サイバーパンク2077〜変なのを添えて〜 作:ロックオン
落とし前をつけた後、いつもの店で飲み明かして宴も酣になったところでジョンから質問が飛んできた。
「そういや旦那。家吹き飛んだわけですが行く宛あるんですか?」
「んあ?…まぁどうにでもなるだろ」
最悪何日か橋の下でも良い。俺の身体は頑丈だからな。
「もしくはあのボロ車が俺の仮宿だ…」
ジョンの家は狭いトレーラーハウスだから転がり込むのは気が引けるしな。
「旦那がいいならそれでも構わないですが…」
困ったような笑顔で答えるジョン。
まぁ長い間じゃねぇからよ…
そういえば、とジョンから再度聞かれる。
「パドレからの連絡は見てないんですか?」
連絡?……あ?いつの間に来てたんだこれ?
ってかこういう書面ならジョンに直接送ってくれよ…俺の場合外部端末で受け取らないといけねぇから面倒くせぇんだよ…
「………なんだこりゃあ?」
依頼と請求がセットになってんぞ?
「やっぱり見てなかったんすね…」
一応聞いといて良かったです。と話し続けるジョン。
「先の一件で旦那はパドレに借りを作った。それはいいですね?」
そりゃまぁな。
「それを返して貰おうってのがその請求ですね。依頼は金じゃなくてロハでこっちをやっても良いって意味でしょう」
はえーよパドレ。昨日の今日じゃねぇか…
「旦那、なんか怒らせる様なことしました?」
「いや心当たりはねぇな」
せいぜい勝手に酒飲んだことくらいか?
まぁ態々言う程の事でも無いが。
「…まぁ良いですが。どっち選ぶんです?」
依頼なら俺も行きますし、支払いに行くのでもどっちみち俺が必要でしょう?
そう言いながら肩をすくめるジョンを見て考えるが…
「…じゃ、依頼で返すか。別に払えない額じゃねぇがぶっ放して済む話ならそっちの方が楽だ」
決まりだな、と酒を煽ると端末をジョンに投げ渡す。
端末で依頼を確認していたジョンから声がかかる。
「これ、殺害禁止ってありますよ?」
「あぁ?んな訳ねぇだろうが」
俺達に依頼=戦闘ありきの強奪か殲滅なのはパドレなら良く知っているはずだ。
一度隠密の依頼をやった時は片っ端から暗殺したから後日バレて大事になったし。
…一応依頼通り
「いやいや、本当ですって!ほら!」
どれどれ…
「…マジだな。標的のピックアップと目的地までの護衛及び運送?あの爺ついにボケたか?」
どう考えても俺達向きじゃねぇだろこれ。
いやジョンはまだ良いとしてだ。俺向きじゃなさすぎる。
「またヴァレンティーノズ絡みだしよ…」
また恨み買ってぶっ殺しに行くの面倒なんだけど…
いっそ全部無くなるまで殴り続けても…
ダメだな。酔ってるせいか暴力側に思考がよりがちになるわ。
「んで、あの爺は何を持ってこいって?」
依頼内容を理解するのを放棄してジョンに尋ねる。
「待って下さいよ?……あぁ、まぁこれなら旦那でもいけるかもですね」
何か納得してるみたいだが俺にはサッパリだ。
「あぁ、すみません!…要はヴァレンティーノズを足抜けしたいって言ってる子供を穏便に此処まで連れてくれば良いだけですね」
此処、の辺りでテーブルをコンコンと叩く。
…この店まで?
「その足抜けしてぇってガキを
「ギャングの足抜けを舐めちゃ行けませんよ…最悪死ぬ様なケガだってあり得るんですから」
そう言うもんかね…まぁ群れで強さを維持するギャングならソロに成りたいだなんて奴をそう簡単に手放す訳がねぇのは分かるが。
「まぁ大した手間でもねぇ。指定は?」
「…今日ですね。やるなら連絡を入れときますが?」
頼んだ。と言った後に最後の一杯を飲み干す。
殺さずに、報復やら罰やらで襲いくるヴァレンティーノズを打ちのめせば良いってか。
これの何処が俺向きなんだか…
「旦那、早速向かって欲しいとの事です。……行けますか?」
テーブルにもたれ掛かっている身体を起こして席を立つ。
「当然。…じゃさっさと済ませちまうとするか」
いつもの女主人に軽く会釈をすると店を出る。…やけに深くお辞儀されてねぇか?
