サイバーパンク2077〜変なのを添えて〜 作:ロックオン
結局あの親子をヴィクターのところに放り込んで(ヴィクターは大層驚いていた)、トラッキングされている情報を元にテイローとか言うカスには派手に散ってもらった。
あの野郎、アニマルズを撒いて自宅に帰るとかクソボケなムーブかましてくれやがって…ハイウェイまで追っかけに行ったの完全に無駄足だったじゃねぇか!
「ん〜!ハニーを始末した後の酒は格別だな!」
今はいつもの様にエルコヨーテ・コホで祝勝の酒を飲んでいる。
「…あの、あの親子はもう良いんですかい?」
おずおずとジョンが聞いてくるが…
「…?何で今アイツらの事が出てくるんだ?」
ヴィクターの所に送り届けた後の事は知らん。
その後助かろうが死のうが関係ないだろうが。
「えぇ…俺、旦那の事が判んねぇっス…」
俺からしたらお前の方が意味不明だが…
「良いかジョン。俺はやれる事はやってやっただろ?後はリパーの仕事であって、報酬を払えるかどうかもあの親子の問題だ。俺に出来ることはもうねぇからスッキリ解決!って訳だ」
つまみで頼んだ野菜の…煮物?を食いながら続ける。
「むしろ俺の方が意外だぜ。お前あの親子助けるのに反対だっただろうが」
何で気にしてんだ?別に友人でも何でもないだろうに。
「いや流石に関わっちまったら少しは関心持ちますよ!」
心外とばかりに声を上げる。
「そういうもんかね…もう関係ねぇと思うが」
これでお礼だの逆恨みだのが発生したらそん時はまた考えりゃいいんだよ。
「ドライなのか情に厚いのか判りませんね旦那は…」
疲れた表情で酒を煽った。
「失敬な。情に厚くなきゃお前とこうして酒を飲んでねぇだろうが」
笑いながら酒を煽る。考えてみりゃコイツともそれなりに長い付き合いだ。
…ナイトシティで気がついてからほぼずっと組んでるようなもんだしな。
「そういう事にしときやしょうか」
ようやく笑顔で酒を飲み始めるジョン。いつもの調子が出てきたじゃないか。
「よし!今日は飲むぜ兄弟…あん?」
ホロコールが鳴った。誰だよ全く…
「あーこちらブートヒル…」
『ようやく出たか!お前さんが担ぎ込んだ親子が面倒な事になってる!至急こっちに来い!』
ヴィクターが少し慌てた様子で捲し立てる。何だってんだよ…
「今じゃなきゃダメか?明日じゃ…」
『ダメだ。今すぐに来い!』
そう言うとホロは切れた。
「……ね?やっぱ気にした方が良かったでしょう?」
やれやれと言った表情のジョン。クソムカつくが言うとおりだったから何も言えねぇ…
「…しょうがねぇ、行ってくるわ」
重い腰を上げて席を立つ。
「送りましょうか?」
ジョンが提案してくるが…
「お前もうしこたま飲んだ後だろうが。流石に今のお前に命預けるのは不安しかねぇよ」
苦笑しながら後ろ手を振って店を出た。
まぁ偶には自分で運転するのも悪くない。
自動運転システムを起動させて自分の位置まで呼び出すと十数分で到着した。
「相変わらずすげぇシステムだなこれ…事故らないのも不思議だ」
目の前に停まったバイク…ナザレを見て関心する。
未来バイクって感じが少しするちとお高いやつだ。この前の報酬で買った時はジョンに色々言われたがこう言う時は買って良かったと思える。
颯爽と跨るとヴィクターの所までのナビゲーションを起動、道順が視界に表示された。
ま、ちょっとしたツーリングだと思って行くか。
アクセルを開けて風になった。
「来てやったぞーヴィクター」
やる気なく声をかけるとものすごい勢いでガキが詰め寄って来た。
「あんたが俺たちを此処に連れてきたのか!?」
おーおー元気なこった。あんだけ盛大に事故ってそんだけ騒げるなら運が良い。
「だったら?その恩人に何の用だ?」
「恩人!?母さんが死んじまったのに恩人だって!?」
あー…やっぱ無理だったか…
「そりゃ御愁傷様…っても俺達が連れて来なけりゃ助かる見込みなんざなかっただろうが」
やっぱり責められる事じゃねぇだろうが。
「こんなヤブじゃなきゃ助かってたかもしれないのに…!」
めんどくせぇ…コイツ、もうぶっ殺しちまおうか…
「じゃああのまま燃える車ん中で死んだ方がマシだったってか?そりゃ良い考えだ!今からでもそうしてやろうか!」
朗らかに笑いながら銃を突きつける。
「別に感謝しろって言ってる訳じゃねぇ。礼儀は弁えろって話だ。判るか?」
銃を向けられて顔が青くなるガキに対して更に続ける。
