タグに『ちょっとチート』とあるにも関わらずフルボッコにされた盃。
もはやタグ詐欺レベルの弱体化を成功させた盃を、事情も知らない馬鹿な神が殴り飛ばし、意気揚々と殺そうとした……が、神奈子と呼ばれる神に一喝されて作者共々『ザマァ』と言われる醜態を晒し、更にはその神は感想で一切触れられなかったカワイソス。
そして神奈子と激突した諏訪子はほぼ同等クラスの戦闘を繰り広げるが、諏訪子が言い放ってしまった禁句により、神奈子を怒らせてしまう。
どこぞのブ○リー宜しく地球崩壊アタックをすることは無かったが、代わりに見栄をはって大軍できた神や、罪袋シリーズが襲われた。
パニックになる戦場。
そして、そこにいた盃も例外ではなく、御柱に襲われる。
神奈子も我に帰り、諏訪子も盃の危機を感知するが、二人の攻撃が間に合う筈も無く、御柱に押し潰されてしまう。
だが、その直後、盃にある異変が起きた。
月夜見「……あらすじって、なんだっけ?」←あらすじを読んでいた人。
盃が目を瞑り、数秒が経過した。
その間、盃は痛みも何も来ないことに、僅かな疑問を抱いていた。
確かにさっきまで御柱が目の前にあったし、諏訪子達の攻撃は間に合うはずも無い。
何かが起きたのか、それとも、痛みも感じる事なく死んでしまったのか。盃には分からなかった。
盃の目がゆっくりと見開かれていく。
その目に最初に映ったのは、自分の手だった。
防ぎ切れる筈も無い攻撃から、どうにかして逃げのびようと反射的に出された両手。
本来なら、両手は一切の抵抗なく押され、そのまま盃の肉体がミンチになっていただろう。
だが、盃の両手に傷は無い。
それどころか、脅威を振るおうとした御柱すらも無い。
不思議に思った盃は、ふと諏訪子達の方を見た。
そこに映った諏訪子と神奈子の盃を見る目には、驚きが満ちていた。
遠くから様子を見ていた神子は、注意深く、眉を潜めていた。
何があったのか分からない。
と、そこで、盃の視界の隅に何かが映った。
緑色の液体。
それが盃の掌から、ドロドロと流れ出ていた。
(な、んだ……!?)
盃は何をしたわけでも無い。だというのに、盃の中から『ソレ』は溢れ出ている。
緑色の液体は手から漏れると、地面に落ちた。
地面が音を立てる。
その音に驚いた盃は反射的に後ろへ下がった。
その地面から発せられた音は、緑色の液体が地面を侵食する音だった。
ジュゥ……という音を立てて、地面は一気に削られていく。
数秒すると、その緑色の液体がかかった地面には空洞ができていた。
底が見えない。
穴が空いたその奥には、闇しか広がっていない。
「……成る程、貴様も能力を持っているのか」
神奈子がゆっくりと口を開いた。
その背には、激しく燃え盛る闘志を背負って。
「やはり『報告通り』だな。最初はボコボコにされていたし、間違いだと疑ったものだが」
地面に突き刺さる御柱を引き抜き、両手に2本ずつ持って、神奈子は態勢を整える。
「まあいいか。2対1、随分と面白そうな構図ではないか」
ニヤリと笑う神奈子。
両手に力を加え、投げ飛ばす準備を整える。
諏訪子はいつでも迎撃できるように構え、盃も釣られるように両手を前に出す。
また、戦いが始まーー
「神奈子さん」
直後、女性の声が聞こえてきた。
声のした方向を見てみると、先程まで神の軍隊が居た場所に、一人の女性がポツリと佇んでいた。
白く、長袖のシャツに灰色のジーパンを履いた白色の髪の女性が。
血より赤い瞳を動かし、彼女は言う。
「保護されてもらっている身で言うのもアレですが、ここは引きましょう。この状況は、宜しくない」
神奈子は首を傾げる。
が、何か気付いたのか、神奈子は合点のいったように頷いた。
諏訪子の拠点である神社を一瞥し、流れるように盃と諏訪子の二人を視界に捉えた。
手に持つ御柱を肩に軽々と担ぎ、後ろに一歩下がると、神奈子は言った。
「諏訪の神よ!我は諦めはしない!次は戦場にて待つ!」
そう言い放つと、神奈子はバネのように飛び上がった。続くように白髪の女性も舞い上がる。
そして彼女達は、数分に及ぶ破壊を繰り返した後、ほんの数秒で視界から消えてしまった。
ーーー
「さて、これからどうするか……」
戦闘の終わった諏訪子は鉄の輪を納め、辺りを見渡しながら呟いた。
その目には破壊された家々が映り、諏訪子は目を細めて、改めて破壊の跡を目で辿っていく。
「ここの人達を避難させられる場所……一人二人ならやれるかもだけど、流石に全員は勘付かれるかな……?」
言動から見て、諏訪子は恐らく、村の人々を戦争に巻き込まないよう、どこかへ避難させる気なのだろう。
諏訪子の言葉に、隣に移動してきた神子も唸り声をあげながら目を瞑った。
どうやら、この辺りに隠せそうな場所は無いらしい。
「……やっぱり、私が砦を作るのが一番かな?」
「ただしその場合、諏訪子様の力を少し使ってしまう。勝てる確率が減りますなぁ」
軽い口調でそう言う諏訪子に、神子が口を挟んだ。
次に、神子はゆっくりとした動作で顔を動かして、視線を盃に向けた。
盃の掌からの液体は、もう完全に収まっている。
マジマジと自分の掌を見ていた盃は、神子の視線に気付いて腕を下げる。
彼、盃は『巻き込まれた』人間で、本来ならば諏訪子達は謝罪をしなければならない。
だが、神子は人差し指で軽く盃を指差し、言った。
「そこの盃に、力を貸してもらいますかね?諏訪子様」
諏訪子と盃は驚いた顔で神子を見た。
