ダンジョンに大筒木がいるのは間違っている   作:競馬好き

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大筒木ヤマシキという男

 

 

「頼む」

 

 

「今日もご苦労なこったな、さて・・・。これまた、傷一つ無い魔石をこんなによく取ってこれるな。今回も良い値段で買い取ってやるよ」

 

 

「ありがとう」

 

 

「ありがとうって、お前、ここが闇市ってことわかってるのか?はぁ、お前みたいなのが何でこんなところに・・・」

 

 

黒い外套を羽織っている青年は、闇市の商人に取ってきた魔石を渡し、鑑定を依頼する。かなり質が良い魔石らしく、色を付けてもらったらしい。青年はそれを受け取ると、闇市を抜け出し、外套のフードを取る。

 

灰色の髪に、白い目、白い肌。とある一族と同じ身体的特徴を持っている。

 

彼の名は大筒木ヤマシキ。大筒木一族の捨て子である。

 

白眼が使えず、病弱で、弱かった。まるで人間のように。それゆえに捨てられた。世界と世界の狭間に。そこから数年間、さまよったのちこの世界に流れ着いた。そこからしばらくは森で一人で暮らし、チャクラの使い方となぜか持っていた忍術の指南書(国語辞典並みに分厚い)を見て忍術を学んでいった。今や高等忍術まで使えるようになり、忍術だけなら上忍クラスの実力を誇る。

 

その中でも得意なのが。

 

 

「螺旋丸」

 

 

チャクラの形態変化の究極系の忍術である螺旋丸である。最初は分身と二人がかりで発動していたこの術。今や片手で出来るくらいには上達した。今現在は、自身の得意な火遁と雷遁を組み合わせられないか試行錯誤中である。

 

そんな彼がなぜオラリオに居るのか?

 

それは、彼が森で星を見ていた時、ふと思ったのだ。

 

 

「外を見てみたい」

 

 

そして彼は旅に出た。ただなんとなく、外が見たかったから。荷物をまとめ森を抜け、さまざまな村や町を回り、依頼を受けて路金を稼ぎ、そして半年前に着いたのがここオラリオである。

 

ただ、森での生活が長かったせいか、彼は神々、ファミリア、恩恵、冒険者などのこの世界での常識を知らない。そのため、冒険者達が巨大な大穴、ダンジョンに入り、奇妙な石を換金している光景を見て、依頼を探さなくて良いのは良いなとヤマシキもやっているのだが、恩恵も持たず、冒険者の資格が無い彼にギルドの換金所は対応してくれるわけがなく、闇市で売って生活しているのが今の現状である。

 

 

そんな中、一つの噂が立ち始める。

 

 

駆け出しの冒険者が危機に貧した時、黒い外套を被った白い人が、助けてくれたというそんな噂が。

 

中層でも以下の通りの噂が立っており、その正体はお察しの通りヤマシキである。

 

ヤマシキはダンジョンにて危ない目に遭っている人を見かければ助けることを繰り返している。まぁ、そのせいでたまに稼ぎが悪くなってしまっているのだが。

 

ヤマシキはダンジョンで魔石を手に入れ、闇市で売って帰り、ご飯を食べて宿で眠る。そんな暮らしを繰り返して半年後。このオラリオにとあるウサギが現れる。

 

 

これは、神と眷属、そして、一人の忍が起こす繋がり(チャクラ)の物語。

 

 

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

ヤマシキがダンジョンにてモンスターを狩っていると、複数の悲鳴が聞こえてくる。

 

 

「?」

 

 

ヤマシキは走り出し、悲鳴が聞こえた方へ向かう。いくつかの曲がり角を抜けた先、小人、獣人、只人のパーティがこの階層に本来入るはずのないミノタウロスに襲われていた。

 

 

「まずい」

 

 

ヤマシキは印を組むと、ミノタウロスへ向けて火遁の術を発動する。

 

 

「火遁・鳳仙火の術」

 

 

口から小さな火の玉が複数個吹き出され、ミノタウロスに直撃する。そのまま刀を抜き、雷遁チャクラを流してパーティとミノタウロスの間に立ち塞がる。

 

 

「逃げてください。ここは俺が」

 

 

「あ、ありがてぇ!い、行くぞ!!」

 

 

只人の冒険者は負傷した獣人を担ぎ離れていく。小人のサポーターがその後に続こうとするが。

 

 

「てめぇはついてくるんじゃねぇ!!負傷したコイツとてめぇがいたら俺が生き残れねぇじゃねぇか!!」

 

 

「きゃっ!!そんな!!」

 

 

小人は蹴られ、地面に倒れる。

 

 

ヤマシキはその光景を尻目に、ミノタウロスを睨み付ける。ミノタウロスは鼻息荒く、突然現れたヤマシキに怒りを覚え、咆哮する。

 

 

ブモォオオオオ!!

