もしもロイドが普通の青年だったら   作:詠人不知

4 / 4
4話 パーティー

「恋人のフリ?」

 

 ブティックの前でヨルはロイドに事情を話した。

 

「そうなんです。弟に恋人がいると偽ってしまって……。ご迷惑でなければ、ご一緒にパーティーに出て頂けないかと……」

 

 ヨルは恥ずかしそうに打ち明けた。

 

「あの、変な下心とかありませんので、もちろんお礼もいたします! 私はただ、弟を安心させたくて……」

 

「わかりました、引き受けましょう」

 

「本当ですか!?」

 

「ただし交換条件が」

 

 ここでロイドもアーニャの入学のために母親が必要なことを話した。

 

「という訳でして、代わりに面接時の母親役を頼みたいんです。アーニャにはいい学校に入ってもらいたくて。その方が亡き妻も喜んでくれると思うんです!」

 

(ちち……)

 

 アーニャはロイドが本心から自分のことを案じていると理解した。

 

「一度だけでいいのでお願いできませんか?」

 

(なんていい人……!)

 

 ロイドの話を聞いてヨルはすでに絆されていた。

 

「わ、わかりました。私に務まることであれば……!」

 

「ありがとうございます! では土曜のパーティーで!」

 

「はい!」

 

 互いの目的に合う人物を見つけたロイドとヨルは満足気だった。

 

 

          ※

 

 

 そして約束の土曜、街灯の下でヨルはロイドを待っていた。

 

「お待たせしました」

 

 そこにロイドがやってきた。

 

「こんばんは、ロイドさん。今日はよろしくお願いします」

 

「こちらこそよろしくお願いします」

 

 ロイドはヨルを伴って歩き出した。

 

「それでは行きましょうか」

 

「はい!」

 

 パーティー会場に着いたロイドとヨル。

 

「遅いです、ヨル先輩―!」

 

「すみません」

 

 そしてヨルの後ろからロイドも会場に入った。

 

「え!? その人がカレシですか!?」

 

 ロイドの姿を見た女性は驚いていた。それはロイドがかなりの男前だからだ。そしてヨルがそんな男を連れてきたことにも驚いていた。

 

「精神科医のロイド・フォージャーです」

 

 そしてそれから二人はつつがなくパーティーを楽しんだ。

 

 ロイドのエスコートは完璧で、偽物のカレシだとは誰もバレなかった。

 

 パーティーを楽しみながら、ヨルは一つのことを思った。

 

(なるほど、これが普通なのですね……)

 

 弟の望んでいた普通の姉を演じられたヨルは満足していた。

 

 そんなロイドとヨルを見て、ヨルの同僚のカミラが嫉妬していた。

 

(ウソよ、ウソ! ヨルにこんなスマートなイケメンカレシがいるわけないっ! 恥をかかせてやるわっ!)

 

 カミラは料理の載った大皿を持った。

 

「ヨル先輩、あつあつのグラタンが焼き上がりましたよ! あぁ、滑って転んで手元が……」

 

 ヨルに向かってグラタンが向かってきた。ヨルはそれを足で拾って見せた。人間離れした技だった。

 

 それを見た周りの人は驚きのあまり黙ってしまった。それはロイドも例外ではなかった。しかしヨルをフォローするために言葉を絞り出した。

 

「食べ物を大切にするのは素晴らしいけど、少しはしたないですよ」

 

(そこ……?)

 

 参加者は心の中でツッコミを入れていた。

 

「これ、美味しいですね」

 

「はい」

 

 ロイドとヨルは料理に舌鼓を打っていた。

 

 その様子にカミラは怒りが収まらなかった。

 

「フォージャーさんご存知? この人ね、役所に来る前、いかがわしい仕事していたらしいですよ!」

 

 カミラはヨルの過去を暴露してロイドを幻滅させようとした。

 

「何でしたっけ? 男の人に呼ばれてホテルとかでマッサージするんでしたっけ? やらしぃー!」

 

「それは……」

 

 ヨルは困惑した。

 

(鍼灸マッサージと謳った刺殺の仕事で……)

 

 殺し屋としての仕事を隠すための隠れ蓑のことだった。

 

「あの、違うんですロイドさん……」

 

 ヨルはロイドに言い訳をしようとした。するとロイドははっきりと言った。

 

「素敵です!」

 

「え!?」

 

「ヨルさんは早くに両親を亡くして、幼い弟を養うために必死で頑張ってきました。自分を犠牲にしてまでも」

 

 これはロイドとヨルが事前に共有した情報だった。

 

 そしてそれ以上にロイドの本心からの言葉だった。

 

「誰かのために、何かのために過酷な仕事を耐え続けることは普通の覚悟では務まりません。誇るべきことです」

 

 その言葉にヨルは救われた。殺し屋としての自分を肯定された気がしたのだ。

 

「帰りましょう、ヨルさん」

 

「みなさん、ごちそうさまでした」

 

 

          ※

 

 

 パーティー会場を出たロイドはヨルを駅まで送った。

 

「今日は楽しかったです。彼氏役もしっかりと務められてよかったです」

 

「はい、本当にありがとうございました!」

 

 そしてロイドがその場を去ろうとしたとき、ヨルからふと言葉が漏れた。

 

「あの、ロイドさん、ご提案なのですが……」

 

「はい、なんですか?」

 

「結婚しませんか?」

 

「はい?」

 

 ロイドは突然の申し出に驚いた。

 

「いえ、交換条件の延長というか……。その、私みたいな独身女性はそれだけで怪しまれてしまうらしいので、カモフラージュのために……」

 

 これは本音混じりの建前だった。

 

(殺しの仕事を続けていくためにも……!)

