サイバーパンク2077〜変なのを添えて〜 作:ロックオン
感想と評価を頂いたのでノリで投稿します
あの親子の一件の後。
店に戻ってベロベロに酔ったジョンに事の次第を…まぁ、試作品の下りは省いたが…話すと呆れた様に笑われた。
「…やっぱ情に厚いで合ってますね」
そのまま酒を煽る。
「あれからまぁ考えたんですがね。旦那は降伏した相手は生かして返す事があるじゃないですか?」
その後襲いかかる奴は瞬殺してましたけど。と笑いながら続ける。
「…別に情けを掛けてるわけじゃねぇよ。本気で逃げてぇならソイツはもう敵じゃねぇってだけだ」
憮然として酒を呑んでいると畳み掛ける様に続けるジョン。
「それですわ!そいつが報復に来るとかは考えないんで?間抜けは数さえ揃えれば旦那に勝てると思う奴も居るでしょうに」
意気揚々と聞き始めるジョンに辟易しながら答える。
「心がへし折れた野郎かどうかは見りゃ分かんだろ…もし違ったならそん時はきっちり落とし前つけるだけだ」
現に今のところ誰一人として報復に来てねぇしな。
「俺は殺す事に何の躊躇もねぇが。別に誰彼構わず撃ちたいサイコ野郎じゃあねぇよ」
お前ん時もそうだっただろうが。と新しく注文した酒を煽る。
「確かに!まぁだから何だって訳じゃないッスけど…ナイト・シティじゃそう言うのは珍しいもんで」
義理や人情よりもまずは金、他人よりも自分が優先ですからね…としみじみ言う。
「あぁ、悪い意味じゃないですよ!?そのおかげで今俺はこうして酒を呑めてる訳ですから!」
慌てた様に話すジョンに苦笑しながら
「判ってるって。ま、今後もこう言う事はあり得るからな…それについては諦めろ」
要は基本的にぶっ殺すかどうかは俺の胸先三寸だって事だが。
その結果ヤバい状況になったとしても俺に後悔はない…でもジョンは?違うなら此処でチーム解散した方が良いかと思ってたんだが…
「ま、旦那は言っても聞いてくれねぇでしょうしね…」
呵々と笑いながら続ける。
「俺にゃ判らない感情ですが…さっき言った通り、大事なもんだってのは判りますから。これからもよろしくお願いしますよ」
改めて酒をついでくる。
「そうかい。…んじゃ改めて、乾杯!」
「更なる飛躍に!」
調子の良い野郎だ、と苦笑しながら酒を煽る。
その日はいつかの様に潰れたジョンを車に押し込んで駐車場で昼過ぎまで過ごすハメになったが…不思議と嫌な気持ちは少しもしなかった。
「…ってな事が合ったわけだ」
「それは…とても素敵な話ですね」
数日後、俺はまたブレンダンとティータイムを過ごしている。
あの親子の一件を改変して茶話としていた。
「ブートヒル様はとても良い事をしたと思いますよ?」
「そりゃありがとよ。でもまぁ此処じゃちと異端なんだなって話だ」
何時ものコーヒーモドキを飲みながら。
「別に生き方を変える気はねぇけどよ。ちょっと考えさせられたってだけで」
「その様に悩めるのも、あなたが優しい証拠です」
すげぇなブレンダン。セラピストみてぇだ。
「…お前やっぱ感情有るんじゃねぇの?」
「そんなそんな恐れ多い…私はただのSCSMですよ?」
ほらこの様に、ともう一本コーヒーが取出口に落ちて来た。
「おいおい、金払ってないぞ?」
「これは私からの贈り物です…こんなモノですみませんが…」
申し訳なさそうにそう言うブレンダン。
うーん、病んでる奴がコイツにハマる理由がわかる気がする。
…俺、病んでんのかね?
「ありがとな」
それはそれとして貰えるもんは貰うが。
「そう言えば聞きました?マックスタックが軍人上がりのサイバーサイコに対処したって話」
暫く黙って2本目のコーヒーモドキを飲んでいると急にブレンダンからそんな言葉が飛び出した。
「あん?サイバーサイコなんかいくらでも沸いてるだろう?」
特に気に留めず返答したが…
「えぇ。でもその人、集まったNCPDをものともせずに暴力の限りを尽くしたそうですよ?そんな人が居るなんて世も末ですね…」
ブートヒル様もお気をつけて…と心配そうに話すブレンダンに少し考え込む。
軍人上がりのサイバーサイコ、NCPDじゃ対処しきれない程って事は軍用のクロームを付けっぱなしで暴れた可能性が高い。
…つい最近、軍の試作品とか言う厄ネタ満載のクロームを見たな?
