東方主双録   作:紅魔館の下っ端

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二話目です。
今回も見ていって下さると嬉しいです。
それでは二話目。始まりです。


月夜見は馬鹿なのか

何も無い、ただっ広い空間の中には3人の人間がいた。

一人は黒いTシャツを着た無表情の男性。一人は赤と青の混じった個性的な服を着た女性。一人は白いローブを着た青髪の女性。

青髪の女性は巨大な椅子に身を腰掛けている。顔は少し赤い。

個性的な服の女性は、その青髪の女性の目の前で立っている。少し気まずそうに。

無表情の男は……。

 

『スンマセンっした永琳様。反省してますから焼き土下座は勘弁してくれますか』

 

黒い鉄板の上に正座させられていた。その鉄板には凄まじい熱が通っているらしく、ジューっと音が鳴っている。

 

「永琳じゃなくて、この私に謝りなさいよ……」

 

青髪の女性が小さめな声で言う。

対して、無表情の男・喜牙は青髪の女性を鋭い目付きで睨む。

 

『うるせェよ。月夜見だかなんだか知らねえが、元はと言えばお前が悪いだろが』

 

凄まじい速度で紙に書き、それを月夜見と呼ばれる女性へみせた。

 

「でもあれは貴方の言動が原因であって、元を辿っていけば貴方が悪いでしょ!?」

 

負けじと月夜見も反論する。

 

『は?お前がニートじゃなかったらあんな発言しなかったわ。大体』

 

そこまで喜牙が書いた時だった。

ゴンッ!という音と共に、喜牙の頭が地面に叩きつけられた。

見てみると、近くには永琳が拳を握って立っている。

 

「どうでもいいから早く謝りなさい。そうね、焼き串土下座とか?」

 

床に叩きつけられた頭を更に足の裏で踏まれ、喜牙はプロレスのように『ぎぶ、ギブッ!』と床を掌で叩く。

永琳がそんな事をしながらも能力を酷使しない喜牙を見て、月夜見が異論の言葉を放つ。

 

「なんで私と永琳の扱いの差がこんなにもあるの!?身分的には私の方が上」

 

『うるせェんだよア”ァ!?永琳様とお前の価値がおんなじ訳ないだろ、消すぞ!!!』

 

喜牙の発する本気の怒号。

それを聞いた月夜見は肩を震わせ、その次に永琳へ視線を送り、口を開いた。

 

「私って、ここの最高責任者って立ち位置だったよね……?」

 

「その通りですから涙目にならないで下さい月夜見様!」

 

涙目になる月夜見へ、永琳は必死のフォローに入る。

だが、そこへ喜牙が。

 

『どうせ名ばかりの最高責任者だろ?俺の攻撃にビビってた時点で実力は大した事はないだろうし、それを布団の中に入って回避しようとしていたことから、頭は良くないだろうし……お前、なんなの?』

 

そんな事が書かれた紙を月夜見に見せた瞬間、永琳からの蹴りが喜牙の顔面に突き刺さった。

無言で床に転がる喜牙を無視し、永琳は今にも泣き出しそうな月夜見を何とかなだめようとする。

 

「で、ですが月夜見様は行動力があるじゃないですか!ほら、この都が設立されたのだって月夜見様の……」

 

『行動力があるならニートにならないんじゃ』

 

グシャッ!

そんな音が聞こえた。見てみると、文字の書かれた紙を永琳が踏み潰している。

その文字を読ませないよう配慮しながら、尚且つ月夜見を早めに立ち直らせようとしているのだ。

 

「そ、そういえば月夜見様!私達を呼んだのには、何か用があったのではないですか!?」

 

目的を思い出し、それについて永琳は聞いた。対して月夜見は目に溜まった涙を拭い、口を開く。

 

「そうそう……永琳、貴方達人間って寿命があるじゃない?」

 

「え?まあ、はい」

 

頷く永琳を見て、『ようやく話が進んだ!』と喜びながら月夜見は続けて声を発する。

 

「でね、それって妖怪達の穢れのせいで寿命が減っていってるんじゃないか、って思ったの!」

 

『馬鹿じゃね?どう考えても細胞の老化現象が原因』

 

そのような事を書く喜牙の手を足で踏み、永琳は紙を丸めて処分した。

手を押さえながら悶絶する喜牙を無視して、月夜見は続ける。

 

「こんな都市にいても寿命なんかがあるんじゃ、人間はいつか全滅するわ!でも穢れの無い世界にいけば、寿命は無くなって人間は永遠に減らなくなる!」

 

『どんな思考回路だよ。大体、増え続けても問題になる』

 

踏まれた方の手とは反対の手で書き殴る。だが永琳はその手も踏み、喜牙の紙を取り上げた。

喜牙の口封じを終わらせた永琳は、苦笑いをしながら

 

「月夜見様、大変勉強になる言葉を有難うございました」

 

思ってもいない台詞を吐くが、それを指摘するものはいない。

ですが、と永琳は付け加える。

 

「この地球にはほぼ全ての場所に妖怪がいます。どれほど壮大な夢を語っても、実現が不可能なら、そんなものはただの『夢物語』です」

 

永琳は続ける。

 

「妖怪がいない世界などあり得ません。この『地球』という惑星にいる限り、それらは実現不可能でしょう」

 

