サイバーパンク2077〜変なのを添えて〜   作:ロックオン

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評価、感想を頂いたので勢いで書き上げました。


日常からいきなり殴られるとちょっと心にくるよな…

メジャー入りからはや一週間、あれからファラデーの野郎に何かされることもなく平和な日常を過ごしている今日この頃。

 

今俺はとあるメガビルディングの横にある自販機にハマっている。

 

「よーうブレンダン!また来たぜ!」

 

「これはこれはブートヒル様!一昨日ぶりですね!」

 

このやけに人間臭いSCSM…自販機はブレンダン。

ちゃっちいAIとただの会話ソフトしか入ってねぇはずなのに凄ぇ喋る変な奴。

 

「相変わらず辺鄙な所に立ってんなお前」

 

「ハッハッハ。私には足がありませんからね!」

 

この通り、変なことを言っても冗談で返してくるような奴だ。

やけに人間臭いもんだから通信越しに誰か喋ってんじゃねぇかと思うくらいだな。

 

「今日は何をお求めで?おすすめは最新作の二コーラのニューフレーバーですよ!」

 

「それってあの甘すぎる奴だろ?俺の口にゃ合わねぇよ」

 

軽口を叩ける機械ってのもこの街っぽくて良い。

 

「コーヒーでも貰おうか…いつもの奴だ」

 

「いつものですね!…はいどうぞ!」

 

金を入れると下からコーヒーっぽい何かが出てきた。まぁ自販機だしなコイツ。

缶を開けて口に含むと何とも言えない味がする。

味はそれっぽいんだが原材料にコーヒーのコの字もねぇ紛いもんだ。

 

「相変わらずラブリーな味だな…甘くねぇだけマシだが」

 

「好みには会いませんか…次に仕入れる時はもっと美味しいものをお願いしておきますね!」

 

「別に良いって…この一杯で十分だ」

 

何とも言えない味ってだけで別に不味いわけじゃねぇし。

 

「しっかしまぁお前なんでこんな所に設置されてんだろうな?もうちょい人通りの多い所ならもっと稼げるだろうに」

 

コイツには俺以外にも固定客が着いてるみたいだしな。

半分くらいは病んでてブレンダンにセラピー受けてる様な連中だが客は客だ。

 

「私は此処で満足してますよ?こうしてお喋りする時間も沢山ありますしね!」

 

これで感情がないってのはナイトシティ七不思議に入れても良いくらいだろうよ。

 

「そりゃ良かったな…さて、そろそろお暇させてもらうぜ」

 

「そうですか…では、またのお越しをお待ちしております」

 

別れる際は定型文ってのがコイツが機械だって事を思い出させてくれる部分だな。

まぁそれでも偶にコイツと話したくなる時がある。

大した話じゃなくて、世間話にもならない程度の普通の会話を。

 

「そうだな…じゃあなブレンダン」

 

空き缶を片手で圧縮してゴミ箱に投げる。

背後から『ナイスシュート!』と声がしたんだがアイツやっぱ中に人が入ってんじゃね?

 

 

 

 

 

 

 

「ってな具合でよ?アイツやっぱ人間入ってんじゃねぇかと思うんだよ」

 

「…俺はそれを聞いてどう反応するのが正解なのか分かんねぇよ」

 

ブレンダンの所でコーヒータイムを過ごした後、馴染みのリパードクであるヴィクターの所に顔を出してブレンダンについて話してみると何とも言えない表情でそう返された。

 

「ナイトシティならあり得る話じゃねえか?自販機に改造されちまった人間とかよ」

 

「そんなファンタジーは創作の中にしかないもんだ。実際にそんな事してみろ、一発でサイバーサイコどころか人格が崩壊するぞ」

 

淡々と返されてしまった。

 

「そりゃそうだけどよ…そうじゃなけりゃアイツのコード書いた奴は相当な天才だぜ?」

 

高度なAI無しにあんだけ人間臭くできるなんて前代未聞だろうよ。

大企業に持ち込んだらクソ面倒い事になるのが分かりきってるレベルの厄ネタだ。

 

「ならそいつに良心がある事を祈るんだな…良し、整備完了だ。違和感はあるか?」

 

