仮面ライダーローサー×カルヴァリア ~守りし想い、交わりて~ 作:虎ノ門ブチアナ
元の世界に戻された神瀬らは、ミスケレの場所が分からぬまま途方に暮れていた。
「ミスケレと接触していた異世界のみなさんともこれで交信できなくなった、こっからどうしようね」
「どうしようねって……アンタが一応ブレーンなんだから考えていただきたいんですけど……」
呆れる深紅に、神瀬が珍しくすまんね、と謝罪しているのか悪態をついているのか分からない返答をよこす。
「──いや、ちょっと待て、反応が回復した!?」
PCを睨んでいた神瀬の一言に全員が目を見開いてモニターに注目する。
「え……コレっ、ミスケレがこの世界に来てるじゃないですか」
戸惑う深紅に神瀬がうなずく。
そこに瀧が割り込むと神瀬へと目を配る。
「場所はここから近いな……向かうか」
「そうだな、頼むよみんな」
神妙な面持ちの神瀬の横で橙弥が深紅らを案じる。
「せっかく姉ちゃん達帰ってきたのにまた戦うなんて……」
「大丈夫、私がみんなを助けたいから。もう少し頑張るけどすぐ戻ってくるから待ってて、橙弥」
「……分かった、姉ちゃんだけじゃなくて、瀧さんも、愛華さんも、無事で戻ってきて」
それを聞いて3人が強くうなずく。
私へのエールは? と問う神瀬に橙弥がため息をつく。
「だって神瀬先生はここに残るでしょ」
「……ッスね」
口を尖らせて
──────────────────
「ミスケレが出現したってのはあそこか──!」
瀧が辺りを見回すと、爆発音に顔を強張らせた。
「あそこか!」
深紅らが煙の立つ方へ走っていくと、そこには浮遊しながら周囲を破壊するミスケレの姿があった。
その姿は花弁と
「ようやく来たか、この世界の仮面ライダー。暇すぎてありきたりな破壊活動に走ってしまったよ」
「ミスケレ! なんでこの世界に戻ってきたかは知らないけど……ここで倒す!」
深紅が叫ぶと、3人が同時にバックルへとアーティファクションキーを差し込み、倒す。
『アーティファクションキー認証。コード:RC起動』
『アーティファクションキー認証。コード:KD起動』
『アーティファクションキー認証。コード:LY起動』
「変身!」
重なるその叫びと共に薔薇、蓮、百合の花びらが舞い、3人の戦士、白薔薇の騎士──ローサー、蓮花の弓手──ラータス、白百合の剣士──シャーリィが爆誕し、戦闘態勢に入る。
「相手は浮遊している、空中戦は俺に任せろ」
ラータスが蓮の花を模した弓、カマルダッタを構えると、強く引き絞ってミスケレへと直撃させる。
が、ミスケレは咄嗟に防御し、地上に着地した。
煙を払ってローサー達の前に姿を見せたミスケレは余裕のある歩みでこちらへと向かって来る。
「……折角だ、力を使わせてもらおう」
そう呟いたミスケレが
(!? 速いッ!)
弓での攻撃を主力とするラータスでは近距離のミスケレに対して瞬時に攻撃する事は叶わず、彼の
「がッ……!」
「さぁ行け吾輩の毒よ!」
ミスケレの指先からラータスへと毒が注入され、侵食を始める。
心臓の鼓動が早まり、全身に勢い良く血が巡っていく。
「ぐっ……! ッはあっ!」
「瀧さん!」
体の自由が利かなくなり、うずくまるラータスにローサーが駆け寄るが、その隙を突いてミスケレが爆走、接近する。
「次は君か?」
ミスケレの貫手、毒を持った攻撃がローサーを狙う。
が、ミスケレはその攻撃を寸前で止めた。
「つまらないなぁ、その程度では」
「……?」
「君達では弱すぎる、君達にここで圧勝してもしょうがないので吾輩がなぜこの世界に戻って来たのか、それまで何をしていたのか語るとしよう」
「ッ! ……ふざけんな!」
「ふざけるだろう、これ程までに圧倒的な力を手に入れれば」
ミスケレが腕に蔦を絡ませて手の平に花を咲かせる。
「それに君達も気になっていただろう、吾輩の動向と目的が。そうだ、話しているに間にどうだ? 悪あがきでもしてみるってのは」
「ではお言葉に甘えて」
シャーリィの持つ剣、リスユースが大量の
何度も短槍の投擲を続けミスケレを追うが、避けつつも破壊され、全くダメージにならない。