 

 

「ひっ!」

 

 

冒険者に蹴られ、逃げ遅れた小人が悲鳴を漏らす。ヤマシキはそれを聞きながら刀を握る手に力を込める。

 

 

「行くよ、牛さん」

 

 

その言葉を合図にヤマシキは走り出す。ミノタウロスも同時に走り出し、ヤマシキへ突進を仕掛けてくる。ヤマシキはそれをスライディングで避けつつ、刀で右足を斬りつける。刀に流していた雷遁がミノタウロスの体に痺れを起こす。スライディングの体勢からすぐに立ち上がり、壁を蹴ってまた疾走、ミノタウロスの背後から刀を突き刺し、さらに雷遁チャクラを流し込む。

 

 

ブモォオオオオ!?!?

 

 

バチバチと体内から痺れさせられ、身動き一つ取れなくなる。

 

 

「今楽にする」

 

 

ヤマシキは右手を開くと、そこに螺旋丸を生成し、構える。

 

 

「な、なにあれ?魔法?」

 

 

「螺旋丸」

 

 

ヤマシキは痺れているミノタウロスに向かって駆け出し、螺旋丸をぶつけた。

 

 

ドガァアアァァアン!!

 

 

ミノタウロスは螺旋丸と共に回転しながら吹き飛んでいき、ダンジョンの壁に激突。灰となって消え、魔石だけがそこに残される。

 

 

「ふぅ」

 

 

ヤマシキはミノタウロスの魔石を拾うと、未だ尻餅をついている小人のもとへ向かう。

 

 

「大丈夫ですか?」

 

 

小人に手をさしのべ、そう聞くと、ポカンとした顔でヤマシキを見る小人。

 

 

「はっ!あ、えっ、えと、ありがとう、ございます・・・」

 

 

小人はあわててヤマシキの手を取り、立ち上がる。

 

 

「助けていただき、ありがとうございました。で、ですが、お礼ができるものは、持ち合わせておりませんが・・・」

 

 

「別に良いですよ、お礼なんて。地上まで送りますよ」

 

 

「へぇ!?そ、そこまでしていただくわけには!!」

 

 

「武器も持ってなさそうですし、危ないと思うんで、行きましょう」

 

 

「あ、え、で、でも、ちょっ!待ってください!!」

 

 

小人の言葉を無視して地上へ上がる道を進み始めるヤマシキ。その後ろを慌ててついていく小人。そのままさくさくと地上へと上がり、ヤマシキはこっそりと幻術を使用し、ギルド職員の目を盗んで抜け出すと、広場につくと、小人にもう大丈夫そうか聞いた。

 

 

「はい、ここまでありがとうございました!」

 

 

「気をつけて帰ってくださいね。じゃあ俺はこれで」

 

 

小人に手を振って離れると、突然、目の前に灰色の狼の獣人が現れる。

 

 

「おい」

 

 

「はい、なにか御用でしょうか?」

 

 

「てめぇ、さっきのなんだ?」

 

 

「さっきのとは?」

 

 

「詠唱も無しに魔法使いやがったあれだ。しかも、精神力(マインド)を消費してるような素振りもねぇ、端的に言やぁ、きめぇんだよ。ありゃなんだ?」

 

 

「忍術のことですか?」

 

 

ヤマシキは獣人が何を見たいのかわかったのか、手のひらの上に螺旋丸を作り出す。

 

 

「さっきミノタウロスにぶつけたやつか、しかもまた詠唱してねぇ」

 

 

「はい、螺旋丸って言います」

 

 

「ラセンガンか、ふん、引き留めて悪かったな」

 

 

獣人はそう言うと、去っていった。

 

 

「?螺旋丸が見たかったのかな?」

 

 

ヤマシキは首を傾げると、まぁ、いっかと、いつもの闇市に向かったのだった。

 

 

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