サイバーパンク2077〜変なのを添えて〜   作:ロックオン

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メジャーってもやる事あんま変わらないよな

 

 

最近は羽振りが良くなりつつある。

ってもまともな部屋を借りて生活が安定し始めたってレベルだが。

 

 

「ブートヒルの旦那、いよいよメジャーですよ!」

 

横でソワソワしてるジョンを横目で見て色々思い出す。

 

 

メイルストロームとかいうイカれ集団にカチコミかけさせられた事とか。

 

タイガークロウズの裏切り者とナイト・シティ中を追いかけっこした事とか。

 

ラフェン・シヴに攫われたテッキーを助けに行った挙げ句、途中で追加注文が入ってあれよあれよと雪だるま式に面倒な目に遭った事とか。

 

 

「色々あったがようやく俺達もメジャー入りか」

 

何時もの様に運転してるジョンの横で足を伸ばす。

 

「へへッ…夢みたいですな」

 

少し緩んだ顔で笑うジョン。

…コイツにも大分世話になったもんだ。

いや、世話した回数と相殺するとこっちの貸し分の方が多いか?

 

「んで、そのアフターライフとかいう所は近いのか?」

 

この街の伝説達は必ずそこに行ったことがあるとかいう酒場。

入るのには招待を受ける必要があるとかいう面倒なシステムで、ぽっと出の傭兵なんかは立ち入ることが出来ない。

 

「へい、もう少しです…血が騒ぎますね!」

 

「落ち着けよテーマパークに行くガキじゃあるまいし」

 

パシフィカの方にはそんな場所もあったと思う。

廃園して時間が経った廃墟だったが。

 

「すみません…ようやくアフターライフ入りかぁ…」

 

駄目だこりゃ。地に足着いてねぇわ。

 

「もう良い…事故るなよ」

 

諦めて放置する。

こういうときのコイツは無視が安定だと短い付き合いながら学んだ。…こういう時は大抵やらかすんだが命に関わらなきゃどうでも良いしな。

 

 

 

 

 

「…ここが?」

 

パッと見ボロい…年期の入ったライブハウスの入口に見える。

寧ろ死体安置所って方がしっくり来るな。

…派手な看板さえなけりゃ、だが。

 

「そうです!此処があの…」

 

言葉を遮って地下への階段を降りる。

来る時散々聞いた話をまた聞くのはゴメンだ。

 

これまた年期の入った階段を降りるとバウンサーだろうか、やけにガタイのいい男が立っている。

 

「何のようだ?」

 

質問も端的でまさにクラブハウスのバウンサーだな。

 

「ファラデーってのはご在宅かい?」

 

いつも通りに話しただけなのにジョンが信じられないモノを見た様な顔で見てくる。

 

「少し待て…ファラデー、新顔が2人来てるがアンタの客か?……わかった。」

 

通信の後此方をジロリと見て

 

「通りな…奥で待ってるそうだ」

 

「ありがとよブラザー」

 

ぽんと肩を叩いて中に入るとそれに続いてジョンもペコペコしながら入ってくる。

 

店の中はまぁ、派手に飾っちゃいるが元死体置き場をこうも改造するかね…と感心半分、呆れが半分の感想だ。

 

「すげぇなこりゃ。あそこ、元は死体見分用の台だろ?」

 

バーカウンターを指差しながらジョンに尋ねるが

 

「凄い…俺、今アフターライフの中に居るよ…!」

 

舞い上がってて聞いちゃいねぇ。

一発叩こうかと思ったが一応商談前だと思い直してジョンの頭を掴んでバーカウンターまで引き摺る。

 

「いてぇッ!いてぇッスよ旦那!?」

 

「悪いが俺とコイツにキツイのを2つくれ」

 

このボケた状態よりはほろ酔い状態の方が遥かにマシだ。

 

「あいよ」

 

バーテンダーの女からショットが2つよこされた。

 

「ありがとよ。ジョン、飲め」

 

掴んだ顔を上に向けて真上でショットをひっくり返す。

狙いは違わず口の中へ。

 

「俺達のメジャー入りに乾杯!」

 

すかさず自分の酒を手にとって一気に煽る。

んー…何時もの所で飲む方が美味い気がするが、こういうのは気分が大事だからな!

 

「ゲホッ…いきなりなにするんですか!?」

 

「おう、正気に戻ったか」

 

珍しく怒ってら。でもまぁ…

 

「浮かれるのも結構だがよ。一応仕事で来てるって事忘れんなよジョン」

 

この先どう扱われるか、その分水嶺だぜ?

