サイバーパンク2077〜変なのを添えて〜 作:ロックオン
お前ら前世の記憶とか覚えてるだろうか?
まぁかく言う俺もそんな覚えちゃ居ないんだけど。
性別はおろか出身や名前まで覚えちゃいない。
じゃあ何でそんな話すんだって話だが…
「どっかで見た気がすんだよな…」
機械を通した様な独特のノイズが乗った声で呟く。
路地裏に捨てられていた割れた鏡に写る男は此方を見て辟易した様な顔をした。
白黒混じった長髪、切れ長の目にギザっ歯がチャームポイントなハンサム。それが今の俺だ。
名称不明住所不定の状態で此処、謎の大都会にやって来たらしいこの俺。らしいと言うのも…
「起きた早々にこんなラブリーな街に放置しやがってホーリーベイビーが」
俺の気がついた時には路地裏でゴミ箱に寄りかかってる状態だったんだよクソがっ!
「ベイビー!ラブリー!ハニー!…やっぱ駄目か」
罵倒すると勝手に変換されるこのフザケた機能、付けたやつ見つけたら風穴空けてやる…!
手持ちを確認すると9㎜リボルバーに弾、よく判らんコインが少々と煙草…それとやけに軽い身体。当然身分証明らしきものは無い。
「あーあー…この声俺のだよな?」
何故かマイクを通した後のようなエフェクトの掛かった声。
聞き覚えは無いが間違いなく自分の口から出ている。
と、ここまで長々説明したが俺はこの顔を見た事がある…気がする。
「何かのゲームで出てきた奴じゃねえか…?」
詳しく覚えちゃいないが自分の名前も思い出せねぇのに多少なりとも覚えてるって事は大分熱を上げてたんだろうなぁ…
今は名前も覚えてないわ、すまんな色男。
鏡に笑いかけようとするとニヒルな笑みが自然と浮かんだ。
取り敢えず現状把握が先だな。俺が誰かはその後で良い。
思い立って直ぐに路地裏を抜けるとそこは予想以上に都会だった…。薄っすらとある記憶とはまるで違う車、見たこともない形の奴がそこらを走りまくってるし。何なら空飛んでんのに羽が見当たらない不思議車まである。
「こいつぁ…ヘビーだぜ…」
思わず口から出た言葉だったそれを聞いた男達が話しかけてくる。
「なぁ兄ちゃん、何がヘビーなんだぁ?」
「俺達が相談に乗るぜぇ?」
「ほら、こっちに来い!」
あれよあれよと囲まれて元いた路地裏まで連れ戻された。
リスタートですってか?次はRTAしてやろうかあぁん?
「よぉ兄さん方、こんな所に連れ込んで何しようってんだ?」
取り敢えず先頭のメカメカしい見た目の男に聞く。
まるでカモがネギ背負ってやって来たと言わんばかりの雰囲気で答えるメカ男。
「兄ちゃん、随分と良いクローム着けてんじゃねぇか」
俺の左手をマジマジと見ながらそう言う。クロームって何だよ…
「それを寄越すなら痛い目見ずに済むかもしれんぜ?」
ニヤニヤと笑い掛けてくるゴツい男。…こいつもメカメカしいな。
「悪い…とも思わねぇな。お断りだラブリー共」
そう告げると同時に殴りかかって来た背後の…ヒョロ男を躱して顎を蹴り上げた。…すげー足長いな俺。
顎を砕いた感触があり、一撃で失神させた様で連れの2人はまだ何が起こったのか理解出来ていない。
「お前らの
その言葉にようやく事態を把握したのかやたらゴツいリボルバーを向けて来るデカ男。
「クローム以外は要らねえ!死にくされやぁ!」
「遅いッ!」
腰に下げたホルスターからリボルバーを抜いて三連射。
両肩と右足の付け根に命中。呆気無く血の海に沈むデカ男。
「何だよテメェはよぉッ!?」
メカ男がビビったのか腰の引けた姿で此方に拳銃を向けているのが見える。
「それが分かんねぇからヘビーなんだよベイビーが!」
意識しなくても滑らかに相手を照準して発砲する腕。
明らかに不意打ちだったのに回避した挙げ句カウンターを決めた足。
そして人を撃ったのに全く動揺しない心。
マジで意味が判らん…俺は
「訳わかんねえ事言ってんじゃねぇよサイコ野郎!!」
言葉と同時に放たれた銃弾の内2発は明後日の方向へ。
1発は俺の腹に命中した。
「ぐッ…」
声を漏らして咄嗟に腹を抑える。…んん?当たった割には痛くねぇな?
「は…はははッザマァ見ろサイコ!楽には殺さねえから覚悟しやがれ!」
悠々と近づいて来たメカ男の頭を鷲掴む。
腹に食らったはずの弾丸は俺の身体に傷一つ着けられなかったようだ。…お陰で元気いっぱい怒り心頭だこのクソ野郎!
「そうかい…じゃあ遠慮なくやらせてもらうぜハニィィ!?」
驚いた様子のメカ男の頭が軋む程握り締めながら地面に叩き付ける。いい感触だ…金属音が耳障りだが。
「や、止めろ…」
俺の腕を掴んで止めようと足掻くメカ男。
それを気にする事なく頭ごと腕を振り上げた。
「あ?なんだって?」
聞き返しながらもう一度叩きつけると変形してきた。粘土みたいだなお前の頭…
「許して下さいお願いしますッ!!」
「許す?お前、俺に許されない様な何かをしたのか?」
「ヒッ…」
「黙ってちゃ分かんねぇよ」
いやもう面倒だしコイツは此処で殺そう。
再度頭ごと振り上げると慌てた様子で
「もうアンタには手を出さないと誓う!本当だ!頼む…!」
なんだ…ただ絡んだことの謝罪かよ。
「信用できねぇ…いや、そうだな。お前には聞きたい事が出来た」
此処でサックリ片付けた方が後腐れ無くて楽だな?と言う物騒な考えが自然と浮かんだ事に軽く恐怖しつつ、現状把握の一助として役に立ってもらう事にした。
「取り敢えずメシだな。運動したら腹減ったわ」
メカ男の顔から手を離すと尻もちを着いた。
まだ飲み込めてない様子のメカ男に優しく聞く。
「テメェの奢りだ。美味い飯屋に連れて行けよ?んでもってそこで質問タイムだ」
余計な真似したら次は頭をすり潰す、と冗談めかして言うと高速で首を縦に振るメカ男。
「ハイ、それはモチロン…ささっ行きましょうか!?」
連れの無残な姿が目に入ったのか少し顔を背けながら答えた。
…別に死んでねぇし良いだろーが。
心の内でそう呟くと少し急ぎ足になったメカ男の後ろをついて行く。やけに青い空が目に焼き付く様な昼下がりの出来事だった。
これが俺の最初の記憶。
そっから傭兵稼業やって見たりタクシードライバーやって見たりと色々やる事になった訳だが…それはまた別の話。