遠い宇宙のバトンリレー   作:黒兎可

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一手、背中を押すのも役目

 

 

 

 

 

「────いやそれ、絶対微妙に違うだろ! リ○クにするならもっとパーツを合わせろってのッ!? あっははははははっはッ!!!」

「────あっ、zelda(ゼルダ)! お前、zeldaだろ! zeldaだよな! zeldaだって言え!」

 

 三月上旬某日、日本棋院にて。院生の和谷義高は師匠に言われた通り、「第七回ジュニア囲碁交流会」の記録係や運営のサポートとして来場していた。

 プロ棋士の森下茂男九段。その門下はほかにも、冴木光二四段が来ていたが、今回は午前の部、午後の部でそれぞれ小規模大会も開催されている。こども本因坊の予選も午後に同時開催される予定だが、目ぼしいものはないだろうと半ば投げやりだった。

 

 と、そんな彼の目に、とある対局が目に入る。

 子供同士の碁打ちに違いは無いのだが、片方はどこかで見たような。短いパーマに半眼でやる気はなさそうな目つき。……記憶を掘り返しても断言できない和谷だが、確か前回のこども名人戦優勝者だったか。こども本因坊は中学生以下対象だが、こども名人戦は小学生以下を対象とするので現状、一番強い小学生ということになるだろう。

 ────大会に出るのを自粛している塔矢アキラを除いては。

 

 まあ院生も参加するわけではないし、と去年まで小学生だった自分のこともふまえて肩をすくめる和谷。あくまで、それはアマチュア大会なのだから。本当に強いなら先生みたいにプロが声をかけて勉強会なりに呼ばれるだろうし、つまりはそういうことだ。

 そんな子が対戦している相手が、だいぶこう、恰好的に気になった。

 

 まず目を引くのは、サンタクロースみたいな緑色した帽子。

 真ん中分けの色の抜けた前髪。

 背中には百円ショップで売ってそうなソフビっぽい日本刀とおもちゃの鍋にちゃちなプラスチック製のおもちゃの弓…………、その恰好を見た瞬間、小声で彼は「リ○クかよ!?」と噴き出した。

 

 ちょうど、こども名人がその何とも言えない格好の子供に「ありません」と投了。お互い頭を下げた後、立ち上がったリ○クは突然刀を左手で抜いて、雑にポーズ決めて振り回せて背中に納刀……、全然納刀しきれておらず、たまらずこども名人の子が「入ってないから、こっちだこっち」と文句を垂れながらも世話を焼いて納刀を手伝ってあげていた。

 ここにきて和谷、限界を超える。

 

 ツッコミ許容量的なナニカが限界突破してしまったせいで、思わず叫んでしまった。何もかも違うわ左利きじゃないわで、○ルダの伝説的なコスプレを意図してるだろう男の子のそのあまりの雑さに全力でツッコミを入れてしまった。

 わいわいがやがやしている午前の部の交流会のおかげでその叫びはかき消されたものの、ぎょっとしたこども名人と一緒に、リン○もどきの子も自分を指さして何やら叫んでいた。

 和谷を指さして、お前はzeldaだろと。

 

「やっぱ来てたじゃんかー! どうして何か煮え切らない感じだったんだよー」

「……って、あー! お前、Hikaru5(ヒカル・ファイブ)か! 来てたのかよ!」

「…………えっ、何? ファイブ? アイドルユニットの名前か何か?」

 

 こども名人の彼の言葉に、Hikaru5こと進藤ヒカルと和谷は同時に噴き出した。

 違え違え、と手をぶんぶん振り回しながらも、何かツボってしまったらしく笑いが止まらない。

 

「えっと、アレ! ネット碁! ワールドのやつあるだろ? あれ最近始めたんだよ。で、ちょっと前に対戦して、チャットでやりとりした相手。院生だーってぽろっとゲロってたから、今日のイベントとか来るかなって思って」

「それでその恰好だったのか……。確かにそれなら反応しそうだけど、まんまと引っかかったわけだ」

 