神子の表情は、『当然だろう』というものになっている。
「盃は能力で神奈子の御柱を防いだ。ならば戦力にならない、なんて事にはなんないでしょうよ」
「私は反対!」
神子の提案を、諏訪子は大声で跳ね除けた。
「盃は元々、こんな下らない争いをする人間じゃない!戦争が始まるなら、まずは盃をあるべき場所へ帰さないといけない!」
そう、盃は『飛ばされてきた』人間。
こんな村の戦力に駆り出されるべき人間じゃないし、そもそも戦う義理もない。
更に、盃はここに来てまだ一日も経っていない。
そんな故郷でも、まして思い出にもなっていない地を、命をかけてまで守る義理は無い。
だが、神子は首を軽く横に振った。
「それならば、『我々』が盃を処罰せねざならないですなぁ」
「……ッ!?」
神子が右手を上空に掲げる。
すると、その手に一つの武器が飛来した。
それは槍のような形状をしており、その矛先は五つの刃に別れている。
それを見た諏訪子は敵意を剥き出しにし、構える。
が、神子はその槍を地面に突き刺し、鋭い目で盃を射抜いた。
「正直、私はそこの盃を信用してはおりませんよ」
その目からは疑いの色が見れる。
何が盃を気に入らせないのか、その目は敵に向けるものだった。
「ここ最近、奴等の襲撃は収まっていました。ですが、コイツがここに来た次の日に、奴等は現れて暴れていった」
何が言いたいのか、諏訪子は分かったようだった。
だが、盃は変わらず首を傾げている。
神子は鋭い視線のまま、しっかりと言った。
「そいつが、敵国、奴等のスパイである可能性がある」
ーーーー
神子の意見は、纏めればこうだった。
・襲撃が収まっている所に盃が来て、その次の日に襲撃があった。タイミングが良すぎる。
・奴等は戦争で人を殺し慣れている。わざわざ殺すことを咎める訳は無い。
・そもそも記憶喪失かどうかだって、本人が嘘をつけば問題は無い。
対して、諏訪子はそんな意見を述べた。
・襲撃についてはたまたまだろうし、もし盃が敵なら、自分の寝首をかくだろう。
・奴等は『信仰』を欲してきた。人間を減らしてしまったら信仰が薄くなってしまうから、咎めるのは当然だ。
・わざわざ記憶消失の真似をする必要は無い。そんな真似より、やるのなら捨て子とかをやったほうが効果的だろう。
盃は木で作られた椅子に腰掛け、二人のやり取りを思い出していた。
盃は神社の中にはいない。
疑いが晴れないため、神社へ近付く事ができないのだ。
諏訪子は申し訳程度に空き家を一つ貸してくれて、『もし何かあったら呼んでね』と言って帰っていった。
それで一人になった盃は、掌から『紫色』の液体を出したり消したりしている。
盃はこの家での生活を受け入れた後、あの液体の事を思い出して、折角だからと使ってみることにした。
使うことはそこまで難しくなく、ちょっと念じて掌に意識を持って行けば出た。
その時の液体の色は『透明』で、結果はなんの害も無かった。
どうやら本人の意思で色違いの液体が出てくるらしく、その効果は何通りあるか分からない。
紫の液体の効果は『補強』。
分子と分子の隙間に入り込み、硬質化し、物の強度を高めてくれる液体。
だが人体には無害らしく、その証拠に盃の掌がどうかなる事も無かった。
因みに、戦闘中に出た液体の効果は分からず仕舞いだ。地面を溶かしていた所を見ると、それ系統の液体だと思うが。
(……さて)
盃は窓から外を見て、夜になっている事を確認した。
今日の『奴等』について思考を張り巡らしていく。
神奈子という神。
あれは、正直別格だと、盃は感じていた。
後ろにいた神達も強そうではあったが、神奈子はその更に上を歩いているような感覚がある。
そして、最後の方にいた白髪の神。
あの神は強さが対して分からなかったが、戦い慣れてそうな感じがした。
神奈子が『恐れず、相手を真っ向から貫く』矛だとすると、白髪の神は『整え、見切り、準備をして裏から切り崩す』細剣。
勝ち目は薄い、というのが盃の考えだった。
『喜牙』の頃の能力であれば、仮にも数百・数千以上の妖怪を、たった一人で切り抜けた頃の彼なら、神奈子と相対する事も出来ただろう。
だが、盃はその能力を知らないし、使えない。
今の彼、盃の能力は『掌からあらゆる液体を放出する程度の能力』。
実績は一つ。
『神奈子の御柱を溶かした』。
(……つまりは、少なくとも、神奈子の攻撃を防ぐことくらいはできる、か)
だが、それは掌で触れた場合のみ。
何十と飛来してくる御柱を、全て溶かしきれるかは分からない。
盃は今日、初めて能力を使ったのだ。使い方も、効力も、何も分からない。
だが、溶かせたという実績はある。
(……奴等を……)
ある考えが盃の脳に巡った。
その時だった。
コンコンッ、と。
木の扉が外から叩かれた。
誰だ?と疑問を持ち、盃は椅子から立ち上がると、扉の所まで歩き、開けた。
そこには一人の女性がいた。
目につくのは、その白く長い髪。腰まで伸びており、とにかく長い。
次に瞳。赤く、炎のように赤い眼が映る。
白い長袖のTシャツと灰色のジーパンを着たその女性の姿は、盃の思考に一瞬の空白を作るのに、十分すぎる働きをした。
「どうも、先程は申し訳ありませ……」
何か言う女性の声を無視し、盃は無言で扉を閉めた。
そして、その場で考えを張り巡らしていく。
(今のは……確か神奈子と一緒にいた神の一人……!?何でこんなところに……!?)
