もしもロイドが普通の青年だったら   作:詠人不知

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2話 アーニャの受験

 ロイドとアーニャはアパートに入った。

 

「あら、かわいいお嬢さんね」

 

「越してきたフォージャーです」

 

 ロイドは挨拶してきた婦人に挨拶を返した。

 

「ちちのこどものアーニャです」

 

「ほら部屋に入ろうな」

 

 そして二人は新生活をする部屋に入った。

 

「アーニャんち?」

 

「そうだ」

 

 アーニャは綺麗な部屋を見回した。

 

「テレビ!」

 

「つけてもいいぞ」

 

 アーニャはテレビに夢中になった。

 

(まずは必要なものを揃えないとな……)

 

 ロイドは今日過ごすのに必要なものを買いに行こうとした。

 

「ちょっと出かけるが、一緒に行くか?」

 

「ぼうけん!」

 

「冒険じゃない、ただの買い物だ」

 

 アーニャはテレビよりも、外に買い物に行くのについて行きたがった。

 

 二人は買い物に出かけた。

 

 

          ※

 

 

 外に出ると、アーニャはロイドの先を歩いた。

 

「アーニャ、おとのでないぴすとるほしい」

 

「売っていたらな」

 

 アーニャは外出にはしゃいでいた。一人でグングンと進んだ。そして人ごみに飲まれてロイドとはぐれそうになった。

 

「ちちーっ!」

 

 そんなアーニャを女性が助けてくれた。

 

「ダメよ、小さい子は手をつないであげなくちゃ」

 

「ありがとうございます」

 

 ロイドはアーニャを見つめた。子育ての経験のないロイドは小さい子供の扱いがわからなかった。

 

「手をつないでもいいか?」

 

「いい!」

 

 二人は手をつないで街中を歩きだした。アーニャは少し緊張しているようだった。

 

(警戒されているな。知らなくては……! この子のことを! それが良い親子関係の第一歩だ!)

 

 ロイドはアーニャのことをもっと知ろうと思った。そしてそれは超能力でアーニャにも伝わっていた。

 

(アーニャをしると、おやこになれる……!?)

 

 アーニャはロイドに自分のことを教えようとした。

 

「アーニャ、ぴーなつがすき。にんじんはきらい」

 

「……ん? うん……」

 

 ロイドは突然好物を教えてきたアーニャを不思議に感じた。

 

 アーニャはパン屋の前で止まった。

 

「アーニャ、カリカリべーこんすき」

 

「ベーカリーはカリカリベーコンって意味じゃないぞ?」

 

 指摘されたアーニャは恥ずかしそうに顔を赤らめた。

 

 次にアーニャは露店で絵を買おうとした。店主に10P硬貨を渡すアーニャ。

 

「1Dのものは10P硬貨じゃ買えないぞ?」

 

 また間違えたアーニャは恥ずかしそうにした。

 

(この子、実はそこまで頭よくない……? クロスワードはまぐれ……?)

 

 ロイドはアーニャの知力に疑問を持った。自分の予想より賢い子ではないのではないか

思った。

 

 それを感じ取ったアーニャ。

 

「すてたらやぁーっ!」

 

「!?」

 

 ロイドは突然泣き出したアーニャに困惑した。

 

「どうした急に!?」

 

「アーニャ、おかいどくだよ」

 

 どうにかしてアーニャの機嫌を取ろうとしたロイドは、先ほど言っていたアーニャの好物を与えることにした。

 

「ピーナッツ買ってやるから泣きやめ」

 

「ぴーなつ!」

 

 ピーナッツを貰ったアーニャはすぐに機嫌を直した。ケロっと泣き止んだ。

 

「ちち、アーニャねむい。あるけない」

 

「え……!?」

 

 ロイドはアーニャを抱きかかえた。するとアーニャはすぐに眠ってしまった。ロイドは食材とアーニャを抱えたまま歩いた。

 

(ダメだ、理解できん。この非合理的なふるまいを解読するためにはマニュアルが必要だ……!)

 

 ロイドは帰りに図書館に寄った。

 

「育児に関する本や論文ですね。少々お待ちを」

 

「ありったけください」

 

 家に帰ったロイドはアーニャをベッドに寝かせて借りてきた本を読み漁った。

 

「子育ての基本は信頼感です」

 

「叱るより受け止めよう」

 

「子供と同じ目線で」

 

「子供は自分の気持ちをうまく言葉にできません。察してあげましょう」

 

 ロイドはいろいろな子育ての常識を知っていった。

 

(世の親たちはこんな高度なことをこなしているのか……!)

