東方主双録   作:紅魔館の下っ端

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初めまして、紅魔館の下っ端という者です。
ほとんど読み専だったのですが、少し書いてみました。
処女作なので至らぬ点もございますが、宜しくお願いします。
それでは一話目。どうぞ!


古代の都
主人公


ザザザザザザザッーーー!という音が鳴る。

凄まじい速度で草木を掻き分け、その男は空気の壁なんて脆ともせずに突っ切る。

その口には笑みが浮かんでおり、左右に裂けた口から尖った牙が見え隠れした。

その先には、人知を超えた妖怪と武装した人間がいる。

男はそんな場所へ、ただ笑みを浮かべながら突撃した。

 

 

 

 

 

 

 

「はい、じゃあ何か言うことは?」

 

一人の女性が額に血管を浮かべながら、何枚もの書類を机に押し付けた。

赤と青の個性的な服を着た銀髪の女性の目の前には、黒いTシャツを着た無表情な男が正座して座っている。

 

「確かに、貴方へ要請は出ているわよ?でもね、味方敵まとめて戦闘不能にしていいなんて誰が言ったかしら」

 

イラついた様子の女性の言葉を聞いた無表情の男は、人差し指を軽く動かした。

その動作をみた女性は机の中から白紙とペンを取り出し、それを男目掛けて放る。

男はその白紙とペンを空中で取ると、床に置き、白紙に何かを書きつづった。

そしてその紙を、イスに座る女性へ見えるように持つ。

内容は、

 

『そこに味方がいたから。反省はしてないし、後悔もしていない』

 

………と書かれていた。

女性は呆れたようにため息をつくと、一枚の書類を取り出す。

 

「別にそれはいいけどね?敵味方きっちりと区別しなさい。喜牙」

 

喜牙。そう呼ばれた男は、無表情のまま更に字を書き殴る。

 

『なら俺が行く時のみ味方全員下げてくださいよ、永琳様。やりにくいったらありゃしませんし』

 

無言かつ無表情で平然とそんな事を書く喜牙へ、永琳は苦笑いしながら口を開く。

 

「というか、自分の口で話しなさいよ喜牙。隊の皆は貴方の事を『クソ真面目な絡みにくい奴』と言ってるわよ」

 

『マジすか!?』

 

文字では驚いているような文を書くが、相変わらず無表情を貫き通す喜牙。

とりあえず、と永琳は書類の一枚を取り出し、それを喜牙の元へ見せる。

 

「はい、今回の味方の被害数は約20人ほど。以前よりは減ったけど、まだまだね。能力の調整を欠かさないこと」

 

文字を書くスペースが切れたのか、喜牙は白紙をポケットの中へ押し込むように入れ、更に指でジェスチャーした。

それを見た永琳は、机の中から更に白紙を取り出して喜牙へ投げつけた。

それを空中で取り、文字を書いて永琳へ見せる。

 

『エネルギーを変換し操作する程度の能力。俺のこの能力を永琳様の薬でどうか出来ないんですか?』

 

それを見た永琳は首を横に動かす。

 

「無理ね。薬を作るったって、それ相応の材料が必要なのよ。能力をどうこうする薬なんて………まあ作れるけど、材料が足りないわ」

 

『マジっすか。調整難しいから楽しようと思ったんすけどねぇ。じゃあまた調整部屋行きか』

 

無表情のため分かりづらいが、少しめんどくさがっているようなオーラが背中から出ていた。

そのオーラを背負ったまま、喜牙はその部屋を後にしようと………。

 

「って、待て待て待て待て。まだだから。まだ終わってないから」

 

永琳は出て行こうとする喜牙を急いで呼び止めた。

するといつの間に書いたのか、文字の書かれた紙を永琳に見せる。

 

『なんですか?私は今から大変大事なヤボ用があってですね』

 

「大変大事なヤボ用って何よ。とにかく、月夜見様がお呼びだから行ってきなさい」

 

月夜見。

その名前を聞いた喜牙は、無表情のまま首を少し傾げた。

 

『そんな名前の人いましたっけ?聞いたことありませんが』

 

「……この都の最高責任者『月夜見』様よ。まあ、あの方は滅多に部屋から出ようとしないから仕方ないかな」

 

『ヒキニートかよ。俺達にだけ働かせやがって……地球の自転エネルギーを運動エネルギーに変換して、部屋ごと消し飛ばしてやろうか』

 

無駄に小さく長い文章の書かれた紙を永琳に見せながら、喜牙は小さい殺意を纏う。

その喜牙をなだめるように、永琳は、

 

「でもあの方のおかげで都市が設立されているわけだし、感謝もしないと」

 

喜牙は暫しその場で膠着し、少しして軽く息を吐いた。

 

『しょうがねェな。永琳さんに免じて許してやるか』

 

「とりあえず、その言動は最高責任者に対して使っていいものじゃないわね」

 

軽く呆れ顔になる永琳を後目に、喜牙は少し複雑そうなオーラを醸し出している。

だが変わらず無表情。

 

