ただのモブ(大嘘)がTSした原作主人公の代わりに逆転世界で頑張る話 ―女性特効ラスボスは俺が倒す― 作:つくもいつき
【水の王国上級冒険者学校】第△△△期 共有型魔導板帳
※本媒体は学校非公認・自主運営の情報共有帳です。使用は各自の責任において行ってください。
【本板】
1012:名無しの銀髪推し ID:〇〇〇 日時: □□:□□
久しぶりー(*'ω'*)
1013:名無しの乙女 ID:〇〇〇 日時: □□:□□
>1012 名無しの銀髪推し
うわっ!?
1014:名無しの乙女 ID:〇〇〇 日時: □□:□□
>1012 名無しの銀髪推し
生きとったんかいワレェ!
1015:名無しの銀髪推し ID:〇〇〇 日時: □□:□□
>1013
>1014
殺さないで笑
なんかしばらく見なかったらめっちゃ番号飛んでね? なんかあった?
私の魔導板帳じゃページ足んないっす笑
1020:名無しの情報屋 ID:〇〇〇 日時: □□:□□
>1015 名無しの銀髪推し
最近の話題
★モブ班 対 アリス班 ダンジョン攻略非公式賭博(締切:翌週三日目)
★アリスはカナメにお熱? アリカナ時代到来
★カーラ・ソードマン絶許運動 ←イマココ
1022:名無しの銀髪推し ID:〇〇〇 日時: □□:□□
>1020 名無しの情報屋
え……?
1024:鋼鉄の守護者 ID:〇〇〇 日時: □□:□□
>1020 名無しの情報屋
まとめ情報助かる
1025:名無しの銀髪推し ID:〇〇〇 日時: □□:□□
そ、そのカーラ・ソードマンって子は何をしたんです?
1027:名無しの乙女 ID:〇〇〇 日時: □□:□□
>1025 名無しの銀髪推し
カーラ・ソードマンの悪行一覧
●第一回実技で男子ふたり班に編成(女子だけ班が三つある中)
●その一回目でモブくんに救出+おんぶされる
●第二回実技でひとりだけ男子三人班に編成(他班全部女子だけ)
●男子三人が怪我療養中のカーラの様子を見に行く予定 ← 最新
カーラ・ソードマンを許すな
1028:名無しの銀髪推し ID:〇〇〇 日時: □□:□□
>1027
ファ!?
1030:名無しの乙女 ID:〇〇〇 日時: □□:□□
>1027
ヤバい、マジでムカついてきた
1032:名無しの乙女 ID:〇〇〇 日時: □□:□□
>1027
剣の名門ソードマン家の三女様ってだけでこんな優遇されるの?
ほんとツライ
1044:女の子になったカナメ推し ID:〇〇〇 日時: □□:□□
まあ、本人悪くないけどね
編成決めてるの教師だし
1047:名無しの乙女 ID:〇〇〇 日時: □□:□□
そもそも男子と女子の比率が偏ってるから編成歪むの当たり前では?
つまり男子増やしてっス!
1051:名無しの銀髪推し ID:〇〇〇 日時: □□:□□
と、とんでもないやつだな、カーラ・ソードマン!!