体を預けていた手術台から立ち上がる。

四肢に問題は無し、頭もクリアだし胴体にも違和感は無い。

頼んでたホロコールも問題なく作動してるし文句なしだ。

 

「いや、いつも通り良い仕事っぷりだぜヴィクター」

 

ありがとよ。と現金を渡す。

 

「お前さん、良い加減通常のインプラントくらい入れたら…っと、すまん」

 

「そりゃまぁ入れられるなら入れた方が便利だろうがよ…これ以上入れたらどうなるか分かんねぇって言ったのアンタだろうが」

 

既に体の8割強を機械化してる俺に新しいモノを追加したらどうなるのか想像も出来ないって言ってただろうに。

 

「ま、今んところ困ってねぇし。必要ならジョンに任せりゃ良いだけの話だ」

 

「今日はその相棒は来てないのか?」

 

「四六時中一緒な訳ねぇだろ?今日はオフだからな…どうせリジーズバー辺りで楽しんでんだろうよ」

 

アイツの取り分だから好きに使えば良い…とはいえ余りにも目に余るならぶん殴るが。

 

「相変わらずお盛んな事だな…ほら、頼まれてたモンも出来てるから持ってけ」

 

ついでとばかりにバカでかい銃弾…俺の左腕専用弾を受け取った。

 

「いつも悪いなヴィクター」

 

「別に金さえ貰えれば構わんが…余り使いすぎるなよ?身体にどんな影響が出るか判らん」

 

市販品のプロジェクタイルランチャーとは違ってぶっ放す時に脳内物質を過剰に分泌してるっぽいしなコレ。

 

「まぁなるべく、な。ヤバくなったら迷わず撃つが」

 

そもそもコレ馬鹿高価いし。

元々入ってたオリジナルの弾丸を複製する形でオーダーメイドしてもらってるから一発の値段が頭おかしいレベルだ。…まぁそれでも作ってくれてるだけ有難いんだが。

 

「そうしておけ。…無茶な真似はするなよ」

 

死なれても寝覚めが悪い、と続けてモニターに集中し始めるヴィクター。

背中越しに軽く手を振って答えるとそのままヴィクターの店を出た。

汚ねぇ裏路地を抜けると表の通りに出る。

 

少し軽くなった気がする肩を回しながら通りを歩いているとホロコールが鳴った。

 

「あーこちらブートヒル…」

 

『久しいなぁブートヒル。仕事の依頼なんやけど今はどないなっとんの?』

 

ワカコからだった。

タイガークロウズの幹部の嫁にしてウエストブルックを縄張りとしているフィクサーの1人。

俺達のお得意様でもある食えない婆さんだ。

 

「構わねぇよ?詳しい話を聞かせてくれ」

 

『そいつは重畳やな。実はウチで裏切り者が出てな?そいつの首を持ってきて欲しいっちゅー話なんやけど…あんたそういうの得意やろ?』

 

「見つからねぇようにってんなら他当たってくれよ?」

 

隠密行動は苦手なんだよ。皆殺しでいいならまぁ出来なくもないがターゲット1人だけを静かに殺すのは骨が折れる。労力に成果が見合ってねぇんだよな…

 

『かまへん。派手にやってくれた方が示しがつくっちゅーもんや。詳細は…ジョンの方に送っとくさかい、確認しいや』

 

そう言ってホロが切れる。

ん〜…休日のつもりだったが仕事が入っちゃしょうがない。

再度ホロコールが鳴った。

 

『旦那?ワカコさんから依頼があったんですけど…』

 

「悪いなジョン。仕事の時間だ」

 

えぇー…と少し残念そうなジョンに

 

「稼げる時に稼いどかないとな?何より断らずに受けてやれば信頼も積めるってもんだ」

 

良いからさっさと来い、と場所を伝えてホロを切った。

さて、休日は終了。こっからはお仕事の時間だ。

 

「派手にやって良いってんなら楽なもんだ」

 

軽い足どりで通りを歩く。

俺も随分ナイトシティに馴染んできたと思う。

裏通りで銃撃戦が始まったらしい音をBGMに指定した場所まで向かった。

 

