少し物語の修正に入っており、また、この先のストーリーに改変を加えようとした結果、このような時間をですね……。
ま、まあ問題ないよね!()
では今回も、どうぞ!
「これはこれは、少々遅すぎましたかね?」
何かが燃える音を聞きながら、女性は立ち上がって玄関の方をチラリと見た。
その方向には何も無い。そう、本来ならば異常は無い筈なのだ。
真っ赤に煌めく炎。
それが木で作られた家を外側から侵食してきていた。
部屋中の温度が異常なまでに跳ね上がり、家が少しずつ形を崩していく。
女性は辺りを軽く見回し、椅子から立ち上がると盃に手を差し出した。
「とりあえず移動しましょう。ここにいたのでは、落ち着いて話も出来やしない」
「…………」
盃は迷う。
この信用もできない奴についていってもいいのか、と。
目の前のこいつは、敵である神奈子の味方だ。
ノコノコとついていけば、人気の少ない森の中で殺される可能性も0ではない。
だが、この村にいれば安全かというと、それも違う。
この家周辺に火元となりそうなものはなかった。となると、誰かが故意に火をつけたことになる。
誰が?
盃が住むことになった家を放火するということは、放火した人物は盃を恨んでいる人間。もしくは、盃を殺して得をする人間。
しかし、今日昨日現れたばかりの盃を恨む人間は、限りなく少ない。
今日盃が出会った者は。
諏訪子。
神子。
神奈子。
そして、目の前のこいつ。
直接接点を持ったのは、この四人。
そして、目の前の女性は抜かす。
そして、盃に信頼を置いている諏訪子も抜かす。
そして、ここに来る事にリスクがある神奈子も抜かす。
残るは……。
「……」
盃は少し考え。
何度か考えを修正して。
そして暫く立ち、火の手があと僅かまで届いた所で。
意を決したかのように、女性の手を握った。
「……ここまで来れば安心でしょう」
村近くの丘の上で、女性は足を止めた。
ふー、と息を付き、小さく見える村全体を見下ろす。
盃の位置からは見えないが、女性は村の様子を見ながら苦笑いをしている。
対して盃は周囲を警戒していた。
すると、女性は振り向いて。
「大丈夫ですよ。別に貴方を殺す気はないんですから」
何もない地面に座り、盃を見ながら女性は言う。
「立ったままでは辛いでしょう?座りましょうよ」
その言葉に、盃は首を横に振った。
座れば、突然の事に対処し辛くなる。
もし座った直後に襲われでもしたら、恐らく何も出来ずに殺されるに違いない。
目の前の人物を疑うからこそ、出来ない。
そんな様子の盃を見て、女性は笑顔で続ける。
「おっと、自己紹介がまだでしたね。私の名は天探 女城……宜しくお願いします」
両手を前にして、天探は優雅に頭を下げた。
その姿には盃を警戒する様子もなく、まるで普通に挨拶しているかのようだった。
実際に普通に挨拶しているだけなのだろうが、その態度は明らかに敵を前にしている者のそれではない。
この警戒心の薄さ……まさか本当に話をしにきただけなのか?
