サイバーパンク2077〜変なのを添えて〜 作:ロックオン
クソガキが俺の単車を無断で乗って行った数分後。
レベッカが喧々諤々とデイビットと通信越しにやり合ってるのを尻目にヒゲ面…ファルコと言うらしい…に尋ねる。
「そういやお前ら3人だけか?いつものネットランナーはどうした?」
マスクで顔半分隠してるねーちゃんが居たと思ってたが。
まさかあっちがルーシーとは思わなかったわ…
「あぁ…アイツなら」
あそこだ、と顔を向ける方向に目をやると。
輸送車両の側で寄りかかりながらタバコを吸っている姿が目に入った。
マイペースな女だな…
「キーウィになんか用か?」
…予想が外れたな。
アフターライフで見た覚えのある奴で残ってる古参はこの3人だけだ。
レベッカ、ファルコ、キーウィ。
ルーシーとやらの影も形もねぇと来た。仕事とプライベートは分けるタイプだったか…
「別に…いや、あったわ」
そう言うが早いかキーウィとか言うネットランナーの方へと歩く。
近づく俺に警戒しながらも一服を止めないキーウィ。
…まぁこの距離ならどう足掻いても死ぬだろうから諦めてるって感じがするが。
「キーウィっつったか?ちょっと手を貸せ」
「…アンタに?なんで?」
疑問で返されるのは想定内だがよ…
「お前ん所の頭がやらかした不始末だ。お前らで補填してもらう」
「…理不尽じゃない?アイツが勝手にやった事でしょ…」
「群れて動いてんなら1人がやらかしたら全員に咎が及ぶもんだろ?お前らはチームらしいじゃねぇか…友達の後始末はしっかりつけて貰わなきゃな?」
なぁに、大した事じゃねぇよ。
「ジョン…俺の相棒に連絡出来るだろ?さっさと繋いで此処に来るよう伝えろ。序に事の次第も説明しとけ」
兎にも角にも足が必要だ。
先走り小僧がパクってった俺の相棒は多少の不調を物ともせずに走り去りやがったからな…今から追いつくのは難しいだろうが、目標地点で締め上げるくらいならまだ出来るだろ。
「はいはい……あーブートヒルの相棒のジョン?アンタに伝言があるんだけど…」
速攻で繋がるってのは良いな。旧式は旧式で良いところもあるんだが利便性って点じゃ新型には負ける。
「……そう。OK、なるべく早くね。アンタの相棒がイライラしてんだ」
こっちは気が気じゃない…と頭を抱えながらジョンとの通信を切るキーウィ。
別にとって食おうって訳じゃねぇよ…落とし前はつけてもらうが。
「…ジョンは何時来るって?」
「後4分待ってくれ!だってさ。…アンタの様子を伝えたら直ぐに信じてくれたけどアレ大丈夫なの?」
あー…ちょいと人を信じやすいってぇのは弱点でもあるんだが…
「アイツはアレで良い。疑心暗鬼な陰険野郎よか100倍マシだからな」
長く組む内に性格の地金みたいなモンが表に出てきてんな、とは思ってたし。
最初はただのチンピラだったのが今じゃ立派にサイバーパンクしてんだ…少しは意識も変わるってもんだ。それに…
「俺達を手玉に取ろうとした奴等は全員もれなく墓の下に直送してやってる。…まだカマしてくるベイビーがいた事に驚いてるくらいだな」
そう言うと少し寒気を感じたのか自分の肩を抱くようにして後ずさるキーウィ。
だから、別にお前をどうこうしようってつもりはねぇよ…
そんなこんなで話している内にデイビット側の事情を聞き出したらしいレベッカが気まずそうに声を掛けてきた。
「あの、さ…デイビットなんだけど…」
「勿体ぶらずにさっさと言えよ」
理由がくだらねぇモンだったら確殺だ。大事にしてるサンデヴィスタンごと母親と同じ墓に埋めてやるよ。
「どうも若干イカれかけてるのかイマイチ要領を得なかったんだけど…ルーシーがアラサカに攫われたらしいんだ」
アラサカ?ローグの話からすると狙いはデイビットだって話じゃ…
「何でまたアラサカがデイビットの女を攫うんだ?別に直接取りにくりゃ良いだろうが」
いちいち攫って人質にするなんてまどろっこしい真似しなくても、実働部隊を動かしゃ済む話だろうに。…それこそ噂に名高いアダムスマッシャーとやらを出動させりゃ一発で片が着きそうなもんだが。
「そんなんあーしが知るかよ!少なくともデイビットのバカはそう信じ込んでんだ!」
そう怒鳴るとそっぽを向くレベッカ。…こんな状況じゃなきゃ楽しめそうな話題なんだが今は時間が惜しい。
「で、あのガキは何処に向かってんだ?」
そう尋ねると今度はキーウィから答えが返ってきた。
「アラサカタワーに向かってるみたい。少なくともビーコンはそっちに向かってる」
あのクソガキ
「女の為に1人で喧嘩売るとは良い度胸してんじゃねぇかデイビット…俺の
俺の相棒をパクってった事で-60点だが。
だがまぁ、そういう理由なら半殺しで許してやるか…生きて返ってきたらの話だが。
「しょうがねぇな…あのガキには過ぎた代物だが死にに行くってんなら香典代わりにくれてやるよ」
あーあ…良い
「縁起でもねぇ事言うなよ!」
レベッカが噛み付いてくるが。
「1人でアラサカタワーに乗り込んで、攫われたとかいう女を回収して逃げ切る。…計画があるってんならまだしも突発的に罠満載だろう所に飛び込んで無事に済むと思うのか?」
まず無理だね。いくらアイツが特別だとしてもそれ以上の
いざという時はサンデヴィスタンに頼る節があるあのガキは自身と同等以上の性能を持った加速野郎とかち合ったらまず負けるぞ?