あの母親、サイバーサイコに着いてたテックをネコババしやがったのか?
スカベンジャーも吃驚な事してやがる…と少し顔を顰めると
「ブートヒル様?お口に合いませんでしたか?」
ブレンダンから不安そうな声がする。
「…大丈夫。ちょっと嫌なこと思いついちまっただけだ」
だとしたらあのガキが売っ払った先によってはクソ面倒な事になるかも知れない。
捨てるなら万全、闇市ならまぁ良し。リパーでギリセーフ。
…最悪は表で売っちまった場合だ。
ミリテクだかアラサカだか知らねぇが大企業絡みの案件に発展しかねない。
大企業相手なら足取りを遡る事なんざ容易い。事故現場から連れ出した俺達まで辿り着く事も大いにあり得る。
「…こりゃヴィクターにゃ頭が上がらねぇな」
あん時に言ってたどうなっても知らんぞ、ってのはこの事を知ってたからか。
そんでもって1抜けさせてもらうって意味も含めてた訳で。
その危険物(予定)に俺は片足突っ込んだままの間抜けってわけだ。
…何故だか面白くなってきたぞ?
意味が判らんが大企業相手に暴れる機会があるかも、と考えた時。
俺は恐怖じゃなくて愉悦と怒りを覚えていた。
本当に俺は何だったんだろうか?
普通はアラサカやらの大企業に喧嘩売る羽目になるかも?って話なら恐怖があるはずなのに。
俺は今、最高に愉しい。
「ブートヒル様?大丈夫ですか?」
「問題ねぇって…少し楽しみが出来ただけだ」
ま、そんな事はどうでも良い。
全てはあのガキがあの危険物をどうするのかってだけの話だ。
何も問題なく処分したなら良し。
バレる様な間抜けを晒してもそれはそれで良し。
どっちに転んでもお得な話だ。
最良なら俺達は問題なく傭兵稼業を続けるし。
最悪の場合は俺一人で大企業相手に暴れ散らかしてやる。
「…じゃあな、ブレンダン。また来るぜ」
「えぇ…またのお越しをお待ちしております」
少し逡巡した様子を見せるブレンダンに苦笑しながら。
片手で圧縮した二缶をゴミ箱に投げ込む。
『ナイスシュート!素晴らしい腕前です!』と言う言葉を背にその場を離れた。
ホロコールでジョンを呼び出す。
少し時間を置いて来た何時ものボロ車に乗り込むと
「こんな真っ昼間から一体なんですか旦那…」
運転席から眠そうな声が聞こえるが。
「悪い、最悪アラサカかミリテクと喧嘩する事になったかも知れん」
そう言うと少し時間を置いてようやく事情を呑み込めたのか素っ頓狂な声が上がる。
「はぁ!?なんでそんなことになってんですか!?」
「あの親子、やべぇブツ持ってやがったみたいでよ。それが思った以上に厄ネタだった」
詳しい話をすると段々顔が青褪めて行くジョン。
「つまり、あの小僧が選択をミスったら…」
「最悪俺まで確実に来るな。…コンビ解消するなら別に構わねぇが、どうする?」
少しの沈黙。
「旦那は、どうするつもりです?」
「あ?徹底的に暴れ散らかしてやるが?」
ノータイムで答えると少し顔色が戻ったジョンが
「ならまぁ…最後まで走り切りましょうか」
と答えた。…意外だな?
「お前なら逃げると思ってたんだが…あのガキにそんなに情が湧いてたのか?」
そう尋ねると呆れた様に苦笑しながら
「そっちじゃねぇですよ…旦那が覚悟決めてんなら最後まで付き合うって言ってんです」
あぁ、こっ恥ずかしい…と顔を扇ぐジョンに。
「全く…お前、最高だな!」
とジョンの肩をバンバンと叩いて。
「ま、どうなるかなんてのは神のみぞ知るってやつだけどよ」
悪い様にはしねぇよ。と笑った。