰かける。

 対面に座った俺たちは、侍女が運んできたハーブティーを口に含んでは、カーラが落ち着くのを待った。

 

 

 カーラが深呼吸を繰り返す。

 胸元に手を添え、目をつむり、肩を複数回上下させる。

 

 

「す、すまない。落ち着いた……」

 

 

「お、おう」

 

 

 ようやく目を開けたと思えば、目は伏せたまま。

 原作ゲームでも引っ込み思案で内向的な性格として描かれていたが、この世界ではそれがことさら強調されているように見えた。

 

 

「そ、その……。改めて、礼を言う……」

 

 

「ん?」

 

 

「わ、わ、私を、助け出してくれたと、聞いた……! そうだ……! し、死ぬかと思った瞬間、君の赤い瞳を、見たんだ……! ――あ、ありがとう、アイカータくん……」

 

 

 太ももの上で握り拳を固めて、しどろもどろになりながら、カーラは言った。

 一瞬だけ彼女は顔を上げて俺の瞳を見る。

 潤んだ琥珀色の目を見て、俺は頬をひとかきした。

 

 

「モブでいいよ。生きていてくれて、本当によかった。――なあ?」

 

 

 俺は両隣に座る二人を肘で小突く。

 俯いていたレンとシモンは、恐る恐る口を開いた。

 

 

「――礼を言うのは、俺とシモンのほうだ」

 

 

「え……?」

 

 

「〈激怒の兎〉に襲われた時……。お前が、身体を張って残ってくれたおかげで、俺とシモンは生き延びれた。――本当に、ありがとう」

 

 

「あの時のあなたは、誰よりも、勇敢でした。ありがとうございます、ソードマン様」

 

 

「あ……」

 

 

 カーラは緩やかに両手を持ち上げて、顔を覆った。 

 指の間から滂沱(ぼうだ)の涙をこぼす。

 彼女にとってのダンジョン遠征が、今ようやく終わったのだ。

 命を懸けた成果を、彼女は噛みしめている。

 

 

 シモンがポケットから緑基調のハンカチを取り出し、カーラに差し出す。

 わずかに指先が震えているのを俺は見逃さなかった。

 

 

 過去に起きたと聞く〈女性不信〉を超えて、シモンは腕を伸ばしている。

 その横顔を見ると、一筋の雫が目尻から流れていた。

 同じようにレンも目を伏せながらも、袖で目元をこすっている。

 

 

 俺は口角を上げる。

 ハンカチを二つ携帯袋から取り出し、両隣の男子の膝に置いた。

 

 

 

 

 火晶ランタンがぱちりと弾け、精霊樹材の腰壁に橙の光が揺らぐ。

 ハーブティーの香りが談話室に薄く漂い、外の霧雨は窓硝子を細く叩いていた。

 

 

「ようやく落ち着いたところで……。本題いいか?」

 

 

 深緑ベルベットのソファに深く腰を沈める。

 俺が切り出すと、向かいのカーラは慌てて背筋を伸ばした。

 

 

「す、すまない」

 

 

「ふん……」

 

 

 隣のレンが翡翠色の髪をかき上げながら鼻を鳴らす。

 それを見たカーラの琥珀の瞳が揺れ、三つ編みが肩先で跳ねた。

 シモンは湯気の立つカップを盆に戻して静観している。

 

 

 俺は指を組んで、両腕を太ももの上に置く。

 前傾姿勢をとりながら、カーラに話しかけた。

 

 

「えー。俺、レン、シモン、カーラ。俺たちはこの度、来週のダンジョン攻略で同じパーティとなりました」

 

 

「! ……そ、それ。ほ、ほんとなんだな?」

 

 

「耳が早いな。午前中に発表あったばっかなのに」

 

 

「――ま、魔導板帳で連絡もらったんだ!」

 

 

「? まあ、いいや。で、俺たちは――」

 

 

「あ、そ、その……!」

 

 

 言いかけた俺の言葉を追い抜き、カーラが身を乗り出してくる。

 ソファのクッションが深く沈み、彼女の影がテーブルに重なった。

 片眉を上げ、俺は続きを促す。

 

 

「……来週の遠征は、その、辞退しようと、思ってて」

 

 

 背後の火晶ランタンが小さく鳴る。

 その音は、やけに大きく俺の耳に届いた。

 

 

「――はい?」

 

 

「はあ?」

 

 

 俺とレンの声が談話室に響く。

 精霊樹の梁がその反響を柔らかく吸い込み、部屋は再び静寂に沈む。

 俯いて青ざめるカーラの表情を、俺は橙光の中でじっと測り続けた。

 

 

 





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