異世界家電量販店~魔改造した家電で僻地を開拓しちゃダメですか?~   作:荒井竜馬

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第25話 異世界のトイレ事情を未来へ

 

「よっし、こんな感じでいいかな」

 

 俺は仕様変更を行ったトイレを見て、トイレのレバーを引いて水を流した。

 

 便器の中にあった水は渦を巻いて便器の中に吸い込まれた後、トイレから機械音が聞こえてきて、その後に新しい水を便器の中に溜め始めた。そして、トイレの後方にできた新しいタンクにコロンと何かが落ちる音が聞こえた。

 

 俺はタンクのふたを開けて、『ほぅ』と感嘆の声を漏らす。

 

「すごいな。本当に想像した通りになった」

 

 俺は水洗トイレの仕様変更の完成度を前に、そんな独り言を呟いていた。

 

 水洗トイレの仕様変更は次の通りに行った。

 

 『死地』には『家電量販店』以外に水が手に入る場所がないので、水洗トイレに入れた水を何度もろ過して使える方法を考えた。

 

 トイレを使用し終えてトイレのレバーを引くと、その水がタンクの中で排出物を分解して、ろ過をする。そして、ろ過を終えた後に出てきてしまう不要物を限界まで圧縮して、別のタンクにキューブ上で溜めていくようにした。

 

 まぁ、要するに下水処理場つきトイレといった感じだ。確か、うん。そんなサラっとした説明で終わらないくらい、このトイレが高性能だということは分かっている。

 

もしかしたら、『家電量販店』のギフトがチート級なのは、理想のままに仕様変更できるという所なのかもしれないな。

 

 そして、排出されたキューブはサイコロのように小さくなっているので、焼却炉ができるまでは一時的にどこかに溜めておこう。多分、これだけ小さければ場所も取らないはずだ。

 

 本当はこのキューブも出ないような造りにしたかったが、さすがに有を無にするようなことは仕様変更でもできないだろう。

 

 いくら理想のままに仕様変更ができると言っても、限度もあるだろうしね。

 

「あとは、魔物を解体したときに出る肉の破片でも流して確かめてみるかな。多分、そのくらいのものなら分解できるでしょ」

 

「め、メビウス様!」

 

「あ、ラインさん」

 

 俺がそんなことを考えていると、ラインさんがドタドタッと俺のもとに走ってきていた。その後ろにはアリスの姿もあるみたいだ。

 

 随分と慌てているみたいだけど、どうしたのだろうか?

 

 俺が首を傾げていると、ラインさんはいきなり勢いよく俺に頭を下げてきた。俺は突然のラインさんの行動に驚きを隠せずにいた。

 

「え、ど、どうしたんですか?」

 

「メビウス様! 我々のために、寝具を用意していただいていたとのこと、誠に感謝いたします!」

 

 俺は突然過ぎたお礼に驚きながら、ちらっと後ろにいるアリスを見る。

 

 すると、アリスは眉を下げて申し訳なさそうに頬をかいた。

 

「どうしても旦那様にお礼を言いたいとのことでしたので、お連れいたしました。申し訳ございません、作業中でしたか?」

 

「いや、ちょうど終わったところだから大丈夫だよ」

 

 俺はアリスにそう答えてから、深々と頭を下げているラインさんに視線を戻す。

 

 このままいつまでも頭を下げさせていくわけにはいかないだろう。

 

 俺はラインさんの方をポンポンっと叩いて続ける。

 

「そんなに畏まらないでください。一緒に国を作っていくにしても、初めはラインさんたちの生活基盤を整えないとですから」

 

「メビウス様。まさか、そこまで考えていただいていたとは……」

 

 すると、ラインさんは俺の言葉を聞いて、くっと目元を押さえてしまった。

 

 俺はそんなラインさんの反応を前にどうしたのかと考えながら、ふと目の前にあった水洗トイレに視線を向けた。

 

「これも、必要な個数ができ次第、ラインさんたちに運んでもらうと思います。その時は、よろしくお願いしますね。今丁度水洗トイレの仕様変更が終わったので」

 

「仕様変更? え、これも私たちに頂けるのですか?」

 

 俺が話を変えようとトイレのことを話すと、ラインさんは俺が指さすトイレを見て目を見開いていた。

 

 俺はそんなラインさんの反応を見て口角を上げながら、トイレのレバーを引いて水を流す様子をラインさんとアリスに見せる。

 

「これは水洗トイレです。水を使っていつでもトイレを清潔に保てるトイレですね」

 

「こ、こんなものがあるんですか」

 

「まぁ、ここまで清潔に保てるものはどこにもないですね」

 

 少なくとも、この小さな便器とタンクで下水処理の役割を果たせるものは世界中探してもどこにもないだろう。

 

 我ながら、よくこんな凄いものに仕様変更できたものだ。

 

「世界にないモノ……やはり、メビウス様は凄腕の発明家様ですね」

 

「いえ、発明家という訳ではないんですけどね」

 

 俺はラインさんが俺を尊敬するような眼差しを送っていたので、慌てて手を横に振った。

 

 しかし、ラインさんは俺が謙遜しているだけと捉えているみたいだった。

 

 なんかどんどんラインさんの中で、俺の評価が上がっていっているよな。

 

 俺はそんなことを考えながら、ラインさんの仲間たちが寝具を運び終えるまでに仕様変更をした水洗トイレを必要な分作るのだった。

 

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