「ささ、早く行きましょうや旦那!」
不思議に思っていると勢いよく急かしてくる声に思考を遮られた。
「善は急げって言うでしょう?」
と急かすジョン。
「それを
苦笑しながら何時ものボロ車に乗り込んで発進した。
にしてもパドレよぉ…敵対する奴らは皆殺しにしろとかそういうのを寄越してくれりゃ良いものをなんでまた不殺なんて縛りプレイでやらせんだよ…
そんな疑問が浮かんだが、結局やることは変わらねぇなと頭を切り替えた。
いつも通り、標的を貰って逃げりゃ良いんだから。
なんて考えてたんだけどな?
目的地で目にしたものに少し目が丸くなっちまった。
「おいおい!もうおしまいか!?かかってこい!」
それは目の前でヴァレンティーノズの連中に袋叩きにあってただろう巨漢が血まみれになりながらリーダーっぽい奴をぶん殴っている光景だった。
「うひゃー…派手に暴れたもんですね」
小声で俺に話しかけるジョン。
すげぇなアイツ。10人はやってるじゃねぇか。
「あの倒れてる中から探すのは手間だな…俺があいつの相手するからその間に探し出してとっととズラかろうぜ?」
「いや、旦那?ターゲットは…」
そう言いかけたジョンを突き飛ばして自身は反対側へと飛んだ。
俺達のいた空間に風切り音と共に拳が通り抜けた。
「見つけたぞ!!」
「頼んだぞジョン!」
改めて見てもでけぇなコイツ。
ぱっと見身長は俺と同じくらいに見えるが搭載してる筋肉の量が多いのか体格だけで言ったら1、5〜2倍はあるだろ…
「落ち着けよ兄ちゃん。俺はヴァレンティーノズじゃねぇ、見りゃわかんだろ?」
まずは対話から。初手で殴りかかられたからと言っていきなり銃を抜く奴はいない。
ニッコリと笑って見せたが…返答は拳だった。
「関係ない奴がノコノコくるわけねぇだろうが!」
その拳を振り切るより早く一歩前に出て受け止める。
「わかんねぇなら仕方ねぇな。あぁ仕方がねぇ…!」
腕が伸びきって最高速になってないなら威力は半減する。
横っ面に叩き込まれた拳を左手で掴んでロックした。
手が抜けなくなって慌てる大男に警告する。
「あんま暴れんなよ…俺は手加減が得意じゃねぇんだ!」
大男の顎先を掠める様に右フックを喰らわすと糸の切れた人形みたいに崩れ落ちた。
成功して良かった…失敗したら下顎丸ごと吹っ飛ばす所だったわ。
まぁそれでも死にはしねぇから問題ないが。
「ジョン!ガキは見つかったか!」
さっさと攫って逃げんぞ!と声をかけると戸惑いながら
「いえ、その…そいつですよ?」
恐る恐る指をさす先には俺の足元で伸びてる大男がいた。
「……子供?」
「ジャッキー・ウェルズ。まだ20になってないから子供で合ってるでしょう?」
まじかよ…思いっきり顎殴っちまったんだけど?
「…お前は何も見なかった。いいな?」
「旦那、それは無理がありますよ…」
普通に顔見られてたじゃないですか、と呆れられた。
「…都合よく記憶飛んでねぇかな?」
綺麗に顎に入ったし、脳もグラグラ揺れただろうし。
「諦めましょうよ…素直に謝れば許してもらえますって」
宥められるが、なんか納得いかねぇ…
「殴りかかってくる方が悪くねぇか?」
最後の悪あがきをしてみるが
「標的を確認してない方が悪いと思いますが?」
そう言われるとぐうの音も出なかった。
ジャッキーの年齢が2077年で30→20代前半に若返りました。
…Vと同年代くらいかな?と思ってたので調べた時にびっくりしました。