「攻撃を受けながらで悪いが吾輩の語りに付き合ってもらおう……まず吾輩は力を欲した。そこに理由は特にナッシング、力があれば全てを意のままにできる、
「力だけで全てを手に入れる事なんて出来ない! そんなの、認めない!!」
ローサーのローズカリバーがミスケレを狙うが、片手で刃をつままれ、受け止められてしまう。
「話を続けよう、吾輩はその力を得る為に自身の能力を活かす事にした。世界を自在に渡る能力と、“魂の器を融合、自分の物とする”能力だ。少し難しい話になるか? それまで足掻いてみせたまえよ、この世界の仮面ライダー」
ローズカリバーとリスユースの短槍が連撃を浴びせるが、ミスケレは微動だにせず、話を続ける。
「魂の器、それはすなわち人の魂を
自慢げに語るミスケレに攻撃を浴びせようとしたローサーに貫手が迫る。咄嗟に危機を察知したシャーリィがローサーを引っ張ってなんとか避けさせるが、今度は自分が貫手の餌食になりかける。
「ッ!」
なんとかリスユースで攻撃をいなし事無きを得るが、ミスケレは全く動じない。
「君らの世界は丁度良かったのだ、吾輩の力となるのにな。毒に車輪、中々使えて楽しいよ」
「その力を……どうして人を虐げるのに使うんだ!?」
ローサーからの必死の問いにミスケレは首を傾げる。
「力とは他者を虐げる為にあるものだろう?」
「違う! 力ってのは他人を助ける為にあるんだ!!」
「力の無い者が知った風に言うじゃないか」
怒りを込めたローサーの
「ぐぁッ!?」
「愛華さん!!」
シャーリィが力を振り絞り短槍でミスケレを後退させると、その場に倒れ込む。
「もう終わりか、仮面ライダー」
「まだ、まだ私がいる……! 私は……みんなを、守るんだ……ッ!!」
シャーリィを静かに寝かせると、ローサーがローズカリバーを握りしめて切っ先をミスケレに向ける。
その瞬間、炎に包まれる瓦礫に円状の穴が開き、サイドカーを取り付けたバイクが飛び出して来た。
──さだめと花恋であった。
たとえ自分達と関係の無い世界であったとしても、彼女らは来たのだ。
「皇さん、手助けに来ましたァ!!」
盛大に叫ぶ花恋の声をミスケレは一笑に付す。
「彼方の世界の仮面ライダーか、君らが来たとてなんだと言うのだね」
「あなたを倒す……ただそれだけ!」
さだめが告げると、花恋と共にバイクから降車し、変身ベルト──コンフルエンサーを装着する。
「変身か、いいだろう」
《DEATH》
《STEAM》
《UNDEAD》
《HOPPER》
笑うミスケレをよそに2人はベルトに起動したイートリッジを装填、音声コードを高らかに放つ。
「変身」
2人の唱和が響くと、バックル中央のダイヤルを回転させる。するとイートリッジの液晶にそれぞれの性質を表した単語が表示され音声が再生される。
《Property Compile……DEATH・STEAM》
《Property Compile……UNDEAD・HOPPER》
その音声と同時に彼女らの体を装甲が包んでいく。
さだめの変身する青白い骸骨の様な装甲を持った黒い瞳の戦士。
花恋の変身する赤い筋肉質の素体に
「仮面ライダーカルヴァリア、戦闘を開始します」
「『仮面ライダープロトヴィヴレ』、戦闘開始します!」
カルヴァリアが主兵装である大鎌、モータルザッパーを転送させ、ミスケレへと振るう。
が、大味なモータルザッパーの挙動はミスケレの高機動とは相性が悪く、簡単にかわされ、反撃を許してしまう。しかしその鈍重さを補う様にプロトヴィヴレが瞬時にカルヴァリアの前に立ち、拳撃を食らわせる。
「中々早いな……君」
「那珂那珂早いンスよ……舐めないでよね」
プロトヴィヴレがミスケレの気を引いているうちにカルヴァリアがローサーの元に到着する。
「信濃さん……どうして」
「今はとにかくこれを」
カルヴァリアがホルダーからイートリッジ型の薬剤をラータス、シャーリィに投与する。
するとみるみるうちに2人が解毒され、回復していく。
「それは……」
「藤村さんが調合したキョウチクトウの解毒薬です。即効性があるのでお二人もすぐ動ける様になるはずです」
「ありがとうございます……でも、どうしてこの世界に来たんですか?」