 にやり、と笑うこども名人になんだかイラっとする和谷だったが。ものの見事に生真面目にヒカルの()()にツッコミを入れてしまったので何も言えない。

 そんな彼に「磯部もうちょっと言い方加減しろよー」などと言いながらも一緒に肩を組んで、和谷に無意味にピースを決めるヒカル。ほらほら、と煽られたこども名人・磯部も「えぇ……?」と困惑しながらも一緒にピースし、和谷の謎のいら立ちは増した。

 

「あ、あとファイブじゃなくてゴーな! (ゴー)

 俺、進藤ヒカルっていうから、進む(Go)と囲碁の碁で5!」

「安直だ……」

「いやまあ、恰好の規定とか全然ないからその衣装でも文句は言われなかったろうけどさぁ……」

 

 あきれる和谷の目の前で背負いものを外してバッグにしまい、ついでに帽子も脱ぐヒカル。その髪を見て「その色もしかして地毛かよ!?」と驚愕する和谷と「それは同感」と半眼で視線を送る磯部だった。

 

「で、どうする? 検討するか?」

「いや、別にいいよ。失着はどこだったかなんてわかりきってるから」

 

 肩をすくめる磯部であるが、表情はいくらか余裕がある。そんな彼を見て、ヒカルは少しばかりほっとしていた。

 

 

 

 もともと、この「ジュニア囲碁交流会」にヒカルが参加したのは、またしてもあかりのためだ。……交通費はともかく参加費が安かったというのも理由の一つだが(一人五百円とちょっと)、同年代くらいの相手と打って自分の棋力や打ち方を実感しようぜ、というのがヒカルの弁。

 あかりとしては「ヒカルと塔矢くんの打ち方だけわかればいいんだけど……」という感想であったが、それでもヒカルが推すのならということで、一緒にこの場にきていた。現在、別なテーブルでほかの女の子と一緒に難しい顔をしながら打っている。あの感じからして、大体棋力が同じくらいの子相手なのだろう。 

 

 さて。そんな中、子ども同士の対局を観戦してあかりの勉強に使えそうな棋譜はないかと物色していたヒカルであるが。その中で一人かなり荒い打ち方をしている子供がいたのが気にかかった。

 パーマ頭の男の子は、どこかイライラしたように、焦ったように棋力を振り回して、初心者の子どもだろうが誰だろうがとにかく叩き潰していった。

 

 少し面倒そうには思ったものの、このあたり自分も四十代以降は何回か囲碁のイベント運営側に回った立場である。泣きべそをかく子供に「フン」と鼻を鳴らしてあてこするような態度が気にかかり、その男の子に声をかけた。

 すなわち、それが磯部秀樹である。

 俺と打とうぜー、と軽く声をかければ、磯部はヒカルの顔を見て舌打ち。

 

『………いいけど、手は抜かないからな』

『いいぜいいぜ? 俺はまあ、楽しく打つけど』

 

 ヒカルの物言いにもイライラした様子の磯部は、食って掛かるように盤面を展開した。三連星、対するヒカルは()()()()()秀策流。

 アキラのようにヒカルの打ち方に「ちょっと古いか?」と違和感を覚えた表情だったが、そのまま気にせず打ち進めていった。

 打ちながらも、ヒカルは磯部に声をかけていた。交流会なので対局中にお互い問題がなければ会話禁止と言うこともないのだが、ふと打ちながらヒカルは気づいたことがあった。

 

『何っつーか、このナカデのヤヤコシイ感じ、名人ってかアキラみたいな────』

『────、と、塔矢アキラを知ってるのか!?』

 

 そこからは話が早かった。

 すでに互角以上に打っていた(※例によってヒカルからすれば、気づかれないようにした指導碁である)相手から、まさかの発言。共通の知り合いを見つけたというより怨敵を見つけたと言わんばかりの反応でヒカルに顔を向ける磯部。なんとなくだが、ヒカルはアキラが()()何かやらかしたことを察した。

 

