サイバーパンク2077〜変なのを添えて〜 作:ロックオン
ローグとの会話から数週間後。
あれからネットランナーの変死が増える事もなくなって。
特に変わりなく依頼をこなしたり飲んだりしていたんだが。
今日は久々に郊外の方まで足を伸ばしている。
「よぉブートヒル!お前がこっちに来るなんて珍しいな!」
「まぁな…
そのついでにアルデカルドスのキャンプ付近まで足を伸ばして知り合いと話してる訳だ。
「元気そうじゃねぇかよミッチ。…スコーピオンは留守か?」
「丁度出てったところだ。…何か用でもあったのか?」
アルデカルドスとは以前受けた依頼で少し絡んだ程度の仲だが、ミッチとスコーピオンの2人とはそれ以降も交友が続いている。
「いや?偶々寄っただけだからな。たまには顔見ておくか程度だ」
おっさんの顔見ても面白かねぇが。
久々に会って話すのも悪くはねぇ位の考えで寄っただけだし。
「そうか…ん?今日はジョンは一緒じゃないのか?」
辺りを見回すミッチ。
俺とアイツがニコイチみたいな感じで捉えてる奴多すぎねぇかな…
「今日はオフだからな。いつでも一緒って訳じゃねぇよ。…今は多分ムアマルんとこだろうが」
車好きのジョンとムアマルは気が合うのか最近は車の改造を行うとなったらムアマルの工場まで足を伸ばしてるみたいだしな。
…その趣味のおかげでノーマッドの中でも比較的良心的なアルデカルドスとの縁が続いてるから人生何が役に立つのかわかんねぇな。
「そうか…ま、俺も常にスコーピオンと一緒って訳じゃないからな」
カラカラと笑いながら続けるミッチ。
コイツもよくスコーピオンと居るイメージだからか1人で行動してるのは珍しいと感じる…俺らも周りからそう見られてんのか…少し納得した。
「コンビ組んでると良く勘違いされんだよな…ま、必要なら呼び出すが」
それはアイツも同じ事だ。
必要になったら何をしてようが関係なく呼び出すのはここ数年で固まったルールの一つ。
死んでなけりゃ行ってやるし、アイツも同じ様に考えてんだろうよ。
「相変わらずだな」
「変わらねぇ良さってのもあるだろ?」
冗談混じりに答えながらお前らだってそうだろうが、と続けると
「そりゃ俺たちは家族も同然だからな…ファミリーのために行動するのは当然さ」
ノーマッド全部がそうなのかは知らねぇが。
アルデカルドスのこういった気性は嫌いじゃない。
「お前らも変わらねぇな…っと、悪い。ホロが入った」
気にするなとジェスチャーするミッチに軽く謝罪してからホロコールを繋ぐ。
「あー、こちらブートヒル…」
『旦那、今いいですかい?』
噂をすれば影とはこの事だな。
「構わねぇぜ、ジョン。どうかしたか?」
『今メインの所から連絡が有ったんですが…』
口籠るジョン。
コイツの歯切れが悪い時は大抵面倒事なんだよな…
「メインが?お前に連絡するとは珍しい事もあったもんだな」
『旦那に繋がらないとかで俺に来たんですよ』
…郊外だしな。俺のホロコール、旧式だから都市部を離れると繋がったり切れたりするのはしょっちゅうだ。今はアルデカルドスのキャンプが近いから比較的安定してるが。
「そいつは悪かったな…で、話ってのは?」
『…デイビットがどうにも不味い案件に手を出したっぽいです』
「あのガキ…デイビットがやれるって思ったんなら放っとけよ…」
アイツももう子供じゃねぇんだから。
自分のケツは自分で拭けるだろうよ…と呆れながら答えると少し躊躇いながら答えるジョン。
『…どうも最近様子がおかしかったとか何とかで、制止も聞かずに仲間纏めて依頼に行っちまったんだそうで』
あー…アイツ最近クロームぶち込みまくってたからなぁ…
「一気に時限爆弾のカウントを進めたのか…そりゃ御愁傷様だな」
メインの言葉も聞かないってんなら相当重症だぞ?