「皇さん達を、それにこの世界の人々を助けたいと思ったんです」
カルヴァリアの言葉にローサーは少しうつむいて、うなずく。
「生きて、私たちと一緒に人々を守るんですね」
「……生きていく保証はありませんが、私は……死ぬまで誰かを助けたいと思っただけです。罪悪感とか使命とかそういうものじゃない、私の想いで」
「生きていくってのも約束、してほしいですけどね」
笑みを含みながらローサーが呟くと、意識を取り戻したラータス、シャーリィと共に立ち上がる。
「信濃、だっけな。助けに来てくれたのか」
「はい、私の生き死になんて目の前で傷付いている人の前ではどうでもいいので」
「強い心意気ですわね、良いではありませんか」
ようやく復活したラータスとシャーリィがカルヴァリアの前に立つと、プロトヴィヴレとの戦闘を続けるミスケレを見据える。
「それで勝機はありますか、信濃さん」
「ええ、花恋さんがいてくれるから、きっと」
ミスケレの貫手を何度も食らいながらも接近をやめないプロトヴィヴレに、彼は興味を示す。
「ここまでの長時間、吾輩の毒を受けてなお立つとは……何者ですか」
「
「なるほどしぶとい訳だ……だが心までは不死では無かろうて、根を上げるまでその命刈らせてもらおう!」
ホイールレーマから吸収した車輪の力で高速移動しながらミスケレがさらなる一撃を放つ。
──が。
「リミッター解除ッ!!」
その号令と共にプロトヴィヴレは姿を消し、ミスケレの攻撃をかわす。
どこに行った? そう心中で唱える暇もなくミスケレの背中に強烈な痛みが走る。
「ぐほぁ!!」
「油断したッスねまぜまぜ怪人、伊達に
ハハ、とプロトヴィヴレが嘲りを交えて笑うと、その場で軽くジャンプしてみせる。
彼女の使うホッパーイートリッジにはバッタの跳躍機能が内蔵されており、いわば全身をバネの様に伸縮して回避、攻撃に転用可能であるが、そこにはレーマの身体能力をベースにしたリミッターが用意されていた。これを解除して能力を使えば、身体負荷により筋肉が断裂してしまう危険性があったが、それをアンデッドの能力による超再生力で即時回復する事により補助したのだ。
すなわち、プロトヴィヴレはデメリットを打ち消しながら限界を超えた機動力と打撃力を得ているのだ。
(まぁ藤村さんいわくまだ調整中だから使い過ぎちゃダメらしいけど……)
「ねッ!!」
またもミスケレを翻弄する速度で背後に回り、拳撃。
反撃せんと手から毒を散らすミスケレだったが容易くかわし、背後へと移動。今度はその動きを読んで振り返るミスケレだったが、既に彼女の姿は無く、気付いた頃には上空からの拳骨を食らっていた。
「舐めてくれるな、仮面ライダー!!」
「ははっ照れますよい」
おどけてみせるプロトヴィヴレであったが、ホッパーの能力は限界が近付いていた。
流石に継戦は難しいと判断する彼女の元にライダー達が集まる。
「……ぞろぞろと!」
プロトヴィヴレの活躍により余裕が無くなってきたミスケレが悪態をつくと、再び毒を食らわせる為ライダー達へと駆ける。が、プロトヴィヴレの最後の跳躍により体を掴まれ、体勢を崩した。
「邪魔だァッ!」
「多分このケーブルから毒流してます!! 今の内にッ!!」
プロトヴィヴレが叫ぶと、ローサーとカルヴァリアがそれぞれの得物を振りかざし、左右の腕に伸びている2本のケーブルを切断する。
「ッ! 吾輩の
プロトヴィヴレを蹴り飛ばしミスケレはその場から
(ここは一時撤退、また新たな怪人の力を得て復讐を──)
「させん」
「させませんわ」
ロータスの射る矢と、シャーリィの放つ短槍がミスケレの車輪に突き刺さる。
退避を優先したミスケレの動きは直線的で読みやすく、例えスピードがあったとしても命中させるのは容易であった。
「ほ、
「人を傷付け、悲しませたあなたが一丁前に悔しがらないで」
「アンタにはツケを払ってもらう、キッチリね」
カルヴァリアとローサーが啖呵を切ると、自暴自棄になったミスケレが立ち上がる。
「もうこれ以上被害は出さない……守り切ります」
「絶対にやらせない、この世界を、私を信じてくれる人を、すべてを! 守るんだ!!」