『ふーん、つまり? こども名人で小学生ナンバー1になったけど、アキラが出場してない大会で一番になったって意味がないって食って掛かって、実際挑んだら返り討ちに遭ったと。……まー、アキラはアマって言ってもアレだぞ? 塔矢名人が面倒見てる純粋培養の()()()()()()()()おかっぱみたいなモンだからなあ。

 気持ちは分かるけど』

『分かるのか……』

『アレだろ? なんっつーか、全く期待してない目っつーか、見限った目っつーか、興味もないような目っつーか。昔からアイツそういうとこあるからなー』

『昔から?』

『おっと、悪い悪い言葉の綾』

『ことばのあや…………?』

 

 やや語彙が小学生離れしてるヒカルであるが、そのあたりは仕方ないとして。

 

 後年、名前呼びするようになってからお互い時折()()()に出かけるようになった際、小さいころのアキラの話は少し聞いたことがあるヒカル。父、塔矢行洋がやっていた碁をすれば、父親ともっと接する時間が増えるのではないか。ずっと常に対局のことばかり考えている父の興味を自分に向けられるのではないか。幼いながらも切実な関心の機微であり、まさしく実際アキラが打ちたいと懇願すれば、父は朗らかに笑ったとか何とか。

 それ以降、自分の心を抑圧したりしながら打ち続けた先に、その棋力は勉強会に来ている大人────アキラからすればと言う意味で────たちにだんだんと並んでいった。それに応じて父もまた誉めてくれるし、ますますアキラが碁にのめりこんでいくのも当然の話。

 そうこうしているうちに、アキラ自身もまた碁そのものの楽しさに目覚め、そしてヒカル(佐為)との対局に至ったのだ。……つまり棋力が自分より低い相手は、付き合いがないと全く記憶されてないということである。

 なお、その話まで思い出した状態で酔ったアキラは「いつか話すと言っていた君のあの棋力、本因坊秀策と君との関係を今ここで話せ進藤ォ!」と何故か緒方のモノマネのようなしゃべりかたをしてヒカルの胸倉をつかみ上げたり、絡み酒な酔い方をみせてヒカルを爆笑させ。こんなコンディションで話せるわけないだろと落ち着けようとしたら、碁盤に一手一手打つのではなく口頭で読み上げながら殴りかかってくる始末。ヒカルも負けじと一手一手読み上げながら殴り返したりと。

 お互い格闘技をやってる訳でもなく、アキラは特に身体の動かし方は熟達していないこともあって、怪我をするようなレベルの傷は残らなかったのだが、そのあたりは割愛。

 

『お前、えっと、進藤は塔矢アキラと……』

『打った。というか、打ってる打ってる。友達だし』

『アイツの、友達…………』

『別に大した話じゃねーよ。だって所詮、俺たち小六(しょーろく)だろ? 何かきっかけがあればいけるって』

 

 なお、ヒカルが測った磯部の棋力はアマチュア一段あるかないかなので、当然アキラに追いすがれる=興味を持たれるのはかなり難しいのだが。

 

『その時のことに腹立ってたのか?』

『……負けたのにイライラしてるってのはあるけど、それ以上に』

『ん?』

『アイツ、打ってた時に…………「大したことないな」って顔したんだ』

 

 それがたまらなく悔しかったと。

 だからこそ、それが先ほどまでの当たり散らすような碁に出ていたと。

 

『進藤、棋力はボクより上だろ? 打っててなんとなくだけど、わかる』

『────へぇ、センスあるじゃん』

『茶化すなよ。センスあるって言われたって、おまえとか、塔矢みたいにはなれないのはよくわかる』

 

 そう、言いながらも現在進行形で中央との連絡を断たれ、全体に平等に攻めなければ活路が見いだせないような「均質な」盤面にさらされて、磯部は頭を抱えている。

 単純なようでいて、定石で考えても()()()()()()()()()手が思いつくが、そのどれも先の展開を読もうとするといきなり霧に包まれたように見通せなくなる。少なくとも小学生じゃ負けなし、大人でも(親の知り合いだが)教えを乞うような自分相手に、完全にわけのわからない盤面を構成することがどれだけ難しいかはわかっているつもりだ。