 

 

 

「旦那、こっちです!」

 

「随分と早いじゃねぇか」

 

いつものボロい車に乗り込む。

良いかげん買い換えてもいいと思うんだが、ジョンは思い入れがあるのか手放そうとしないから何時までもこのボロ車のままだ。ま、困ってねぇから良いんだけど。

 

「今回はタイガークロウズの裏切り者を始末しろって話みたいですね」

 

「ああ、ワカコからその辺は聞いてる。標的は?」

 

詳細を聞くと細かく説明してくれるジョン。

 

「標的の名前はテイロー・ヤマダ。物資の輸送を請け負っていた三下らしい三下ですね。そいつが運搬中に派手に中抜きしてやがったみたいでタイガークロウズはもうカンカンですわ。出来るだけ派手にぶち殺して見せしめにして欲しいとのことです。…一応、首持ってきたら追加報酬らしいですけどやります?」

 

「生首抱えて移動しろってか?ゴメンだね。やりてぇならお前が持てよ?」

 

うえっと吐きそうな顔をして首を横に振るジョン。まぁ当たり前だな。

 

「じゃあハニー(ゴミクズ)ラブリーし(糞溜に捨て)て終いだな。居場所は?」

 

「現在移動中らしく。…GPSで追える様にしてるみたいですが確かに動いてますねコイツ」

 

分かりやすい様に車の正面モニターに表示された情報を見ると確かに移動していた。

 

「コイツ、今ハイウェイにいんのか?」

 

「ですね…どうします?」

 

派手にやると巻き込む連中が多くなりそうな場所じゃねーか…

 

「追いかけて、適当に降りた所で襲撃するか」

 

「そうしましょう。んじゃ、飛ばしますぜ」

 

そういうとアクセルを踏み込むジョン。

ボロ車とは思えない加速で一気に景色が後ろに流れていく。

 

「…ジョン。お前また車改造(イジ)ったのか?」

 

「お!分かりますか!?そうなんですよ〜この間の報酬で念願のエンジンに載せ替えたんです!」

 

この馬力、たまんねぇでしょう!と恍惚とした表情で話すジョン。

…買い換えた方が安くついたんじゃねーか?とは言い出せない雰囲気だ。

 

「…そうだな。事故んなよ?」

 

「任せてくださいよ旦那!こう見えて元はタクシードライバーやってたんですから!」

 

…不安だがまぁ運転の腕は確かだしな。任せるしかない。

 

 

鼻歌混じりにかっ飛ばす姿に不安を抱きつつも俺達は目標のいる地点まで追いついた。

 

「あれじゃ無いですか?」

 

「んあ?…あぁ、あの趣味の悪さはタイガークロウズに間違いねぇな」

 

車の横に天下無双なんて書いてあるのは奴らだけだ。

逃げようってのに派手な車のままってのも間抜けな奴だが。

 

「大分頭が緩い奴なんですねぇ…あんな目立っちゃ見つけてくださいって言ってるようなもんだ」

 

「違いねぇ。…気づかれない様に離れてついて行け」

 

一応銃撃戦になっても良いように準備をしていると急に前が騒がしくなってきた。

 

「旦那!襲撃でさぁ!アニマルズの奴らが標的と撃ち合いを始めてます!!」

 

「ホーリーベイビーがッ!脳みそ入ってねぇのかラブリー共!!」

 

急に始まった銃撃戦で周囲の車が捌けていく中、一台の乗用車が間に挟まってもろに銃弾を食い続けて横転した。

 

「クソっ!?」

 

目の前に突然現れた障害物を避けるためジョンが咄嗟に急ブレーキと急旋回を加えて車が横滑りになる。目の前を横転した車が過ぎ去っていった。

…運転技術には目を見張るもんがあるなコイツ。

 

「あんのハニー共!やってくれるじゃねぇか!?」

 

何とか横転した車を避ける事には成功したが他の車両で道が塞がれてしまっていた。

 

「大丈夫ですか旦那!?」

 

「問題ねぇ…だが道は塞がれちまったな」

 

目の前で事故りまくってる車達を見て溜め息をつく。

こりゃ、出直しだな…と諦めてジョンに引き返す様に伝えようとした時に微かに声が聞こえてきた。

 