「仮にあのまま放置したとして。トラウマに加入してんだったら話は別だがお前ら加入してねぇだろ?あん時頭上を通過したのに何の反応もなかったしな?」
ゆっくりと、馬鹿にも判る様に話す。
「救助が来るまで数時間、助け出して病院を探すのに1時間はかかるだろう。そこがまともな病院である可能性はせいぜい1割あるかないかだ。…まぁ間違いなく死んでるなお前の母親は」
淡々と事実を述べていく。
「まともな病院でようやく蘇生の目があるって状況よりはまだマシな目を引いたんだぜ?少なくとも遺体と対面する事もなく、誰のものとも判らねぇ遺骨を持って帰る事にはならなかった訳だからな」
バイオテクニカ系列の所に運ばれたら蘇生措置すらなく臓器を抜かれてお終いだ。
そんな目にあってなお渡される遺骨は合同焼却した一部だってんだから笑い話にもなりゃしねぇ。
「判ったら言う事があるよな?…判んねぇならそれでも良いが」
銃をホルスターに仕舞うとへたり込むガキを見下ろす。
少し冷静になったようで何よりだが、まだ言葉は出てこない様だ。
「…おいおい、こりゃどんな状況だ?」
ヴィクターが奥から顔を出した。
「おいヴィクター。面倒な事態ってのはガキのヒステリーの事かよ?」
こんなの摘み出してお終いでいいだろうが。
「んな訳あるか。コイツの母親…グロリアが隠し持ってたもんが問題なんだよ」
こっちに来い、と手招きされて着いていくとビニールで密封されたクローム…脊椎か?が目に入った。
「これが何だか判るか?」
「アンタが判らねぇなら俺に判る訳ねぇだろうが」
勿体ぶらずにさっさと教えろ、と先を急かすと
「コイツはサンデヴィスタン…それも軍用の試作品だ。こんなもの、一介の市民が手に入れられるはずがない」
……話がきな臭くなって来やがったな。
「つまり何だ?あの女、どっかからこの試作品をパクって着服してたって事か?」
どう言い繕っても厄ネタでしかねぇな?
「そう言う事になるだろうな…正規ルートで手に入れられるようなツテがあるとは思えん」
重いため息と共にそう告げると爆弾でも触るかの様にビニールに触れた。
「問題はコイツをどうするかって話だ。…基本的には遺品は遺族に渡すもんだがこんな厄ネタ、あの小僧に渡して良いものかってな」
あー…まぁ確かに?
でもそれを俺に言われても困るぞヴィクター。
「…別に渡しちまって良いんじゃねぇか?あのガキにとってはこんなもんでも遺品に変わりはねぇだろうしよ。その後のことはあのガキが決める事だ」
目線をガキの方へと向ける。…何か考え込んでる様子だがさっきよりは話が出来そうだ。
「はぁ…まぁ拾ってきたお前さんがそう言うなら別に構わんが…どうなっても知らんぞ?」
「そんなん俺だって知らねぇよ。それでどんなラブリーな目にあうとしても興味もねぇ」
鼻で笑って試作品を持ってガキの方へと歩く。
近づくと少しビビった様子だがさっきと違ってめっちゃ怒ってるとかじゃなさそうだ。
「おいガキ。お前の母親が隠し持ってた遺品についての話が纏まったぞ」
ほれ、とビニールに入った試作品を手渡す。
「売るなり捨てるなり好きにしろ。…売るにしても下手なところに売るのは辞めておけよ?これは俺からの最後の警告だ。これ以降この件で突っかかってきたら容赦しねぇ」
分かったな?と念を押すと首を縦に振る。
「よし、これで一見落着だな。…全く、割に合わねぇ事しちまったもんだ」
ヴィクターに軽く手を振ってから店を後にしようとした時、背後から声がかかった。
「あ、あの!さっきは、すみませんでした……あと、助けてくれてありがとうございます!」
謝罪と感謝をちゃんと言える奴は好きだぜ?
「どういたしまして。…これから大変だろうが、頑張れよ」
肩越しに振り返って返答する。頭を下げている姿を見てまぁあんだけキレ散らかすのも無理はねぇな、と少し同情した。
見たところまだ10代半ば、反抗期だったとしても母親を亡くしたばっかりなら冷静な判断なんざできる訳もない。そりゃ八つ当たりだろうが何だろうがぶつけたくなるってもんだわ。
「…まぁ、本当に、マジでもうどうしようもねぇってなったら、一回だけ助けてやるよ」
自分のホロナンバーを適当にメモして渡す。
何してんだかな俺は…と自嘲しながら。
「荒事以外で呼ぶなよ?それ以外は専門外だからな」
そう冗談めかして伝えると今度こそ店を後にする。
この話をジョンにしたら笑われちまいそうだな…結局入れ込んでんじゃないですか!とか。
あークソッ!柄にもねぇ事しちまったよ恥ずかしいったらありゃしねぇ…