 

 そんな磯部に、ヒカルは言う。

 

『お前は嫌かもしれないけど、多分それはアキラと打ったからわかるようになったんだと思うぜ』

『塔矢と?』

『そ! さっき言ってたけど、アキラと打ってた時は気が付いたら負けたって感じだったんだろ? それはつまり、磯部の今の棋力じゃ読み切れなかった部分があったってことだ。

 でも俺と今打っててそれが()()()()()()()()()()ってことは、やっぱりセンスあるぜお前』

『そうか……?』

 

 一度折られたせいか、はたまたヒカルが口調こそ雑だが丁寧に気遣うよう打っているせいか。磯部は不思議と反発心を抱かず、ヒカルの言葉をすんなりと聞き入れている。

 ……このあたり、ヒカル自身も勉強会を主催して何度か教えたり、時にアキラを招いてお互い検討中に殴り合いになりそうになったり、一緒に呼んでいた和谷に必死の形相で止められたりというのを繰り返していた経験が生かされているかもしれないし、生かされていないかもしれなかった。

 

 そして終局。きれいにコミを入れて五目半の差をつけて勝ったヒカルに、少し不満そうだったものの、それでも磯部はニヤリと笑っていた。不思議と肩の力が抜けて、そう……なんとなく「自分の全部を相手に見せられた」、そんな碁を打てたと思った。

 アキラ相手には強みも弱みも出す暇もなく、ただひたすらに暴力的な棋力で一蹴されただけだったし。

 ……そして一つの疑念、もしやこの進藤は「こちらの強み」を全部出させたうえできれいに勝ってきたということは、本当はアキラよりも強いのではないかと言うパンドラの箱の存在に気づいたものの、流石にそれに手をかけるだけの勇気はなかった。

 

 代わりにアキラと磯部の棋譜を並べて、ヒカルがそれを見ながら検討するというのを少しやって。

 ヒカルが投了した段階の磯部の黒から再開し、巻き返せるかというのをやってみていた途中で来たのが和谷だった。

 

 

 

「こればっかりは仕方ないんだけど、磯部は高段者との対局が少ないって感じだよな。自分じゃない相手だったらどこに打つかって、考える経験が増えるともっと見えてくるかも。自分の棋力だけじゃなくって、経験っつーか、第六感みたいなのも働いてくるだろうし。

 ……こども本因坊戦、出るんだろ?」

「ああ」

「頑張れよ、上には元院生とか、準院生くらいの打ち手も結構いるだろうし」

 

 俺たちより年取ってるってだけでも読みがそれだけで深くなるから、けっこう侮れないぜ? と笑うヒカルに、言ってろ、と磯部もニヤリと笑って手を振った。

 ……なお、そんなヒカルにニヤニヤと嫌な笑みを浮かべてる和谷の姿。

 

「な、何だよzelda」

「別に~~~~? 良いとこあんじゃんか、進藤って」

「何だよその生温かい目~。えっと……」

「和谷でいいぜ? というか、お前は出ないんだな、こども本因坊」

「今日きた目的が目的だから、さ。……あと、今の段階で目立つとアキラ(あいつ)と同じことになっちまいそうだし」

「あいつ? ……って、目的って何の話だ?」

 

 2つあるけど、とヒカルはすっと和谷を指さす。

 俺!? と驚いて一歩引く和谷だったが「なんとなく年近そうだったし、友達っつーか碁仲間になれたらって思ってさ!」と目をきらきらさせて語られれば、なんとなくまんざらでもない。

 実際、その棋力が院生に届いていそうなヒカルのことを和谷も軽く見ることはなく、微妙に困惑しながらもその手を取った。

 そして、こっちだぜと歩きだすヒカルについていく和谷。……まだ森下九段は誰かと話しているので気づいていない。さぼるな! と文句をつけられないようにと、ひそかに祈っていた。 

 

