さすがお嬢様、テーブルマナーが完璧だ
「おかわりを」
空いた皿を横に積むお嬢様
「どうぞ」パチンッ
エリクサーが指を鳴らすとお嬢様の前に出来たての料理が現れた
「……」
それを完璧なテーブルマナーで食べ始める
食器がカチャカチャとなることは無い
完璧だ
「おかわりを」
「どうぞ」パチンっ
エリクサーとお嬢様の間に会話はない
先程まではお嬢様の方が顔を赤くしたり現れた皿に困惑したりしていたが
今はもう無言の領域だ
『どういう状況かしら』
「あら、セレビィ様、アキホ様の空腹を納めるためにエリクサーが食事を異世界から取り寄せているところです」
『そ、空間の力の使い方上手くなったわね』
「いえ、夫は自覚してません、異世界転売通信販売の熟練度の延長っぽいです、聞いた感じ」
『変な技術だけ上手くなったのね…』
エリクサーはゲーム知識で思い当たる料理を片っ端から呼び寄せている
そのため、レパートリーには限りがある
ホテル、屋台、コースメニュー
それらの料理も底を尽き
ついに同じ料理出し始めるか…
それか
いよいよカレーレシピに手を出そうかと考え始めたところだ
結論としてはカレーレシピを選んだ
「どうぞ」パチンっ
「…これは?」
「カレー料理、キョダイマックスカレーです」
「……………………………………い、いただきます」
研究所に着いた時には暴食の化身となっていたお嬢様・アキホ
ついにその手が鈍った
「……まぁ、悪くないわね」
一口、食べてからそう言葉を残すと黙々と食べ始めた
カトラリーが動くペースは変わらない
「……(まじかぁ)」『(えぇ…)』
お嬢様はルーまで綺麗に食べ終えると、ついにカトラリーを置いた
「ご馳走様でした」
「『「(ほっ…)」』」
「さて、エリクサー博士」
「あ、うん」
「わたくしの料理人にならないかしら」
「逆、逆だバカ、まだ食べ足りないのか?」
「なっ、わたくしになんて口の利き方を!」
少し怒り気味なエリクサーが丁寧に説明していく
お嬢様の体に何が起きたかを
ここ(破れた世界)に適応するために超能力者になっていること、おそらく食べた分だけ何かしら能力が使えるだろうこと
さっきの食費
ここを出たとき野垂れ死にする確率
そんな話をする程にお嬢様の顔は青ざめていく
「…そ、そんな、せっかく助かったと思ったのに!」
「楽天家だな、まぁ良いこと考えよう、何かしら超能力に目覚めたりしてないか?」
「…そういえば、先程から試したいことがありまして」
「ほう」
「傷ついたポケモンはいますか?」
「…いないかなぁ」
「恐らくポケモンの傷を癒すことが出来ると思うのですが、回復…回復薬がありますのに回復役は要りませんよね…ふふ…ふふふ…」
お嬢様は唐突に思いついたダジャレを披露し自分で笑っていた、ダメかもしれない
ギラティナの説明によれば、正気じゃない者が適応するために超能力を開花させる
そうすることでこの世界、破れた世界で過ごせるようになると言っていた
これがギラティナ曰く『救い』らしいが
まぁじゃしんだし…
つまり、アキホは狂っていた
それが超能力を得ながら回復したという訳だ
手で宙をパクパクさせながら虚ろな目で床を見てフフフ…と笑う疲れたお嬢様の姿を回復したと言うならだが
「さて、これからの話をする、色々と調べさせてもらっててね、是非、研究を手伝ってくれないか?
報酬として衣食住を提供しよう」
「手伝いだなんてめんど、コホン
衣食住、ですか、わたくしのお腹を満たせるとでも?」
「もうお腹減ったんです…?」
「減ってないです、だからそんな心配そうな表情はやめなさい
そもそも空腹感は最初のステーキで満ち足りてました、ただ、食べれば食べるほど充足感が胸を温めまして…つい…
ちなみに断るとどうなるのかしら」
「安全な街にポイする」
「選択肢がないじゃない!」
仲間が増えた!