 

 ヨルは赤面しながら言葉を紡いだ。

 

「えっとつまり、もしよろしければ面接の一回だけでなく、ちゃんと一緒になるのはどうかなと……! お互いの利益のために!」

 

 ヨルの告白を受けてロイドは数舜考えた。そしてすぐに答えを出した。

 

(アーニャには母親が必要だ。ヨルさんなら大丈夫だろう)

 

 ロイドはヨルの手を取った。

 

「病める時も、悲しみの時も、どんな困難が訪れようとも、共に助け合いましょう。結婚しましょう、ヨルさん!」

 

「はい!」

 

 こうして二人の偽装結婚が決まった。




モチベーションが切れてしまい、これ以上投稿するのが難しくなってしまったため、ここで
終わりとさせていただきます。
これまで読んでいただき、ありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

セバス・チャンは完璧な執事である(作者:目ん玉)(原作:オーバーロード)

 執事とは何か。▼ 全日本執事協会というのがありまして、そのウェブサイトより抜粋した内容が、以下の通りです。▼ 空間の品格を保ち、時間を創り出し、ご依頼者が本当に大切なことに集中できる環境そのものを整える――それが執事の本分です。▼ 執事の第一の技能は、掃除でも給仕でもなく「観察」です。あらゆる情報から次に必要なことを察し、言葉にされる前に動きます。頼んだこ…


総合評価:2743/評価:8.46/完結:25話/更新日時:2026年10月12日(月) 17:00 小説情報

戦国爆乳秀吉〜主人公は秀吉を天下人に育てたい〜【一時更新停止】(作者:星野林(旧ゆっくり霊沙))(オリジナル:歴史/戦記)

神様によって女性の方が基本力が強い世界に転生した主人公こと烏丸。▼彼は神様から貰ったネット通販のチートを使って幼なじみの秀吉を爆乳に育てるべく奮闘する。▼バカエロ歴史伝の始まり始まり。▼カクヨムとマルチ投稿▼R-18コーナーは▼戦国爆乳秀吉▼で検索掛ければ出てきます。


総合評価:3248/評価:8.54/連載:64話/更新日時:2026年10月17日(土) 13:59 小説情報

気づいたら人生2周目だった方々による「最悪」を避ける物語(作者:もみじししゃも)(原作:僕のヒーローアカデミア)

▼「来世に期待してワンちゃんダイb、、、、、、」▼その瞬間、爆豪に雷が落ちた▼当然比喩である▼「、、、、ワンちゃんダイブなんか言わねぇから体鍛えろ、いいな?」▼「、、、え???」▼爆豪勝己、人生2周目が始まった瞬間だった▼____________________▼複数の人間が、人生2周目やってます▼思い出すタイミングは人それぞれ▼全員が全員思い出すわけではな…


総合評価:4084/評価:8.21/連載:49話/更新日時:2026年10月25日(日) 13:49 小説情報

日向ヒカゲ忍法帖(作者:鍋川太一)(原作:NARUTO)

 NARUTOの世界に転生した、男の物語。木の葉の名門に生まれた彼の運命やいかに?▼ 作者の独自解釈がてんこ盛りです。主人公はいろんな事に疑問を抱いている。苦手な方は戻って下さいな。▼ NARUTOを読んでいないと分かりづらいと思います▼ 続かないかも知れないし続くかもしれない。


総合評価:3664/評価:7.64/連載:66話/更新日時:2026年10月25日(日) 19:00 小説情報

​『逆襲のシャア』の総帥に憑依した元商社マン、アクシズを落とさず地球圏を支配する 〜静かに暮らしたいだけなのに、アナハイムと狂信者に神輿を担がれて逃げられない件〜(作者:なやむ)(原作:ガンダム)

「お願いだから、もうこれ以上俺(キャスバル)を神輿として担がないでくれ……!」▼目が覚めると、そこは宇宙世紀0090年代▼よりにもよって、グリプス戦役末期、ハマーン・カーンと一騎討ちに臨み、その後消息不明になっていた世紀のカリスマ、シャア・アズナブルーキャスバル・レム・ダイクンに憑依していた▼本物のシャアはすでに成仏してどこにもいない。残されたのは、ただ「早…


総合評価:13764/評価:8.78/完結:9話/更新日時:2026年07月28日(火) 18:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>