 そしてたどり着いたのは、男の子よりも女の子たちが集中している側のスペースで。

 

「いやったー! すごい、初めて十九路で勝てた!」

「くやしい……、何か調子崩れた……!」

 

「あー、あかりまだまだビギナーだから想定する棋力間違えると、変になるときあるよなー」

 

 ヒカル! と、座席に座っていたあかりは立ち上がってその手をとりぴょんぴょんと跳ねる。やったやった! とテンション高く抱き着くが、身長差の関係もあってぐらりと倒れかけるヒカル。

 悔しがっていた対面の三つ編みの女の子は、ほほう、とヒカルとあかりの様子を見てメガネをきらりと光らせる。

 

 …………そして和谷は、どうしようもなく目からハイライトを消して顔色を青くしていた。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

「これが進藤ヒカル、か。……sai相手に追いすがったといっても、何だ? 読めばその手の意図は分かるが、明らかに子供が打つ読みの密度じゃない。名人との一局よりむしろ……」

 

 アキラ君には見せなくて正解だったか、と、緒方は部屋のリビングでマグネット碁盤に棋譜を並べて検討していた。

 テレビの方は()()が占領して、アイドルが農業やってるような()()番組をかけながら時々笑ったりしているが、そんな様子は目もくれない。

 

「saiは特に何もなくいつも通りに打っている。……いや、引き上げられているようにも見えるが、打ち筋自体は普段通り変わっていない。じゃあ、この進藤の打ち方は何だ?

 定石ならばここを打つならもっと対局が後半にもつれ込んでから…………、いや、これはまた何か別な意味があるのか? ……あぁッ! 検討するにしても俺一人だと考えがコチコチだ、年を取るのも考え物だな」

 

 あのジジイのようには絶対なってやるものか、とぶつくさ文句を垂れる緒方。

 そんな緒方は気分転換とばかりに棋譜を置き、パソコンをシャットダウンする。

 

 そのままリビングの大テーブルの方に歩いて椅子に座り、()()のコップを手に取り一口あおった。

 

「……ウーロン茶か」

「…………何よ、ウィスキーなんて小洒落たものないわよ? あなたが買ってこないから。酒の好みに煩いじゃない? タバコもだけど」

「別に文句を言ったわけじゃない。他意はないから無駄に意味を探すな」

「あら、人の行動にケチつける分にはものすごい勢いで被害妄想みたいなこと言うくせに?」

「酔ってる時の話をするなよ……」

 

 ため息をついた緒方は、ボタンを外す。暖房が直撃して、ちょっと熱くなってきたのだ。

 それに合わせて彼女は緒方のすぐ隣に身を寄せる。

 

 そして……、なんとなく緒方の脳裏に、ヒカルの「駄目だよ緒方さん、それは~」というあきれたようなからかいの表情が思いうかび、一瞬青筋がブチっとなりかけた。

 

「………………ハア。お前、また俺が碁を教えてやるって言ったら、やるか?」

「あら、才能のない凡人さんにはキョーミはないんじゃなかったの?」

「気まぐれだよ。ただ……」

「ただ?」

 

 …………小学生カップルにあてられた、とは死んでも言いたくないがゆえに、緒方はそれらしい理由を選んで口にする。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()。だから、俺一人で独占してるのも勿体なく思った。それだけだ」

「何よぅ、つまんない男」

 

 そこは気を利かせて私と打ちたいとか言えば? と笑う彼女に、定石の一つも結局覚えてないだろと愚痴る緒方だったが。

 

「秀策のコスミ、だったっけ? 名前だけは覚えたわよ。あなたがこっちに来たらずっとブツブツ言ってたから」

「名前だけじゃなあ」

「あら失礼しちゃう。だったら、このその辺に生えてるペンペン草みたいな(ワタクシ)めに一手ご教授してもらおうじゃないの」

「…………酔った時の俺はそこまでボロクソにけなしてたか?」

 

 さあね、とくすくす笑う彼女は、緒方の微妙にショックを受けたような表情の額を小突いた。

 

 

 

 

 

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