東方主双録   作:紅魔館の下っ端

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おはこんばんにちは、お久しぶりです。
今回の話は『二人のコンビ』。当然のようにシリアスなシーンは存在しません。
それではどうぞ!


二人のコンビ

深い森の中に彼はいた。

片手には通信テレビのようなもの、もう片方の手には金属のようなものが握られている。

彼はその金属と一枚の紙を、そのテレビの画面に映るように持った。

するとそのテレビの画面に、一人の女性の顔が浮かび上がる。青瞳の女性だ。

その女性は一度金属に目を走らせ、次に男の持つ紙に書かれた文字を読み、口を開く。

 

【ごめん。やっぱそれ駄目】

 

テレビの向こうからの声を聞いた男・喜牙は素早く紙切れに文字を書き綴ると、それをテレビの画面に映す。

内容は、

 

『あー?またかよ。もういいだろこれ、もう疲れてきたぞオイ。……つーかお前も探せよ月夜見ィ』

 

【ダイヤ希望】

 

『殺すぞ』

 

喜牙は今、普段自分が住んでいる都市の中から離れて外まで鉄材を取りにいっている。

なぜそんな事になっているかと言うと、その原因を作ったのは『月夜見』と呼ばれる女性だった。

その月夜見はなぜか寿命=妖怪を結びつけ、更には『妖怪がいる地球から出よう。』と言い出した。

当然、そんな事を気軽に出来るわけではなく、それ相応の機材や材料、時間がいるとの事だった。

そこで材料探しに任命されたのが、この喜牙という男。

この男は自分の口から言葉を発する事はなく、全て何かに文字を書いて相手に伝える。表情も常に無表情で、感情を表に出すことは滅多に無い。

 

【ていうかさー、なんで私まで協力しないといけないの?】

 

と、めんどくさそうに語る女性『月夜見』。

こうなった張本人であり、都市の最高責任者。

……なのだが、普段から外に出ないせいで周りから顔も覚えてもらえてないらしい。

その月夜見の言葉を聞いた喜牙は即座に紙を取り出し、それをテレビに映す。

 

『むしろお前が一番動かないといけないんだがな。部屋に引きこもって指示出すだけとか舐めてんのか』

 

【日光はお肌の天敵】

 

『今は夜な、もっと言うと曇りな』

 

そう会話しながら喜牙は近くに置いてあるピッケルに手を伸ばし、それを肩に担いで歩く。

 

【いやー、似合ってるわ。なんか大工さんって感じがするする】

 

テレビから面白がっているような声が聞こえてきた。

 

『ありがとよぉ。お前も似てるぜ?冬にコタツの中ごろごろ転がるデブ猫に』

 

【表出ろコノヤロウ】

 

『出れるもんなら出ろヒキニートが』

 

そこまで言うと、喜牙は足を止めた。その目の前には崖が立ち塞がっている。

喜牙は一通りその崖肌を見、紙に文字を書いて月夜見に見せた。

 

『ここでいいか?』

 

その文字を読んだ月夜見は、同じようにその崖を見た。

 

【ん、いんじゃない?なんか色々ありそうだし】

 

その適当な月夜見の言葉を聞いた喜牙は崖に歩み寄り、その崖肌に触れた。

何かを調べるように崖肌を撫でる。

そして

 

(ここだな)

 

直後、崖の表面が凄まじい爆音と共に吹き飛んだ。土煙が蔓延し、一瞬にして崖肌に空洞のトンネルが出来上がる。

 

【うっわぁ、なに今の?】

 

『エネルギーを変換、操作してぶつけたんだよ』

 

【でも貴方が力を加えたように見えなかったけど】

 

『別に俺が動く理由はねェだろ。空気は常に振動してんだから、その空気に力を与えて向きをちょっと操作してやれば後は勝手に破壊してくれる』

 

【ごめん、分かんない】

 

そんな会話をしながら喜牙はトンネルへ足を踏み入れた。

中には明かりが無く、頼りとなるのはそのテレビの光だけになる。

 