「アイツが強いのはイかれた倍率のサンデヴィスタンっていうひっくり返し難いアドバンテージがあるからだ。…アラサカが同等の品を用意出来ないと思うのか?」
あれの出所は不明だが再現できないレベルの技術じゃねぇ。装着者への負荷を考えなけりゃいくらでも同じようなモンは作れるだろう。
「使い潰す前提で3〜4人も用意すりゃあのガキはおしまいだ。数時間後にはアフターライフに新しいカクテルが並ぶだろうぜ」
デイビット・マルティネス。最も新しい伝説に乾杯!ってなもんだ。
「〜!じゃあ助けに行けば…!」
「そりゃまぁ好きにすりゃ良いが。死体が増えるだけだろうよ」
好きな男が別の女を命懸けで助けに行くってのにソイツの為に死ねるのかお前は?
運よく、本当に運よく助かったとしてもそんな劇的な経験をした2人の間に割って入れるかってぇと大分怪しいモンだが。
「アンタが来てくれれば何とか出来るだろ!?」
さっきミリテクを始末したみたいに!と続けるレベッカ。
確かにお前らだけで行くよりは確率は上がるだろうが…
「同じチームでもねぇ、昔ちょっと助けた程度のガキのために俺が命張る義理はねぇよ」
まだ嵌めやがったカス野郎への落とし前もつけてねぇんだからな。そう続けると俺を睨みつけるレベッカ。恋する乙女の思考回路はわかんねぇな…
そんな感じでこれからどうするかってのを話し合ってると、遠くから見慣れたボロ車が走ってきてんのが見えた。…ようやく来やがったかジョン。
それに気づく事もなく尚俺に言い募るレベッカ。
「尻尾巻いて逃げんのかよ」
「ベイビーが、テメェらでケツが拭けねぇからって俺にキューティーを擦り付けようとすんじゃねぇって言ってんだ。死ぬなら勝手に…」
そう言いかけた時に割って入る声がした。
「言い方が悪いぜ嬢ちゃん。そもそも旦那はデイビット…おまえさん達が嵌められてんじゃねぇかってんで手助けに来てんだ。それに続けて更にケツ持って貰おうってのは虫が良過ぎやしないか?」
ジョンが宥めるような声色でレベッカに言った後、俺に向かって話し続ける。
「…すみません、旦那。俺はてっきり…」
まんまと引っ掛けられたことやこれまでの事情はキーウィとの通信で知らされていた様で、俺への第一声は謝罪からだった。
「良い。今は俺たちを嵌めやがったホーリーベイビーを始末するのが先決だ。…後で一発ぶん殴るからな?」
カラカラと笑いながら肩を叩く。…今はこれで十分だ。
「さて、俺は足が届いたからもう行くぜ…じゃあな」
そう言ってボロ車の方へと歩き出す俺を呼び止める声がした。
「…待ってくれ!アンタ、さっきの戦闘で大分金を使ったって言ってたよな?」
レベッカが少し落ち着いた声音で聞いてくる。
「一発で札束が飛ぶ弾丸を9発使ったからな。ま、言った通りコイツは俺持ちで構わねぇよ」
左手をひらひらと振って答える。
それを見て更に言い募ってくるレベッカ。
「なら…アンタに依頼をしたい。こっから先の
頭を下げるのを見て驚いた様子のファルコとキーウィ。
さて、どうしたもんか…
「…お前が払い切れる額にはならねぇぞ?全財産を支払に回しても間違いなく足が出る。この先の人生、借金まみれになってでもあのガキを助けてぇのか?」
アラサカタワーに殴り込むなら
「それこそ一生懸かっても払い切れるかわからねぇ。それでも良いってのか?」
「それでデイビットが助かるなら」
真剣な眼差しで俺を見つめるレベッカ。
…クソが。そんな目で俺を見るんじゃねぇよ。
「…旦那、どうするんです?」
ジョンがどこか確信を持っている様な声色で尋ねてくる。