私も呪っとくわ( ̄▽ ̄;)
用事あるからまたなお前ら(;^ω^)
……この記録帳はここで終わっている……
◆□◆
春シーズン第一週の六日目、午後。
アリスとの勝負を受けてから、まだ数時間。俺はレンとシモンを連れ、班の四人目──カーラ・ソードマンを見舞うため、女子寮のひとつ〈貴族寮〉を訪れた。
「ここが……ソードマンのいる寮か。もう、あいつは大丈夫なのか?」
俺が差す大ぶりのこうもり傘の下、レンが白亜の玄関をにらむ。
強気な口ぶりとは裏腹に、レンもシモンも、さっきから俺の背にぴたりとついていた。
「ああ。校医のハートウェル先生の話だと、軽く身体を動かすぶんには問題ないところまで回復してるってさ。あとは本人から聞いてくれって」
俺は傘をずらし、玄関ポーチを見上げた。白大理石の束柱。その柱頭から、女神像が男子三人を値踏みするように見下ろしている。
生まれのよい女生徒たちが住まう寮の圧に、俺は少しばかり
「行くか」
玄関ポーチを進み、傘を畳む。灰緑色に磨かれた精霊樹材の両開き扉を前にする。扉の中央には、金箔で彩られた『波と歯車』の校章が刻まれていた。
ノブを回して扉を押す。ずしりとした重みが腕にかかる。背後でふたりが揃って息を呑んだ。
扉の隙間から、魔導灯の暖かなオレンジ色の光がこぼれる。
足を踏み入れると、深紅の絨毯が靴音を吸い込んだ。頭上では、天窓の薄光を受けたシャンデリアの宝石が淡い色を散らしている。
壁のタペストリーには歴代首席の家紋が縫い取られ、〈貴族寮〉の格式をこれでもかと見せつけてきた。
カウンター状の受付の奥で寮監付きの侍女が控える。
艶黒の燕尾服姿の侍女が俺たちを迎え、微笑んで浅く一礼した。
「お待ちしておりました。ソードマン様から面会の許可を頂いております。どうぞ談話室でお待ちくださいませ」
談話室に案内される。
俺たちは三人掛けのソファに並んで腰を下ろす。鼻先を、香木の甘い残り香がかすめた。居心地の悪さを覚え、ちらと俺は隣のふたりの様子を眺める。
隣のシモンは背筋を伸ばし、膝の上で黒革手袋の皺を何度も撫でている。
奥に座るレンは、足を組み替えてはシモンを横目でうかがい、目が合うたび窓の外へ顔を背けた。
そういえば、と俺は思い出す。
(──最初の実習で、ふたりはカーラと同じパーティだったな。パーティメンバーを〈激怒の兎〉から逃がすために、カーラはひとりで残って死にかけた。……顔を合わせるのはあれ以来だろうから、ふたりともどう切り出すか悩んでるのかもな)
雨音と柱時計の針の音が重なる。
ふたりが落ち着きを取り戻すまで、まだ時間がかかりそうだった。
□
談話室に来てから十五分ほど経過しただろうか。
ようやく目当ての女生徒が姿を現した。
精霊樹材の扉が勢いよく開く。
亜麻色の三つ編みを揺らし、息を切らせたカーラが半身を覗かせた。廊下の冷気が、暖炉で温まった室内へ流れ込む。
「うえっ!? あっ、うっ……!?」
俺たち三人を認めるなり、カーラは琥珀色の瞳を忙しく左右へ泳がせた。
胸元で窮屈そうに張る学校指定のジャケットも、スカートの下──魔繊維タイツに包まれた長い脚も、半開きの扉には隠れきっていない。
頬の血色も悪くない。
見たところ身体はもう大丈夫そうに、俺には見えた。
「──ソードマン」
「おっす。お邪魔してます」
「こんにちは、ソードマン様」
レン、俺、シモンの順に声を掛ける。
「ふあっ」
カーラは短い声を漏らし、扉をばたんと閉めた。
雨音が遠のき、暖炉の火晶石がぱちりと爆ぜる。
俺たちは顔を見合わせた。
揃って扉へ近づき、俺がそっとノブを回す。
「ここここういう時はどうすればいいんだ……! わ、わからない。そ、そうだ! だ、〈男性と仲良くなる方法 ~学校編~〉を見れば……!」
扉のすぐ脇で、カーラがしゃがんでいた。
腰の携帯袋から引っ張り出した小冊子を、カーラは廊下のランタンの下で食い入るように読んでいる。
おさげが肩から垂れ、板壁に映る影まで落ち着きなく揺れていた。
俺は並んで顔を覗かせたレンとシモンを見る。
視線が合うと、ふたりはそろって顎を突き出し、『行け』という合図を送ってきた。
俺は肩をすくめる。
小冊子を覗き込むように顔を近づけてから、声を掛けた。
「おーい」
「ひゃぁあ!?」
カーラの肩が跳ねる。勢いよくこちらに振り向いた。
「!?」
鼻先が触れそうな距離で、琥珀色の瞳とかち合う。
カーラの色白の頬が、みるみる赤く染まった。
俺は俺で、美女と超絶至近距離となり、内心で叫び散らかす。
(う、うおぉおおおおおい!? 息子が反り立つ、いいにおいぃいいいいいいいいっ!!!)