◇
ライトニングにはメンバーの選定を頼んでいる
我らワールド団(仮)「ブラック団」(ブルーの声)
……ブラック団の最終目標はアルセウス討伐
どちらかと言えば悪の軍団側なのでまともな感性で裏切られてしまうのは困る
残る空席は2名
ゲーム知識は書き出し終わっているので条件に合致したトレーナーをあとは探してスカウトするだけだ
探すのはライトニングとパラサイトがしている
2人は各地方を巡り、同時に破れた世界への扉を開いては隠して貰っている
自分はと言うと、エリクサー博士としてかなりの頻度で講演会を開いている
開かしてもらっている…?
開けと圧をかけられている…?かな
まだこの世界の知識レベルが低いから需要があるのだろう
あまりやりすぎてアルセウスに目をつけられたら終わりだが
(目をつけることがあるのかは置いといて)
「コードネーム、グラトニーを与える」
「…分かりましたわ」
ムスッとした表情で返事をするお嬢様
色んな意味で規格外の存在を引き入れることになったが
まぁそれは人としてだ、トレーナーとしては想定内
これから対アルセウスに向けて伝説のポケモンを集めてもらえればなんだっていい
「それと、このポケモンを与える」
アクジキング
このポケモンは正直自分も把握しきれていない
学者たちにつつかれると困る存在だ
「有難く頂くわ」
「さて、別に入学式みたいな行事でもないんだが、せっかくみんないるし『団』の名前を決めよっか」
グラトニーにコードネームとポケモンを与える場にはメンバーのほとんどが集まっていた
全員が口を揃えて「一目見ようと思って」なのが示し合わせているのがバレバレだ
「さっきブラック団とか言ってたが、コードネームのブラックは用意がなくも無いぞ」ネクロズマとかね
「じゃあブルー団にしましょうよ」
先に言っといてくれない?と言わんばかりにムスッとしながらブルーが名乗りを上げる
いや、名乗られても困るが
「じゃあヴィクトリア団!」
「急に元気な応援団に聞こえてくるな」
「これってアクア団とマグマ団の時に名乗るんでしょ?じゃあなんだっけ…れく、れく、裂空団とかどう?」
なんだか弾の名前に聞こえなくもない
『レックウザか…ならプラチナ団でいいじゃないか』
「いや、それは言わないお約束……」
プラチナ団と言い出したのはギラティナだった
お前が1番偉いんだからお前の意見が重視されるんだよ?
「…よし!プラチナ団と名乗る」
『む、そんな簡単に決めていいのか?』
いいよ、どうせ悪党の間でしか広まらないでしょ
唐突に開かれたミーティングはそれで終わった
ミーティングが終わり、みんなが思い思いの行動をしだす
大体やかましいのはパラサイトで、今回もグラトニーに突っかかっている
「なんですの!?なんなんですの!やめ、その触手食いちぎりますわよ!?」
グラトニーも大概ヤバいやつに見えてきた
なんだろう、世間知らずの一言じゃ収まりきらない器が垣間見える
他にはブルーとカグヤが言い争いをしている
正妻戦争だなんだとよくちゃちゃが入っている
『おい、マスター』
「…マスターはブルーじゃないかな」
みんなの様子を眺めていたらミュウツーが話しかけてきた
こうやって話しかけられたのは始めてだ
ブルーのミュウツーはどうしてか自分を恐れるような目で見てくる
ミュウツーのイメージが『ニンゲン!復讐!』って感じだからどうにも違和感が拭えない
「どうかした?」
『新メンバーを作った、検討してくれ』
「…はい、そういうわけです」
話が見えてこない、ミュウツーは自信満々に言うと
その後ろに居たP2と窓越しに見えるギラティナも自信満々に見えた
それらを補足するようにライトニングがやってきた
…会議終わったんだけどなぁ