と、少しばかり思ってしまう。
しかし、まだ完全に信用仕切れない盃は、暗い地面に文字を書いた。
天探は地面に書かれた文字を、目を凝らして口に出す。
「えー……『わざわざ訪ねてきて、こんな所まで連れてきて、何が目的だ?』、ですか」
それを見ると、天探は僅かに唸った。
そして少し考えたのち、天探は言った。
「目的……といいますか、何といいますか……そうですね。貴方には私の娯楽に付き合っていただきたいのですよ」
娯楽に付き合っていただきたい。
予想と全く違う回答に、盃は僅かに眉を潜めた。
敵か味方なのか。
目的も何も分からない彼女は、両腕を上げて、両手の人差し指を一本ずつ開いた。
「私は変化のない人生は嫌いでしてね、刺激のない毎日に飽き飽きしてるんですよ。今の戦争は確かに刺激的ですけど、太和に居ては勝利が確定していて、実に面白くない」
右手にある人差し指を閉じて、もう片方の人差し指を見る。
「しかし、諏訪神様の近くには『神子』がいる。私が上手く諏訪神様に取り入ろうとしても、あの無駄に頭の回る神子が何らかの妨害をしてくる筈」
そして左手の人差し指も、ゆっくり閉じた。
「どちらも面白くない。ですが……戦争なんてものを見ながら狸寝入りなんて、それもあり得ない」
盃はそこまで聞いて、天探の企んでいる事に大体の目星はついた。
神奈子側は余裕すぎて面白くない。
諏訪子側は妨害が面倒で面白くない。
しかし戦争に参加しないのも面白くない。
ならばどうすればいいか。
簡単な事だ。
「『私』と『貴方』で、戦場をかき乱しませんか?」
つまり、第三勢力として仲間になれ、ということだ。
答えは決まっている。
盃は即座に地面に文字を書いた。
『断る。諏訪子達を裏切ることは、できない』
盃は諏訪子にお世話になった。
自分を介護してくれて、寝床を提供してくれて、神に襲われていた時に助けに来てくれて、神子に疑われても信じてくれた。
第三勢力になる、ということは神奈子を敵に回すと同時に、諏訪子すらも敵に回すということだ。
それはどう考えても、恩を仇で返す行為。
盃はそんな行為は許さなかった。
しかし、その文字を見た天探は、言った。
「私の言葉を忘れましたか?『裏切り者は、あの村の全て』だと」
盃の眉が動く。
天探は続ける。
「いるんですよねー、太和に情報を垂れ流しにする阿呆が。自分だけが助かりたい一心なのか、他の目的があるのか……」
独り言のように呟きながら、続ける。
「神子……あいつが裏切り者ですよ」
その言葉に、盃の瞳が動いた。
信じられない、というのではなく、予想していたものが他人の口から言われたかのように。
実際、盃は神子を疑っていた。
他国に、諏訪を裏切り大和に情報を垂れ流すのだとしたら、それはかなりの危険を伴う。
諏訪子は神。もし裏切りの臭いを少しでも漂わせていれば、即座に勘付かれてしまうだろう。
いや、もし気付かれなかったとしても、この村は諏訪子が統括している。
その辺の奴が変な動きをしていれば、諏訪子の味方である巫女達が捕捉するだろう。
この村にはあちこちに巫女がいるし、住む人々にも巫女と接点のある者が沢山いる。
この村で、怪しまれず情報を掻き集められる人間など、どこにもいない。
しかし、例外が一人。
そう、その例外が『神子』だ。
神子は諏訪子の周りに付く側近であり、村の人々とも接点を持つ。しかも普段から変な行動をしているため警戒されていない。
神子が何か不審な行動をしていても、「また何かする気だろうなー」と巫女達はスルーし、村の情報を集めれば「諏訪子様の側近だから」と村人たちも警戒を解き、諏訪子には側近だから警戒されない。
しかも、元より神出鬼没な人間だからいなくなっても大丈夫。
更には、盃の能力を見て、ボソリと呟いた神奈子の一言。
「情報通りだな。」
この言葉は、事前に盃が能力を持っていると知っていた者の言葉。
しかし、盃が能力を持っていると知っていたのは二人しかいない。
諏訪子と、神子。
諏訪子がわざわざ敵に情報をあげるわけがない……ということは、選択肢は一人しかいない。
「ふむ、その顔は、やはりと言った様子ですね。となると、今さっき家を放火したのも、神子だと勘付いていますかね」
盃は頷いた。
先程の仮説が正しいのなら、神子が火を放ったのも無理はない。
神子の行為が怪しまれないのは、村の住民が神子の行動に慣れている、という事前提で成り立っている。
そこに、神子の行動を見慣れていない人物がいきなりやってきたら、どうなるか。
神子は動き辛くなる。
だから、神子は朝のうちに盃を神社から遠ざけて、夜に火をつけて殺そうとした。