 

「将来のために自尊心を育てよう」

 

「自分で考えさせることで、将来――」

 

 ロイドはその文章に考えさせられた。

 

(将来か……、アーニャを幸せにするためにもちゃんとしないとな!)

 

 

          ※

 

 

「やぁーだぁーっ!」

 

 部屋にアーニャの声が響いた。

 

「アーニャ、べんきょーやだっ!」

 

「試験のためにアーニャの学力を知っておかなくちゃいけないんだ」

 

「アーニャ、べんきょーしなくてもてすとできるもん! ほかのひとのここ――」

 

「カンニングでもするつもりか? それはダメなことなんだぞ!」

 

 二人の議論は平行線だった。

 

 それからの二人はギクシャクとした日々を過ごした。

 

 そして最初に折れたのはロイドの方だった。ロイドはアーニャに優しく話しかけた。

 

「あのなアーニャ、俺はお前をいい学校に入れてやりたいんだ。幸せは何かはわからない。でもそのときの最善をつくした方がいいと思うんだ。アーニャが将来泣かないで過ごせる幸せを作っていきたいんだ」

 

「ちち……」

 

 幼いアーニャにもロイドの思いが伝わったようだった。心が読めるためロイドの本心を感じ取ったのだ。

 

「わかった! べんきょー、がんばる!」

 

「ありがとう、アーニャ」

 

 それから二人は先のイーデン校の受験のために勉強を始めた。賢いロイドはアーニャにしっかりと優しく、わかりやすく勉強を教えた。

 

 そして受験当日。

 

「では試験始め!」

 

 ロイドは親用の待合室でアーニャの健闘を祈っていた。

 

(頼んだぞ、アーニャ……! がんばれ……!)

 

 アーニャは他の受験生から流れてくる心の声に惑わされていた。

 

(難しいよぉ)

 

(ぜんぜんわかんない……)

 

(どれにしようかな)

 

(ママー!)

 

 アーニャは混乱した。しかしロイドとの勉強の日々を思い出した。幼いながらにロイドの思いに応えたかった。

 

 アーニャは必死に覚えたことをテスト用紙に書いていった。

 

 

          ※

 

 

「K-212、K-212……」

 

 ロイドとアーニャは張り出された掲示板に受験番号があるか探していた。

 

 そしてようやく受験番号を見つけた。

 

「あった! 合格だ!」

 

 ロイドはアーニャを抱き上げた。

 

「でかした!」

 

「アーニャえらい?」

 

「えらいえらい!」

 

 そしてロイドはアーニャを抱きかかえたまま倒れた。

 

「ちちーっ!」

 

(気が抜けてたまった疲労がどっときた……)

 

 安心したロイドは体の力が抜けたのだ。

 

 そして家に帰ったロイドはソファでぐったりと寝込んだ。

 

「ちち、しんじゃった……」

 

 すると呼出し鈴が鳴った。

 

「郵便でーす!」

 

 ロイドは寝ているためアーニャが代わりに出た。

 

「フォージャーさん?」

 

「アーニャ・ホージャーです」

 

「これ、お父さんかお母さんに渡してね」

 

「はは、そんざいしない」

 

「!? そう……、ごめん……」

 

 郵便を受け取ったアーニャはそれをロイドに届けようとした。

 

「ちちーっ、ゆうびんやさんきたー」

 

 しかしロイドは寝たままだった。手紙で顔をぺしぺしと叩いても起きなかった。

 

 アーニャはそんなロイドの腕を避けて一緒にソファで寝ることを選んだ。そんなアーニャにやっと気づいてロイドは起きた。

 

「うおぉーっ!?」

 

 ロイドは驚いた。

 

「ゆうびん」

 

「郵便? イーデン校からか」

 

 手紙を読んだロイドは固まってしまった。

 

「どうした、ちち?」

 

「二次審査の案内、三者面談だ。必ず両親と三人で出席すること。例外は認めない」

 

「……。ははそんざいしない」

 

 ロイドとアーニャの前に次なる関門が立ちはだかった。

 




読んでいただきありがとうございます。
次話は一週間以内に投稿します。
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