チ──チ──チ──チ
暗い暗い海の底。
おれが何者なのか────わからない。
思い出そうとしても霧で覆われたミタイに何も見えない。
でも、少なくとも人じゃない。
人だったら海の中にこんなにも長時間生きていられないからだ。
身体は今も動かない。
否、そもそも身体があるのかさえもわからない。
わかるのはただ一つ海の中にいることだけであった。
…せめて何か暇をつぶせるモノでも欲しいな。
そう思った時には目の前にプロジェクターで映し出されたかのような景色が広がる。
船──否、戦艦だ。
この戦艦をおれは知っている。
違う、
わたしは戦艦、超戦艦。
大和型の超戦艦「葦原」だ。
意識が覚醒していく。
空気が気泡が瞬く間に溢れていく。
その中でただ一つの命令がわたしを起動させた。
『アドミラリティ・コードより命令を受領。』
『人類文明の消滅を防ぐ範囲で怪獣を制御・観測対象とせよ。』
『怪獣との交戦を通じて人類の行動適応度を評価せよ。』
◆
辺りには何もない海の上。
月の光に照らされて
霧の艦隊──FOG FLEET。
…ただ、
人類には観測すらされていない未知の艦隊。
見た目こそ旧型艦のオーバーテクノロジーの塊ともいえる艦体が目覚めた超戦艦に呼応するように動き出していく。
だが、それに呼応したのは霧の艦隊だけではなかった。
海に軋めく反響音。
一艦の霧の駆逐艦に、
鈍い雲が垂れ込める灰の海に、波を裂く轟音が響いた。
次の瞬間、海面が盛り上がる。濃密な白い蒸気を伴って、巨大な影が姿を現した。
それは海を喰らう亀のような巨体――後にカガチと呼ばれる怪獣である。
灰色の背鰭が稲妻のように閃き、尾が水を叩くたび、百トン単位の海水が空に弾けた。
波間に現れたその船体は、駆逐艦アサギリの見た目をした艦艇が浮かんでいる。
だが、その艦体は一分の揺らぎはなく、灰色の海を滑るように進んでいく。
艦首の砲塔が動く。無人のはずの艦が、獣のように狙いを定めている。
カガチの咆哮が空を割った。
鼓膜を貫く重低音が響き、体表の亀裂からガスが噴出する。
まさしく雷雨とも聞き違えるほどの轟音。
白煙が海を覆い、瞬時に視界が曇る。
その中で、アサギリの周囲に薄い赤光が灯った。
爆ぜるように白煙がぶつかり、波が弾けた。
高熱が拡散して消えていく。
まるで世界そのものが拒絶しているかのように、カガチの攻撃は艦体に届かない。
次の瞬間、アサギリの砲口が閃光を放った。
圧縮された粒子が空気を裂き、音速の壁を叩き割る。
127mm荷電粒子砲――弾道を持たぬ直線の閃きが、カガチの甲羅を焼く。
カガチに叩きつられた爆発で、海が黒く染まる。
しかし、驚くべきはカガチか。大量の血を流しては蒸気を吐き、体をよじらせ、なおも突進を再開する。
怪獣の皮膚は焦げ爛れながらも、その動きを止めることはない。
800、600、400、200とアサギリの閃光を受けてなお迫り寄る生物の壁。
やがて、カガチの頭部が持ち上がる。喉奥の光が膨れ上がり、灼熱の奔流が吐き出された。
ガスが海面に触れた瞬間、爆発的に燃え上がる。
だが――アサギリは沈黙したまま、その中を進んだ。
赤の壁が轟音を呑み込み、ただアサギリは進撃する。
水煙の奥、艦首の影がわずかに傾く。
魚雷発射音――連続する衝撃が海中に走った。
右舷、三連装。
だが、それだけではない。間髪入れず、左舷からも発射。
六条の白い尾が、まるで意志を持つように海中を疾走する。
海底から吹き上げる気泡。
怪獣は悲鳴を上げるが如く、咆哮する。
カガチの左肩が裂け、濃い青の血が噴き出し、海水が沸騰する。
されど、怪獣は止まることを知らず、近づいていく。アサギリに飛びかかり、艦を掴まんとする。
だが、怪獣の思惑は頓挫することになった。
巨体と高重量による圧死。それを狙ったカガチであったが、それは光の壁と形容すべきものに阻まれていた。
高周波の唸り、力を押し合う。
怪獣の筋肉と、艦の演算による防壁。
だが、その瞬間、艦首から別の光が生まれた。