最悪は相手とパーティ中に発狂してその場の全員巻き込んで大虐殺だな。
『それで、ですね…メインから何とかして連れ戻して欲しいって依頼が来てるんですが…』
「フィクサー挟まずにか?」
『一応、間にローグが入ってますが…形だけですね』
体裁だけは整えたって感じだな。
呆れた様にため息を吐きながら聞き返す。
「デイビットが受けたとかいう依頼…そっちは誰が担当してんだ?」
地雷案件回してくるようなフィクサーなら知っておかねぇとな?
そう思って質問したんだが…
『不明、だそうです。今ローグが情報を洗ってるらしいですが…』
相当上手く偽装したのか、まだ影も踏めないらしいです。と続けるジョン。
アフターライフの女王が掴めない尻尾か…厄ネタの匂いがプンプンするな。
「ガキが受けた依頼の詳細は?」
せめてそっちだけでも分かるならまだマシだ。
『アラサカの輸送部隊襲撃、輸送物の強奪って話です』
アラサカ…ネットランナーが死に続けたからしびれを切らしたか?
デイビットを嵌めようって腹なら分からなくもねぇが…
ちとやり方が荒っぽい気がする。
『…どうしますか旦那?報酬に関しては相場の8倍、悪い話じゃないですが…最悪アラサカと事を構える羽目になります』
「…1分待て」
ジョンは最悪はアラサカ相手にやり合う事になるって言ってたが。
アラサカの、それも輸送部隊相手ならせいぜい護衛は数台、多くても10台程度だろう。
その程度なら別に大した障害じゃねぇ。ブツを頂く訳じゃないなら適当にあしらって逃げ切れる。
俺の思う最悪は
話を聞く限り正常な判断ができてるとは思えねぇし、何時狂ってもおかしくない。
引き連れてる最中に暴走したら目も当てられねぇ大惨事待ったなしだ。
既に狂っちまってた場合でも変わらない。
あのイカれた加速で暴れ回るデイビットを相手に手加減なんて出来るわけがねぇ。
殺すだけなら簡単だが…その場合要らん恨みを買う事になりかねない。
あの野郎、チームの連中に相当好かれてるみたいだしな…
総合して考えるとデメリットの方がデカい。
安全をとるなら100%受けねぇんだが…
「…最悪、殺してでも止める事になるな」
『…やっぱりそうなりますか』
俺の答えは既に知っていると言わんばかりに聞いてくるジョン。
ここ数年で生意気になっちまったもんだ。まぁ、そう言う俺も変わったんだろうが…
「良く分かってんじゃねぇか。メインに請け負ったと伝えとけ…最悪、殺すことになるともな。…連中の場所は?」
『了解です…ローグの情報によると郊外ですね。今位置情報を端末に送ります』
余計な質問がないってのは良い。
ま、どうせやる事になるって覚悟してたんだろうが…馬鹿な野郎だ全く。
呆れとも愉快とも思える感情と共に端末に送られてきた情報を確認する。
「結構近いな。先行するからお前は後から来い。…気をつけろよ」
『旦那も、お気をつけて』
そう言うと通信は切れた。
ここからは仕事の時間だな。
「……依頼か?」
「そうだ。…悪いなミッチ、また顔出すぜ」
通信中は黙って離れていたミッチにそう返すと
「そん時はジョンも連れて来いよ?」
茶化すようにそう言うミッチ。
「生きてたらな?…じゃ、またな」
冗談混じりにそう答えると相棒に火を入れる。
アクセルを開けるとタイヤが地面を噛んで蹴飛ばされる様にその場を後にした。
これがこの街に来て今までで一番長い1日の始まりだった。