そう伝えると怒ってた顔から真面目な顔つきに変わる。

 

「…すみません。ちょっと浮き足立ってました」

 

「ちょっと?知らねぇ間に言葉の意味が変わっちまったみたいだな…その辺の事教えてくれるか?」

 

とからかうと恥ずかしそうに

 

「勘弁して下さい…」

 

と小さくなって居た。良し、これなら間抜けを晒す事もないだろう。

 

「んじゃ、そろそろ会いに行くとするか」

 

バーテンダーの姉ちゃんに代金を払って話しかける。

 

「ファラデーってのはどいつだ?」

 

「あっちのブースに居るよ」

 

指差す方を見ると大男とスーツの男が話しているのが見えた。

 

「…どっちだ?」

 

「スーツの方。…気をつけなよ」

 

意味深な忠告と共に別の客へと話し始めるバーテンダー。

 

「だとよ。気ぃ引き締めて行こうぜ兄弟」

 

「ハイ…もう大丈夫です」

 

そのまま席を立ってファラデーの元へと向かう。

 

 

 

「……と言う訳だ。…おっと、話はここまでにしよう。後のことは追って伝える」

 

スーツの男…ファラデーが大男にそう告げると少し不満そうな顔をして立ち上がる大男。

 

「…失礼します」

 

ファラデーに一声掛けてから俺達の横を通り過ぎる。

…ありゃ相当イジってんな。そのうち発狂しそうだ。

 

「待っていたぞ、ノーバディ(名無しの死体)

 

目玉が4つ付いてる変人(ファラデー)が話しかけてくる。

名前の無い死体?確かにその通りだがセンスが悪い。

 

「名無しの権兵衛ってんなら構わねぇが死体扱いは頂けねぇな」

 

すかさず言い返す。

 

「フン…新米の死亡率を知ったらそうも言ってられなくなる」

 

不満そう…いや、不機嫌なだけか。

 

「俺達ゃ今ん所成功率100%よ。その辺も加味してってんなら話はここまでだ」

 

「……そうだな。では何と?」

 

「ネームレス。まぁ暫定でそう呼んでくれ」

 

 

トントンとやり合ってて少し鼻白んでいたジョンがようやく話し始めた。

 

「それで!今日はどんな依頼を貰えるんです?ファラデーさん」

 

下手に出たのが功を奏したのか少し機嫌を持ち直して依頼の話に移る。

 

「まぁ、良くある話だ。…ミリテクの装備を盗み出した連中がいる……」

 

 

簡単に要約すると。

 

ミリテクから新型の武器を上手いことちょろまかした奴が居たんだがソイツを届ける前に呆気なく死んじまった。

下手人はメイルストローム、価値を知ってか知らずかまだホームに有るのは確認済み。

取り戻して欲しいって依頼だった。

…報酬もそれなり、相手がメイルストロームなら派手にブチかましても問題なし、か。

 

 

「…依頼人はミリテクか?」

 

「さてな…貴様らには関係の無い話だ」

 

きな臭ぇ…絶対ミリテクじゃねぇだろコレ。

 

「場所も相手も判ってるのにミリテクがカチ込まない理由は?」

 

こんなんバレてたら直ぐに消されてる案件だろうに。

 

「コーポはな、メンツが大事なんだ。自分の管轄でミスったのを周囲に知られるのを嫌悪する。…だから我々が要るわけだが」

 

要はそこまでするほどのものでも無い、と。

それなら掠め取っても足がつく心配は無いって訳だ。

 

「旦那…どうしますか?」

 

ジョンは少し不安そうに俺を見る。

…まぁどっちでも構わねぇか。

 

「どっちでも良い。…いっそコイントスで決めるか?」

 

懐から古びたコインを取り出す。

 

「何時も通りだ」

 

ピンッと指で弾く。高速回転するコインを目で追うファラデー。

そのまま手の甲で受け止める。

 

 

「…表だな。その依頼、請け負った」

 

「そのようだな。詳細は送っておく」

 

 

もう用は無い、と暗に示された俺達は席を立った。

さっきのバーカウンターまで戻るとスツールに腰掛けるなりだらしなくカウンターに体を預けるジョン。

 

「生きた心地がしなかったですよ…」

 

何で最初から喧嘩腰なんですか…?と力なく抗議されたが

 

「挨拶みたいなもんだろうが」

 

ナイト・シティじゃ文化的な挨拶の部類だろう。

少なくとも初手鉛玉よりは文化的と言える。

 

「ストリートの挨拶じゃないですか!?」

 

共通言語(暴力)は街角だろうが郊外だろうが変わりゃしねぇってのを学んだぜ」

 

パドレとかワカコ相手ならもう少し礼儀を弁えるが。

 

「いきなり死体呼ばわりして来やがったからちょっと言い返しただけだろうが」

 

それにユーモアのセンスも無いと来てる。

更に言うなら…

 

「あの野郎、キロシを3つもぶち込んでる変態だぞ」

 

何をそんなに見たいのかね?と首を傾げる。

 

「俺の弾いたコインを完璧に目で追ってやがった。少なくともハリボテじゃねぇな」

 

「元傭兵上がりならあり得なくもないですが…いや、それにしても変な改造ですね」

 

溜息をつくジョン。

 

「単に変態って線もあるけどな」

 

態々目玉増やしてるような奴だ。何らかの神経がイかれてても不思議じゃない。

 

「…アフターライフ初日から濃いッスね」

 

なんか、思ってたのと違う…と呟くジョンに

 

「ま、理想と現実は違うわな。…さっさと出ようぜ?いつもん所で飲み直しだ」

 

肩を叩いて歩き出す。

慌てて後に続くジョンを待たずに外に出た。

 

 

 

何はともあれメジャーでの初仕事だな。

…いつもと変わんねぇのは良いのか悪いのか分かんねぇけど。

少なくとも何時も通りやれば良いってのは気楽なもんだ。

 

飲み直したらカチ込んで物奪って逃げる。

途中の邪魔は排除する。

 

うん、メジャーいってもやる事変わんねぇな!

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