「………しょうがねぇ」
天を仰いで額を抑える。
なんでまたこんな割にあわねぇ仕事を引き受けようとしてんだ俺は…
「ジョン、車貸せ。俺はコイツら連れてアラサカまでピクニックだ」
そう言うとバッと顔を上げるレベッカ。
レベッカが何かをいう前にジョンが
「水臭い事言わねぇで下さいよ…旦那のドライバーは俺でしょう?」
そう言うと運転席へ乗り込んだ。
バカな野郎だ…
「死ぬぞ?」
「そうなったらそれが俺の天命だったってだけでさぁ」
さ、早く行きましょうや!といつもの調子で話す。
「そうかい…おい、お前ら」
助手席に乗り込む前にレベッカ達に小声で話す。
「…コイツが無茶しようとしたら殴ってでも止めろ。死なすんじゃねぇぞ?」
もしそうなったらお前らも殺す。そう告げて助手席に乗り込んだ。
続けて後部座席に無理やり3人乗り込む…かと思いきや。
「私はここで降りるよ…デイビット達によろしく」
そう言ってキーウィが乗車を拒否すると
「何でだよ!?今行かなきゃアイツが…」
「私が行っても役に立つどころか足引っ張っちゃうっての。直接戦闘は苦手なの知ってんでしょ」
此処から通信でできる限りのサポートはするよ、と続けるキーウィ。
その言葉に納得したのかしてないのか分からないが…今は問答させてる余裕はねぇな。
「時間が惜しい!さっさと出せ!」
ジョンに檄を飛ばすとまるで蹴り飛ばされたかの様な加速で走り出すボロ車。
座席に押し付けられる慣性を感じながら
「どっちでも良いから後ろから弾薬箱を寄越せ」
後部座席の下に補充用の弾丸が数発分積んであったハズだ。
「これか!?」
「それだ…良し、2発は補充出来るな」
「デイビットの位置は?」
「キーウィからの通信によるとそろそろアラサカタワーに差し掛かるそうだ!」
ファルコがキーウィとの通信を繋ぎっぱなしにしてナビゲートしているが…
最初の出遅れが響いてんな。全然本調子じゃない
「ジョン、時間は?」
「7分…いや、5分下さい!」
5分の遅れか…あのガキが死んでるかどうかの瀬戸際だな。
サンデヴィスタンをフル活用して動けるのが精々3分、インターバルを挟めば4分は使えるだろう。
その間に殺されてなけりゃまだ目はある…と思う。
「間に合うのか!?」
座席に押し付けられているレベッカから疑問が飛んでくるが。
「間に合わせんだよベイビーが」
死んでたらそんときゃ花向けに大暴れしてアラサカタワーをアイツの墓標にしてやるが。
そんな言葉を飲み込んで着々と襲撃の準備を整える。
まさか本当にミリテクやアラサカと喧嘩する事になるとはな…
不謹慎ながら暗い愉悦を覚えている自分がいる。
やっぱ企業相手にドンパチするメンタルじゃねぇな、と嘯く。
今回は最後までやるって訳じゃなくてバカを1人と攫われた女を1人ピックアップするだけの簡単なお仕事な訳だが。
後はまぁ…男が1人でやりてぇって事に首突っ込むのは主義じゃないんだが。
「お前の女運の良さを恨むんだなデイビット」
あんな良いやつに思われてもなお別の女一筋とは筋金入りのピュアボーイだなあのガキ。
場違いな考えに少し笑みを漏らしつつ静かに弾倉に弾丸を込めて行く。
この先に待ち受ける脅威を予感していたのかは定かじゃないが。
一発ずつ丁寧に装填する度に俺は死ぬ覚悟を決めていた。
拙作でのブートヒルは自分が標的にされて企業との喧嘩をする分には喜んで殴りかかりますが今回はデイビット狙い+ミリテクの部隊を蹴散らして少し満足している状態だったのと、黒幕がまだ判らない事もあり参戦には消極的でした。