「なら地球から出ればよくない?」

 

何気なく放たれた月夜見の言葉。

それを聞いた永琳と喜牙は一瞬にして膠着した。

 

「え……と、地球から出る……とは?」

 

恐る恐るといった様子で永琳は問う。

月夜見は笑みを浮かべ、得意気に、

 

「だから、なんか乗り物を作って他の星に移り住むのよ!」

 

『あ、駄目だわこいつ。生粋の馬鹿だ』

 

喜牙がコンクリートの床を削って文字を綴る。

対して永琳は苦笑いをしながら月夜見へ言う。

 

「あの、失礼を承知で申させていただきますが、それはキチンと考えた末に発言されているのですか?」

 

月夜見はキョトンとした表情になる。

 

「え?当たり前じゃん。私を誰だと思ってるの?」

 

ふん、と月夜見は得意気に胸を張った。

 

『あーあ、やっぱ頭の方も駄目だったか』

 

と、喜牙が月夜見を馬鹿にした文字を書き

 

「大丈夫ですか?主に頭」

 

と、永琳が月夜見の頭を心配する言葉を放った。

その二人の意見を聞いて見た月夜見は不満そうに頬を膨らませ、首を傾げる。

 

「何が悪いの?」

 

『主にお前の思考』

 

「というか、そんなもの作れたとしても材料が……」

 

それを聞いた月夜見は唸り、何か閃いたかのように顔を上げた。

 

「材料は喜牙。貴方が持ってきなさい!」

 

『いやお前が行けよ』

 

大変不服そうに喜牙は文字を書く。

その文字を見た月夜見は首を横に振った。

 

「私ってこの部屋から滅多に出なくて顔を覚えられてないから、他の人に見られたらまず『侵入者だ!』ってなるのよ」

 

『おい最高責任者』

 

そもそもの評価が低い喜牙と、味方と認識されていない月夜見はこの中を動き回るには適さない。

動き回り、人を動かすには、それ相応の人望と知能が必要な訳だが……。

 

「あ、なら私がやりましょうか」

 

そこで永琳が手を上げた。

人の上に立つ人間で人望があり、尚且つ最高の知能を有する永琳はその役にピッタリだろう。

だが、

 

「いや駄目ね。材料を取ってくるなら都の外に出ないとだし、永琳がいなくなったら私の食糧配達係がいなくなって私の人生終わるし」

 

「それはそこの喜牙に」

 

「それこそ問題じゃない!?こんな奴を毎日招き入れたりしたら、それこそ私の命の危機よ!?」

 

『お望みとあらば何時でも冥土に送ってやるよクソニート』

 

ひたすら険悪なムードを形成していく月夜見と喜牙。

元々の性格は変わらない筈なんだけどなぁ、と永琳は二人を眺めながらそう思う。

 

「なら喜牙。貴方に頼むわ」

 

永琳からの言葉に、喜牙は即座に振り向いた。

 

『え?ちょっ、永琳様まで何を』

 

「今の月夜見様のざれご……計画を本当に行うなら」

 

「いま戯言って言おうとしなかった?」

 

「気のせいです。もし本当に行うならかなり知恵を振り絞って、尚且つ作業を手早くやる必要がある。私は指示を出したりしなきゃだし、喜牙。貴方しかいないのよ」

 

それを聞いた喜牙は少し考える素振りをし、その後に床へ文字を書いていく。

 

『分かりました。永琳様のご指示とあらば仕方ないですね』

 

喜牙は仕方なくといった様子で了承した。その喜牙の行動を見て月夜見は地団駄する。

 

「な・ん・で・ここまで扱いが違うの!!私!最高責任者!OK!?」

 

『うっせェ布団ダルマ!!大人しく布団に戻って受精卵からやり直してこい!そしてそのまま帰ってくるな!!』

 

がりがりと、コンクリートの床を削って文字を書きながら喜牙は月夜見を睨む。

それを見た月夜見はどこからともなく半月の描かれた扇を取り出し、それを振りながら喜牙へ

 

「まず床に書くの止めて!床が、床が!!」

 

『床?……あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!』

 

「文字を稼ぐな削るな止めて!」

 

そんな漫才をしている二人の頭へ、一つの拳が降り注いだ。

ゴンッ!!と、猛烈な音と共にそれは炸裂した。

一瞬にして喜牙と月夜見が床に叩き伏せられる。

それを行った張本人、永琳は溜息をついた。

 

「二人ともそこまで。このままだと永遠に話が進まないし、作業にすら取りかかれないわ」

 

永琳はそう言うと喜牙の首元を掴み、それを己の方向へ引っ張った。

そして倒れている月夜見へ背を向けて入口辺りまで歩くと、そのまま踵を返して一礼。

 

「今日は誠に有難うございました。では、私達はこれで」

 

「ちょっ、頭……頭があぁぁぁ……」

 

悲痛な叫びを上げる月夜見を無視し、永琳はその扉をそそくさと閉め、その場を早足で去った。

 

 

 

 

『永琳様。あいつ、最後まで「ニート」って部分だけは否定しなかったですね』

 

「あんたは最後まで月夜見様を乏しめるのね」

 

そうして二人は部屋へ帰っていった。




ここまで読んで下さり有難うございました!
次回も宜しくお願いします!それでは、また。
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