「誰か…助けてくれ…」

 

目の前の横転した車からの様だ。

 

「…旦那、標的が逃げちまいますよ?」

 

ジョンが訝しげに聞いてくるが、気にせず降りて横転している車へと向かう。

覗き込むとそこには運転手の女と後部座席にいるガキが居た。

 

「頼むよ…母さんを助けてくれよ…」

 

ガキと目が合った。

 

「……ジョン!何か切るもん持ってこい!」

 

変形したドアを力任せに引きちぎって解放する。

…チッ、コイツはひでぇ有様だ。女の方は助からんかもな。

 

「旦那!?」

 

「良いから持ってこいってんだよ!!」

 

シートベルトの金具部分をぶっ壊せりゃ早かったんだが見事に変形に巻き込まれちまってる。

ベルトを切っちまった方が速い。

 

「…持ってきました!」

 

「よし、コイツら引き摺り出すぞ」

 

ベルトをナイフで切って無理やり引き摺り出すとガキの方は大した怪我は無い様に見えたが…

 

「コイツはひでぇ…」

 

ジョンは顔を顰めながら女の応急処置を始めた。

…すぐにリパーまで運んでも五分五分だろうが、生きてても後遺症は残るかもな。

 

「何でもするから…助けて…」

 

と言って気絶したガキを見る。

 

「旦那…どうするんですか?」

 

「どうもこうもねぇ。別にコイツらにゃ恨みもねぇしリパーに届ける位はしても良いだろ」

 

憮然と答えるとジョンは何か言いたげな顔をしていた。

 

「何だよ?」

 

「…いえ、何でもありません。さっさと運んじまいましょう」

 

釈然としないながらも女とガキをボロ車へと運んで後部座席に放り込んだ。

 

「ヴィクターん所で良いですかい?」

 

「そうだな…あそこなら良心的だし問題ねぇだろ」

 

そう答えると無言で車を出した。

何だってんだ一体?

 

「何か言いたいことがあんなら言えよ」

 

「…旦那、何でコイツらを助けるんですか?」

 

トラウマチームが頭上を通り過ぎる音をBGMに言葉を続けるジョン。

 

「ほっといても別に問題ねぇでしょう?依頼達成を目指すなら放置して追いかけてた方が良かったはずです」

 

見ず知らずの他人が死んだ所でどうってこた無いでしょう?と更に言葉を重ねる。

 

「それがいきなり救助するだなんておかしな話じゃないですか」

 

ジョンの言葉は正しい。当たり前だが一銭の得にもなりゃしないしな。

それでもコイツらを放っておかないのは…

 

「そうだな…別に放っといても問題ねぇよ。コイツらが俺に金をくれる訳でもねえし、何かしてくれる訳でもねぇ」

 

淡々と答える。

 

「でもな…助けてくれって聞こえちまった。そんでもってコイツらは別に俺たちの敵って訳じゃない。そんな奴らを見殺しにして、依頼達成した後に飲む酒は美味くねぇ」

 

心に()()()が残る。もしあの時手を差し伸べていたら、そんな考えがふと浮かぶ時が絶対に来る。

 

「そんな将来の()()()を残したくねぇから助けてんだ。俺は楽しく生きてぇからな」

 

お前は違うのか?と問いかける。ジョンは少し考えると

 

「旦那の言う事も分からなくはないですが…俺にはそう言った感情はないみたいですね」

 

少し寂しそうに、悲しそうにそう答えた。

 

「でも、そういう感情が大事だってのは分かりますよ!ささ、速くヴィクターん所まで送っちまいましょう!」

 

 

 

 

わざと明るく振る舞うジョンを見て、俺はやはり異邦人なんだと痛感した。

人を殺しても何とも思わない俺でも根幹にあるのは全く別の倫理観で。

ナイトシティで育った連中との差をマジマジと見せつけられた気分だった。

 

そう言うもんかとすぐに呑み込めたのも元からの性格だったのか無い記憶の俺がそう言う奴だったのか定かじゃねぇけども。

 

別に困ることもねぇし、どうでも良い事だわな。

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