『すみませーん!!』と扉を叩く女性を無視して、自分の掌に意識を傾ける。
あの女性は、昼間に自分の敵となっていた人物。どんな事をされるか分かったものでは無い。
こうなれば、扉越しに奇襲として液体を……。
と、そう思った盃の掌から青い液体がドロリと湧き出てくる。
直後、扉が吹き飛ばされた。
木の破片と化した扉が、盃へ向かって乱雑に飛び散っていく。
咄嗟に顔を両腕で庇い、飛んでくる破片から目を守る。
バラバラと音を立てながら落ちていく破片を尻目に、盃は掌を目の前に佇む女性へと向け、黒い液体を噴出した。
黒い液体は墨のように黒く、それに触れたありとあらゆる物体が貫通されていく。
あらゆる物体を貫通する。それが黒い液体。
だが、黒い液体は女性に触れた瞬間、四方八方に弾けて消えた。
完全な無傷のまま佇む女性は、盃に警戒している様子も見せずに、ゆっくりとした動作で歩み寄っていく。敵意は無いと言いたげに両腕を左右に開きながら。
「私に戦意はありません。その証拠に、私は一切手を出していないでしょう?」
盃は答えない。無表情のまま、少しずつ後ろへ下がる。
「どうすれば信用していただけますかね?私の情報を漏れなく隅々まで教えて差し上げましょうか?」
盃は、答えない。
「なんなら、敵の神一人を目の前で殺して上げましょうか?」
盃は……答えない。
「うーん……どうしましょうかねぇ……これでも信用を得られないとすると……」
女性は少し考えた末、何か思い付いたかのように手を叩き、人差し指を上げて、言った。
「ならば、そちらの情報を此方に『流している』裏切り者について教えてあげましょうか?」
その言葉に、盃の眉が微かに動いた。
その様子を見た女性は満足そうに頷き、両腕を下げて盃を見据える。
「全て筒抜けなんですよ。貴方がここに来た経緯も、貴方の状況も、諏訪子さん達の策も」
「……」
盃はゆっくりと腕を降ろしていく。その目には、まだ警戒の色が色濃く映っていた。
女性は盃の横を素通りし、そのまま奥の部屋へ行くと、二つあるうち一つの椅子に腰掛けた。
「まあまあ、話は長くなりますし、とりあえず座りましょう」
自分の近くにある椅子へ座るように促す女性を警戒しながらも、盃はゆっくりと椅子へ歩み寄り、席についた。その間、盃が女性から目を離す事は無い。
(なんの企みがあるかは知らないが……どうせろくでもない事に決まってる。明日、諏訪子に今日の情報を……)
諏訪子とは違い、目の前の女性には恩が無い。
つまり、裏切ることや情報を流すことに躊躇いはないのだ。
もし戦争が始まることが決定的ならば、情報を漏らした所でこれ以上のリスクは無い。
だが、口を開いた女性の言葉に、盃の息が止まった。
「では信用を得るために単刀直入に。敵へ情報を垂れ流している裏切り者は、この村の『全て』です」
外から、パチパチと、何かが燃える音が聞こえてきた。
【俺の日記】
懐に何枚かの紙があるのを発見した。
もし、また記憶喪失になっても大丈夫なように、日記として日々の記録をつけていきたいと思う。
今日は記念すべき一日目。
続けられるかは分からないが、覚えている限りは頑張っていきたいと思う。
今日は……色々あったが、その事については明日の日記として書こうと思う。だから、今日はここで筆を置かせてもらうとしよう。
それにしても、あの女性……何者なんだろうか。何か不思議な雰囲気を感じるが……。
盃○ ○○。