【ふっ、どうどう?私も役にたったでしょう?】

 

暗闇の中、画面上でドヤ顔の月夜見の表情と声が目立つ。

 

『お前がいなくてもテレビは機能するがな』

 

【いやごめん。暗くて文字見えない】

 

月夜見の声と喜牙の歩く音のみがトンネルに響く。

喜牙はトンネルの表面に光を当てながら注意深く観察をする。いい材料を見つけるために。

そこへ月夜見が疑問の声を投げかけた。

 

【そういや、私達って何を探してるの?】

 

『知らね。とりあえず適当に何かを見つけ出して、それを永琳様に持っていくだけだ』

 

【適当ね】

 

『人生を適当に生きる屍が言うな』

 

そう書かれた紙をテレビの画面に映すと同時、途中で歩みを止めてピッケルを振り上げた。

岩肌目掛けてピッケルが振り下ろされる。

ガキィンッ!と、片手で振るったとは思えないほどの音と火花が散るが、鉱石等が落ちてくる事は無い。

その様子をみて月夜見が口を開く。

 

【ていうかさ、自然で取れるのって『自然銅』『自然銀』『自然金』くらいでしょ?取らなくても良くない?】

 

『お前は無から金属を生み出せるのか?なにを作るにしても、まず原型たる金属が必要だろが』

 

【そこはほら、ご都合主義で】

 

『現実逃避は一人夢の世界で行え』

 

一心不乱に(はたから見たら)掘り続ける喜牙だったが、数分経つと同時にその場へ座り込んだ。

息を吐き出し、文字を書く。

 

『飽きた。帰る』

 

【はっや!?待って待って待て!!少しは頑張ろうよ!】

 

『サボり代表格のニートが偉そうな事言ってんじゃねェぞ』

 

喜牙はピッケルを肩に掛け直し、テレビを持って今来た道を引き返した。来た時と同じ暗闇が喜牙の視界を覆う。

 

【あともう少し頑張ろーよ。諦めんなよぉ!】

 

『絶対零度まで冷め切った人間がその名言使うんじゃねェ。今すぐ世界中の人間にお詫びと称して死ね』

 

【うん。あの、そろそろ泣くよ?私】

 

『死に方はミディアムな』

 

【死んだ時のイメージが浮かばないのは私だけ?】

 

そう馬鹿やる二人だったが、突如、喜牙の足が止まった。

 

【?どしたの?】

 

突然止まった喜牙へ、月夜見が疑問の言葉を投げかける。

口からの返事は無い。代わりに、文字の書かれた紙切れが月夜見の目の前に現れた。

 

『……なんかいる』

 

暗闇の奥を見据える喜牙の書いた文字を見た月夜見は、同じように暗闇の奥へ目を向ける。

耳も集中させる。

すると、奥から音が聞こえた。「ヒタッ、ヒタッ」と、裸足でコンクリートの上を歩いているかのような音が。

当然、喜牙でも無ければ月夜見でも無い。

これは……。

 

【妖怪?】

 

『いや違ェな。それにしちゃ妖怪特有の威圧感が無い』

 

小さな声で尋ねてくる月夜見に、喜牙は文字で答える。

今まで『妖怪』という存在に相対したことがないのか、それとも単純に液晶越しでは実感が湧かないのか、月夜見は軽く首を傾げた。

そんか月夜見を尻目に、喜牙の奥を睨む目が更に細くなっていく。

 

『……人間、か?』

 

その文字を見た月夜見は疑問の声を発した。

 

【でも、外に出てくる人間ってかなり限られてるよね。足音は一人みたいだし、相当な馬鹿じゃないと外へは出ない筈だけど】

 

『ニートの分際で詳しいじゃねェか』

 

【部屋の中から能力駆使して覗いてるからね。プライベートから何まで……】

 

『前言撤回。お巡りさんコイツだ』

 