香木の甘い残り香に混じり、カーラの温かな吐息が俺の頬を撫でる。
体熱が一気に上がった。最早、体が燃えそうである。
思わず息を呑む。
静まり返った廊下で、自分の鼓動ばかりがやけに大きく聞こえた。
「──きゅう」
「あ」
先に耐えられなくなったのは、カーラのようだった。
肩から力が抜け、大きな身体がこちらへかたむく。
俺は反射的に両腕を伸ばした。
〈激怒の兎〉の交戦前と同じように、倒れ込んできた彼女を抱き留めた。
□
目を覚ましたカーラは、談話室の空いたソファに腰を下ろした。
俺たちも対面の三人掛けに戻り、侍女が運んだハーブティーを口にしながら、彼女の呼吸が整うのを待つ。
カーラは胸元に手を添え、何度か深く息を吐いた。
「す、すまない。落ち着いた……」
「お、おう」
そうは言うものの、彼女の目は手元へ落ちたままだ。
原作ゲームでも引っ込み思案だったが、この世界ではさらに輪をかけて内向的らしい。
カーラがようやく顔を上げる。彼女は太ももの上で、拳を固めていた。
「そ、その……。改めて、礼を言う……」
「ん?」
「わ、わ、私を、助け出してくれたのは、君だと聞いた……! そうだ……! し、死ぬかと思った瞬間、君の赤い瞳を、見たんだ……! ──あ、ありがとう、アイカータくん……」
しどろもどろになりながら、カーラは言った。
潤んだ琥珀色の瞳と、一瞬だけ視線が合う。カーラはすぐにまた顔を伏せた。俺もなんだか気恥ずかしくなり、頬をかく。
「モブでいいよ。生きていてくれて、本当によかった。──なあ?」
俺は両隣に座るふたりを肘で小突く。
レンはうつむいたまま唇を結び、シモンは黒革手袋の皺を撫でていた。先に口を開いたのはレンだった。
「──礼を言うのは、俺とシモンのほうだ」
「え……?」
「〈激怒の兎〉に襲われた時……。お前が俺たちを逃がすために、ひとりで残ってくれた。そのおかげで、俺とシモンは生き延びれた。──本当に、ありがとう」
シモンも続く。
「あの時のあなたは、誰よりも、勇敢でした。ありがとうございます、ソードマン様」
「あ……」
カーラの喉から、かすれた声が漏れた。
彼女は顔を覆う。指の隙間から涙が伝っていた。
カーラにとってのダンジョン遠征が、いまようやく終わったのだ。
命を懸けた成果を、彼女は噛みしめている。
シモンがポケットから緑基調のハンカチを取り出し、カーラへ差し出す。
黒革手袋の指先が、わずかに震えている。それでも、シモンは差し出した腕を引かなかった。
横顔をよく見ると、シモンの頬にも、ひと筋の涙が流れていた。
レンは顔を背けながら、袖で乱暴に目元をぬぐっている。
俺は口角を上げる。何も言わず、腰の携帯袋からハンカチを二枚取り出す。
レンとシモンの膝へ一枚ずつ、俺はハンカチをそっと置いた。
□
壁に吊るした火晶ランタン内の石がぱちりと弾け、精霊樹材の腰壁に
ハーブティーの湯気が細くなるころ、三人ともようやく落ち着きを取り戻していた。
「そろそろ、本題に入っていいか?」
深緑ベルベットのソファに俺は深く腰を沈める。
俺が切り出すと、向かいのカーラは慌てて背筋を伸ばした。
「す、すまない」
「ふん……」
隣でレンが、濡れた目元を隠すように顔を背けて鼻を鳴らす。
シモンもカップを小皿へ置いて、静かに姿勢を正した。
「えー、改めまして。来週行われる二回目のダンジョン実習は、俺、レン、シモン、カーラの四人で組むことになりました」
「! ……そ、それ。ほ、ほんとなんだな?」
「耳が早いな。午前中に発表あったばっかなのに」
「──ま、魔導板帳で連絡もらったんだ!」
「? まあ、いいや。なら話は早い。で、俺たちは──」
「あ、そ、その……!」
カーラが俺の言葉を
ソファのクッションが深く沈み、彼女の影がテーブルに重なる。
片眉を上げ、俺は続きを待つ。
「……来週の遠征は、その。……辞退しようと、思ってて」
火晶ランタンが、またぱちりと弾けた。
さっきまでと同じ音が、今度はやけに大きく俺の耳へ届く。
「──はい?」
「はあ?」
俺とレンの声が談話室に響く。
精霊樹の
俯いて青ざめるカーラの表情を、俺は橙色の光の中でじっと測り続けた。