そういう事だろう。
「村の人達は全員が神子を信用し、全ての情報を教えてしまう。『裏切っているのは、村の全て』って訳です」
分かりましたか?と言わんばかりの表情で、天探は盃を見た。
そして、居住まいを正し、一言。
「さて、裏切り者が分かった貴方はどうしますか?」
その問いに、盃は迷いなく地面に文字を書いた。
『決まってる。まず神子が裏切り者だって教えて、捕まえてやる』
その文字を見た天探は、ハッと笑った。
馬鹿な事を書いてある本を見て、呆れたように。
「何年もいた神子と、最近来たばかりの貴方。皆はどちらの言い分を信用しますかねぇ?」
その言葉に盃は押し黙った。
そう、何年も前から信用を積み上げてきた神子と、最近現れてスパイ容疑のある盃。
人々がどっちを信用するかと言われたら、答えは決まっている。
むしろ自分の首を締めるかもしれない。
とはいえ、このまま放っておけば、諏訪子は全ての情報を筒抜けにされた状態で戦争に行くだろう。
そして、敗北するだろう。
情報が垂れ流しになっていて、それでも尚勝てるほど、戦争は甘くないのだから。
悩む盃。
天探は微笑を浮かべて、自分を指差した。
「そこで、我々です」
そこから語られる、天探の第三勢力たる内容は簡単なものだった。
一つ。太和の神が諏訪を急襲に来るだろうから、これを撃退。
二つ。神奈子側に間違った情報を伝える。
三つ。妖怪達を仲間に誘い入れ、戦争時に神奈子の軍へぶつける。
四つ。上手いこと戦力を減らし、神奈子と諏訪子の戦力差を0まで近付ける。
一見すると諏訪子に有利なものばかりだが、天探曰くここまでしないと面白くない、だそうだ。
戦力差が限りなく近い状態で、大将同士がぶつかり合う。
これが何よりも面白い、とのこと。
天探の言うことを全て聞いた盃は、少し考えた。
そして考えた上で、書いた。
『……それが、諏訪子にとってプラスに働くんだろうな?』
「当然です。貴方がこのまま戻って愚を犯すよりは、よっぽど諏訪子様の力になりますよ」
そう言われ、盃は新たに文字を書いた。
天探を完全に信用したわけでは無い。
まるで悪魔に魂を売る気分だ。
だが……それで借りを返せるのならばーーー。
『分かった。俺はお前の元につこう。天探』
それを見た天探は、また微笑を浮かべた。
ーーーーーーーー。
人々が見たのは、白い大地だった。
建物も、森も、何も無い場所だった。
所々の地面が大きく抉れ、凹み、大きな岩や小さな石が転がっている。
辿り着いたのだ、地球とは違う新しい星に。
穢れのない、真っ白な世界に。
大地に降り立った兵士や民達はこぞって感嘆の声を出した。
見渡す限りの大地。妖怪のいない、安全な世界。
それは人々が昔から欲してきたものだった。
そして夢が叶い、今ここにいる。その事に感動していた。
後から降りてきた四人の女性も、その光景に目を奪われていた。
四人のうち一人はやがて動き出し、地面を踏み、ふわりとジャンプしながら言った。
「うわっ!ねえ依姫、凄い軽いよ!ちょっと力を入れただけで飛べる!」
はしゃぐのは青いサロペットスカートを着た、綿月 豊姫だった。
そのはしゃぎ回る豊姫を見て、対照的な赤いサロペットスカートを着た綿月 依姫が口を開いた。
「人がいる前ではしゃがないで下さい!お姉様!」
「いいじゃないの、折角辿り着けたんだから」
怒鳴る依姫を鎮めようと口に出したのは、赤と青の個性的な服を着た八意 永琳だ。
依姫はそれで口を閉ざすも、何だか不本意な様子で飛び回る豊姫を見る。
と、そこで永琳は隣の人物へ視線を移した。
「それで、大丈夫ですか?月夜見様」
永琳に月夜見と呼ばれる青い髪の女性は、口を抑えて青白い顔で俯いていた。
うっすら死相まで浮き出てるように見えるのは、恐らく見間違いじゃない。
「うっぷ……こんなに揺れるなんて、聞いてな……オロロロロロロ」
元ニートに数十日ロケット観光は流石に堪えたのか、ここの所、月夜見はずっと気分が悪い。
そんないつも通りの彼女を見て、永琳は笑った。
そして永琳はロケットの中、着陸して未だに席に座る人物を見て、極めて普通の感覚で話しかけた。
「ねぇ、貴方もいつまでもそこにいないで、そろそろ来なさいよ」
そう、極めて普通に。
なんの違和感もなく、ただ、いつも通りに。
喜牙ーーー。
本来、この話はギャグ満載のものだったのですが、なぜこうなった……?
タイトル意味分からんね、うん。
まあタイトルについては後々に。
盃の日記、については基本的に1章に一回です。
では次回、またお会いしましょう。