サイバーパンク2077〜変なのを添えて〜 作:ロックオン
「……ここは…?」
ボロ車で移動中に目が覚めた大男…ジャッキー・ウェルズが声を上げた。
「よう、目が覚めたか?」
助手席から声を掛けるとすぐに上体を起こして睨んできた。
「お前…!」
「おっと、落ち着けよ兄ちゃん。俺らは敵じゃねぇ」
両手を上げて何も持ってないことをアピールする。
「パドレからの依頼でな。お前さんをエルコヨーテまで連れて行くことになってんだ」
ゆっくりと敵意がない事を知らせる。
「パドレが?…余計なお世話だって言っとけ」
そっぽを向いて吐き捨てる様に言うウェルズ。
「俺は伝言板じゃねぇ。自分で伝えるこったな」
ほれ、とその辺でジョンが買ってきたテキーラを投げる。
「痛み止め兼気付けだ。適当に飲ってていいぜ」
受け取ったものを確認するとすぐにキャップを開けて飲みだした。
「気が利くじゃねえかチューマ!」
一息ついた様子で機嫌良く話すジャッキー。
「まぁ、派手にやってた所に水を差した形になっちまったからな…詫びだと思ってくれ」
ほっといても自分で何とかしてたしなコイツ。
「気にすんな!アンタのパンチが強かっただけの事だ」
あれは効いたぜ…としみじみ語る。
「俺はステゴロじゃ負けた事なかったんだけどな…アンタどんなクローム入れてんだ?」
「さぁ?俺にもわかんねぇ。でもまぁ力負けした事はねぇな」
はぐらかされたと思ったのか少し不機嫌そうに
「なんだそりゃ。自分で入れたモンが分からねぇ奴なんて居ねぇだろ」
「色々事情があるんだよ。察しろとは言わねぇが深掘りすんなら覚悟しろよ?」
今まで会った誰も分かんなかったんだから相当の厄ネタだと思うぜ?
…マジでわかんねぇのが若干恐怖を覚える所だが。
一応互換性のあるパーツで構成されてるっぽいが基本オーダーメイドみたいだしな…
「…分かった、もう聞かねぇ」
「余計なことに首を突っ込まねぇ奴は好きだぜ?」
冗談めかして言うと少し緊張が解れた様だった。
「旦那、もうそろそろ着きますぜ」
まぁそんなに距離なかったしな。
…何でパドレはこんな依頼投げてきたんだ?
「分かった。…気乗りしねぇかも知れんが付き合ってもらうぜジャッキー」
「…ま、もう終わった事だし構わねぇよ」
テキーラを飲みながら答える。
「そういやアンタの名前は?俺だけ知られてるのはなんか気分悪いぞ」
憮然と言われて苦笑する。
そういや名乗ってなかったわ。
「そいつは悪かった…俺はブートヒル。運転してるのは相棒のジョンだ」
「どうも」
ルームミラー越しに軽く会釈するジョン。
俺達の名前を聞いて少し目を見開くジャッキー。
「アンタらがあの…皆殺しのネームレスか!?」
ひっでぇ二つ名だなおい…
「本物か?…いや、本物なら納得が行く!そりゃ強ぇワケだ!」
上機嫌になって何よりだが…
「なぁ、ジョン」
「何ですか?」
「俺達ってそんなに殺してるか?」
大抵邪魔してきた奴だけ始末してそれ以外は無視して逃げてるはずなんだが…
「殺ってんの殆ど旦那ですけどね?ほら、メイルストロームの連中とか…」
あー…あのイカれ共は死にに来てんのかって位無防備に突っ込んで来るからな。
ほぼカモ撃ちみてぇな感じでやっちまってたわ。
「なぁ!あの噂は本当なのか?ほら、メイルストローム100人相手に大立ち回りしたとかいう…」
凄い尾ビレの着き方してんな。桁が違うじゃねえか。
「そりゃ言い過ぎだな…せいぜい30人がいいとこだったろ。なぁジョン?」
「でしたかね?あん時は必死で数なんか覚えてませんよ」
少し昔を懐かしむ様に話す。あん時は本当に死ぬかと思いました…と続けた。
まだメジャー入りする前の話だしな。ロクなサイバネ積んでなかった時じゃしょうがない。
「マジか…それでも30人相手に勝ってんだな…」
ちょっとがっかりしてんな。まぁ噂なんてそんなもんだ。
「ま、真実はそんな面白いもんでもないってこったな…着いたぜ」
エルコヨーテが見えて来た。
「これで一旦依頼は完了だな…いや、まだか。全くしつこい連中だな」
ジョンに合図を送るとすぐに路肩に寄せて停車させた。
車が止まると同時に外に出る。
「何だ?どうかしたのか?」
状況が呑み込めてないジャッキーに一言。
「追っ手が来た。ちょいと片付けて来るから酒でも飲んでな」
そう言い残してドアを閉める。
車で二台…最大で8人か。
店までご一緒するワケにゃいかんわな。
「そこの車!ちょっと止まれ!」
大声をあげてジェスチャーで止まるように指示をするが停止する素振りも無く突っ込んで来る。
見えてねぇ…ワケ無いから無視してんなあいつら。
「止まらねぇならそれなりに痛い目にあってもらうことになるぞー!」
なおも無視。警告はしたぜ?
