サイバーパンク2077〜変なのを添えて〜 作:ロックオン
結局あれからも新たな家が決まることもなく。
何時ものように昼間からエルコヨーテで呑んでいるとジョンが変なことを聞いてきた。
「そういや旦那、最近何か妙な事ありませんでしたか?」
「物件探し中にか?特に……いや、そう言えば最近感じてた視線がなかったな」
多分ネットランナーだろうと話してた例の覗き野郎。そういや今日は全くと言って良いほど視線を感じなかった。
「成程…いえね、俺の方は妙に尾けまわされたモンですから。キッチリ撒いてやりましたが」
てっきり諦めたのかと思ってたんだが…
「…そっちに行ってたか。いい加減本腰入れて探すか?」
どこの何奴だか知らねぇが。
「チラチラ見て来やがってうざってぇ。何人か締めときゃ少しはマシになんだろ」
嫌な気分を流すように酒を煽る。
「いや、今回はそう言った感じじゃなかったですよ?」
空になったグラスに酒を注ぎながら続けるジョン。
「俺のICEは全く反応しませんでしたし。今回は物理的に尾けられました」
コイツが今積んでるICEは元軍用の払い下げ品だ。性能は申し分ねぇんだが…
「あんまそれを過信すんなよ?そこらの一流や二流程度の侵入は防げても超一流の凄腕相手だとちゃんと機能するか分かんねぇぞ?」
流石にネットウォッチやらヴードゥーボーイズやらのネットランナー集団相手じゃ部が悪い。
「分かってますって…それでまぁ尾けられてたって話なんですが…」
少し言いにくそうに話すジョン。…何だよ?
「勿体ぶらずに話せよジョン。何か気になる事でもあんのか?」
俺がそう水を向けるとようやく決心したかの様に話す。
「チラッと見えただけなんで確証はありませんが…デイビットが居た様に見えました。複数人で尾けて来てたんで個人的な用事とは思えません」
………ふーん?
「そいつはまた面白いことになってんな」
自然と口の端が吊り上がって笑顔になった。
あのガキ何考えてやがる…
いや、これはメインの奴が糸を引いてんのか?
まさかどこぞのキロシ野郎じゃねぇだろうが。
次は殺すとローグに伝えたし。
まぁ何にせよ俺達に手ぇ出そうってんなら相応に痛い目見て貰うだけだ。
「俺の見間違いかも知れませんが…どうしますか?」
俺の笑顔を見て姿勢を正して聞いてくるジョン。…何でかしこまってんだよ?
「どうするか?そんなもん決まってんだろ」
注がれた酒の入ったグラスを一気に煽る。
「まずは
もし
「いいんですかい?旦那が助けたガキですよ?」
気を使う様にそう言いながら俺を見てくるが…
「それがどうした?俺達の敵に回るなら容赦しねぇ…これ、前にも言わなかったか?」
なるべく撃ちたくねぇなってだけで、敵に回るなら躊躇なく撃てるぜ俺は。
「そうですね…まぁまだ敵だって決まったワケじゃないですし」
宥める様にそう言うと自分の分の酒を煽るジョン。
そりゃそうだな。もっとくだらねぇ理由だったら一発ぶん殴って終いだ。
「ま、どっちにしろあいつらの目的を探るとするか」
お前今日は空いてるか?と聞くと、何処かと通信してから
「えぇ…なんの予定も無いです」
そう答えた。絶対何か有っただろお前…まぁ言わないなら聞かねぇが。
「じゃあ車出せ。…こんなんで釣れるとは思えねぇがまぁ試しにやってみようぜ」
これで釣れる馬鹿野郎なら楽勝だ。何が目的だろうが問題なく処理してお終いに出来る。
注がれた酒を飲み干すと席を立つ。
「
まぁ俺たちの敵になるなら容赦なく殺してやるけど。
「珍しいですね?やっぱりあのガキは特別ですか?」
何時もなら派手にやろうぜ!って感じじゃないですか。と少し揶揄う様に言うジョンを軽く叩きながら答える。
「バカ野郎、そういうんじゃねぇよ。あの
左手を軽く振りながら言う。コレを使うってことは札束が吹っ飛ぶのと同義。…同時に周辺の被害もデカくなるが。その代わりにぶっ放せば大抵の事が解決するからな。
「…
冗談めかして言うと顔を青くして聞いてくる。
「まだやり合うと決めたワケじゃないですよね…?」
「相手次第だな。至近距離に近づく前にアイツが加速する様なら諦めな」
この間みたいに手が届く距離なら素手で捕えて終いだ。
「あのガキも難儀なモノを入れちまったもんですね…」
あんな物着けてなきゃここまで極端な対応にならなかったものを…と続ける。
まぁ、サンデヴィスタン持ち相手に中距離で無力化するなら先手必殺が最良だからしょうがねぇ。
ただのガキなら、例えばジャッキーみたいな
「敵のサンデヴィスタン発動を見過ごすってのは大抵はそのまま死ねって意味だからな」
アイツのは特に。発動タイミングを見逃すのは不味い。
「…まぁしょうがないですね。旦那を敵に回すってのはそう言うことですから」
「俺達を、だ。…さっさと行くぞ」
何時ものボロ車へと乗り込む。
運転席に座ったジョンが確認するように聞いてくる
「尾行してくる奴をとっ捕まえるんですよね?」
「そうだ。…まだ俺達の後をつける間抜けならそれで良し。とっ捕まえて話を聞くとしようぜ」
そんな間抜けが早々いるとは思えねぇけどどうせ暇だしダメ元でやってみるとしよう。
「了解です…取り敢えず、昨日と同じルートで良いですか?」
「そうだな…いや、昨日尾行を撒いたんなら同じルートだと罠だとバレるか。少し変えてなるべく人通りの多い、尾行しやすい道を選んで走ってやれ」
「分かりました」
さて、何が釣れるか楽しみだな?