二人で何かしている間に、その足音は少しずつ接近している。

テレビ画面から目を離し、喜牙は前方へ注意を向ける。此方が攻撃しなくとも、相手が『間違えて』攻撃してこないとも限らない。

もっとも、

故意に攻撃してこないとも限らない訳だが。

その人間の足音は、すぐそこまで迫っていた。

暗闇から、その人間の姿が現れる。

そこにいたのは、薄紫色の長いポニーテールの髪に、赤い瞳、白くて半袖・襟の広いシャツのようなものの上に、右肩側だけ肩紐のある、赤いサロペットスカートのような物を着ている女性だった。

その手には長刀が握られている。

そして、その女性の名を、喜牙は知っていた。

 

『……依姫?』

 

「これは喜牙殿。こんな所で何を?」

 

暗闇の中、女性・綿月依姫は首を傾げながら問いた。

すぐに紙を取り出して文字を書こうとした喜牙を見た依姫は片手で制し、その長刀を鞘から引き抜いた。

 

「ここまで暗くては手間でしょう。暫しお待ち下さい」

 

スラリと、綻び一つもない刀が引き抜かれる。

依姫はそれは何の気無しに上空で振るう。すると、その刃の通った道筋から光が放たれた。

暗闇を消し去る光は、そのトンネルを一瞬で満たす。

完全に視界が確保された後、依姫は喜牙を制していた腕を下ろした。もう大丈夫、という事なのだろう。

喜牙はスラスラと文字を書き、それを依姫へ渡す。

 

「ふむふむ……成る程、そういう事でしたか」

 

喜牙の文面にしっかりと目を通しながら相づちを打つ。

読み終わった依姫は、その紙を懐にしまうと、再度喜牙へ目を向けた。

 

「状況は分かりました。最近、永琳様が何か愚痴っていたのは、そういうカラクリだったんですね」

 

依姫は苦々しい表情となり、

 

「それにしても、その……『動かざる特別天然記念物』とか言う奴でしたっけ?永琳様を困らせるなんて不届き千番。今すぐ蹴散らして」

 

【待てえ!】

 

依姫の怒りの台詞を掻き消し、テレビから音が漏れる。

その元凶たる声が。

 

【おーい喜牙!人を馬鹿にするのも大概にして!!】

 

『社会を馬鹿にする代表者が個人を語るんじゃねェ』

 

テレビ越しに喧嘩する二人。

そのテレビに映る人間を見て、依姫は首を傾げる。

 

「どちら様ですか?その方は」

 

その言葉を聞いた月夜見は視線を軽く逸らした。先程の『蹴散らす』という言葉が響いているのだろう。

対して喜牙は何の気も無しに

 

『月夜見。永琳様に迷惑な指令を出した無能』

 

【てめえ喜牙ぁぁぁぁ!!】

 

月夜見の声がトンネル内に響き渡る。

その文字と月夜見の反応を見た依姫は、ゆっくりと剣を鞘にしまい、笑いながら答える。

 

「冗談ですよ。流石に永琳様より高い身分の方に粗相は働けませんし。ご無礼お許し下さい」

 

依姫の言葉を聞いて、月夜見は一息ホッと息をついた。その後、月夜見は目を喜牙へ向ける。

 

【これが正しい人間のあり方よ?目上には礼儀を、ね】

 

『目上って、歳いくつだお前』

 

【永遠の16歳!】

 

『黙れ三十路』

 

【黙れ放射性廃棄物】

 

二人の間に険悪な空気が生まれた。どうしても相性が悪いのか、一回会話するごとに喧嘩を行うような気がする。

取り残された依姫は苦笑いのまま、二人のやり取りを見ていた。

 

 

【あ、そうそう。ねえ、えーと……】

 

『依姫、だ』

 

【そうそう、依姫?永琳が愚痴ってたって言ってたけど、例えばどんな事を?】

 

そう問われ、依姫は少しばかり考える仕草を行ったが、問題ないと判断したのか顔を上げて口を開く。

 

「そうですね。『なんでこんな面倒くさい事を…』とか、『月夜見様の命令はこれだから…』とか、ですね」

 

