異世界家電量販店~魔改造した家電で僻地を開拓しちゃダメですか?~   作:荒井竜馬

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第50話 お菓子パーティとスマホ

 

 それから、俺たちはカゴいっぱいにお菓子を詰めていった。

 

 ちらっとイーナ様の方を見てみると、イーナ様は少し離れた所にある棚に置かれているお菓子をキラキラするような目で見ていた。

 

 すると、カートを引いているエミーさんが俺の隣に並んだ。

 

「メビウス殿。イーナ様、随分と楽しんでいるみたいだ。本当にありがとう」

 

「それならよかったです。うん、多少は喜んでもらえているらしいですね」

 

「え?」 

 

 俺はイーナ様が商品に手を伸ばし、微かに口元を緩めている姿を見てそう言った。すると、エミーさんが不思議そうな声漏らしてから、手を横にブンブンッと振る。

 

「いやいや、あれは相当喜んでいるぞ」

 

「相当喜んでいる……え? そうなんですか?」

 

 俺が微笑を浮かべているイーナ様を見て首を傾げていると、エミーさんがふっと小さく笑ってから続ける。

 

「あまり感情が顔に出ないタイプなんだ。あんなふうに笑っている所なんて久しぶりに見た」

 

「な、なるほど。そうだったんですね、勘違いしてました。あれですね、もう少し色々話せたらそこら辺の勘違いもなくなるかもしれませんね」

 

 俺はエミーさんの言葉を聞いて、頬をかいて話を合わせるように続ける。すると、またエミーさんはなんとも言えない表情を浮かべた。

 

「詳しくは言えないが、元々あまりしゃべる方ではないんだ。普段色んな事を考えてはいるように見えるが、あまりその考えを口にしない。聡明な方だからな。自分の発言一つで色んな人を動かしてしまうのを良く思わないのだろう。」

 

 俺はエミーさんの言葉を聞いて、エミーさんに倣うように再び視線をイーナ様に戻す。

 

 ただ無口なだけかと思ったが、無口ではなく迂闊にしゃべれないという状況にいたからこそ、必要最低限のことしか話さなくなったのか。

 

 エミーさんの言葉を受けてからだと、イーナ様の印象が結構変わる気がする。

 

「なるほど。確かに、僅かですが表情が動いているみたいですし、色々考えてはいるみたいですよね」

 

「そうなんだ。ただ動きが小さいだけで、意外と表情が豊かなんだよ」

 

 エミーさんは俺の言葉を聞いて、心の底から嬉しそうに笑みを浮かべていた。もしかしたら、俺が思っている以上にイーナ様とエミーさんの関係は深いのかもしれない。

 

 俺はそんなことを考えながら、イーナ様とエミーさんが普通に会話をしている姿が見たいなと思ってしまった。

 

おせっかいだということは十分承知だが、何か俺に手伝えるようなことはないかな?

 

そう考えていく中で、俺は一つのアイディアを思いついた。

 

 そうだ。アニメとかラノベで、照れ屋で上手く喋れないキャラが使っていたアイテムがここにあるじゃないか。

 

「エミーさん。イーナ様がお菓子を選び終わったら、三階で待機してもらっていていいですか? 少しだけ用事を思い出しました」

 

「ん? ああ、分かった」

 

 俺は少し不思議素な顔をしたエミーさんとカグヤをその場に残して、一階のスマホ売り場へと向かった。

 

 

 

 売り場に向かうと、そこにはずらっと多くのスマホが並んでいた。

 

 色んな種類のスマホがある中から、俺は某メーカーの最新機種で一番ギガ数が大きい物を選んで手に取る。

 

「旦那様、なぜスマホを?」

 

 アリスはそう言うと、きょとんと首を傾げていた。

 

 まぁ、普通に考えてグラン大国の第二王女が来ているという状況で、スマホ売り場に来るなんて普通は思わないだろう。

 

 俺はさっそく手に取ったスマホを撫でて、仕様変更の画面を表示させてから、スマホを元の位置に戻した。

 

『仕様変更しますか? Yes/No』

 

 俺は現れた仕様変更のウインドウを眺めながら続ける。

 

「少しお節介な気もするけど、イーナ様とエミーさんでちゃんと会話ができるようにスマホの力を借りるんだ」

 

「スマホの力をですか?」

 

「うん。スマホってテキストを打ち込めて、それを音声で読み上げることができるでしょ。だから、それをもう少し簡略化できればなって」

 

 歴代の文学少女とか恥ずかしがり屋系のヒロイン達は、ノートに書いた文字を見せることで会話を試みてきた。そして、最近ではそれがスマホのテキストを見せることで会話をするヒロイン達が出てきた。

 

 でも、スマホの入力って慣れないと打ち込むのも大変だ。だから、そこで考えただけで文字を入力できるような仕組みを組み込めないかなって考えている。

 

 確か、前世でもどこかの大学である程度実用化まで研究が進めていた気がする。その研究では、脳に脳波を受け取るための物を入れなくてはならなかったけど、それを魔力を通じて思念としてキャッチできないかと考えている。

 

 指紋認証の部分で思念をキャッチできたら面白いなと思ったのだが、それが本当にできるのかどうかは分からない。

 

 とりあえず、やってみるかな。

 

 俺は頭の中でそんなイメージを持ちながら、『Yes』の部分をタップした。

 

 すると、他の家電の時と同じようにスマホが光り、白いぼふっとした煙を吐いた。それから少しして煙がなくなると、そこには見た目は普通のスマホ何も変わらないものが置かれていた。

 

「どれ……あっ、アプリとかはほとんどないんだ」

 

 画面をタップしてスマホを確認すると、アプリが連絡用のアプリとテキストしか入っていなかった。

 

 どうやら、未来的過ぎる性能を持たせ過ぎると、本来の電化製品の性能を多少失うらしい。

 

 まぁ、それでも理想的に仕様変更できていればお釣りがくるくらいだけど。

 

「さて、どんな感じかな?」

 

 俺はそう考えて仕様変更を済ませたスマホを操作して、その完成度を前に静かに笑みを浮かべるのだった。

 

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