本命はデイビットで対抗はメインとその仲間達、もしくは第三者。大穴はキロシ野郎だ。
「あんまり悪い顔で笑わんでくださいよ旦那…心臓に悪いです」
そいつは失礼…いや、お前の方が失礼だな?
「俺の笑顔が何だって?」
「…特徴的で良いですね!」
長生きするコツは長い物に巻かれる事だが…
「でもまぁ目立ちますし、抑えてくださいお願いします…」
及第点だな。
「…まぁ良い。運転は任せた」
寝てるから何かあったら起こせ。そう言って眠る体勢に入る。
「……はいはい。行きますよー」
運転し始めたジョンを尻目に夢の世界へと旅立つ俺。
流石に何日も寝泊まりしてるシートだ。多少揺れようが寝るのに支障はない。
数分も経たずに意識をシャットダウンした。
「旦那…旦那!」
ジョンの声で目が覚める。
「…どうした?」
ジロリと目だけでジョンを見ると無言で自分の身体越しに左後方を指差す。
ルームミラーの角度を調整するフリをして確認すると…
「……間抜けの方だったか」
確かにありゃデイビットだな。
地味な車で離れた位置から追いかけてきてる。
こっちをチラチラ見ては何処かに報告でもしてんのか上の空になってんな。
「…どうしますか?」
まだ少し戸惑いが見えるぞ。こういうのは思い切りが大事なんだぜ?
「…そこの裏路地、アイツの後ろに回り込めるか?」
「確か此処なら…可能ですね」
狭い道なもんでちょっと時間かかりますが。と続ける。
「どの程度かかる?」
「…15秒、それ以下は無理です」
成程…じゃ、やってみるか。
「そこを曲がって俺が降りたら20秒後に後から挟み込め。上手くいきゃそれで終いだ」
もし発砲音が聞こえたら迷わず逃げろよ?と念を押す。
「そん時はアイツの首を持ってメインの野郎に話を聞きに行くからな」
場合によっては皆殺しだし、関係なくても疑わしきは罰しろってパドレが言ってた…気がする。
そう嘯きながら車を降りる。さっき通った曲がり角を戻ると歩いてくる俺を見て一瞬頭がフリーズしたのかデイビットが運転席で目を見開いた。
「よーうデイビット!こんな所で会うなんて奇遇だなぁ!」
にこやかに手を振りながら歩く。…轢いてくる様子はないな。…後14秒。
「こんな所で何してんだ?」
喋りながらも足は止めない。運転席の真横につくと車内を見渡すが…誰も居ねぇか。運のいい野郎だなデイビット。…後10秒。
「…別に、何も。アンタは?」
白を切る度胸はいいがな。…後5秒。
「俺か?俺は…」…0、時間通りだな!
キッカリ20秒で消音モードで後ろから突っ込んでくるジョンの車を見て
「
ブチ抜いた右手でデイビットの左肩を掴んでドアごと引き摺り出す。
経験の浅い
ピンチな状況で直前に考えてた事一つに集中するから狩りやすい事この上ない…大体1秒位無意味な事し続ける間抜けになるからな。今回のコイツみたいにアクセル踏もうとするとかな。…普通に車捨てて走った方が速いだろお前。
「さて…お話しようぜデイビット?」
…返事がねぇな?と腕に付いたドアの残骸越しに観察するとどうやら引き摺り出す時に頭を打ったのか気絶してやがった。…まぁ目的は果たせたからよしとするか!
腕に纏わり付くドアの残骸を捨てながらジョンの車に近づくと後部座席のドアを開けてデイビットを車中に放り込む。
「旦那!無事ですか!?」
「余裕だな…おぉっと、お仲間登場ってか?」
ボロ車に乗る直前で路地を走って来る…ガキか?すげー色してんなアイツ。んでもってすげぇ形相してら…まるで小鬼みてぇだ。
「おいジョン!ぼさっとしてねぇでさっさと車出せ!!」
「り、了解ッス!」
直ぐに走り出すボロ車に向かって散弾がバラバラと当たるが…効かねぇんだなこれが。
「見た目と違って頑丈なのもウリだよなコイツ」
最近はその辺の装甲車両とかち合っても壊れない位には頑丈なんだよなこの車。
「その分金掛けてますからね」
旦那の単車1台でそのドア1枚ですよ。と信じられない事をしれっと言う。
「はぁ!?こんな、殴ったら簡単にもげちまいそうなもんがそんなにすんのかよ!?」
信じられねぇ…とマジマジと見る。
ちょっと殴ってみるか?と考えていると
「止めて下さいよ?マジで怒りますからね?」
釘を刺された。…まぁ良い。今回は
「さてとこの間抜け、どうしてくれようか…」
適当に
「それは止めときましょう?流石に可哀想ですよ…」
ジョンがこの調子じゃなぁ…やっぱ情が移ってんじゃねぇか。
「じゃあいっその事、メインに聞くか?」
普通に聞いてもしらばっくれるだろうが今はデイビットが居る。
何も知らねぇならその時はデイビットから聞きだしゃ良い。
まぁどっちでも良いな。どう転ぼうと俺が殴る相手は残るし…
「…どうするんです?」
「取り敢えずアフターライフに行こうぜ。あの野郎は大抵あそこに居るからな」
そこで楽しいお話タイムだ。
内容次第じゃ殺し合いになるが…全部片付けちまえば関係ねぇ。