主砲が角度を変え、至近距離から撃ち抜く。
閃光が奔り、カガチの口腔部が爆ぜた。
──音はなかった。
光と共に、頭部の半分が消し飛ぶ。
カガチは呻き声を上げ、のたうち回る。
海が割れ、波が千切れ、雷鳴のような音が響く。
アサギリはかくや機械と思われるほど静かに後退し、砲口を下げた。
やがて、カガチの巨体は動きを止め、海の底へ沈む。
海面に広がる血潮がゆっくりと薄まり、風に流されていく。
残されたのは、一艦の沈黙者――灰色の艦だけだった。
その艦は、波一つ立てずに回頭し、霧の向こうへと姿を消した。
◆
「……なんだ、あれ……?」
土佐湾の東外海域。俺たちは怪獣の反応を追って上空を旋回していた。
海面に異様な光が立ち上がる。水柱じゃない、青白く光って、海が割れるみたいに盛り上がった。
「管制、こちらP-1山根、海上に異常反応。艦影確認。」
「了解、P-1映像送ってくれ。」
モニターをズームして凝視する。
そして視界が、信じられない光景に変わった。
艦首から、光線みたいなものが飛び出す。
海面を切り裂き、巨大な怪獣の背を叩く。
「ビームだ!あの艦、ビームを出してやがる!」
口に出した瞬間、機長が言った。
怪獣の体が吹き飛ぶ。水柱が上がり、海面が揺れる。
俺の体も機体も振動する。
「山根、ありゃなんだ? あの艦、耐えやがったぞ!」
俺は無線で管制に報告を入れる。
「管制、P-1山根、海上異常戦闘確認。例の艦は光線攻撃で怪獣撃破。映像全記録中。」
魚雷の軌跡も見えた。光を帯びて水中を突き進む。
怪獣が暴れ、咆哮が海と空を震わせる。
だがあの艦は淡々と回避し、攻撃を叩き込む。
汗が背中を伝う。
無線が応える。
「P-1、了解。情報は直ちに特殊災害対策室へ送信。安全を確保しつつ観測せよ。」
戦闘はあっという間に終わった。
怪獣は倒れ、海面は静まり返る。
オロチほどの大きさには及ばない怪獣でこそあったが、それを容易く。
それも単艦で行う軍艦。
それを信じたくはなかった。
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設定資料集
霧の艦隊
アドミラリティ・コードの命令に従う艦隊。本作品でも見た目こそ旧型艦だが、オーバーテクノロジーの塊である。
また、作中開始時点で目覚めた艦は十艦くらいなのでまだ艦隊と言える規模かは微妙である。
クラインフィールド
厳密には異なるが霧の艦隊が持つバリアのようなモノと思ってくれればそれでよし。
アドミラリティ・コード
霧の艦隊の最上位存在。本作品では、
◇
怪獣…名称 カガチ
体長 約120mほど
体重 13万トン
構造と防御性能
背面装甲:多層構造の硬質タンパク+シリカ混成生体装甲
ジェル状層:衝撃吸収・熱伝導制御機能あり。
腹部・鰓孔:装甲が薄く、外部からの攻撃に弱い。
特殊能力:化学反応性熱噴射
水中射程:300m/陸上射程:150m
内部で過酸化化学物質と金属触媒を反応させ、口から超高温ガスを射出することができる。
水中では泡膜に包まれた高温プラズマ流として噴出、対象の装甲を瞬時に酸化融解させる。
瞬間的な圧力上昇で周囲水温を数百度上昇させ、センサーや索敵装置を撹乱が可能。
備考
縄張り意識が強く、縄張りに入ったモノには基本的に容赦はしない。
モチーフ生物は亀とミイデラゴミムシ。
政治描写できるかな…
蒼き鋼のアルペジオ本編に出るメンタルモデルを出すかどうか
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出す
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出さない
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戦艦系は欲しい
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重巡系は欲しい