俺に向かって突っ込んでくるスポーツカーのフロントガラスに向かってドロップキックをかます。
カウンター気味に入ったドロップキックでフロントガラスが粉々に砕け散って俺の両足が座席の丁度中間に突き刺さった。良し、狙い通り人には当たってねぇな!
「イッテェな…!俺じゃなきゃ怪我してんぞオイ!」
驚愕のあまり声も出ない様子の助手席に居た奴をドアごと外に殴り飛ばす。走行中の車からドアをボード代わりに後方へと流れていった。これで1人。
「お前も、行ってこい!」
運転手をハンドルごともぎ取って同じ様に殴り飛ばす。ドアボーダーの記念すべき2人目が誕生。
さて、と。久々に車の運転するな…!
もげたハンドルはなんていうか操舵輪の部分だけ無くなってて軸が丸見えだった。
指先で思いっきり掴むと変形して少し持ちやすくなる。
「んじゃま、即席相棒(仮)、行くぜぇ!」
アクセルを踏み抜く勢いで吹かすと一気に回転数が上がって後輪が滑り出す。
軸だけになったハンドルを鍵を回すように操作して車体の回転を制御、後続車両に横からぶつけてやった。
「脆いな
「悪いな兄ちゃん達。ちょっと寝ててくれ」
左手から順番にぶん殴って気絶させる。…殺しちゃダメなのが地味に面倒いな。
全員気絶…死んでないのを確認して一応救急車を呼んでおく。
これでよし。ジョン達の元に帰ると普段通りのジョンと少し興奮した様子のジャッキーに出迎えられた。
「終わりました?」
「すげぇな!?」
「終わった。次に目覚めた時は病院だろうな」
ま、あのままでも死ぬことはねぇだろうよ。
「さっさと店行こうぜ…不殺が地味にストレス溜まるわ」
さっきのだって運転手撃ち抜きゃそれで終わりだし。
「…旦那、その考え方が
呆れた声で言われてハッとする。
「いや、これは言葉の綾だ。何も殺したい訳じゃねぇ」
ソッチのほうが楽だなってだけで。と続けると
「語るに落ちてんぞ?」
ついにジャッキーからもツッコまれた。
「…もう、それで良いから終わらせようぜ」
この話は分が悪いわ。
ジャッキーをエルコヨーテに届けると、女主人…
…気まずい。俺、間違えてジャッキーの顎ぶん殴っちまったんだけど…
お宅の息子さんは多分一人で何とか出来たと思うぜ?と言っても礼だと言って酒やら飯やらをガンガン持ってきてくれる。
「…旦那。本当の事言った方がいいんじゃ無いですか?」
呆れた様な顔で言ってくるジョン。
「…言える雰囲気じゃねぇだろ?」
上機嫌で高い酒を持って来るママウェルズに軽く会釈しながら小声で答える。
「まぁ良いんじゃねぇか?俺も気にしてねぇし」
ほら、ジャッキーもそう言ってんだからよ。
「ジョン、まぁ飲もうぜ?」
グラスに持って来てくれた酒をなみなみと注いで渡す。
「…いただきます」
ジャッキーにも同様に。
「お、悪いな!」
一気に飲み干す二人。…よし、飲んだな?
「…これでお前も共犯だ。ママウェルズが礼として持って来てくれたモンを飲んだワケだからな」
俺もグイッと酒を煽る。
「そりゃ無いですよ旦那!?」
慌ててグラスを置くジョン。
呵呵と笑うジャッキー。
「まぁまぁ…終わりよけりゃ全て良し、で良いだろ?」
ほら飲めよ…まだまだあるぜ?と空いたグラスに酒を注ぐ。
肩を落としながらもグラスを手に取るジョンを見て更に笑うジャッキー。
これが俺達とジャッキーの初邂逅だった。悪い奴じゃねぇし、むしろ大分良いやつではあるんだがちょっとノリが良すぎるんだよな…それが原因で色々巻き込まれる事になったのはまた別の話だ。