異世界家電量販店~魔改造した家電で僻地を開拓しちゃダメですか?~   作:荒井竜馬

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第40話 貿易開始

 

「――といった感じで、こちらの価格で『死地』で採れた野菜を買い取らせていただきたく思います」

 

「な、なるほど……」

 

 俺はローアさんから渡された野菜類やお酒、チョコレートの買い取り額が書かれた紙を読みながら、むむっと唸っていた。

 

 価格の他に運搬費などその他諸々の経費などが書かれており、結構な項目数があった。これ全部目を通すの時間かかるぞ。

 

「よろしければ、こちらにサインを」

 

「ふー……」

 

 俺は手渡されたペンを持ちながら、小さくため息を漏らす。

 

 マズいな。野菜の相場はラインさんたちから聞いてはいるが、『死地』で作った野菜の価値がこれで良いのか分からない。普通の野菜よりも高く買い取ってくれるみたいだけど、この額は適正なのかな?

 

「待って、ご主人様。ちょっとその紙貸して」

 

 俺がそんな感じでしばらく唸っていると、俺の隣に座っているカグヤがトントンっと俺の方を叩いた。

 

 そう言えば、さっきからカグヤも真剣に俺の持っている紙を見てたな。

 

 そんなことを考えながら紙を渡すと、カグヤはしばらくその紙を読んでから顔を上げた。

 

「野菜の価格は問題ないけど、お酒と甘味の価格設定と運搬費とその他の経費は気になるかな」

 

 カグヤはそう言うと、じろっとした目をローアさんに向ける。それから、カグヤは野菜の価格などが書かれた紙をテーブルに置くと、適宜書かれている項目に指をさしながら続ける。

 

「あと、お酒の甘味の価格設定が納得できないかな。このお酒って貴族御用達の中でもランクが低いやつでしょ? この前お土産に渡した奴が、このランクのお酒と一緒っていう気がしないんだけど?」

 

 カグヤに矢継ぎ早に言われたローアさんは、少し言葉に詰まっていた。

 

 俺はそんな頼もしいカグヤを見て感心して声を漏らす。

 

カグヤは俺が修行をしている間、グラン大国に視察に行ってもらっていた。そこで市場調査をしてもらっていたのだが、どうやらその効果がかなりあったみたいだ。

 

 まさか、データを取ってくると言っていたけど、ここまで色々と知識を入れてきてくれるとは思わなかったな。

 

 すると、さっきまで余裕の表情をしていたローアさんが眉を下げてから俺を見た。

 

「参りましたね。やはり、ただアストロメア家を追い出されただけの人ではないみたいだ」

 

 あれ? 俺は何も言っていないのに、なんか俺の評価が上がった?

 

 俺が首を傾げていると、ローアさんはその表情のまま笑みを浮かべて、鞄から別の資料を取り出した。

 

「すみません。ここが外交に対してどこまで知識があるのか試させてもらいました。本当の見積書はこちらになります」

 

 ローアさんは頭を下げてから、さっきと同じような項目が書かれた紙を手渡してきた。その内容を覗いてみると、全体的に金額が上がっている。

 

 なるほど……初めに引っ掛けに来たのか。

 

 すると、カグヤがぴたりと俺の体に密着するようにして、俺が持っている紙を覗き込んできた。

 

「カグヤ。カグヤはこれを見てどう思う?」

 

「この運搬費を調整できれば、買い取り価格もっと上げられるよね? ポータブル冷蔵庫を使えば、もっとここの費用下げられるでしょ」

 

 ローアさんはカグヤの言葉を聞くと、眼鏡の淵をスチャッと上げて続ける。

 

「ええ、可能ですよ。今回お預かりしたポータブル冷蔵庫を保管庫として貸していただけるのなら、対応できます。それはこっちの見積書になりますね」

 

 すると、ローアさんはまた別の見積もり書を取り出して、それをカグヤに手渡した。カグヤはその見積書に目を通して、また何か交渉をし始めた。

 

 ローアさん、一体何段階の見積もりを用意しているんだろうか?

 

 俺は少しの疎外感を覚えながら、二人が交渉しているのを隣で見ることにした。

 

専門的なことを話は甚太二人の会話に入っていけないし、黙っておくとしよう。

 

 俺がそんなことを考えながらお茶を飲んでいると、俺と同じように静かにお茶を飲んでいるエミーさんと目が合った。

 

 すると、エミーさんは何かを思い出したように小さく声を漏らす。

 

「そうだ。また別日に視察に来させて欲しいのだが、構わないだろうか?」

 

「もちろんですよ。エミーさんたちならいつでも歓迎です」

 

「そうか。それはよかったよ。商談もまとまりそうだし、ここは治安も悪くない。あの方を連れてきても問題ないだろう」

 

「あの方?」

 

 俺は含みのある笑みを浮かべたエミーさんの言葉に首を傾げる。

 

 一体、誰がこんな辺境の地にくるというのだろうか?

 

 俺はそんなことを考えながら、カグヤとローアさんの商談が終わるのを静かに待つのだった。

 

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