怪獣超戦艦   作:ロールクライ

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違和感

 

 

 

 

 

「何故私なんでしょう……?」

 

そう口にしたのはレパルスだった。

開口一番にそれを口にしたのは、ネルソン辺りに情報を共有されたのだろう。

 

何故、レパルスか、ねぇ……。

 

「そりゃ会いたかったから、かな。」

 

「なんです、それは。理由になっていないじゃないですか。」

 

実際、それ以上の理由はないんだなこれがとわたしは内心で呟いた。

怪獣調査の息抜きだ、なんて言えば一般的な霧のメンタルモデルたちには怒られるだろうし。

 

「じゃあ、話をしたかったから。もう、そんな警戒する必要なくない?コンゴウは簡単にお話してくれたよ?」

 

「コンゴウ……東洋方面第一巡行艦隊旗艦の方ですね。」

 

レパルスはそっと頷くと改めてわたしの方を見る。

 

「それで、どんなお話を?」

 

わたしはその言葉が聞きたかったと、自然と笑みを浮かべながら、服のポケットにしまっていた端末を手に取る。

そして、返答を待つ彼女に向けて端末を掲げた。

 

カシャ、という音がなる。

 

「じゃじゃーん。見てこれースマホ。」

 

「スマホ?ああ、人間のモバイル端末かしら。それに今のはカメラですね。」

 

「そそ、わたしたち自身には不要でも使ってみたくてね。」

 

そう言いながら、わたしは端末を軽く振った。

意味なんてない。

でも、人間のやることって大体そんなものだ。

 

「……わざわざ人間の模倣をする理由は何なのでしょうか?」

 

レパルスはそう言いながらも、視線は端末から外さない。

 

「理由?」

 

少しだけ考えるふりをして、わたしは肩をすくめる。

 

「特にない、かな。あえて言うなら、使わなくていいものを使う余裕があるのかどうか、試してる。」

 

「余裕……。」

 

「ねえ、レパルス。」

 

わたしは端末を操作して、さっき撮った写真を表示する。

そこにはロングドレスに眼鏡をかけたメイドの姿が写っていた。

 

「自分の顔、こうやって見たことある?」

 

「反射した自分ならば…。ただ、写真だとありません。」

 

否定はしない、というところか。

 

アドミラルティ・コードの命令はあくまで観測。

観測という以上、人類が作ったものと関わるのは彼女にとっては許容範囲内なのかもしれない。

 

まあ、こういう性格なのは()()で知っていたけど。

 

「で、本題。」

 

端末をポケットに戻して、わたしは話題を切り替えた。

 

「タカオの戦闘ログ、見たよね?」

 

「はい。」

 

ようやく本題か、と言わんばかりにレパルスの表情が引き締まる。

 

「はっきりに言えば異常です。けれど、あの停止行動はあなたが予想したように重力子を放つ侵食魚雷を子供だと認識したからでは?」

 

「まあ、あれはわたしがそう思っただけっていうか。分析した結果それしか怪獣が停止したことに説明がつかないっていうか。」

 

ね、っとレパルスに同意を求めながら艦橋の上を歩く。

 

「あいつらはね。頭がいいんだよ。メンタルモデルという人の真似事を始めたばっかりのわたしたちよりも。」

 

感情も、知覚も、全てはメンタルモデルができてから霧の艦隊はようやくそれを理解できる。

 

「わたしたちはまだ子供なの。常に辞書を引ける子供。乙女プラグインだとか、趣味だとか。そういうモノがないのならもっと未熟。」

 

「乙女プラグイン?」

 

聞き慣れない単語に戸惑うレパルスを無視して、わたしは艦橋から艦首へと軽く跳んだ。

 

「レパルス、わたしを怪しんでいるのはわかるけど、わたしはこの力が霧の艦隊の成長につながると思っている。」

 

「……。」

 

レパルスは返答を探すように、一瞬だけ視線を泳がせた。

……可愛いね。

 

「そもそも、怪しむという感覚すらメンタルモデルを作り出した故のモノだけどね。」

 

霧の艦隊にはもとよりそういう概念はなかった。

わたしの記憶いわく、感情も、そもそも人類と敵対するという概念すらなかった。

 

メンタルモデルができるまでは。

 

「ちょっと話はズレたけど。」

 

わたしは振り返って、レパルスを見る。

 

「わたしがやりたいのは、結局――怪獣と、人類と、そしてわたしたち自身が関わっていく中での霧の艦隊の成長だよ。」

 

まあ、それも────。

 

チ゛

 

瞬間、わたしの言葉が止まる。

 

「──っと。ヌエが出てきたか。」

 

「ヌエ…人間が発見した新種の怪獣ですね。」

 

レパルスは今、調べたのだろうか。

一瞬だけ視線を逸らしていたが……まあ、問題はない。

 

「わたしはこれでも東洋方面特殊作戦群の旗艦なんだから、いかないとね。レパルスも来る?」

 

「いえ、私は()()()()()()()()ですし、このまま人間を観測します。」

 

「……そう。」

 

おかしいな。

レパルスって東洋艦隊じゃなかったっけ?