「はいはい、とりあえず付いて来なさい」

 

机の上に置かれた書類を適当に並べ、永琳は立ち上がると、喜牙の横を通ってその部屋を出た。紙を乱雑にポケットへ押し込み、喜牙もその後へ続く。

 

 

 

 

 

赤く巨大な扉。

その前に二人は立っていた。

 

「それじゃ、行くわよ」

 

永琳は躊躇なくその扉へ触れると、そのまま扉をゆっくりと押した。

巨大な扉は音を立てながら開かれる。

露わになった扉の向こう側。そこはほとんど何も無い空間が広がっていた。

部屋の中央の除いては。

部屋の中央、そこには

 

「(ガクブルガクブルガクブル)」

 

布団が一式出されていた。模様はその辺にあるような、なんの変哲もない物だ。

そして、その布団の更に中央。その部分だけが、妙な膨らみを帯びている。

その場で呆然とする喜牙を後目に、永琳は慌てたようにその布団へ駆け寄り、しゃがみ込んだ。

 

「ど、どうしたんですか月夜見様?」

 

少し心配したような声。

その声を聞いた布団の主は『ビクッ』と肉体を震わせる。そして数秒後、布団の一部が僅かに開かれ、その隙間からは青い瞳が現れた。

 

「……まだ死にたくない」

 

そう呟くと、その人物は再度布団の中へ隠れた。

何があったのか。永琳が布団を揺らしたながら尋ねる。

 

「ど、どうなさったんですか!?一体何が……!」

 

「あ、ちょっと揺らさないで揺らさないで!吐く!緊張と単純な気持ち悪さで吐く!」

 

中から悲願の声が流れる。

その声を聞いた永琳はその行為を慌てて止めた。

永琳は少し深呼吸をして、その布団に向かって話しかけようとする。

すると、

 

「そ、そいつ……」

 

中から怯えた声と共に、白く細い腕が布団の中から伸びる。

その指が指し示す方向には、先程より完全に無言で佇む喜牙がいた。

永琳は一度喜牙を見て、すぐに布団の主へ目を向ける。

 

「あ、あれがどうしましたか?なにか粗相を?」

 

『オイ』

 

『あれ』と物みたいに言われたのが癪に触ったのか、短い言葉を紙に大きく書いて見せる。

だが当の二人は喜牙になど目もくれず、二人で会話を続けていく。

 

「いや、初対面だから粗相も何も無いんだけど……さっき言ってたじゃん、自転エネルギーをぶつけて消滅させるって…」

 

「え、あれ聞こえてたんですか!?」

 

永琳が驚きの声を上げる。

正確には『見えていた』なのだが、そんな細かい事は気に留めない。

直後、布団を鷲掴みにする腕が見えた。

見てみると、そこには紙を一枚、見えるように持つ喜牙が立っていた。

内容は、

 

『いい加減に出ろよクソニートが。こっちはお前と違って暇じゃァねえんだよ』

 

次の瞬間、喜牙の腕に力がこもる。止めようと永琳も手を伸ばすが、もう遅い。

中から力強く押さえていたようだったが、『エネルギーの変換と操作』という能力を持つ喜牙にとって、布団を取り上げるなど蟻を殺すよりも容易だろう。

布団は一気に引き剥がされた。

その人物を守っていた掛け布団は宙に浮かびあがる。

そして、中の人物が明らかになった。

まず最初に目が行くのは、その髪だ。腰あたりまで伸びた青い髪は、その人物の体へ乱雑に絡みついている。恐らく、布団の中で暴れた結果そうなったのだろう。

そして透き通るような青い瞳。

だが、全ての部位を説明するには少し足りない物が。

いや、これは『少し』なのか。

その人物を見た喜牙と永琳は、それぞれ違う反応を見せた。

 

喜牙は無表情のまま固まり。

 

永琳は少し顔を赤くした。

 

「うー……ん?え、なに?」

 

その人物。いや、その女性は不思議そうに二人の顔を見上げる。

丸まった状態から正座の状態に姿勢を変え、その女性は問う。

 

「どうしたの?」

 

何の気も無く声を発する女性。

静寂が流れた後、永琳は少し顔を赤くしながら口を開いた。

 

「……服」

 

「…………え?」

 

言われた一言に、その女性は自分の姿を見た。

そこには何の布もついていない、肌色の肢体が広がって……。

 

「……あ、恐怖のあまり忘れて……た」

 

目の前に男性がいる事を思い出し、言葉は途中で濁る。

完全に空気が重くなった所に、永琳が。

 

「喜牙」

 

『お邪魔しました』

 

いつの間に消えたのか、床にそのような事が書かれた紙切れが一枚落ちていた。

 

 

 

その後、巨大な扉の向こうから女性のすすり泣く声が聞こえてきたという。




ここまで読んでいただき、有難うございました!
それではこの辺りで。次回も見ていって下さると光栄です。
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