瞬間、先程まで騒がしかった月夜見の声が聞こえなくなり、トンネル内部は一気に静まり返った。

見てみると、テレビの画面に映っていた筈の月夜見の姿はもう無く、微かに何かを引きずる音が聞こえてくる。

そしてそのまま、月夜見は帰ってこなかった。

どうしたのか?と少し心配そうな表情をする依姫へ、喜牙は文字の書かれた紙を見せる。

 

『気にすんな。ニートたるもの、元の居場所へ引き返しただけだ』

 

「そういえば喜牙殿についても、『いつになったらあの性格を…』とか、『あの子の後処理が本当に…』とかなんとか」

 

瞬間、いきなりの爆音が鳴り響いた。

喜牙の立っていた場所は砂埃が舞っており、天井には巨大な穴が開けられていた。

一人取り残された依姫は、また首を傾げて、

 

「……どうしたんだろ、お二人共」

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、喜牙ここにいたの」

 

月夜見の部屋へ食事を持ってきた永琳は、その月夜見と一緒にいる喜牙へ目を向けた。

永琳は座っている二人の近くまで歩き、

 

「喜牙と月夜見様、昨日はあんなに喧嘩してたから合わないんじゃないか、って思ってたから、少し意外だったわ」

 

そう言う永琳へ、月夜見は顔を上げないまま、

 

「いや、ちょっと……親近感がね……」

その言葉に喜牙は無言で頷く。

対して、状況が全く飲み込めない永琳は首を傾げた。

 

「えーと、親近感?」

 

『……気にしないで下さい。いや結構マジに』

 

同じく顔を上げないまま紙を永琳へ見せる喜牙。

いつもの会話の嵐は存在せず、ただそこには無言のプレッシャーしか存在しなかった。

そこへ月夜見が再度口を開く。

 

「まあ……親近感ってだけで、別に仲良くなったわけじゃないから。その辺はあんまし勘違いしないようにね」

 

『そこは同感。私はこんな暇人と仲良くなるつもりはないので、悪しからず』

 

喜牙の言葉を聞いた月夜見の額に、ピキリ、と血管が浮かぶ。

 

「暇人って、あんたもあんたで暇人でしょうが。なに、わざわざこんな場所に来て。遊んで欲しいのかなー?喜牙ちゃーん?」

 

ピキリ、という文字と怒りマークの書かれた紙が喜牙から飛び出した。

 

『なんですか偽最高責任者さん?俺はお前と違ってちゃんと働いてんだよ。肩書きだけの人間が偉そうに言ってんじゃねェ、敬れたかったらそれ相応の結果を残すんだな。分かったかコラ』

 

月夜見の額に、更に血管が浮かび上がる。

 

「仕事を中途半端に終わらせる人間が結果を残せてるとは思えませんけどねー?人に言うなら自分もきっちりやればー?」

 

喜牙の座るコンクリートの床にヒビが入る。

 

『結果を残せてるから仕事が来るんだよ。その点お前は何ですか?仕事どころか人すら来ねェ、人望の薄さが表面から滲み出てるなァ、オイ』

 

その言葉を引き金に、月夜見と喜牙は同時に立ち上がった。

 

「だから私は人望が薄いんじゃなくて外に出ないだけだと何回言えば!!!」

 

『だからそれを人望が薄いって言うっつってんだろこの引き篭もりが!!!』

 

空気は一変。重苦しかった空気が再び流れ出す。

元気に喧嘩する二人を見てクスリと笑った後、永琳は二人へ向かって

 

「まるで子供の喧嘩ね」

 

そう呟いた永琳の言葉。だが二人には聞こえず、喧嘩は続いた。

騒々しい声が響くー。

 

 

 

 

 

 

 

「……このピッケルとテレビ、どうすればいいんだろう」

 

トンネルに取り残された依姫は、喜牙の置いていった荷物を見て、そう呟いた。




お疲れ様です。
依姫の登場です。正直、この時に依姫が産まれていたのかは全く分からないのですが、最後のオチのために追加しました。
では次回も見て行ってくださると嬉しいです。
それでは!
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