いやまあ、ここは大西洋だけども。

 

これから移動するのかと思ったが、どうもそうじゃないらしい。

 

「どうされましたか?アシハラ。」

 

「いや、なんでもないよ。お話してくれてありがとう。また来るね。」

 

わたしがそう言った瞬間、レパルスはほんの少しだけ、嫌な顔をしていた。

 

……まあ、気のせいだろう。

 

 

 

 

 

 

会議室に集められた面々の空気は、ひどく重かった。

スクリーンには複数の海域が映し出され、それぞれに赤い警告表示が重なっている。

 

「怪獣が同時に現れたと?」

 

低く抑えた声で、星山総理が問いかける。

確認でしかない問いであることは、ここにいる全員が理解していた。

 

「はい、現在それぞれの場所に中国、フィリピン、オーストラリアの三ヵ国が対応しておりますが――」

 

報告官は一瞬、言葉を選ぶように間を置いた。

 

「正直なところ、解決の目途は立っていません。」

 

誰も驚きすらしない。が、誰も軽く受け止めることもできなかった。

 

「……そうか。」

 

短く息を吐き、星山総理は次の情報を求める。

 

「ディルフィスやバラグーダを配備している国は?」

 

「はい。アメリカとオーストラリアはすでに。」

 

その言葉に、何人かがわずかに眉を動かした。

 

「むう……。」

 

星山総理は腕を組み、視線をスクリーンから外さない。

 

「これも、ヌエの出現によるものなのか。」

 

「わかりません。」

 

報告官は即答した。

わからない、という事実だけがはっきりしている。

 

「肝心のヌエはイノワ共和国の領海に侵入。現在、アメリカ軍が対応しているとのことです。」

 

会議室に、かすかなざわめきが走る。

 

正直に言って過去の怪獣騒動は良くも悪くも一ヵ国でなんとかなるモノだった。

 

だが、今回は違った。

同時に、世界各地で出現した怪獣。

 

そして、現状最も大きい怪獣ヌエ。

 

完全な情報不足である。

 

「……今は、他国の対応を待ちましょう。」

 

星山総理はそう言って、結論を急がなかった。

焦って動けば、事態を悪化させる可能性の方が高い。

 

「念のため――TaPsを動かす準備をお願いします。」

 

 

 

 

 

 

「重力子パターン、解析。怪獣ヌエと判断~。人さんはヌエを駆除対象として攻撃を開始っと。」

 

軽い調子でそう告げながら、ミクマは一定距離を保ったままヌエを観測していた。

 

怪獣は霧の艦艇を敵対視する。

そう、アシハラから指導されていた通りに。

 

だから、近づかず刺激せずただ見ることに徹していた。

 

ヌエは現在、太平洋上の小さな島へと上陸を試みている。

それを阻止するため、怪獣対策の連合軍が動いた。

 

ミサイル、艦載機による爆撃、そして人類が編み出した対怪獣用魚雷バラグーダと次々に攻撃が放たれる。

 

だが――。

 

「……あれ?」

 

ミクマは、思わず演算のテンポを落とした。

 

米軍による攻撃は、見事なまでにヌエに当たらない。

 

──いや、誘導装置がイカレたのか。

 

「ありゃ?人さんの攻撃はじいてる。何あれ~?」

 

首を傾げるように、ミクマは演算ログをなぞる。

 

人類の誘導装置が壊れていようがどうでもいい。

それは別に誘導装置がイカレたのが関係がないと言うわけじゃないが。

 

「人さん、ジャミングされてんね~。」

 

近い現象で言うならデリンジャー現象か。

 

とはいえ、ミクマにそのような詳しい判断はできない。

 

アシハラのように考察するほど、ミクマは頭がよくないし、かといって人類のデータベースを調べてもヌエについて何かわかるわけじゃない。

強いて言うのならそれに近いことが起こっている程度しかわからない。

 

通信妨害。誘導妨害。

そして、ヌエに対してよく反応する重力子センサー。

 

チ゛

 

ミクマのコアが演算によりうねりをあげる。

 

「わからぬ。」

 

解析式をいくら並べても、既存の怪獣データとは一致しない。

もちろん、別種であるからそれは当たり前ではあるのはミクマも理解している。

 

だが、それにしてもこの重力子センサーの反応は異常なのだ。

 

「ふーん……。」

 

ミクマはそのまま、観測データをまとめると旗艦アシハラへと送信した。

 

送信を終えたミクマは、再び視線を戦場へと戻す。

 

「さてさて。人さんと怪獣さんの攻防……もうちょい観測してみますか~。」

 

そう呟きながら、重巡洋艦は静かに、戦場の外縁を漂い続けていた。

 

 

 

 

__________________________

 

 

 

 

 

怪獣自衛隊原作を見直していたら21巻に怪獣オロチの体重が掲載されていることが気が付いてしまった……。

670トンってなんじゃ?軽すぎないですかね?重力操作でもしてんのかな。それに比べて本作のオリジナル怪獣はかなり重い。

どうしましょうかね。

 

 

 

設定資料集

 

 

重力子センサー

重力波を読み取ることのできるセンサー。今回は少し無理矢理な感じもあるがヌエにも検知が可能であるモノとされている。

 

 

霧の重巡洋艦『三隈』

アルペジオ原作では最上は登場したが三隈は見当たらなかったので採用された。

アルペジオ原作でモガミはほとんど登場していないため何とも言えないが、少なくとも今回のミクマのような性格ではないと思われる。

メンタルモデルはアシハラの指示によって作成。

また、映画アルペジオのアシガラのように超重力砲を持たず、別の武装を持っている。

 

 

 

 

 

イノワ共和国

南太平洋に位置する架空国家。

怪獣自衛隊原作でも登場し、ヌエの出現に対して最も早くアメリカに要請していたことからアメリカの友好国と思われる。

 

 

 

(もうすでに数種類出しているけど)オリジナル怪獣の有無。

  • どんどんやっちゃてー
  • 好きなように
  • これ以上はやめてほしい。
  • 原作の怪獣を出し終わったなら…
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