もしもロイドが普通の青年だったら   作:詠人不知

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4話 パーティー

「恋人のフリ?」

 

 ブティックの前でヨルはロイドに事情を話した。

 

「そうなんです。弟に恋人がいると偽ってしまって……。ご迷惑でなければ、ご一緒にパーティーに出て頂けないかと……」

 

 ヨルは恥ずかしそうに打ち明けた。

 

「あの、変な下心とかありませんので、もちろんお礼もいたします! 私はただ、弟を安心させたくて……」

 

「わかりました、引き受けましょう」

 

「本当ですか!?」

 

「ただし交換条件が」

 

 ここでロイドもアーニャの入学のために母親が必要なことを話した。

 

「という訳でして、代わりに面接時の母親役を頼みたいんです。アーニャにはいい学校に入ってもらいたくて。その方が亡き妻も喜んでくれると思うんです!」

 

(ちち……)

 

 アーニャはロイドが本心から自分のことを案じていると理解した。

 

「一度だけでいいのでお願いできませんか?」

 

(なんていい人……!)

 

 ロイドの話を聞いてヨルはすでに絆されていた。

 

「わ、わかりました。私に務まることであれば……!」

 

「ありがとうございます! では土曜のパーティーで!」

 

「はい!」

 

 互いの目的に合う人物を見つけたロイドとヨルは満足気だった。

 

 

          ※

 

 

 そして約束の土曜、街灯の下でヨルはロイドを待っていた。

 

「お待たせしました」

 

 そこにロイドがやってきた。

 

「こんばんは、ロイドさん。今日はよろしくお願いします」

 

「こちらこそよろしくお願いします」

 

 ロイドはヨルを伴って歩き出した。

 

「それでは行きましょうか」

 

「はい!」

 

 パーティー会場に着いたロイドとヨル。

 

「遅いです、ヨル先輩―!」

 

「すみません」

 

 そしてヨルの後ろからロイドも会場に入った。

 

「え!? その人がカレシですか!?」

 

 ロイドの姿を見た女性は驚いていた。それはロイドがかなりの男前だからだ。そしてヨルがそんな男を連れてきたことにも驚いていた。

 

「精神科医のロイド・フォージャーです」

 

 そしてそれから二人はつつがなくパーティーを楽しんだ。

 

 ロイドのエスコートは完璧で、偽物のカレシだとは誰もバレなかった。

 

 パーティーを楽しみながら、ヨルは一つのことを思った。

 

(なるほど、これが普通なのですね……)

 

 弟の望んでいた普通の姉を演じられたヨルは満足していた。

 

 そんなロイドとヨルを見て、ヨルの同僚のカミラが嫉妬していた。

 

(ウソよ、ウソ! ヨルにこんなスマートなイケメンカレシがいるわけないっ! 恥をかかせてやるわっ!)

 

 カミラは料理の載った大皿を持った。

 

「ヨル先輩、あつあつのグラタンが焼き上がりましたよ! あぁ、滑って転んで手元が……」

 

 ヨルに向かってグラタンが向かってきた。ヨルはそれを足で拾って見せた。人間離れした技だった。

 

 それを見た周りの人は驚きのあまり黙ってしまった。それはロイドも例外ではなかった。しかしヨルをフォローするために言葉を絞り出した。

 

「食べ物を大切にするのは素晴らしいけど、少しはしたないですよ」

 

(そこ……?)

 

 参加者は心の中でツッコミを入れていた。

 

「これ、美味しいですね」

 

「はい」

 

 ロイドとヨルは料理に舌鼓を打っていた。

 

 その様子にカミラは怒りが収まらなかった。

 

「フォージャーさんご存知? この人ね、役所に来る前、いかがわしい仕事していたらしいですよ!」

 

 カミラはヨルの過去を暴露してロイドを幻滅させようとした。

 

「何でしたっけ? 男の人に呼ばれてホテルとかでマッサージするんでしたっけ? やらしぃー!」

 

「それは……」

 

 ヨルは困惑した。

 

(鍼灸マッサージと謳った刺殺の仕事で……)

 

 殺し屋としての仕事を隠すための隠れ蓑のことだった。

 

「あの、違うんですロイドさん……」

 

 ヨルはロイドに言い訳をしようとした。するとロイドははっきりと言った。

 

「素敵です!」

 

「え!?」

 

「ヨルさんは早くに両親を亡くして、幼い弟を養うために必死で頑張ってきました。自分を犠牲にしてまでも」

 

 これはロイドとヨルが事前に共有した情報だった。

 

 そしてそれ以上にロイドの本心からの言葉だった。

 

「誰かのために、何かのために過酷な仕事を耐え続けることは普通の覚悟では務まりません。誇るべきことです」

 

 その言葉にヨルは救われた。殺し屋としての自分を肯定された気がしたのだ。

 

「帰りましょう、ヨルさん」

 

「みなさん、ごちそうさまでした」

 

 

          ※

 

 

 パーティー会場を出たロイドはヨルを駅まで送った。

 

「今日は楽しかったです。彼氏役もしっかりと務められてよかったです」

 

「はい、本当にありがとうございました!」

 

 そしてロイドがその場を去ろうとしたとき、ヨルからふと言葉が漏れた。

 

「あの、ロイドさん、ご提案なのですが……」

 

「はい、なんですか?」

 

「結婚しませんか?」

 

「はい?」

 

 ロイドは突然の申し出に驚いた。

 

「いえ、交換条件の延長というか……。その、私みたいな独身女性はそれだけで怪しまれてしまうらしいので、カモフラージュのために……」

 

 これは本音混じりの建前だった。

 

(殺しの仕事を続けていくためにも……!)

 

 ヨルは赤面しながら言葉を紡いだ。

 

「えっとつまり、もしよろしければ面接の一回だけでなく、ちゃんと一緒になるのはどうかなと……! お互いの利益のために!」

 

 ヨルの告白を受けてロイドは数舜考えた。そしてすぐに答えを出した。

 

(アーニャには母親が必要だ。ヨルさんなら大丈夫だろう)

 

 ロイドはヨルの手を取った。

 

「病める時も、悲しみの時も、どんな困難が訪れようとも、共に助け合いましょう。結婚しましょう、ヨルさん!」

 

「はい!」

 

 こうして二人の偽装結婚が決まった。




モチベーションが切れてしまい、これ以上投稿するのが難しくなってしまったため、ここで
終わりとさせていただきます。
これまで読んでいただき、ありがとうございました。
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